面接で聞かれるよ!これだけは知っておきたい世界経済のトレンド ~トランプ大統領登場でなぜ株価が上がるのか?

SBI大学院大学金融研究所所長、前シティグループ証券株式会社取締役副会長 藤田勉様にご寄稿いただきました。

高まるトランプ批判と株高

有言実行とは、まさにドナルド・トランプ大統領のためにある言葉です。激しい批判にもめげず、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)離脱、メキシコとの国境の壁の建設、中東からの難民の入国制限などを矢継ぎ早に実行しています。

これに対して、トランプ大統領に対する批判が、一段と強まっています。世界的に、激しいデモ、マスコミの攻撃が続いていますが、それらは一段と激しくなっています。そもそも、トランプ政権発足時の支持率は、過去最低水準であり、決して人気が高いとは言えません。

しかし、その一方で、米国株は順調に上昇しており、トランプ大統領就任後、史上最高値を更新しました。つまり、一般の世論とは異なり、株式市場はトランプ政権の政策を大いに歓迎しているとも言えましょう。そこで、高まるトランプ批判の一方で、株高が続く理由を探ることとしましょう。

投資は客観的な判断が必要

世界的に、トランプ政権の政策には反発が強いのですが、日本でも同様の反発が多いようです。確かに、イスラム教徒の入国禁止などは、好ましい政策とは思えません。

しかし、政治に対する感情と投資判断は分けて考えねばなりません。強調したいことは、トランプ政権に対して情緒的な評価をすると、投資判断を誤るおそれがあるということです。

日本においても情緒的な批判が多いように見えます。たとえば、「難民受入を制限するのはけしからん」という人がいます。2015年に、第三国定住を認められた難民10.7万人のうち米国は6.6万人も受け入れましたが(出所:国連)、日本は106人しか受け入れていません(出所:法務省)。

つまり、米国が日本を見習い、難民受入基準を適正化することは無茶な話ではありません。米国の難民受入制限を批判している人は多いのですが、「日本がもっと難民を受け入れるべきだ」という人にお目にかかったことがありません。

「メキシコとの国境の壁をつくるとはけしからん」という人もいます。しかし、国境線を管理するのは国家の義務です。国家が、密入国者を防ぎ、そして、取り締まるのは国際常識です。もし、日本に船で密入国者がどんどん入ってきたら、「海上警備を強化しろ」という話になることでしょう。

マスコミを通して米国を見ると間違う

昨年の大統領選挙において米国民は、イスラム教徒の入国制限などを公約したトランプ氏を選びました。選挙人獲得数は、トランプ306人、クリントン232人とトランプ氏が圧勝し、さらに、トランプ氏が属する共和党が上院、下院両方で多数を獲得しました。つまり、米国民の多数は、オバマ政権と民主党の政策を否定し、トランプ政権と共和党の政策を明確に支持したと言えます。

多くの日本人が大統領選の予想を見誤った最大の原因は、反トランプ色の強いマスコミを通じて、選挙戦を見ていたからです。特に、有力マスコミの本拠は、ヒラリー・クリントン氏が上院議員を務めたニューヨーク、ファーストレディとして8年間を過ごしたワシントンDC、ヒラリーとオバマ前大統領の地元シカゴ、ヒスパニックが多いロサンゼルスにあります。このため、これらは、どうしても反トランプ論調になってしまうのです。

日本のマスコミの米国の本拠地も、多くがこれらの反トランプ色の強い大都市にあります。このため、我々はどうしてもこれらと同じ目線からトランプ批判をしてしまう傾向があるのです。

しかし、トランプ大統領の主たる支持層は社会的な影響力が必ずしも大きくない労働者層です。トランプ大統領は、CNNなどの有力なマスコミと決定的な対立関係にあります。しかし、これも計算づくなのでしょう。

トランプ大統領は、インテリやマスコミを敵に回しても、新聞は読まないがツイッターを読む層をがっちり抑える戦略です。インテリも、労働者も同じ1票を持つのであり、それで選挙に勝てることは十分実証されました。

トランプ大統領の戦略目標は、2020年大統領選勝利でしょう。大統領選は州別のウィナーテイクオール方式です。これは、州別に1票でも得票数が多い候補者が、その州に人口比例で割り当てられた選挙人を総取りするものです。よって、トランプ大統領は、東部と西部のインテリ層と非白人の票を捨てても、中西部と南部の保守層と白人労働者をがっちり固めれば再選も可能でしょう。

トランプ政権の政策は株高要因

トランプ大統領の任期が4年間あり、その上、共和党が議会で多数を握ることから、トランプ政権の政策は着実に実行される可能性が高いと思われます。そして、冷静に分析すると、以下のように、株価に対して大きくプラスになる政策が多いのです。

1. 法人税減税

現在、法人税率は35%ですが、これが15%まで引き下げられることが検討されています。減税は直接的に企業の利益を増やすことができます。

また、海外における米国企業の留保利益を米国内に還流させる際の減税も提案されています。米国は、日本と違って、海外にある企業の溜まった利益を米国に持ち込みと、もう一度、法人税(35%)がかかります。この税率を一時的に、10%程度に下げようという話です。

アップルを中心にハイテク企業が海外で豊富に現金を持っています。これらは米国内に工場を持っていないので、留保金還流分多くは、配当や自社株買いに向けられると考えられます。これは、ハイテク株の株高要因になるかもしれません。

2. インフラ投資

トランプ政権は、環境問題に対する懸念からオバマ政権が差し止めていた石油パイプライン建設を解禁しました。これは、カナダからメキシコ湾岸までパイプラインを建設する壮大なプロジェクトです。しかも、石油輸出国機構(OPEC)やロシアが減産してくれているおかげで原油価格が高どまりしています。このため、シェール革命によって世界最大の産油国になった米国のエネルギー産業の恩恵は大きいのです。

3. 金融緩和継続

不動産王と呼ばれていたトランプ大統領は過去に4度の破産を経験しました。さらに、家族も金利上昇の悪影響を受けやすい不動産業を営んでいます。不動産業には、金利上昇は利益減少要因になります。また、金利上昇はドル高を招き、米国産業界の国際競争力をそぐおそれがあります。

このため、トランプ政権は、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)に対して、利上げを急がないように圧力をかけることが考えられます。来年2月のFRBイエレン議長の任期切れ後には、金融緩和継続を志向する議長を選任し、低金利政策を続けることでしょう。

おそらくハネムーン期間(就任後100日間はマスコミなどが批判を控える)を終える春頃には、米国株とドルは大きく上昇した反動もあって、急落する場面があるかもしれません。その時が、株式投資家にとって、絶好の買い場になることが考えられます。

政治家の好き嫌いと投資は別物です。情緒論ではなく、冷徹な分析ができる者のみが、このトランプ相場で勝者となることでしょう。

藤田勉(ふじた・つとむ)氏
藤田勉(ふじた・つとむ)氏

1960年山口県生まれ。82年上智大学外国語学部英語学科卒業。2010年一橋大学大学院博士課程修了、経営法博士。上智大卒業後、82年に山一証券入社。83年山一投資顧問に出向、85年ニューヨークの山一キャピタルマネジメント。90年帰国。97年メリルリンチ投信投資顧問(社名はいずれも当時)。00年日興ソロモン・スミス・バーニー証券(現シティグループ証券)に日本株ストラテジストとして入社。10年まで日経ヴェリタス人気アナリストランキング日本株ストラテジスト部門5年連続1位。10年からシティグループ証券取締役副会長。内閣官房 経済部市場動向研究会委員、経済産業省企業価値研究会委員、早稲田大学商学部講師などを歴任。近著に「最強通貨ドル時代の投資術」(平凡社新書)「ギリシャ危機後のマネー経済入門」(毎日新聞出版)など

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