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視野を広げ、市場価値を高める「キャリアパートナー」とは

Naraoka Shuko
NewsPicks / Brand Design 編集者

前回の記事で伊藤羊一氏は「ハイキャリアのビジネスパーソンがキャリアを考えるには、対話と内省から始めてみては」というメッセージを発信した。

一歩先のキャリアを築くには、内省して自分自身について深く振り返りつつ、自身の強みや志向性を明確にしておくことが有効である。そして、第三者との対話によって自分自身が今考えていることを発散させることが未来につながっていく。

しかし、社内価値にしか視点が向かないと、市場価値や強みへの誤解が生じ、自身の可能性や成長を妨げる要因になっていることも少なくない。そこに「社外かつキャリアのプロの視点」という、いわばセカンドオピニオンを加えるとキャリアは開けていく。

ハイキャリアのビジネスパーソンがキャリアを考えていく上でどのように対話をしていけばいいのか。長年パソナでキャリアアドバイザーを務める稲見英宗氏に「ハイキャリアこそ、第三者にキャリア相談をすべき」理由について聞く。

ハイキャリアこそ、自身を見つめ直す機会を

稲見ハイキャリアの方は、自分を見つめ直す機会が多くはありません。さらに、年齢が上がったりポジションが上がったりすれば、社内からアドバイスされる機会もなくなっていきます。

そんな時、セカンドオピニオンを求めて相談できる“第三者”の存在(キャリアパートナー)は今後のキャリア構築においても大きいと思います。

稲見英宗のプロフィール

また、大手企業のビジネスパーソンには「ジョブローテーションを経てゼネラリストになるべきか?」「スペシャリストになるべきなのか?」という悩みを抱えている方が多いように思います。

大手企業ではどうしてもいくつかの部署を経験しながら、経営層に上がっていくというキャリア形成が多いが故の悩みです。

一方で、求人を出す企業側の動きを振り返ると、成果を評価する「ジョブ型雇用」が加速しています。

一般的には景気が悪くなるとポテンシャル採用がしぼみ、経験者即戦力採用が増えます。

企業業績が不透明になると、育成にかける時間やコストがのしかかってくるのが実のところ。自社にないスキルやノウハウを持ち、すぐに事業拡大に貢献できる方の採用が増えているように思います。

採用時に「あなたが能力を発揮するためにこんな環境がある」とアピールする求人案件も増えました。

どんな組織構成で、どんなミッションを持ち、どの部署に対して経営はどんなビジョンを持っているのか、どんな結果を出してほしいかをオープンにしているのです。こちらも適切なマッチングのための大きな変化だと思います。

なかなか個人が客観的な視点を持つのは難しい

転職市場が大きく変化するなかで、「個人がキャリアをどのように築いていくか」を客観的に振り返り、今後どのようにしていくのかを考えていくことは難しくなっています。コロナ禍もそうですが、世の中が予測不能になり複雑性がさらに増しているからです。

40~50代の経営幹部でも、自分の強みには気づきにくいのが実情です。

例えば、私が面接対策で求職者の方に「自己PRしてください」と話した時に、出てくるエピソードについて「なぜこれを選んだのですか?」と聞くと「自分が一番頑張ったから、一番成長したから」と答えるケースも少なくありません。

でも、それはあくまで主観。思い入れのあるプロジェクトに終始しないことが重要です。

対面や電話、Webでの模擬面接、カウンセリングが可能だ

これは年齢に限った話ではなく、採用担当として多くの面接を経験している人事の方でも同じです。

面接を受ける側として「客観的に響くエピソードでなければ」と思っていても、いざ実践すると難しい。どうしても、ご自身の現職でのキャリアの延長線で物事を考えてしまうのが実情です。

だからこそ、転職活動においてキャリアアドバイザーに相談することの価値は大きいのです。

キャリアアドバイザーの視点によって道が開けた事例とは

私が実際にキャリアアドバイザーとしてアドバイスを行った事例をいくつかご紹介しましょう。

顕著な例でいうと、経理職から管理会計や経営まで携わっていた方にアドバイスをしたら、経営企画でポジションを得た事例があります。

経理は予実の数字を管理する……というイメージですが、会計を通じて会社全体のことを見ている方ならば、経営企画にもマッチします。

日系企業で経営企画をされていた方が、海外の子会社管理に移った事例もあります。

海外での勤務を希望していたものの、当時、勤めていた会社では海外での経験を積む機会がなかった。海外駐在の経験がないと海外勤務の転職はできないと思われていたのですが、十分に語学に堪能だったので、機会を外に求めたのです。

こちらも、ご本人が気づかれていない選択肢や可能性について私たちが「こんな選択肢もありますが、どうですか?」と面談で提案して道筋が決まっていったのです。

営業職の方でいうと、営業数値などのデータを見て戦略を考えていた方がマーケティングに移ったという例も。特に、Webマーケティング企業の営業の方はよくデータを見ているので、事業会社のマーケティング担当となる事例も目立ちます。

また、無形サービスの営業に従事されている方がマーケティングに移る例は多いですね。技術営業を行っていた方が、お客様の声を聞いて商品企画を担当して新しい商品を生み出すというパターンもあります。

また、コロナ禍になって間もない時に、関西出身の男性が「大きなマーケットで仕事がしたい」ということで東京での転職を希望されていました。ただ、子どもが小さく奥さんも仕事をされているので、週に2~3日は在宅勤務をしたいというご要望でした。

コロナ禍も始まったばかりだったので、それを実現できる企業は少なかった。

しかし、スキルと経験をお持ちの方だったので、採用するメリットと勤務に関する希望を記載した推薦状を付して企業にご紹介したところ、最終的には人事制度を変更してリモートワークを取り入れたという事例もありました。

結果的に、企業側も長く活躍してもらうために制度を変えたのは、良い事例になったのではと思っています。

プロジェクトマネジメントをされていた方が管理職として採用されるケースもあります。現職では複数プロジェクトマネジメントを担当されていたものの、人事評価は未経験だった。

でも、現職では数年先までのキャリアは未知数だったのと、十分にピープルマネジメントをされていたので、即戦力として「マネジメントができるのでは?」とご案内して決まった例もあります。

求人の募集案件には「マネジメント経験のある方」を書かれているので、ご自身も「応募していいものだろうか……?」と悩むものだと思います。

でも、我々キャリアアドバイザーに相談していただければ、過去の情報も生かしつつ、求人や可能性のご提案ができると思っています。

客観的な視点がよりキャリアの幅を広げる

現職の会社事情や状況では、どうしても近視眼的になってしまいます。

基本的には、自身の部署のマネジメント上にある役職に就く。その延長線上において、ラインで上がっていくという選択肢が多い。そこに客観的な視点をもたらすのがキャリアアドバイザーの役割だと思っています。

転職エージェントを使わずに転職した場合、ご自身で強みを理解しきれず「転職に失敗した……」というケースは少なくありません。

キャリアアドバイザーを通すと、そのミスマッチは起こりづらくなるはずです。

直接、面談の中で意向を確認したり、さまざまな角度で企業側ともやり取りをしているので「この採用ポジションで何を求めているのか?」も客観視してお伝えしやすくなると思います。

今は求人情報が多様で情報過多な時代です。パソナ社が扱っている求人もインターネットで検索すれば出てくるものが大半だと思います。

ただ、キャリアアドバイザーと話すことは「1カ月前に掲載された求人なのか」「直近で最重要として上がってきた求人なのか」などさまざまな角度で正しい情報や鮮度のよい情報を知ることができるので、大きなメリットといえるのではないでしょうか。

また、私たちは業界や職種についての情報も常にアップデートするようにしています。

「業界の中でもA社とB社はこんな状況にある……。では、C社が次に取りうる手は……?」といったことについて、キャリアアドバイザーや法人営業担当と常にディスカッションして情報蓄積をしています。

また、転職者側が「待遇や、有給、残業の有無なんか聞いていいのかな……?」と躊躇(ちゅうちょ)してしまうと、聞ける内容はどうしても限られてしまいます。その点も利害関係のないキャリアアドバイザーに相談することでクリアになりやすいと思っています。

キャリアアドバイザーと話せば道が拓ける

私は事前に履歴書や職務経歴書をお預かりして、目を通し、書かれていないことを想像し、「成果を出せたストーリーは何か」について考えを巡らせて面談に臨みます。

面談の中ではいろいろな方向から質問をして、可能性とポテンシャルを引き出すことを心がけます。

この「ストーリーを考える」というのは万人に有効です。業界、業種にひもづく特定のスキル意外の部分で発揮できるのはポータブルスキルです。

どうしても、人は「このスキルがあったから、この経験があったから、成果が出せた」という話に終始してしまいがち。その点をひもといてストーリーとして語っていただくことで、新たな可能性が生まれるように思います。

ハイキャリアの転職を成功させる5つのPOINT

最後にお伝えしたいのは、「転職して終わりではない」ということ。転職してから、さらに活躍して、自身の市場価値を上げることが重要です。5~10年たった時に「どこでも活躍できる自分づくり」が必要なのです。

よく勧めるのが、転職して3カ月後、半年後でもいいので職務経歴書をアップデートし続けること。成果を出しているつもりでも「そこまでアピールできるものじゃなかった」と思えます。

自身の気がつかなかった価値に出会えるのが大きなポイントなのです。

選択肢を広げる、新たな価値観に気がつく、新しい自分に出会う──。

そのためにキャリアアドバイザーと話してみるのも手ではないでしょうか。新たな世界の扉が開くことと思います。

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制作:NewsPicks Brand Design
執筆:上野智
撮影:竹井俊晴
デザイン:seisakujo
編集:奈良岡崇子