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おもしろ部署探訪~森永製菓 新領域創造事業部~新規事業が会社にもたらす大切なものとは?(後編)

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世の中にはさまざまな仕事がある。一見すると同じ部署名でも、企業の数だけ手掛ける仕事内容は多様なうえに、企業や社会における役割も異なる。この連載では、そんな世の中に存在する企業の『部署』にフォーカスし、それぞれの部署の役割や仕事内容、ポリシーなどに迫る。

今回は、森永製菓の新領域創造事業部を訪問。いわゆる“新規事業を推進する”と称する部門は、世の中全体を見ると増えている傾向にあるが、実際にはどんな仕事をしているのだろうか。一体、どんな仕事を、どんな思いで取り組んでいるのか。事業部長から若手担当者まで、4名の当事者からじっくりお話を聞いた。後編では、新領域創造事業部のメンバー3名に聞いた「部署参画のきっかけ」や「自身が手掛けた新規事業の内容」、そして「自身の事業が周囲に与えた影響」についてご紹介する。
前編はこちら:おもしろ部署探訪~森永製菓 新領域創造事業部~新規事業が会社にもたらす大切なものとは?(前編)

「森永って結構新しいことやってるね」って、会社の姿勢を体現している


森永製菓株式会社 新領域創造事業部 スペースブランディングユニット シニアマネジャー(『TAICHIRO MORINAGA/タイチロウモリナガ』担当) 秋田 慶三さん


── 秋田さんがこの新領域創造事業部にジョインしたきっかけは?


秋田さん(以下、敬称略):入社以来、5年ほど営業職を経験し、そろそろ新しいことにチャレンジしたいなと思った時期に、新領域創造事業部の公募がありました。応募したのですが、結局、念願叶わず……2年経ってから声がかかり、最初は戸惑ったのですが(笑)。前任が異動することになって、彼が立ち上げかけていた『TAICHIRO MORINAGA/タイチロウモリナガ』というコンセプトショップの運営を受け継ぐことになりました。


── コンセプトショップとは?


秋田:これまでマス商品しか提供してこなかった当社が、いわゆる百貨店で提供するような、ハイエンドな小ロット商品の製造販売にチャレンジしたものです。これまで商品化されずに眠っていた商品のアイデアや技術をもう一度掘り起こし、小さなロットで動かして実際に商品を販売しています。


私は、商品開発から店舗オペレーション、SCM*1、ショップを運営いただける事業者への営業活動まで、すべての事業フローに関わっています。長年営業職を担当してきたので、モノを売る仕事以外に携わったことはなく、当初はあまりにも訳が分からなくて、眠れなくなるくらいに悩みました。


営業職は自分ひとりで頑張ればどうにかなるので、周囲の巻き込み方がいまいちわかっていなかったんですね。さらに新規事業は前例がないので、都度、立ち止まって考えなくてはなりません。どうやって社内のリソースを活用していくのか、その勘所がわかるようになってから、ようやく業務がスムーズに回るようになりました。


── 新領域創造事業部は、周囲にどのような影響を与えていると思いますか?


秋田:森永製菓は歴史ある会社なので、どうしても昔のことを武勇伝として語ってしまう傾向があると思うんですよ。そこに新領域創造事業部のような部門があると、「森永って結構新しいこともやっているんだね」と見てもらえます。特に、新入社員の目には「面白いことにチャレンジしている会社」と映っているようで、社内公募すると若手から「新領域創造事業部に入りたい」と多くの声が届きます。


私自身は、ここに来てから一気に視野が広がりました。今後は、ここで得た経験を伝える役目かなと自覚しています。支店で営業の仕事をしていると、本社に文句を言いたくなることもたまにありました。「なんでこういうことができないの」「どうしてこういう商品作れないの?」って。


でも実際に商品企画に携わると、いろいろな理由があってできないとわかってくるし、少なくとも本社としてはもっと細部まで説明されないと、会社一丸となって「これからの森永をこうしていこう」と動けないと思うんですよね。漠然とではありますが、そういったことを伝える役割を担っていきたいと思っています。

秋田さんが手掛ける『TAICHIRO MORINAGA/タイチロウモリナガ』
とは?


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森永製菓の創業者、森永太一郎氏の名前を冠したブランド。1899年より西洋菓子の美味しさを日本人に届け、1918年にカカオ豆からの一貫製造によるチョコレートを発売した森永製菓が、100年かけて磨き上げたお菓子づくりの技術で「美しくて、趣があって、心が惹かれる」。そんな「をかし」なお菓子を作っています。
https://www.morinaga.co.jp/taichiro/

新領域創造事業部は、新たに人類が住める場所を探してくる調査部隊のよう


森永製菓株式会社 新領域創造事業部 アシスタントマネジャー(『SEE THE SUN』担当) 吉成 健二さん


── 吉成さんは、この部署に入るまでにどのようなキャリアを重ねてきましたか?


吉成さん(以下、敬称略):四国エリアで営業を担当していた時に、ベンチャー留学制度に応募しました。ウガンダに1年間駐在できる企業への支援に応募したのですが、残念ながら叶わず……。続いて、シリコンバレー研修が優勝賞品になっているビジネスプランコンテストにチャレンジしたら惜しくも2位で……。


残念ではあったのですが、その2位という結果で自信が付きましたし、3分というわずかな時間で社長にプレゼンした経験は、非常に勉強になったと同時に、良いアピールになったと思っていました。


というのも、実はベンチャー留学制度に応募した時から、新領域創造事業部に対して「なんだか森永っぽくない人たちが集まっていて面白そうだな」と憧れを抱いていて、いつかそのメンバーの一員として加わりたいと思っていたんです。ビジネスプランコンテストを経験し、さらにその思いが強くなって志望したところ、運よく異動することができました。


── 念願かなって憧れの事業部に入った吉成さんですが、最初はどういった事業に関わったのですか?


吉成:実は、結構ほろ苦いデビューでして……。私がジョインする前から進めていた置き菓子の事業を担当したのですが、上手く事業を軌道に乗せることが出来ず、クローズすることになりました。新規事業を創造する仕事って、はたからイメージするほど華やかではなく、シビアだし泥臭いこともやるのだと、いきなり現実を目の当たりにしました。また事業創造の難しさを痛感しました。


── それはある意味、貴重な経験ですね……。その後はどのような事業を?


吉成:次にアクセラレーター・プログラム*2で採択された企業と一緒に事業を作っていく際の窓口になりました。具体的には登山アプリを提供する企業と3カ月間一緒に、イベントを実施したり、サイトの立ち上げを経験したりしましたね。


アクセラレーター・プログラムを通じて、多くベンチャー企業の経営者や社員の方と触れ合い、その中には、自分と同年代の方も多く、とても多くの刺激を受けました。その一方で、ビジネスを進めるスピード感や能力の高さに圧倒され……自分の非力を痛感し、その反動として成長意欲が湧きました。


現在は、アクセラレーター・プログラムによって協業が始まった株式会社SEE THE SUNの営業マネジャーという立場で、食品アレルギーやヴィーガン、ベジタリアンなど、多様な食のニーズに対応した食品の販路開拓など営業全般を担当しています。まったく販路のない状態から営業をスタートしたので、非常に質の良い商品ではあるのですが、そう簡単には売れません。また中々商談で会ってもらうことも出来ません。やっぱり「森永製菓」というブランド力はすごいなと改めて実感しましたね。


四国の営業時代には、ありがたいことに比較的大きな取引をしていて、営業力にはそれなりに自信があったのですが、いざその看板を外してみると、全く何もできない。自身の力の無さを痛感し、もっと地力をつけなければならないと思いました。


── 今後は、どのような活動をしていきたいですか?


吉成:最終的には会社に何かしら還元したいと思っています。森永製菓に在籍しながらベンチャー企業で働くことができる、こんな経験もなかなかありません。そんなチャンスをくれた会社には感謝していますね。


この新領域創造事業部は、新たに人類が住める場所を探してくる調査部隊みたいなものだと思っています。未知なる新たなビジネスチャンスを発見し、将来の新たな収益事業に育てるのが私の目標です。


お菓子の会社に入ったのに、まさかこうして大豆ミートを販売するなんて思ってもいませんでしたが、私自身こういった未知なる経験にワクワクするタイプなんです。「半歩踏み出す勇気」をモットーにしていて、何でもやってみる精神を大事にしてきましたし、これからもそうありたい。50歳になっても、活き活き働くおじさんになっていたいですね。

吉成さんが手掛ける『SEE THE SUN』とは?


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2017年4月に神奈川県葉山町で創業した森永製菓のコーポレートベンチャー。「テーブルを創るすべての人を幸せに」をミッションとして掲げ、多様化する食のニーズに対して、同じテーブルで誰もが笑顔で食事ができる世界を目指しています。玄米入り大豆ミート「ZEN MEAT」や「ZEN MEAT」を使った加工品の他にも、発酵した豆乳からできた動物性原料不使用の植物性チーズ「SOY CHEESE」など、こだわりを持った商品を多数取り揃えています。
https://seethesun.jp/

森永製菓の「未来の経営者」を育てる”推進力”でありたい


森永製菓株式会社 新領域創造事業部 マネジャー(『おかしプリント』担当)渡辺 啓太さん


── 渡辺さんが新領域創造事業部にジョインしたきっかけは?


渡辺さん(以下、敬称略):新領域創造事業部に配属される前の部署は、アンテナショップやお土産品等の専用品を開発・販売する市場開発事業部、さらにいえば、新領域創造事業部の全身となるイノベーショングループに過去所属していまして。最初のキャリアは営業だったのですが、ずっとゼロイチビジネスがやりたくて、社内のビジネスプランコンテストに応募したり、昔からビジネスモデルや仕組みを作ったりすることに興味がある人間だったんですよ。そこで、異動の内示があり喜んでお受けしたという流れです。


── 渡辺さんならやってくれるだろうという、期待の星なのですね。


渡辺:いやいや。周囲からは「新しいことやりたいんだよね、渡辺?」と、「新しいもの好き」に近い感覚で受け止められているのではと(笑)。


── 歴史のある会社で新規事業を立ち上げる意義について、どのようにお考えですか?


渡辺:よく言われていることですが、人口減少が進み、我が社のようなビジネスがだんだん厳しくなっていくのは間違いない状況です。国内では、この数十年ずっと卸店様がいて、組織小売業様がいて……という決まったビジネスモデルの中でメーカーが商品を開発し、大量に作ったものを売る仕組みが確立されていて、変えることは非常に難しいことを感じていました。それを否定するつもりはないのですが、違った仕組みも必要だよねと……森永製菓がさらに大きく成長していくために、このブランド力を生かさなければもったいないよねと、営業職時代から感じていました。


── どうやって「ゼロ」から「イチ」を作っていくのですか?


渡辺:まずは、「こういうものを作りたい」というプランを描いて、その上で世の中を見渡してみる。先進例があったら、その仕組みを分析してから動きますね。がむしゃらに動いても時間の無駄になるだけですから。「完全なるゼロイチ」なんてそうそうあるものではなくて。私たちがやっているのはビジネスですから、基本的な流れはしっかりと学び、参考にすべきだと思うのです。


例えば、私が立ち上げたおかしプリントは、要はオリジナルのお菓子を作るノベルティビジネスですが、「プラットフォームづくり」にこだわっています。そこが他社との違いです。WEBからご注文をいただいて、オリジナルのハイチュウやカレ・ド・ショコラ、ムーンライト、小枝、そして日本ケロッグ社のプリングルスもオリジナルで作ることができます。


── 他社製品のオリジナルも作れるんですか?


渡辺:そうです。なぜなら「プラットフォーム」ですから。しかも、マス商品を扱うメーカーでありながらロットの壁を壊しました。通常、オリジナルパッケージのお菓子を作るとしたら「最低でも10万個からですね」となるところを、ハイチュウは50本から作れる。しかも注文から10日間程度でできあがる。さらに言えば、デザインも表面だけでなく、原材料表示の部分以外は何をしても良いとしました。


要するに、「市場を見渡して満たされていないニーズは何か」を洗い出し、そこを「どうやって埋めていくか?」という流れで事業を考えていくのです。


おかしプリントに関して言えば、大手の印刷会社様では50本のパッケージ印刷対応は難しいでしょうから、新しいパートナーを探しました。そしてアライアンスを組んで、仕組みを作って、オペレーターを雇用して、運営して、数字を見る……というところまで段取りをつけました。もちろん、数字と言っても、売り上げ目標や利益目標を課せられているわけではありませんから、そこに縛られるわけではありませんが、売り上げ目標以外にも大切な数字はあって、そこの数字をしっかりと捉えKPI化して事業を作っていく、ということです。


── 割と自由にやらせてもらえるのですね。


渡辺:売上目標を達成しなくては……となると、安売りをしたり、本質とは違った売り方に走ったりしがちです。あくまで、新しいビジネスモデルを成立させるのが私たちの目的ですから。社長も「新規事業はそういうものだろう」と理解してくださっているので、事業に集中しやすい環境にあると思います。


とはいえ、おかしプリントの事業は立ち上げてから3年で取引先も700社を超え、現在もどんどん増えている状況です。ちゃんと売り上げも立っていますし、もはやゼロイチからイチジュウに拡大するフェーズに入っています。


── 新規領域創造事業部の存在が社内の方々にどのような影響を与えていると自覚されていますか?


渡辺:私たちが新しい事業を生み出すことで、歴史のある食品メーカーのプロパー社員でも、こうして新しいことができることを内外に示していけると考えています。私がお話するのはおこがましい内容ではありますが、新規事業の立ち上げを外部に任せてばかりいると、ノウハウが社内に蓄積されません。それを続けてしまうと、この先々、何をやるにしても経営コンサルタントなどの外部に頼らざるを得なくなって、未来の経営者が育たないと思っています。


森永製菓には多様な力を持っている方たちがたくさんいます。けれども、本業があるからそれを新しい事業を生み出す力に変換できないでいる。非常にもったいなく感じています。当社は事業創造会社では決してないので、無理やり事業を立ち上げる必要はないかもしれませんが事業家精神は非常に大切だと考えており、私たちが新しいビジネスを生み出していくことで、社内の方々も本業や、興味があれば事業創造の担い手として事業家としての力を発揮したくなる、そんな推進力になれれば良いと思っています。

渡辺さんが手掛ける『おかしプリント』とは?


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「おかしプリント」は、小ロット(50個)からお菓子のオリジナルパッケージを作ることができる、web注文限定のノベルティお菓子サービス。最短1週間という短納期と、簡単に会社のロゴやオリジナルの画像をお客様になじみ深い「ハイチュウ」や「カレ・ド・ショコラ」などのパッケージにデザインできることから、他のPRツールよりも印象に残り効果が高いと好評の声が多く、2016年1月のサービス開始以降700社を超える企業に採用されています。
https://okashiprint.com/

取材・文:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) 撮影:岡部敏明

 

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*1:SCMとは:サプライ・チェーン・マネジメント。供給連鎖管理のことを指す。ものの流れ、お金の流れと情報の流れを結び付け、全体最適を図る経営手法。

*2:アクセラレーター・プログラムとは:2015年より始まった、森永製菓とタッグを組むベンチャー企業を公募するという取り組み。詳しくは、このインタビューの前編にて説明。