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おもしろ部署探訪~ハースト婦人画報社 広告本部 ハーストプロジェクト推進室~マルチメディアカンパニーがイベントにこだわる理由

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世の中にはさまざまな仕事がある。一見すると同じ部署名でも、企業の数だけ手掛ける仕事内容は多様なうえに、企業や社会における役割も異なる。この連載では、そんな世の中に存在する企業の『部署』にフォーカスし、それぞれの部署の役割や仕事内容、ポリシーなどに迫る。

今回は、ハースト婦人画報社を訪問。1905年に創刊した『婦人画報』をはじめ、『エル・ジャポン』『25ans(ヴァンサンカン)』などの人気雑誌を発行する出版社は、近年デジタル戦略にも注力し、マルチメディアカンパニーとして躍進を続けている。そんな同社が、2016年から始めたのが、『ハースト ビューティ フェスティバル』と呼ばれる美の祭典。毎年行われる一日限りのイベントは、各方面から大きな注目を集めている。出版社・デジタルメディア運営会社としてのイメージが強い同社が、なぜこのようなイベントを開催するようになったのだろうか。広告本部 ハーストプロジェクト推進室のメンバー 前西克哉さんとコーポレートセールス部 イベント課の岩野真優子さんからお話を伺い、その思いやこだわりを探る。

きっかけは2015年の『プリンセス美容博覧会』。媒体横断型の美容イベントが生まれた理由


―― ハースト婦人画報社は、一般的な出版社と少々感触が違うように感じますが、実際のところはいかがでしょうか?


前西:そうですね。ハースト婦人画報社は、一般的には「出版社」というカテゴリーに入っているのかもしれませんが、私たち自身はそうは思っていません。売上比率を見ていても、出版事業は50%~60%で、残りはデジタル事業、いわゆるEコマースやWEBメディアなどで占めているため、私たちは自らを「雑誌も発行するデジタル・パブリッシャー」と表現しています。


―― なるほど。お二人が所属する広告本部のミッションは?


前西:基本的には、ハースト婦人画報社が発行するメディアの広告営業を担当しているのですが、私は年に一度開催する『ハースト ビューティ フェスティバル』運営プロジェクトの責任者も兼務しています。


岩野:私は前西と同じく、広告本部に属しているのですが、その中でもイベント課という、広告以外の企画を担当する部署のメンバーとして、年間約150本のイベントを部内で割り振って担当しています。そして、前西から声がかかって、『ハースト ビューティ フェスティバル』のプロジェクトメンバーにアサインされました。


―― 「出版社・デジタルメディア運営会社」のイメージがあるハースト婦人画報社が、なぜイベントに力を入れるのでしょうか?


前西:もちろん、「クライアントから立体的なプロモーションを求められる」という理由もありますが、どちらかというと、イベントを「大切な読者とのタッチポイントである」と捉え、そこから得られる情報やデータをかなり重要視しているというのがひとつあります。


さらに、私たちは現在、「ワン・ハースト」として、媒体を横断し、全社を挙げて取り組む企画やプロジェクトを推進しているところです。そういった意味で、媒体を横断したイベントがひとつの重要なファンクション(機能)になると考えています。


株式会社ハースト婦人画報社 広告本部 ハーストプロジェクト推進室 ビジネスマネージャー 前西 克哉さん

『ハースト ビューティ フェスティバル』とは?


上質なビューティ情報を発信しているハースト婦人画報社、ハースト・デジタル・ジャパンが保有する26媒体が合同で開催する美のイベント。美容に関するさまざまなコンテンツを通じて、「私だけのキレイ」を追求することができます。
毎年、5000名以上の参加者が来場。ビューティ、ヘルスケア、ウェルネス、フードなど各メディアの視点で構成されたトークショーやセミナーをはじめ、さまざまなビューティコンテンツを展開し、メディア主催としては最大級の美容イベントとして盛り上がりを見せています。

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―― 社内外にさまざまな効果が見込まれるという考えなのですね。では、お二人が担当されている『ハースト ビューティ フェスティバル』がスタートした経緯をお聞かせいただけますか?


前西:今から4年前の2015年に、雑誌『25ans』の創刊35周年を記念して、スポンサー企業各社にブースをご出展いただき、読者を集めたイベント『プリンセス美容博覧会』を実施しました。その際、スポンサー企業の皆さまが、雑誌でのプロモーションのみならず、実際に読者とのタッチポイントが生まれ、商品に直接触れてもらえる機会が持てたことを非常に喜ばれていたのです。読者からも、『25ans』の誌面で普段は見ているだけの商品をリアルに体験できるということで、大きな反響がありました。


この成功体験をベースにしながら、さらに私たちの特性が生かせないものかと考えました。当社は、伝統のある『婦人画報』『ハーパーズ バザー』から『エル・ジャポン』『25ans』まで、幅広い読者層にアプローチできる媒体群を持っていますから、「美」という共通テーマのもとで媒体を横断したイベントが実施できれば、スキンケアからメイクまで幅広いアイテムを一堂に集めることができます。


スポンサー企業の皆さまにとってはもちろん、読者にとっても新しい製品を知る絶好の機会になるのではないかということで、『ハースト ビューティ フェスティバル』を実施する運びとなりました。おかげさまで、毎回好評を博していて、2018年で3回目の開催となりました。


―― そもそも前西さんは、イベント運営のご経験があったのでしょうか?


前西:いいえ。2015年の『プリンセス美容博覧会』に関わったのが初めての経験でした。各メディアが読者イベントを行うこと自体は珍しいことではないので、広告本部として違和感はなかったのですが、横断型のイベントを実施した例はなかったので、今から思えば結構大変でしたね。まずはプロジェクトマネジメントの発想で、「会社全体を動かすには、どうすればいいのか?」を考え、キーコンセプトを固めるところから始めました。


岩野:コンセプトの策定にはかなりの時間をかけましたね。まずは、「他社にもある強み」を表現したキーワードと、「ハーストにしかない強み」のキーワードを羅列して、ランキングにするところから始めました。そして、比較しながら「絶対に勝てるキーワード」だけを抽出して並べ、全ての媒体に共通しているかどうかを検証していきました。


株式会社ハースト婦人画報社 広告本部 コーポレートセールス部 イベント課 マネージャー 岩野 真優子さん

前西:このキーワードがイベントの根幹になりますから、何カ月もかけて考えました。コンセプトとなるキーメッセージは、やはり全社員が納得しなくてはならないものです。当時は、「美」に関する横断型のメッセージはどこにも存在していなかったので、私たちの手で一から作っていきました。そこが一番、大変だったかもしれません。


―― 個性的な媒体それぞれに、しっかりとしたコンセプトがあるわけですから、それらを網羅したイベントのコンセプトを立てるのは、すごく難しそうですね。


岩野:かなり難しかったですよ。『エル・ジャポン』『ハーパーズ バザー』『コスモポリタン』など、インターナショナルメディアのイベントでは海外の事例を持ち込むケースが多いので、すでにコンセプトが確立している人気企画からスピンオフするなど、イベントを日本向けにローカライズすることが多いんです。


ところが今回は、まったく新しいブランドを一つ立ち上げるくらいのパワーが必要でした。『婦人画報』『エル・ジャポン』『25ans』など、それぞれの媒体は知っていても、「ハーストって何?」という方もたくさんいる中で、ファンを1から作るのと同じような難しさがあると感じていました。


前西:また、私たちが一番気にしたのは、各媒体の担当者への配慮です。編集者は往々にして非常に忙しいですから、自分たちの本業以外にイベントの話を持ち込まれたら、もう本当に大変なわけですよね。『プリンセス美容博覧会』のイベント運営を経験した流れから私が責任者の立場となった時に、まずイベントチームにも協力を仰ぎ、かつ広告本部の中でも各メディアの編集部やプロモーション部とリレーションのある営業担当の人間をメンバーとして選出していきました。


岩野:初回のイベントを立ち上げる際は、全く見たこともないものを進めるために、ものすごく忙しい中1時間の打ち合わせ時間をもらわなくてはならない。現場の事情は重々理解しているだけに、打ち合わせに招集するのも心苦しいぐらいでした。


前西:まずは私たちのチームが「一生懸命やらないといけない」と、自分たちに言い聞かせていました。質的にも時間的にも、「このチームが一番一生懸命やっているんだ」ということを示さなくてはならないと。私たちが時間をかけてしっかりコンセプトを固め、打ち合わせの際に無駄な時間だと思われないよう、中身があり、かつスムーズな進行ができるよう心がけながら、コンセンサスを得ていきました。


岩野:合同ミーティングの場では、皆さんが意見を言いづらいでしょうし、「美」に対する考え方にも相違があって、意見もそれぞれ違うはず。ですから、都度一人ひとりと個別に話をしながら詰めていくことが大切だと思います。


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困難に直面した際に、ベンチャー企業のような「一体感」が生まれる


―― プロジェクトメンバーの皆さんは、それぞれの仕事を抱えながら、いわゆる「兼務」という形でイベント運営に関わっていますよね。しかも、とても多忙な中……。どういった気持ちが原動力になっているのですか?


前西:「新しいことができる」というワクワク感でしょうか。イベントの初回は、私が入社4年目の時に担当したのですが、初の横断型全社イベントで、しかも当時、これほどの規模の美容関連イベントは、周りを見渡してみても実施されていませんでした。予算規模が大きい分、責任も大きかったのですが、それがやりがいにつながっていました。


イベントの回数を重ねていくごとに、媒体や部門を超えて文字通り「ワン・ハースト」となり、変わっていこうとする。その歴史の一端を作っているような、そんな感覚を味わえるようになっていました。私を責任者として指名してくれた当時の上司に感謝しています。


岩野:結局、このイベントのことを考えなくて良い期間は、一年のうち一カ月くらいしかなくて。それ以外は、ずっとこのプロジェクトメンバーと顔を突き合わせて議論を重ねているんですね。コアなメンバーは、私たちを含め全部で5名いるのですが、チームの雰囲気がものすごく良くて、それも仕事のモチベーションになっています。


また、リーダーの前西がムードメーカーで、何か問題が起きた時にもほわっとしていて、妙に安心感があります。逆に壁に突き当たった時には、「行こう!」って力強く引っ張ってくれる。そうなると一体感が生まれ、まるでベンチャー企業のようになるんですよ。「社長に言われたから」「あの人がこうだから」という話は一切持ち込まず、全て自分たちで物事を分析して意思決定をしています。そういった雰囲気にも魅力を感じていますね。


前西:自分たちで営業戦略からお金のマネジメントまで考えられるのは、非常に面白いですね。皆が前向きな視点で、「このイベントを成功させよう!」と意識を高くもっているので、そういったメンバーに触発されながら、楽しくやりがいをもって働けているのかなと思っています。


また、回数を重ねるごとに社内の反応も変わってきて、そこにも手ごたえを感じています。今では、「ハースト ビューティ フェスティバルは秋に行われる全社イベントだよね」と、共通認識が生まれてきていて、非常に進めやすくなったのは確かです。

継続することがとにかく大事。続けることで生まれる新しい「可能性」

―― 今後は、どのようにしてイベントを発展させていきたいとお考えですか?


前西:一度きりのイベントなら、その瞬間だけ頑張ればなんとかできてしまうとは思うのですが、いかに継続していくかが難しい。たまたま3回目まではうまくいっているけれど、4回目が果たしてどうなるかわからないですから、慣れたり油断したりしてはいけないと思っていますね。参加者のアンケートを見て、「満足度が高いかどうか?」「ビジネスとして成立するかどうか?」といったことを毎回検証しながら、常にアップデートする必要はあると思っています。


とにかく継続して、進化させて、来場者とスポンサーの満足度を高めていくことが大事です。そして『ハースト ビューティ フェスティバル』を通じて「ハーストブランド」を強化していきたい。一般の方にも、各メディアのみならず 「ハースト」というブランドの質の高さを伝えていきたいと思っています。


岩野:イベントは単なるアウトプットの手段の一つでしかありません。この横断イベントで得たものを、新商品の企画や新しいプロジェクトなどにつなげることで、ビジネスを最大化することができると思っています。これだけ違った部署の人たちが集まって作り上げた財産を生かしていく。その出発点に立った気がします。


前西:全社の力を結集する一つの事例として、この『ハースト ビューティ フェスティバル』があると思っています。このイベントを通じて得たノウハウやデータをもとに、広告のスポンサー企業にも読者にも還元できるような施策を開発し、双方にとって、そして社会的にも意義のあるビジネスとして継続できたらと思います。


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取材・文:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) 撮影:岡部敏明

 

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