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おもしろ部署探訪~ANAインターコンチネンタルホテル東京 料飲部~ホテルならではのレストラン運営のポイント

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世の中にはさまざまな仕事がある。一見すると同じ部署名でも、企業の数だけ手掛ける仕事内容は多様なうえに、企業や社会における役割も異なる。この連載では、そんな世の中に存在する企業の『部署』にフォーカスし、それぞれの部署の役割や仕事内容、ポリシーなどに迫る。

今回は、ANAインターコンチネンタルホテル東京の料飲部門を訪問。都内屈指の外資系ホテルにある多彩なレストラン・バーをマネジメントするお二人に、各々の役割や仕事のやりがい、外資系ホテルの飲食店ならではの裏話などを伺った。

直営レストランにこだわる理由


―― まずはANAインターコンチネンタルホテル東京の概要と、お二人が所属している料飲部門の役割を教えてください。


塩治さん(以下、敬称略):ANAインターコンチネンタルホテル東京は、844の客室と12のレストラン・バー、大小さまざまな22の宴会場を備えたホテルで、私が所属する料飲部はホテル内のレストラン・バーと、各種ご宴会の運営を担当している部門となります。


当ホテルには、ミシュラン2つ星フレンチからカジュアルスタイルのブッフェ、庭園を望む日本料理店、中国料理店、ステーキハウスまで、バラエティに富んだレストラン・バーがあります。


各レストラン、バーそれぞれにマネージャーもシェフもいますが、現場で活躍する彼らをサポートするのが私や澤田の仕事となります。どうしたら現場のスタッフがスムーズに日々のオペレーションに集中できるのか?やりたいことを実現できるのか?彼らの意見を尊重しながら最適化を図る、その調整役と自覚しています。


ANAインターコンチネンタルホテル東京 料飲サービスマネージャー 塩治裕之さん

―― 12のレストラン・バーがあるとのことですが、それらの店舗はテナントではないのですか。


塩治:テナントという意味では、ANAインターコンチネンタルホテル東京の12の料飲施設のうち、1店舗(寿司店)だけがテナントで、あとの11店舗は全て直営です。マネージャーからシェフ、働くスタッフ全てが、私たち料飲部門の所属となります。


―― そうなんですね! レストランなどは全てテナントとしているホテルもありますよね。


塩治:ホテルによって運営方針が違うので一概には言えませんが、私たちはテナントが多くなりすぎると、ホテルのブランドイメージを維持することが難しくなると考えています。インターコンチネンタルのスタンダードが決まっているので、飲食店もその基準に当てはめながら運営をする必要がありますし、やはり我々のビジネスにとって、ブランドイメージは非常に重要な要素の一つだと捉えていますからね。

スタッフがハッピーに働くために


―― ホスピタリティのクオリティーが高いホテルですから、各店舗のサービスのクオリティーも同一レベルでなければいけないのですね。澤田さんは、どのような役割を担っているのですか?


澤田さん(以下、敬称略):私は塩治の配下で4店舗を受け持つ、「店舗側のマネージャー」という立場になります。現在は、ラウンジとパティスリー、2つのバーを担当しています。


ANAインターコンチネンタルホテル東京 シニアアウトレットマネージャー 澤田未来さん

塩治:通常は一人一店舗を担当するのですが、彼女は特別というか、非常に優秀なので4店舗を担当してもらっています。


―― すごいですね! お店のジャンルも多彩ですし……。実際には、どのようなお仕事をされるのですか?


澤田:もう、なんでもやっています。お客様ありきですし、働いているスタッフありきでもあるので、「自分ができることはなんでもやろう」というスタンスで、基本、手伝えることは全部やりたいと……。


塩治:彼女の動きをみていると、ラウンジでお客様と話をしていると思ったら、次の瞬間には違うフロアで別のことをしている。本当にマルチに動いていますね。


澤田:レストランが忙しければ、店舗スタッフと一緒にお皿を下げたり、別のお店でお客様をフォローしたり。ちなみに、今日はベルギー大使館に伺って、バレンタインフェアのお打ち合わせをしてきました。(※取材は1月)


塩治:各店舗の発案で、定期的にフェアやイベントを開催しているのですが、例えばハワイをテーマとした場合、アメリカ大使館に伺って「ハワイアン航空とのコラボができないか?」と、店舗スタッフに代わって対外的に折衝したり……そういったサポートを行います。


―― それを4店舗分行うと……澤田さん、驚異的な活躍ぶりですね。


塩治:そうですね。私の立場として、澤田はじめスタッフが活躍できる環境を整えることがもっとも重要な仕事だと考えています。ホテル業務は、スタッフがどのようなサービスを提供するか、どうやってゲストに接客するかということに尽きると私は思っています。当たり前のことをしっかり根気よくやるしかなくて、だからこそ職場環境は重要な要素になります。


私が若い時に勤務していたホテルの総支配人から聞いた言葉が、今でも心の中にあります。それは「スタッフがハッピーじゃないとゲストをハッピーにできない」というもの。とてもシンプルですが、これ以上のパワーワードはないと思っています。当然、すべてのスタッフが本当に……本当にハードに働いているのですが、その中からやりがいを見つけ、「しんどいけれども成長している」とか、「今はきついけれど、もう少しここにいて頑張りたい」と思える環境を作りたいと思っています。


―― どうすれば、スタッフがハッピーになれるとお考えですか?


塩治:一人ひとりの目標は違いますよね。例えば、Aさんはマネージャーになりたいとは思っていなくて、接客をするのが好きということであれば、その意思を尊重する。とにかく早く出世したいと考えるBさんには、そのためのサポートをする。みんなに同じレールを敷けばよいというものではないと思います。


AさんにはAさんに適したサポートのやり方があって、BさんにはBさんに必要なアドバイスがあります。その人が今、何を考え、どうなりたいか?どういう心理状態であるかを見極めながら進んでいくしか道はありません。それは一人ひとりのお客様に接するのと同じ感覚です。


―― 澤田さんは、この仕事を進めるうえで、どのようなことを心がけていますか。


澤田:私が心掛けているのも、やはり「環境づくり」ですね。働くスタッフに対してもそうですし、来ていただいているお客様に快適に過ごしていただくためにも、コミュニケーションを重視しています。ホテルに勤務しているスタッフって、やはりコミュニケーションが好きな人が多いです。だからこそ、そこは重視したいですし、みんなきちんと意思の疎通ができる人たちばかりです。


そのうえで、どうやってモチベーションをあげるか、どうしたらみんなで頑張っていけるか、そしてどうすればお客様がさらにファンになってくださるかを考えながら、その都度実行していきます。


―― 人それぞれに考えもやり方も微妙に異なるので、それを見極める力が必要だということですね。


澤田:はい。ですから、毎日できるだけ全員のスタッフと話すようにしていますし、店舗のメンバー同士で活発なコミュニケーションが生まれるよう促したりもします。暗い表情をしているスタッフがいたら、「何かあったのかな?」と早く気づいて、私で良かったら悩みを聞いて解決してあげたい。売り上げをクリアすることも大切だし、嬉しいですけれど、スタッフが同じ方向に向かって一緒に頑張っているかどうか、そちらの方が気になります。


連携がうまくいっていなければ、「聞いている、聞いていない」という情報の行き違いなどから、お客様にご迷惑をかけることにもつながりかねませんし、不思議なことに、スタッフの雰囲気はお客様にも伝わります。先ほどの塩治の話ではないですが、スタッフがハッピーでないと、お客様も決してハッピーにはなれないと思っています。


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外資の文化が入ったことで実感する変化と、今後の料飲部門の在り方


―― 12の店舗と宴会を管轄しているということで、料飲部門はかなり大きな組織ですよね。マネジメントも大変そうですが……。


塩治:メンバーは250人規模なので、それぞれのマネージャーに権限移譲するのが重要だと思っています。もちろん、多少口も出しますが、私がどんどん入っていくと現場のスタッフから「あの人がボスだ」と勘違いされてしまいます。それはちょっと違うなと。


各店舗の雰囲気はマネージャーの個性によって違うし、それを一色に染める必要はないと思っています。もちろん、先ほどインターコンチネンタルとしてのサービスやクオリティーのスタンダードがあると申し上げましたが、店のマネジメント方針はそれぞれであっていいと思います。一つの方針を押し付けることで、現場で働く人たちの才能が開花しないというのは、マネジメントスタッフとして一番やってはいけないことです。


―― 「個性を大切にする職場」というのが、外資のホテルらしいですね。


塩治:このホテルが面白いのは、今年で創立33年になりますが、最初の20年は純日系ホテル(東京全日空ホテル)として運営していて、その後、インターコンチネンタルブランドと融合しているので、日系時代を体験した30年選手もいれば、現在の形になってから入った私みたいな新参者もいる。キャリアも考え方も、バラエティ豊かな人たちが共存している点です。そして、現在は21ものさまざまな国籍を持つスタッフが在籍していますから、カルチャーがミックスされている非常に魅力的な職場になっています。澤田はまさに、この激動期の中を過ごしてきていますね。


―― どうですか?外資が入ってから大きく職場環境は変わりましたか。


澤田:だんだん働きやすくなったと思います。私が入社したのは、体制が変わって2年経った頃で組織が変化を遂げている段階だったのですが、徐々に自分がやりたいこと、興味のあることができるようになっていった気がします。意見もしやすくなりましたし、周りの人がちゃんとそれを受け入れ採用してくれる、今はそんな職場環境です。


塩治:グローバルな感覚からすれば、自分の意見や考えを言わないとおかしいと思われてしまいますからね。ちなみに、インターコンチネンタルにリブランドして、さまざまなシステムも変わりました。例えば、現在は従業員満足度調査が年に2回行われていて、その結果をもとに私たちがしっかりフォローアップする、そんな体制になっています。フォローアップの一環で行う「フォーカスグループ」というセッションには総支配人もジョインして、しっかり意見を述べる場が設けられていますので、そこで黙っている方がおかしいという話になるのです。


今はホテル業界全体の流れ、もしくは社会全体の流れとして、「従業員を大切にしよう」という感覚になっているように思いますが、ANAインターコンチネンタルホテル東京は、長きにわたり従業員満足度の実現に対して真剣に取り組んでいます。


―― 最後に、今後のキャリアについてお聞かせください。


澤田:これまで以上にお客様とスタッフに満足してほしいですし、そのためのフォローを全力で行います。それに加え、最近は若手の女性スタッフも増えてきているので、その人たちもサポートしたいと思っています。最近はホテル内に女性管理職も増えており、女性ならではの悩みも相談しやすい環境になっています。女性は気が利いてサービス業に向いている人が多いような気もしますし、仕事を続けられる環境作りは行っていきたいですね。


ホテル業務は確かに「人が好き」という方に向いている仕事ではありますが、そうと自覚していなくてもやってみて「人と話すと楽しいです」、「自分の名前を覚えてくれて嬉しかった」といったたくさんのやりがいが実感できて、この仕事が好きになる人もいます。やはり、ホテルは特別な職場です。誇りを持って働くことができ、それがモチベーションになります。


塩治:部門としては、とにかくサービスのクオリティーをひたすら追求し、向上していくことが何よりも重要で、そのためには人の育成に注力するしかありません。だから「働き甲斐のある職場」にする。それは明確なミッションです。


また、最近はレストランの数を絞ってシンプルにまとめるホテルが多い中、ここには個性豊かな12のレストラン・バーがある。そこは間違いなく我々の強みになっていますから、それを徹底的に磨いていく必要があります。


私自身、性格的にも弱みを隠すより強みを磨きたいと考えるタイプの人間なので、そこはしっかりと攻めていって、圧倒的な差別化ポイントにしていきたいですね。サービスのクオリティーを守っているのは、あくまで現場のスタッフですから、私たちはしっかりそれをサポートしていければと思います。


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取材・文:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) 撮影:岡部敏明

 

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