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<目次>
そもそもDX人材とは、どのような人材のことをいうのでしょうか。本章では、DX人材の定義やDX人材を取り巻く状況について解説します。
DX人材とは、デジタル領域に関する知見と技術を持ち、リーダーシップを発揮してDXプロジェクトをけん引できる人材のことです。経済産業省は、『DX 推進ガイドライン』でDX人材を以下のように定義しています。
◆DX 推進部門におけるデジタル技術やデータ活用に精通した人材
◆各事業部門において、業務内容に精通しつつ、デジタルで何ができるかを理解し、DX の取組をリードする人材、その実行を担っていく人材
つまり、DX人材はデジタル技術の知識だけでなく、デジタル技術をビジネスに生かすための知見も必須といえます。また、DX人材と聞くと、システムの実装を担うエンジニアやプログラマーを想像しがちです。しかし、DXには事業の企画からリソース管理、プロダクトの実装・運用まで幅広い職種が関わっています。そのため、プロダクトの開発に直接は携わらないプロデューサーやビジネスデザイナーなども、DX人材といえるのです。
※参考:デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン) Ver. 1.0|経済産業省(PDF)
日本では近年活発にDXが実施されていますが、多くの企業が重大な課題を抱えているのも事実です。総務省の『情報通信白書』(※)によれば、DXの課題について、日本企業の53.1%が「人材不足」と答えています。米国の31.7%、ドイツの27.2%という数字と比較しても、日本におけるDX人材の不足は顕著です。人材不足を補うために中途採用に注力する企業も増えているため、今後DX人材の市場価値は一層高まることが予想されます。
DXにはさまざまな職種の人材が関わっており、それぞれに役割も異なります。そこで本章では、DX人材の主な職種と仕事内容について解説します。
プロダクトマネージャーとは、DXで何らかのプロダクトを企画・開発する際、全体の責任者を担う職種のことです。具体的には、DX全体の計画を立てたり、プロダクトへの投資額を決めたり、商品やサービスを展開する際のマーケティング戦略を考えたりします。プロジェクトのリーダー格として、DX全体の舵を取る存在です。
ビジネスデザイナーとは、DXで新事業を創出する際、ビジネスモデルの企画を立案する職種のことです。具体的には、市場の動向や消費者のニーズを分析したうえで、顧客にとって価値のある事業アイデアを考案します。社内外の状況を客観的に分析して事業戦略を練るため、社内コンサルタントのような存在ともいえるでしょう。
テックリードとは、エンジニアチームのマネジメントを担う職種です。テックリードを細分化すると、エンジニアの育成や社内調整などを手がける「エンジニアリングマネージャー」や、事業戦略をもとにシステムやアプリケーションを設計する「アーキテクト」があります。エンジニアにとって技術的・精神的な支柱となる存在です。
データサイエンティストとは、統計学やアルゴリズムの知識を生かしてデータを解析し、ビジネスへの活用方法を考案する職種です。近年は消費者の購買履歴をマーケティング戦略に応用したり、工場の稼働状況を把握して生産性の向上に役立てたりとビッグデータの活用が進んでいます。また、AIのディープラーニングで大量のデータを扱う場面も増えているため、データの専門家であるデータサイエンティストの需要も高まっているのです。
先端技術エンジニアとは、AIやIoT、ブロックチェーン、AR/VR、ビッグデータをはじめとする最先端のデジタル領域を専門とするエンジニアのことです。具体的には、最先端技術を新たなビジネスへ活用するための方法・戦略を考えたり、それぞれの技術に適した開発言語で実装や運用まで手がけたりと多様な役割を担います。
UI/UXデザイナーとは、システムやアプリケーションの使い心地や見栄えなどを設計する職種です。UIは画面や入力装置といった「ユーザーとの接点」、UXは操作性や読みやすさなどの「顧客体験」をそれぞれ意味します。DXで顧客にとって利用しやすいプロダクトを開発するためには、UI/UXデザイナーの観点と知見が不可欠です。
エンジニア・プログラマーとは、システムやアプリケーションの要件定義から基本設計・詳細設計、実装、リリース後の保守・運用までを担う職種です。プロダクトだけでなく、ネットワークやサーバーの構築・管理を手がけるエンジニアもいます。高い技術力を駆使して、新しいプロダクトや社内のIT環境を作り上げる存在です。
DX人材になるためには、具体的にどのような能力を身につければよいのでしょうか。本章では、DX人材に共通して求められる主なスキルや知識について解説します。
DX人材はデジタル領域のプロとして見られるため、前提としてIT関連の基礎知識は備えておく必要があります。一例を挙げれば、ハードウェアやソフトウェアの種類、システムの開発フロー、ネットワークの仕組みなどについては理解しておくことが大切です。ITの知識はDXの共通言語ともいえるので、最優先で習得しましょう。
DXでは、AIやIoT、ブロックチェーン、センシング、MR(AR/VR)、ビッグデータといった最先端のデジタル技術を用いることも珍しくありません。そのため、こうした最先端技術に関する知見も備えておくようにしましょう。また、IT業界は日進月歩で進化しているため、最新のITトレンドにも敏感になっておくことが大切です。
DXでは、デジタル技術を使って新商品や新サービスを開発するケースもあります。そのため、DX人材には新たな事業を構想するための企画力や発想力も必要になるでしょう。普段から世の中のビジネスアイデアや消費者のニーズに目を光らせ、「デジタル技術で解決できる不満や不便はないだろうか」と考える姿勢が求められます。
DX人材は、プロジェクトの責任者を任されることもあります。その際、予算やスケジュールを適正に管理したり、チームメンバーを動機づけたりするプロジェクトマネジメントスキルが重宝されるでしょう。特にDXでは短い期間でPDCAを回すアジャイル開発が中心となるため、柔軟性の高いマネジメント能力が求められます。
DXは全社的な取り組みになるため、関係各所との連携が欠かせません。そのため、各部署と円滑にコミュニケーションを取ったり、経営層を説得したりする社内調整力が求められます。また、役職や考え方の異なるプロジェクトメンバーの意見をうまくまとめるためには、会議を円滑に進めるファシリテーション能力も必要です。
DX人材になるためには、どのような方法でスキルを伸ばせばよいのでしょうか。本章では、DX人材を目指すためのスキルアップ方法について解説します。
ITの基礎知識や最先端技術に関する知見は、自主学習によってある程度習得できます。そのため、参考書籍やITスクール、社内外の研修、セミナー、大学の公開講座などを活用し、前提となる知識をインプットしましょう。特に近年はオンラインで受講できる無料の研修や講座も豊富にあるため、積極的に利用するのも一つの方法です。
DXの進め方やシステムの開発フローなどは、実際に業務を経験して初めて習得できるノウハウです。そのため、できるだけ現職でデジタル領域の業務に挑戦して、実務に即した知見やスキルを蓄積するようにしましょう。社内でDX関連のプロジェクトメンバーが公募された際には、積極的に挙手をして経験してみる姿勢が大切です。
DXに詳しくなるには、他社の成功事例を研究しておくことも有効です。「なぜこの事例が成功したのか」「自社でも生かせる部分はないか」などを細かく考察することで、DXに関する知識の引き出しが増えていきます。多様な先行事例が頭に入っていれば、いざ自分がDXに取り組む際に応用でき、成功の確度を高められるでしょう。
DX人材を目指すためには、現職でデジタル領域の業務に挑戦するという方法があります。あるいは、デジタル領域の知見を身につけたうえで、転職によってDXの関連職種に就くというのも一つの戦略です。DXに関わる人材は非常に市場価値が高いため、高水準の給与・役職で採用されるケースも珍しくありません。そのため、ハイクラス転職によって、今よりも上の年収やポジションを狙えるチャンスでもあります。
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