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はたラボ

人気ラッパーDOTAMAさんが解説! ビジネスシーンで「気の利いたことを言う」「上手い切り返しをする」方法

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ビジネスシーンを円滑にするために、また、ピンチを乗り切るために、あるとうれしいのが「気の利いたことを言う」「上手い切り返しをする」スキルだろう。しかし、どうすればその力が身につくのか……。そんな悩みを抱えた筆者が「これだ!」と思わず膝を打ったのが、昨今大ブームの『MCバトル』を見たときである。

 

MCバトルとは、BSスカパー!『高校生ラップ選手権』やテレビ朝日系『フリースタイルダンジョン』などのテレビ番組でお茶の間の人気に火が付いた、ラップミュージックの一種。対戦相手と向かい合い、ビートに乗せて相手を“口撃”するものだ。その雰囲気を伝えるために、一例を紹介しよう。

 

 

ノータイムで繰り出される言葉と言葉の応酬は、手に汗を握るボクシングの試合のよう。MCバトルに登場するラッパーはまさに「気の利いたことを言う」「上手い切り返しをする」プロフェッショナルではないか。ということで、上記の動画にも登場するラッパーのDOTAMAさんを直撃。DOTAMAさんは実は、“脱サラ”してアーティストの道に入った元ビジネスパーソンである。

 

「10年ほど、地元の栃木のホームセンターに勤務しながら音楽活動をしていました。“ここで売ってる熱帯魚 俺の野望はでっかいぞ”とか、販売している商品で韻を踏んで練習したこともあります(笑)」ということで、その技術の一端を解説してもらった。

 

前述の試合の動画からもわかるように、DOTAMAさんは相手がイヤがるポイントをぴったり突いている印象だ。試合で何を言おうか、さぞ入念な準備をしているのでは?

 

「していません。というのも、MCバトルにおいては『トップオブザヘッド』と言って、“即興性の高さ”が格好良さの基準でもあるからです」

 

先の動画であれば、ラップをするのは一人あたり8小節の2ターン。1小節は4拍なので、「いーち・にー・さーん・しー」を合計16回繰り返す間、何かしらの言葉を相手に投げかけ続けることになる。それをすべて“事前準備なし”“カンペなし”で乗り切るというのは、ちょっと一般のビジネスパーソンには真似できそうにないが……。

 

「いえ、むしろ、暗記した内容を思い出して言おうとすると、途中でつっかえてしまったり、相手の目を見て言えなかったりして、相手やお客様にもバレてしまうものです」

 

確かにミーティングやプレゼンで「これを言ったら絶対にウケる」と意気込んでいたのに、かえって上手く言えず、悔しい思いをした……なんてことはありがちだ。やはり、プロでもそれは同じ。とはいえ、DOTAMAさんのように即興であれだけの言葉を連発できる秘訣はどこにあるのだろうか?

 

「ラッパーであれば『サイファー』という、輪になってフリースタイル(即興のラップ)をする練習や、語彙を増やすために本を読んだり映画を観たりすることもあります。しかし、そういった技術や鍛錬も、全ては会場のお客様を自分の方に味方につけて、自分の方が対戦相手より優れたラッパーだと思ってもらうためのものなんです」

 

観客を味方につける? 相手を打ちのめすのではなく?

 

「そうです。MCバトルでは、会場の歓声の大きさで勝敗を決定します。相手を打ちのめすディス(批判や悪口)も、あくまで“自分の方が優れている”ことを観客に伝えるためのテクニックのひとつなので、相手の揚げ足を取る練習をするというよりは、どうすれば会場をロックできるか(沸かせられるか)を即興で考え、試合を組み立てていくべきだと思います」

 

痛快な相手へのディスにばかり注目が集まりがちだが、DOTAMAさんによれば「MCバトルには、ラップミュージックの余興としての成り立ちがある」そう。そこでは、勝敗を決めるのはもともと観客なのだ。そして、ビジネスシーンでも、周囲を味方につけてその場の雰囲気を我が物にすれば、有利に事を進めることができるというのだ。具体的にはどうすればいいのか。

 

「MCバトル、そしてラップミュージックにも言えることですが、ラッパーの生き様も観客の評価の対象なのです。同じ言葉でも、誰がそれを口にするのかによって、重みは全く異なります。ビジネスパーソンであれば、まずは普段の言動やそれまでの印象の蓄積が、いざという時に効いてくるのではないでしょうか」

 

これは耳の痛い指摘である。MCバトルではしばしば“(相手の)芯がブレている”という、相手の生き様を問うディスを聞く。ビジネスシーンにおいても、薄っぺらい人間性はすぐに見抜かれてしまうのだ。

 

そんな簡単に気の利いたことを言ったり、うまい返しをしたりはできないですよね……。と、落ち込んだ筆者を見かねてか、DOTAMAさんから具体的ないくつかのテクニックに関するアドバイスをいただいた。

 

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「相手をディスるとき、わかりやすいのはやはり見た目です。たとえば“そんなボロボロのTシャツを着てるお前じゃ、ラップの方もボロボロだ”と言ったとして、相手のTシャツが本当にボロボロなら、そのラッパーの発言はそれ以降、くすんで聞こえますよね。外見はその場の第三者にも視覚的に共有しやすい情報ですし、ビジネスシーンにおいても会話のきっかけになりやすいトピックではないでしょうか」

 

ビジネスパーソンであれば、“そんなに曲がったネクタイをしているお前じゃ、仕事に取り組む姿勢も曲がってる”だろうか。また、「試合の中で相手の発言をしっかり追って、そこに矛盾があればそれを指摘することもある」とDOTAMAさん。他にも、暗黙の了解になっていること、周囲が薄々思っていることを見つけ出し、誹謗・中傷ではなく、エンターテイメントとして表現するスキルも必要だそうだ。

 

その一方で、「あえて相手のディスを受け入れることで、自分の意志の強さや、スタイルの格好良さをアピールすることもある」とも。それってどういうこと?

 

「たとえば、“見た目がキモい”と言われたら、“そんな俺ならマイノリティに対してニーズがある”と言う。相手に投げかけられた言葉を、徹底していい方向に変換するんです。そうすると、相手のディスによって、むしろ自分の印象が向上しますし、ただの悪口の応酬ではなくなり、試合としても奥行き、面白みが出ると思います」

 

なるほど、「気の利いたことを言う」「上手い切り返しをする」ために意識するべきなのは、相手ではなく、あくまでも周囲の人間ということか。その意味では、言葉だけでなく、態度やジェスチャーも重要になる。

 

「“俺はこんなにノリノリだぜ”と口だけで言っても伝わりにくいですが、ステップを踏みながら言えば説得力が出ます。逆に、何を言われても表情は微動だにせず、“まったく響いていない”というフリをすることによって、相手のディスがどれだけ的確でも、それを周囲に悟らせないようにすることもあります」

 

ただし、このような言い合いにはもちろん、リスクもある。攻撃的なラップが特徴のDOTAMAさんでも、「確かにMCバトルは言葉のケンカだが、言ってはいけない領域はある」そうだ。

 

「言葉というのは、説得力を持たせれば持たせるほど影響力を持つようになります。それが人の批判に使われたら怖いですよね。強烈な言葉で人格や生き様を否定してしまうと、その人のその後の印象も変えてしまいかねません。MCバトルにおいて、ディスがただの悪口になってしまうと会場も盛り上がらないので、ディスを楽しんでもらえるエンターテイメントにするためのバランス感覚が必要だと思います」

 

海外のビジネスシーンでは、激しい議論をするもの同士でも、プライベートでは仲が良い、なんて話をよく聞く。フリースタイルバトルのように、作法のある一種の「ショー」として、ビジネスパーソンも言い合いに臨むべきだろう。ディスは用法・用量を守り、正しく使いたいものだ。

 

 

(朽木誠一郎/ノオト)