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はたラボ

8月11日は今年から「山の日」でお休み! 新しい祝日の誕生秘話

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8月11日が今年から、「山の日」として新しい祝日になる。しかし、待望のお休みが増えるというのに、世間的にはまだピンと来ていない様子……。祝日が増えるのは実に20年ぶりとのことだが、いったい山の日とは何のために、どのような経緯で誕生したのか。

 

そこで今回、日本山岳会「山の日」事業委員会のメンバーであり、山の日の代表幹事として山の日成立に携わった成川隆顕さんを直撃取材。日本で16番目となる祝日が成立するまでの道のりと、山の日への思いについてお話を伺った。

 

 

「海の日」があるのに「山の日」がないのはおかしいでしょう?

 

――率直にお聞きして、「山の日」とは何でしょうか。

 

山の日は、2014年5月に制定され、2016年から施行される「国民の祝日」の1つです。「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」ことを目的に作られました。緑に恵まれ、四季があり、さらには47都道府県それぞれに山があるなんて、世界中を探しても日本だけです。しかし、私たちにとっては山があることが当たり前になりすぎて、感謝する機会が少ないのではないでしょうか。

 

――なるほど。確かに、日常生活で山について考えることはほとんどありません。

 

だから、このような日が必要なのです。

 

――「山の日」制定は、どのようなきっかけで始まりましたか?

 

作曲家の船村徹さんが、2008年9月に下野新聞のコラムで「山の日を作ろう」という提言をされていました。それは「海の日があって、山の日がないのはおかしい。日本は山の国だ」という主旨の内容だったのです。そのメッセージが、私たち日本山岳会に「山の日」を作るきっかけをくれました。

 

翌年1月には、日本山岳会の会報で「山の日を作ろう!」と正式に宣言し、他の山岳団体も思いに共鳴してくれたことで、山岳5団体(日本山岳協会・日本山岳会・日本勤労者山岳連盟、・日本山岳ガイド協会・日本ヒマラヤン・アドベンチャー・トラスト)の「山の日」制定協議会発足につながりました。総勢約10万人の“山登りが好きな人”の団体です。山の日をきっかけに一丸となり、協力し合うことになりました。

 

――なるほど。具体的に、祝日はどのような手順で成立するのですか?

 

国民の祝日は国会が決めるものです。国会に議案を提出し、衆議院、参議院で審議の上、「国民の祝日法」を改正する必要があります。だからまず、どの議員に話を持ちかけるかが難しいところなのです。たまたま日本山岳会の会員に当時の自民党総裁の谷垣禎一さんがいらっしゃったので、山の日についてご相談をしました。谷垣さんも山好きなので、強いバックアップを得ることができたんです。

 

もともと、日本の自然や環境の在り方への感度が高い議員も多いため、2013年に超党派の『「山の日」制定議員連盟』が設立して、当時720名前後の議員のうち、約110名の人が加盟することになりました。

 

――かなりの規模ですよね。

 

はい。そして、国会では山の日そのものを否定する議員はほとんどいなかったので、国会で祝日の改正案が付託され、質疑や審議なしの賛成多数で衆議院を通過したんです。上手く運びすぎたように感じて、正直なところ、戸惑ったくらいです。

 

――えっ、どうしてですか? 制定までスムーズだったわけなので、喜ぶべきことなのでは?

 

テレビや新聞、ネットもそうですが、国会がもめないと面白がってくれないし、取り上げてくれないですよね(笑)。山の日をPRする観点で見ると、もっとニュースに取り上げてほしかった。認知度が低いのも、それが原因かもしれません。


祝日制定までは、少しでも山の日制定運動の認知度が上がるように、「山の日を考える」といったリーフレットを地方イベントで配布するなどの取り組みをしてきました。最初の祝日を待つ今は、『「山の日」を知ろう』というスローガンを掲げて、なぜ「山の日」が必要なのかをアピールしています。

 

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――ちなみに、山の日はなぜ8月11日なのですか?

 

特に由来などはありませんし、由来がなくてもいいと思っています。僕たちは山というものを見つめ直してほしいだけなんです。例えば、敬老の日は9月の第3月曜日ですが、お年寄りへの感謝を示すことが大切なのであって、その日に由来があるかどうかは、あまり関係がないですよね。子どもの日や成人の日と同様に、ということでしょう。

 

――言われてみれば、その通りです。

 

ただし、祝日の日付を決めるに当たり、議員連盟は、国際労働時間を日本と諸外国で比較して日本人が働き過ぎである根拠を集めたり、休日が増えた際の民間企業や学校教育への影響に最大限配慮したりしています。祝日のない月として6月か8月があったので、その2つから検討しました。

 

――正式に日付が決まるまで、どのくらい時間がかかりましたか?

 

山々が最も輝く季節、そして夏山シーズンを前に、という理由で6月の第1日曜日を提案しました。しかし、どうしても6月でなければいけないというこだわりはありませんでした。一方で、議員連盟は、夏山シーズン中、かつ8月13日から始まるお盆休みにつなげる狙いで、8月12日案を推す声が強かった。

 

一旦は12日に決まりかけたのですが、8月12日は御巣鷹山で起きた不幸な航空機事故の日、つまり慰霊の日に当たるため、祝日の制定は避けるべきだという意見が出ました。これらを再検討した結果、曲折はありましたが、1日早い8月11日を山の日とすることに。そして翌年3月に議員立法での衆議院提出、2014年5月に山の日が祝日として制定されたのです。

 

「海の日」は制定まで30年以上かかったと言われますが、山の日は比較的短い期間で制定されました。国会議員のみなさんの意識の高さに感謝しています。「海の日があるのになぜ山の日がないの?」という単純な問いかけにも説得力があったかもしれません。「山の日」を「海の日」が引き寄せてくれました。短いようで長かった、長いようでアッという間だった、そんな思いです。

 

――お盆休み直前なので、曜日によってはそれなりの大型連休になる年もありそうですね。今日はありがとうございました。

 

本来、祝日はその意義を考える日。今年の8月11日にはぜひ、山というものに思いを馳せながら過ごしたいものだ。


そして、結局のところ祝日がないままになってしまった6月。ビジネスパーソンの休みたい思いを結集し、新しい祝日を作るのはどうだろうか。成川さんによれば、「海や山といった自然を対象とする祝日は世界的にも珍しい」とのこと。ジメジメしてくるこれからの季節をポジティブに受け止めるための「雨の日」なんていいかもしれない。

 

 

(水澤陽介+ノオト)