はたラボ

VRは仕事の現場でどう活用されている? ビジネスシーンの未来予想図

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PlayStation VRを中心にエンタメ業界から広がりを見せるVR(virtual reality:仮想現実)。ゲームであれば、VRヘッドセットをかぶることで360°全方位の景色が広がり、TVディスプレイでは体験できない迫力の3D空間を楽しめる新しい技術だ。すでに体験したことのある人もいるだろう。

 

その一方、VRはビジネスシーンでも活用されているのだろうか。この素朴な疑問を解消すべく、先進テクノロジーを活用したサービスを提供している企業・ナレッジワークス取締役の亀山悦治さんを突撃。亀山さんは1980年代からシステム開発に携わり、現在はVR・ARなどの技術によるソリューション提案などを行なっている。さまざまな業界でのVR・ARの活用事例やVRの未来予測を教えてもらった。

 

閉じた世界のVRと、現実世界に重ねるAR

 

――2016年はVR元年だ」とよく耳にしました。実際にはどういうことが話題になっていたのでしょうか?

 

VRの考え方や業務用の装置は昔からありました。宇宙飛行士が宇宙空間を仮想的に訓練できるようなシミュレーターですね。それが2016年になり、手頃な価格で買える機器が発売されたことが注目された大きな理由です。

 

――VRとは別に、ARも世間的に話題になった時期がありますよね。この違いを教えてください。

 

ARは拡張現実を指します。すでに現実世界にあるものに何らかの情報をプラスしたもので、たとえばゲームアプリ「ポケモンGO」がそうですね。このようなARの技術は2000年代後半からすでにありましたが、当時はまだ実用性が高いものではありませんでした。2011年ごろから技術レベルが向上し、実用化が進んで現在に至ります。

 

 

VR

コンピューター内で、現実に似せた仮想空間を映し出す技術。VRは1960年代に誕生しているため、すでに50年以上の歴史がある。主にヘッドマウントディスプレイという、視界を完全に覆った機器を用いる。


代表的な機器の例:PlayStation VR

AR

カメラで映し出した現実世界の映像や、直接目で見ているスマートグラスに、画像や文字などの仮想オブジェクトを重ねて表示する技術。技術研究はここ20年ほど。主にスマートフォンや、スマートグラスの透過レンズに映像を映し出す仕組みの機器を用いる。


代表的な機器の例:Microsoft HoloLens(ホロレンズ)、Google Glass(グーグルグラス)

 


 ――VRとARにはそれぞれどんなメリットがあるのでしょうか? 

 

頭部に装着するタイプのヘッドマウントディスプレイやメガネ型のスマートグラスを利用する場合、両手を開けた状態で使えるのがメリットの一つです。ほかにもVRやARを業務で利用する際には、以下のようなメリットがあります。

 

<VR・ARのメリット>

  • ハンズフリーで作業できる(スマートグラス利用時)。
  • ネットワークと接続することで、クラウドからマニュアルや操作指示書、動画情報などのデータを瞬時に取り出して見られる。
  • 実体験することが難しい作業を擬似的に何度も体験したり、遠隔地とのコミュニケーションをとったりすることが、電話の場合よりも円滑に行える。
  • 周囲から見られることなく、自分だけが情報を見ることができる。

 

危険な場所などを仮想体験することで、トレーニングや教育訓練に生かせる

 

――具体的にはVR・ARを導入している事例を教えてください。

 

たとえば、機械のメンテナンスが必要な現場や工場などでは、マイクロソフトが開発したスマートグラス「ホロレンズ」やエプソンが開発したスマートグラス「モベリオ」を導入している事例があります。

 

そもそも作業を行う工場や倉庫などでの現場では、その国の母国語に不慣れな外国人もいれば、それぞれが持っている技術のレベルもまちまちです。また、対応する機種のマニュアルが、機械の製造年によって異なることもあります。

 

このような場合、スマートグラスのような装置があれば、必要な情報を音声で検索したり、対象の機械を自動的に認識したりできます。クラウドやビックデータから情報を取り出し、使い方などの情報を伝えてくれるのです。その場で瞬時に見られるため、分厚いマニュアル書を持たなくて済みますよね。また、そもそも操作マニュアルを覚えなくて済むので、教育コストを削減できます。自動車メーカーのフォルクスワーゲングループや航空機メーカーのボーイングでは、すでにこのような仕組みの導入を発表しています。

 

――なるほど。工場以外での活用事例はありますか?

 

東京メトロでは、構造物の維持管理教育でARが使われています。実際に現場へ行くのが難しい危険な場所でのメンテナンス方法や手順を、仮想体験できるようにしています。

 

そのほかにも、業務支援やプロモーション、シミュレーションなどでの活用が有効です。たとえば、キッチンや家といった高額商品の場合は、VRやARでシミュレーションしたうえで購入してもらうことができます。

 

ものづくりの面でいえば、製造前に実物を作る必要がなくなります。たとえば車や機械などの設計の際、今までは模型を作っていました。それがVRであればモノを仮想的に作れますから、模型の製作コストや、説明の際の移動コストがかかりません。さらにそれを3Dプリンタで作れば、模型が作れますよね。商品開発がすべてデータだけで済むようになります。

 

さらに今後はAIやIoTとつながることで、行動や視線のデータを解析してさまざまな課題解決ができるようになるでしょう。

 

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ナレッジワークス取締役の亀山悦治さん

 

VRやARはオフィスに普及できる? モニターがいらなくなる可能性も

 

――現在、オフィスにVR・ARが導入されている事例はありますか?

 

オフィスへのVRの普及はまだまだ難しいと思います。その理由は、PCのモニターが目の前にあるからです。たとえばVRの仮想空間でアバターを使って、遠隔の人とコミュニケーションを取れるようになることが考えられますが、それはスマートフォンやPCでも代替できてしまいます。もちろん、複数の方がバーチャル会議に、その場にいるかのような臨場感で参加できるというメリットはあるでしょう。しかしVRの装置を社員全員に持たせて、効率的かつ効果的に利用できるほどのメリットはまだ見出せません。

 

また、スマートグラス(ARデバイス)を1日中装着して仕事をしてみたという記事が国内外で幾つかありましたが、まだ日常業務での利用は実用的ではないと感じました。そもそも相手のいない状態で使っていてもあまりメリットがありません。スマートグラスやヘッドマウントディスプレイを長時間かけ続けているととても疲れます(苦笑)。将来的には徐々に利用されるシーンも出てくると思いますが、価格面や性能面などからも、日常的に利用するためにはまだまだ乗り越えるべきハードルはいくつもあると感じました。

 

しかし特別な業務のために利用する場合であれば、既に実用レベルまできていると感じます。たとえばスマートグラスを使ったARなら、現時点でも普通のメガネと変わらない見た目になりつつあります。コミュニケーションを行う際には、必要な情報をグラスで確認しながら相手の様子も見えるため、商談などで使えるようになるかもしれません。たとえば相手の表情を画像分析したり、クライアントの趣味趣向に関する情報をスマートグラスの画面に映し出したり。さまざまな情報をハンズフリーで引き出せる時代が来るかもしれませんね。もちろんコミュニケーションで使用する場合は、プライバシーを侵害しない範囲であることがポイントとなります。

 

――もしVRがビジネスの現場で普及したとしたら、どんなことが起こるのでしょうか。亀山さんの予測を教えてください。

 

VRのヘッドマウントディスプレイをかけると、データをビジュアル化できるため、360°の仮想的な無限モニター、あるいは仮想キーボードを表示できるようになります。サブディスプレイを際限なく設置できるイメージです。映画「マイノリティ・リポート」の世界ですね。

 

そこまでいくと仮想空間のなかに同僚のアバターがいるなど空間の制限がなくなり、オフィスに導入するというより、オフィスにいる必要がなくなってくるのではないでしょうか。セカンドライフというインターネット上の仮想世界がありますが、それと同じようにアバターがそこにいることで、時間と空間の制約がなくなります。ネットと通信制高校の制度を活用したN高校でもVRが活用されていますが、そのイメージにも近いですね。

 

最終的にはオフィスの現場ではモニターがなくなり、出社の概念がなくなるでしょう。そこにいる必要すらなくなる可能性も出てくるのですが、そうなると働き方や働くことの定義自体が、ガラリと変わってくるかもしれませんね。

 

(取材・文:山岸裕一 編集:ノオト)

 

 

取材協力:亀山 悦治

ナレッジワークス株式会社 取締役

1987年からオフコン、クライアント&サーバ系のシステム開発に従事。1999年からWeb系システム開発会社に移籍後、主にWebサイト開発のPMを担当。2004年からナレッジワークスにて、新規サービスの企画等を担当。2009年より同社にてAR・VR・MRを使用したソリューション開発、実用化のための企画・提案・アプリ開発を担当。AR・VR・MRについては、一般・企業向けセミナーの講師を年に数回以上実施。AR関連書籍の執筆等、精力的に活動を行っている。著書『 感覚デバイス開発  ―機器が担うヒト感覚の生成・拡張・代替技術』(エヌティーエス)第3編 感覚デバイスが創る未来生活、『よくわかるAR〈拡張現実〉入門 』(創元社)

▼ナレッジワークス

http://hp.knowledge-works.co.jp/

▼亀山ARブログ

http://development.blog.shinobi.jp

 

 

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