はたラボ

算数力がビジネスのカギを握る? 「確率」「平均」「パーセント」の正しい理解と計算法

f:id:pasona_career:20180306144309j:plain

 

「確率」「平均」「パーセント」など、ビジネスシーンではごく当たり前にこういった数値が計算され、企画書などにも明記されている。こういった数字の扱いは簡単だと思われがちだが、実は間違って使われていることも少なくないようだ。

 

具体的にどのようなケースで、計算に関する勘違いをしてしまうのだろう。数学者の芳沢光雄さんに、よくある事例を伺ってみることにした。芳沢さんはAKB48選抜メンバーを決定する「じゃんけん大会」で、確率論からベスト入りの人数期待値を的中させるなど、興味を引くテーマで「算数力」を日々啓蒙している。

 

その「確率論」、間違って使ってない?

 

『このバッターの打率は3割3分3厘です。今日の試合では第1打席、第2打席と凡退しています。確率論でいったら、第3打席ではそろそろヒットを打ちそうですね』

 

プロ野球のテレビ中継で、こういったフレーズを耳にすることがあるだろう。しかし芳沢さんは、この確率の考え方は根本的に間違っていると指摘する。

 

「第1打席と第2打席がアウトだったとしても、次の打席でヒットを打つ確率は3割3分3厘です。サイコロでもそう。5回振って1が出なかったから、そろそろ1が出るだろう……? いえいえ、次に振っても、1が出る確率は1/6で変わりません。中学や高校で学ぶ『同様に確か』という確率の概念は、大人でも意外に間違いやすいものなのです」

 

たとえばプレゼンで企画を提案するとき、「○○の確率で」と言っているのに、このことを知っていないのは恥ずかしい。しっかりと、基本を身に付けておきたいものだ。

 

「年次平均成長率」は「相加平均」ではなく「相乗平均」で

芳沢さんによると、意味を間違われやすい計算に「平均」も挙げられるという。小学校の算数では、「平均とは、対象とするいくつかの数の合計をそれらの個数で割ったもの」と習う。たとえば、5人の児童がいて、その平均体重を求める時などが分かりやすい。では、経済成長を示すときなどに使われる「年平均成長率」ではどうだろうか。

 

たとえば営業利益の年平均成長率で、設立5年の企業が、2年目が前年度比50%、3年目が同100%、4年目が同-25%、5年目が同125%だった企業があるとしよう。これを{50+100+(-25)+125}÷4=62.5%として、2年目から5年目までの4年間の平均成長率を計算するのは明らかな誤りだ。

 

「平均体重を出すときは足し算の発想で考える『相加平均』ですが、年平均成長率の場合は掛け算の発想で考える『相乗平均』を出さなければなりません。ちょっとややこしいですが、成長する対象が期間全体を通して毎年同じ成長率で成長したとして、その期間の最後には(最初から見て)同じ成長になるような成長率のこと。このケースの場合、4年間の年平均成長率は50%になります」

 

<正しい年平均成長率の計算方法>

2年目に50%(1年間に1.5倍) すなわち3/2倍

3年目に100%(1年間に2倍) すなわち2倍

4年目に-25%(1年間に0.75倍) すなわち3/4倍

5年目に125%(1年間に1.25倍) すなわち9/4倍

 

f:id:pasona_career:20180306144750j:plain

 

その「平均」はどの「平均」か? 計算する前に、まずは意味から

 

2006年に「今回の景気拡大は、期間において『いざなぎ景気』を超えた」というニュースが報じられた。ところが、それを伝える新聞記事では「いざなぎ景気」の年平均成長率について「11.5%」「14.3%」という2通りの数字が見られたという。これは誤ったアプローチで「平均」を導いてしまった代表例だ。芳沢さんはメディアを通してその誤りを指摘した。

 

「11.5%は相乗平均の発想で導かれた正しい数字ですが、後者14.3%は相加平均の発想による誤った数字でした。経済ニュースを扱うマスコミでも、こんなミスを犯すことがあります。そのため、各自が「それは正しい数値なのか?」と疑いの目を持つことが求められます。平均の定義や意味をしっかりとつかんでおけば、本質を見極められるでしょう」

 

ちなみに、株価の日経平均と東証株価指数TOPIXもまた違う「平均」だ。どちらも相加平均だが、日経平均は各銘柄の単純な平均であり、発行株数は加味されていない。一方、TOPIXは発行株数を加味した「加重平均」。ビジネスニュースをチェックする上では、「それってどの平均?」と、意識的に数字を見る必要がある。

 

f:id:pasona_career:20180306144851j:plain

 

「1人当たり」で計算し、考えていくことが求められる算数力の時代

 

もう一つ、曖昧なままにされている概念が「比と割合」だ。SPI検査で「食塩水の濃度」に関する問題が頻出することから、濃度を求める公式を暗記した人は多いだろう。しかし、「(比較の)元にする量」と「比べられる量」をしっかり理解しておらず、結果として売上高と原価、原価率の関係性、さらには正価と消費税額、税込価格の関係に不安を抱える人は少なくないという。

 

「『%の意味がよく分からないので教えてください』という大学生は少なからずいます。求め方だけを覚えてきたので、意味を理解していない。結果として、社会人になってから悩むことも多くなるのです。しかし、ビジネスにおける算数力において、『比と割合』の概念が最も大切だと私は思います」

 

芳沢さんがこう力説するのは、現代ビジネスシーンでは『1人当たり』という単位が重んじられるからだ。たとえば、働き方改革でクローズアップされる指標「労働生産性」は、従業員1人当たりの付加価値で計算される。

 

「社員1万人で1000億円の利益を上げている企業と、社員100人で100億円の企業があったとします。今、どちらが評価されるかは自明ですね。全体を見て物事を測る20世紀から、個々の生き方を尊重する21世紀になり、社員1人当たりの利益で企業価値が測られる時代になりました。統計においても、そして個人の意識においても、『1人当たり』の概念が存在感を増しているのです」

 

「自分の仕事は数字と関係ない」と思っていても、数字を意識すると、今までとは違った次元から仕事を俯瞰できるかもしれない。ビジネスのカギを握る「算数力」に今一度立ち返ってみよう。

 

 

(取材・文:佐々木正孝 編集:ノオト)

 

 

取材協力:芳沢光雄(よしざわ みつお)

 

数学者・桜美林大学リベラルアーツ学群専任教授。理学博士。1953年東京生まれ。学習院大学理学部数学科卒業。城西大学理学部教授、東京理科大学理学部教授を経て2007年より現職。算数・数学の面白さや重要性を訴えるべく、啓蒙活動に励んでいる。著書に『かしこい人は算数で考える』(日経プレミアシリーズ)、『数学的思考法―説明力を鍛えるヒント』(講談社現代新書)、『就活の算数』(セブン&アイ出版)など。

 

 

パソナキャリア

転職活動には不安が多いと思います。でも活動を始める前の自己分析がきちんとできていれば、あなたの転職活動はきっとうまくいくはずです。不安に思うことがあったら、キャリアアドバイザーに気軽に相談してください。

▼パソナキャリアのアドバイザーとの面談でキャリアの幅を広げよう