はたラボ

仕事を続けられているのは、 あの時の『気づき』があったから【フリーのデザイナーから、君へ】

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日常でちょっと気になったことを語るブログ「デザインのあてな」を書いているkazuhotelです。


私は現在38歳、フリーランスとしてデザインの仕事をしています。……とはいえ、そんなに甘くはない世界。それでもなんとか続けられている理由の1つは、約10年間勤めた会社での『気づき』のおかげだと思っています。


怒られたとき。
理不尽だと感じたとき。
相手に共感できなかったとき。


いろいろ場面で、私なりの『気づき』がありました。当時は苦しんだものの、振り返ってみれば良い経験だったと自信を持って言える、そんな私の『気づき』をいくつかご紹介します。

1. 共感できないから、その理由を知りたかった。


24歳で小売店に就職。オリジナル商品をこれから開発していくということでデザイナーを募集していた会社に、意気込みだけで運よく採用されました。その時の面接をしてくれたのが、後の上司となる営業部長でした。


勤めてからはひたすら商品デザインを考える毎日でしたが、提案するたびに上司である営業部長からは


「ここの形はもっと〇〇な感じで!」
「これじゃ売れないよ!」


とダメ出し。自信満々だった私は、営業部長の上司に対して「デザインのことなんてあなたには分からないでしょ……」と心の中でよくボヤいていましたが、言われた方向に修正していった商品はしっかり売れていました。


なかなか上司の意見に共感できなかったものの、しっかり結果に結びついている指摘が何に基づいているのかが気になり、その時はなぜか単純に上司の頭の中を知ろうと思いました。上司がどんな経験をしてきて、どんなものを見て、どんな考えに至っているのか? すると、当時の頭でっかちな私には想像もできない理由がたくさん見つかったんです。


「実際に使う機能だけがあればいいわけじゃない!」

それは、使うかもしれない機能にお客さんはワクワクするから。


「売れないと分かっている色も、ラインナップには必要!」

それは、鮮やかな色で悩みながらも無難な色を選ぶといった、買い物としての楽しみ方もあるから。


「おもしろいな……♪」。それが、『気づき』に興味を持つようになったきっかけです。


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もし仮にデザイナーの上司だったら、自分へのアドバイスを疑いもせず、その通りに受け入れていたかもしれません。でも、営業部長からのデザインについてのアドバイスは、生意気な私の性格上、簡単には納得できず、一つひとつを自分の中できちんと消化できるまで教えてもらいました。


そのおかげで、助言をもらったら表面的なことだけを吸収するのではなく、結果的に自分が知らない知識や不足している経験を自ら補うようになりました。


今改めて思うのは、自分と異なる経験を持つ人と一緒になったら、自分には無いものを身に付けるチャンスだということ。同じタイプでは疑うこともなく同調して『気づき』にくいことも、違うタイプだとなかなか共感できないからこそ、無意識に相手のことを気にします。そこから得る些細な『気づき』に、大事なことがたくさん詰まっていたりします。

2. 100個気づけたら、100個はクリアできている。


デザインの勉強といっても何にどう手をつけたらよいか分からなかった私は、上司への提案の場で指摘された点を、とりあえず次までに改善するようにしました。ただただ指摘されるのが嫌で……(笑)。


指摘→改善、指摘→改善……その繰り返し。理不尽だと思ったことも、そんなところを気にするの? なんてことも、とりあえず指摘されないように改善してみたんです。どんなことでもいいからアンテナを張って、特に指摘がない場合も、改善すべき点を勝手に探しました。


そんなことを始めてしばらくたった頃、私のやることに全く興味を持たなかった上司以外のスタッフも、不思議と私の提案に興味を示してくれるようになりました。


相手が気になるであろうポイントを自分で想像し改善していった結果、他の人から見ても良い提案に少しずつ変わっていたんです。100回繰り返したら、単純に100個は相手の気になるところが改善されていますからね。どんなに小さなことでも、1つずつ解消していけば前進するという誰もが当たり前だと思っているような『気づき』でした。


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ただ大事なことは、指摘をクリアすることだけで終わらずに、そこから何を学ぶか? ということです。


あるとき、「A4サイズじゃ小さくて見えない」と指摘をされて、次の日からA3サイズに印刷するように変えてみたことがあります。でも今になって考えれば、小さくて見えないわけはなく、より見やすい形にすることで、こちらの姿勢や意欲を相手に示さないといけないという教えが、その指摘の本質だったのではないかと解釈しています。


他部署のスタッフが好意的に見てくれるようになったのは、提案内容よりもこちらの「見てほしい!」がそれまでよりも伝わったから。


紙の端がほんの少し折れていて怒られたときも、「それぐらいのことで……」と思ってしまいましたが、当たり前のように上司に提案を見てもらっていた当時の私では、見てもらうための礼儀やマナー、姿勢や意欲を伝える重要性に『気づき』ませんでした。

3. 向こう側からの景色を知る。


業界全体が不景気になり、もともと仕事もハードだったため、他の環境を求めて退職する人が増えた時期がありました。残ったスタッフは、手の足りない部署に回されることもしばしば。私は商品開発担当として入社したものの、広報や宣伝業務、店舗設計や現場管理、物流現場、ときには営業にも関わりました。


不慣れなことばかりで、始めの頃は商品開発の担当に早く戻りたいとばかり思っていましたが、あるとき、他部署の仕事をしている自分がボヤいている不満にふと目を向けると、聞き覚えのあるフレーズだということに『気づき』ました。


「あっ、ここの部署の人が全く同じことを会議で言っていたな……」


それ以降、会議でよく反発していた他部署の意見に対しての見方が変わりました。


「この状況ならその意見に至るのも分かるな~」

「あれ? やろうとしていることが違うだけで、目指すところは一緒かもしれない……」


私が他部署に携わった経験は、自分の意見に納得してもらえない理由や、どんなことを基準に物事を考えているかを知るきっかけになり、向こうからの景色は、こちらが見ている景色とは違うことに『気づき』ました。大企業が社員を部署異動させる意味も、きっとこれに近い目的ではないかと思っています。


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ただ、他の景色を知ったその後が一番大事なことでした。


そんな経験をした私は勘違いをして、ある提案で他部署の人たちが煩わしくないように配慮したデザインをしました。それが一瞬で分かった上司は激怒。


「現場はこうした方が作りやすくて……」

「実際に販売するときは〇〇だから……」


と知ったような口で、ただ気に入られたい気持ちや文句を言われたくない心情を繕っていたこと、そして何より、目を向けるところが誤っていることに対してです。


配慮と言いながら、配慮する相手が無意識に変わっていました。お客さんが満足できる商品を作ろうとしているのに、身内が満足する商品を作ろうとしている……。経験が増えてくると、どうしたらスムーズに事が運ぶか考えられるようになります。ただ、それに慣れてしまうと、誰に対して何をすべきなのかを見失ってしまうこともあります。


相手の事情が分かっても、敬意を払った上でこちらの意思をしっかり伝えるべきで、無理難題でも、それがベストな選択であれば、頭を下げて相談すればいいだけの話でした。敬意を払わずに押し付ければ、相手が怒るのは当たり前ですが、こちらが事情を理解した上でお願いしていると分かれば、相手は話を聞いてくれます。


相手の立場からも見て、こちらの立場から伝える。それができるようになったのは、恥ずかしながらだいぶたってからでしたが、この『気づき』があるおかげで今があると言っても過言ではありません。

4. 表に出ているものが本音とは限らない


あるとき、当時私が苦手としていたAさんとチームを組むように上司から指示を受けました。会社にはいろいろタイプの人がいるということは頭では分かっていながらも、「相性がわるいなぁ……」とボヤいていましたが……。


私はとりあえずAさんの意見を聞いて、それをふまえて提案。すると、言われた点はクリアになっているはずなのに、その提案が不満だと言われました。


「えっ? なんで?」


その後も同様なことが続き、どうしたらよいか迷っていたとき、仲の良いスタッフからAさんがどんなことをやりたいかを聞いてビックリ。話し合いで聞いた意見とは違う内容だったんです。もちろん、私のヒアリング能力が低かったことも理由の1つですが、その話を聞いて、表に出ていることが本音とは限らないことに『気づき』ました。


相手の表面的な態度や行動に隠れた本音があることを知ってから、少しずつ深く話ができるように。手段が異なるだけで思うところは自分と同じだったり、行き過ぎた考えでも、冷静に見たら向かう方向は合っていたり……。私も主張が強いので衝突も度々ありましたが、本音で語り合うようになった結果、2人とも満足できる提案に至りました。


それまでも「相手の言う通りにやったのに却下された」なんて不満を漏らしていましたが、今考えれば、ただ単に相手の本音をすくいとれていなかっただけでしたね……。


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きちんと周囲の賛同を得て進めた企画だって、うまくいかないこともありました。賛成した人全てが前向きに取り組むわけではなかったからです。


「良い案がないので、その企画で妥協します」

「この人ならとりあえず賛成しておこう」

「自分の意見が通るわけじゃないし……」

「この会議を早く終わらせて、仕事に戻りたい……」


表に出ているものが本音ではない……。もちろん、みんなの意見を取り入れることはできませんし、好き勝手にやっていいわけではありません。それでも、実際に運営するスタッフがテンション高く前向きに取り組める企画の方がいい。私はみんなに「やってもらうこと」をみんなが「やりたいこと」にする工夫も同時に学びました。


質問されたから出た意見と自分から発した意見は微妙に違うし、宿題と自主勉強では身に付き方がまるで違うのと同じように、やらされることよりも、やりたいことの方が結果が出やすいという当たり前の『気づき』。


あるとき、お客さんからよく言われることを販売スタッフが私に教えてくれました。それを新商品に反映したところ、とてもよく売れました。後から知ったことですが、その大半を売ったのはそのときの販売スタッフ。自分が気づいたことが反映された商品に自然と愛着がわき、たぶん自分でも無意識にお客さんへ勧めていたに違いありません。

5. 積み上げたものは一度リセット


入社して3年ほどたったとき、成長を実感して調子に乗っていた私は、あるとき新しい商品を作りました。……が、鳴かず飛ばず。それまでの経験とロジック、マーケティングでは少なくとも大失敗はないはずなのに、結果は大失敗。本当にショックでした。


そこで、理屈でどれだけ成立していても、成功するとは限らないことに『気づき』ました。今思えば、上司はあえて口を出さずに失敗を経験させたのでしょう。仕事では、最低2回は挫折を経験しないとダメなんて言われていますが、その1回に入るぐらいの挫折で、絵に描いたように積み上げてきたものが崩れていく感覚になりました。


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それ以降、私は失敗したときにリセットするクセがつきました。


たとえ崩れても、それまでの経験や知識が無くなるわけではありません。積み上げ方がわるかっただけで、また違う積み方をすればいいだけ。途中まで積み上げたものを崩すのはなかなか勇気のいることですが、そうすることで、もっと高く積めるようになる可能性があります。


良いアイデアだと思って進めていたものが途中でダメだと分かっても、良い面だけを見てそのまま進めるなんてことも恥ずかしながらありました。残念ながらそれでは高く積み上げられるようにはなりません。それまでに費やした時間が惜しい気持ちはとてもよく分かりますが、何か問題があったときに、一度リセットしてあらためて積み上げていくことは、本当に大事なことです。


積み上げたものが崩れても、また積み直せばいい。大きな失敗から学んだ『気づき』でした。この経験が私にとってのターニングポイントかもしれません。

§ § §

同じ経験をしているはずなのに、同僚がどんどん前に進んでいって、いつの間にか見えなくなってしまったり、同じ本を読んでいるはずなのに、そこから得ることに大きな差があったりするのを目の当たりにしてきました。何より、デザインを学ぶつもりで入社して、営業部長が上司になるとは思っていませんでしたし……。


不安で仕方がなかった私がやってみたのは、『気づき』を大事にすること。勘違いも含めて、何かをそこから得ようとする姿勢が大事だと今でも思っています。そのおかげかどうかは分かりませんが、たくさんの学びと経験ができ、結果的にビジネスマンとしても成長できたような気がします。


今の時代、同じ会社に長く勤めることが必ずしも正解とは限りませんし、若い頃にいろいろな経験をすることを私はオススメしています。それと同時に、1つの環境でも学びは無限にあると思っています。「ここに居ても……」と不安に思ったことも度々ありましたが、どんな環境でも『気づき』を意識することで、いくらでも学ぶことはできると自信を持って伝えたいです。


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余談ですが、
「師匠はどんなデザイナーですか?」と聞かれたときには、いつも笑顔で「バリバリの営業マンです」と答えています(笑)。


著者:kazuhotel(id:kazuhotel)

 

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