はたラボ

電子タグMESHを使えばIoTがもっと身近に感じられる! 実際にオフィスで役立ててみた

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前回のインタビューで、IoT(モノ・コトのインターネット化)によって世の中がより便利になってきたことは少しずつわかってきた。その一方で、「プログラミングを理解しないと直接IoTに関わることはないし、さほど身近に感じられない」という気も……。

 

しかし、ここで「IoTを身近に感じられる商品がある」という情報をキャッチ。ソニーの新規事業創出部で開発され、2015年から一般向けで発売している電子ブロック「MESH」だ。

 

MESHは自分で簡単に電子工作やプログラミングができ、専門知識がなくてもIoTを活用した仕組みが実現できるらしい。一体どういうものなのだろうか? 同商品を開発したMESHプロジェクト リーダー萩原丈博さんに話を伺った。

 

「洗面所に目覚ましを止めるスイッチをつけたい」

  

――改めて、MESHがどういうものなのか教えてください。

 

MESHはブロック形状のMESHタグとMESHアプリを使うことで、日常生活の中にデジタルな仕掛けを誰でも簡単に作ることができる商品です。MESHタグには色が光る「LEDタグ」や人の動きを検知できる「人感タグ」、明るさの変化を検知できる「明るさタグ」など、現在7種類を用意しています。

 

使い方は簡単です。アプリをダウンロードして、アプリ画面上のタグのアイコンを指でつなぐだけ(実際のタグとアプリはBluetoothで連携)。たとえば「ボタンを押す」→「LEDが点灯する」→「カメラで撮影する」という仕組みは、アプリ上でそれぞれのアイコンをドラッグ&ドロップしてつなぐとすぐに作れます。

 

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こちらがアプリ画面。左から「ボタン」「LED」「カメラ」のアイコンをつなぎ合わせると、それぞれが実際に連動する。

 

 

MESHタグだけでなく、タグが感知した際に、スマホに通知したりメールを出したりなど、他のソフトウェアとの連携も可能です。アイディアと組み合わせによって、さまざまな仕組みをつくることができるのです。

 

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上記は人感タグを使って、人が近づいたら赤いランプ、離れたら青いランプが点灯するという仕組みになっている。

 

 

――MESHはどのような背景から生まれたのでしょうか。

 

私はもともとソフトウェアのエンジニアをしていて、ハードウェアの開発にはあまりなじみがありませんでした。スマホの世界なら、アプリをインストールしてソフトウェアの面から自分でいろいろ変えられますが、日常生活における開発はハードウェア自体を変える必要が出てくるケースもあります。

 

しかし、ハードウェアを変えるには、電子工作やプログラミングの技術が必要で、初心者が手を出すのは難しい。「簡単にできたらもっといろいろな人が自身のアイディアを実現できるのでは」「紙とペンで気軽に書くように、アイディアを形にできるなら、もっといい世の中になるのでは」と思ったのが、MESH開発のきっかけです。

 

――萩原さんにも「こんな道具があったらいいな~」と思われたものがあったんですか?

 

目覚まし時計ですね。朝になって目覚まし時計がなっても、いつの間にかアラームを解除して二度寝してしまうことってありますよね。私自身、きちんと起きるためにも「スヌーズボタンだけが離れた洗面所にあればいいのにな」と考えていました。洗面所にあれば、そのまま起きて顔を洗えば二度寝はしないので(笑)。実際に、そういう目覚ましが販売していないかも探しましたが、ありませんでしたね。

 

――MESHは日常を便利にするための道具として作られたのですね。一気に商品に対して、親近感がわいてきます。商品の対象はどんな人ですか?

 

もともと、趣味でものづくりをする方を想定していました。しかし、テストを重ねるうちに、「ものづくりの心は誰でも持っているものだ」と気づいたんです。

 

せっかくいいアイディアを持っていても、自分が何かを作れると思わない人は少なくありません。それだけ、電子工作やプログラミングは知らない人にとって難しくてハードルが高いんです。でも、そういう方がMESHに触れて「これなら自分でも簡単にできる!」とわかると、途端にそれまで持っていたクリエイティビティやアイディアがぶわっと噴き出てきて、いろいろなものを作りはじめます。なかにはMESHに出合う前と後で行動が変わった、という声も聞きました。

 

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MESHプロジェクトリーダーの萩原丈博さん

  

――実際の使われ方で、想定外だったことはありますか?

 

ペット関係ですね。「人感センサー」を使って、ペットのおトイレのゲージにタグを設置することで、いつ・何回行っているのかを記録するために使われた方がいました。単純にMESHを開発している人の中でペットを飼っている者がいなかったのもあり、これはまったく想定できなかったですね。

 

――当人の立場にならないとわからないニーズもありそうですね。発売されたからちょうど2年間経ち、周りの反響は変わってきましたか?

 

2年前に製品を出したときに比べると、IoTの認知度は変わってきました。以前よりも関心のある方が増えたのではないかなと思います。

 

――なるほど。最後に今回ご相談がありまして……。MESHを使って何かうちの会社が便利にならないかなと思ったときに、シュレッダーのゴミが満杯になるのを教えてもらえる仕組みができたらなと思ったんです。シュレッダーの紙くず入れには小窓がついているんですけど、ここをのぞくことってほとんどなくて。このボックスが満杯になるとランプが付くので開けるんですけど、あまりにパンパンになるとうまくゴミが取り出せなくて……。どうにかMESHで解決できないでしょうか?

 

そうですね。いくつかやり方があると思います。たとえば、シュレッダーはゴミが底から溜まっていきますよね。「明るさタグ」を使えば、明るさを判別する以外にも、そのセンサーの前がふさがっているかどうかがわかるんです。なので、そのケースの中に入れて、ある高さまで屑がたまってきたら、通知するという方法はいかがでしょうか。

 

――こんなにすぐに解決方法が見つかるなんて……。さっそく試してみます! 本日はありがとうございました。

 

「明るさセンサー」を使って、オフィスのシュレッダーをIoT化しよう

 

会社に戻ると、すぐさまシュレッダーのIoT化を実践することに。

 

<タグの設置作業>

 

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こちらが今回の悩みの種のシュレッダー。本体手前部分がゴミ箱になっていて、そこに小窓はついている。しかし、なかなかこの部分を覗かないので、気付くとついゴミがたまっていってしまうことも……。とはいえ、いちいち開けて中身を確認するのは面倒な作業だ。

 

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そして、こちらがMESHの「明るさタグ」(6,980円)。このタグでは、周囲の明るさが指定した範囲内に変化すると通知したり、タグのすぐ目の前にモノがあるかどうかを感知することができる。

 

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まずセロテープで固定して、実際に稼働できるかどうかを試してみよう。黒い部分がセンサーになっているため、そこにセロテープが被らないよう気をつける。

 

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タグの電源は内蔵リチウムイオンバッテリーなので、1ヶ月ほどはバッテリーが持つらしいが、いずれ使っているうちに電池が切れてしまう。そこで、常に給電できるよう、小窓を外してケーブルを通すことにした。

 

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開けた小窓からコードを通して、シュレッダーのケース内側にセンサーを張り付けた。ケースの内壁に凹凸があったので、これを利用してしっかり固定。萩原さんによると、デザインは、見た目はもちろんのこと「貼りやすい・入れやすい・置きやすい(どの角度でも置ける)」ことを重要視した結果の形状だそうだ。

 

<アプリの設定>

 

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ハードの取り付けが終わったら、MESHアプリを設定しよう。アプリを立ち上げたら、まずは設置したタグをBluetoothで接続する。 

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 接続できたら、方眼紙のような画面上に使いたいタグのアイコンを指でドラッグ&ドロップする。さらに、そのアイコンと連動してどんな操作をしたいのかをチョイス。今回はメールと接続したが、ほかにも音を鳴らしたり光らせたりフェイスブックと連動したりすることも可能だ。

 

続いて、左図のようにアイコン同士をつなぎ、どういうしくみで作用させたいかを設定する。今回の場合は、「明るさタグ」の設定から「ふさがれたら」というアクションを選択。タグがふさがれ、センサーが反応したら「シュレッダー」という件名で「シュレッダーが満杯になりそうです」という内容のメールが届くよう設定した。

 

 

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これで準備完了! さっそく実験を開始してみよう。ちゃんと反応するのか確かめるため、溜まっていた不要の紙をどんどんシュレッダーにかけていく。すると約5分後、スマホのアラームが鳴った。

 

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メールを確認すると、登録していたアドレスに通知メールが無事到着! 1回目で成功するとは思っておらず、あまりにあっさりIoTを体験してしまったため、ちょっとびっくりしたかもしれない。

 

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ケースの中をチェックしてみると、こんな様子だった。黒いセンサーのラインまでシュレッダーのゴミが溜まっている。

 

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さらにグーグルスプレッドシートと同期すれば、どのタイミングでセンサーが反応したか、自動で記録することが可能になる。

 

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現在、公式サイトには「ティッシュの残量が分かる装置」や「退社時の天気と連動する傘忘れ防止」など、利用者からのさまざまな作り方(レシピ)が200種類以上アップされている。それを参考にしながら、試行錯誤を重ねてつくってみるのも楽しそうだ。

 

今回の実験を通じて思ったのは、プログラミングやITに苦手意識を持っている人の方が、きっかけがあればIoTの世界にはまってしまうもしれないということだ。テクノロジーに苦手意識を持つことなく、「もっとこうだったらいいのにな」という素朴な疑問や不満をフックに、MESHで新しいアイディアを考えてみては?

 

(松尾奈々絵/ノオト)

 

取材協力:萩原丈博さん

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ソニー株式会社 新規事業創出部 I事業室 統括課長

学生時代、コンピュータサイエンスとアート、デザインに関する分野で活動。2003年ソニー株式会社入社。So-netなどでネットワークサービスの企画・開発に従事。2011年-2012年、スタンフォード大学訪問研究員。米国・西海岸シリコンバレーでの滞在経験を経て、2012年に社内スタートアップMESHプロジェクトをスタート。MESHはMake、Experience、Shareの略で、プログラミングや電子工作の知識がなくても誰でも簡単に楽しく「あったらいいな」を形にできる世界を目指している。

 

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