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【イベントレポート】6月10日(土)にパソナキャリア×リクルートキャリア主催の女性向けセミナー「海外最新研究から学ぶ、自分らしさとリーダーシップの両立」を開催いたしました。

  • お知らせ
2018.11.13

6月10日(土)に株式会社パソナ パソナキャリアカンパニーと株式会社リクルートキャリアの共同主催による「海外最新研究から学ぶ リーダーシップと自分らしさの両立」女性向けセミナーを開催しました。
本セミナーでは、株式会社Warisでリクルートコンサルタントを担当する小崎亜依子さんによる「自分らしいリーダーシップのあり方」についての講演のほか、現在リーダーシップを発揮して第一線で活躍されている女性たちのパネルディスカッションも行われました。当日の様子をご紹介します。

「自分らしいリーダーシップのあり方」とは

小崎さんは金融業界で働いたあと、留学や出産のために5年ほど仕事から離れられ、コンサルティングなどを行う総合サービス企業へ再就職。コンサルティング業に勤めていたものの、「もっと企業の内側から体制を変えていきたい」と現在の会社へ転職されました。「女性の働き方に選択肢がもっと増えてほしい」という思いから、さまざまな活動をされています。今回は、小崎さんが翻訳を担当された「女性が管理職になったら読む本」(ギンカ・トーゲル/著 日本経済新聞出版社)をベースに、なぜ女性はリーダーシップが発揮しにくいのかを、海外の最新研究も交えながらお話しいただきました。

女性がリーダーシップを発揮できない理由とは?

「現在の日本企業において、女性管理職の比率はわずか10%。『女性活躍推進法』などで、女性の管理職を増やして行こうという動きはあるものの、『私たちが管理職になることで、いったいどんなメリットがあるの?』と疑問視されている女性も多いのではないでしょうか」と小崎さん。
確かに女性が率先して手をあげ、先陣を切って物事を進めていく、というイメージはあまりないかもしれません。しかし、「女性管理職が増えることで、女性にはたくさんのメリットがある」と言います。

「女性のリーダー比率が低いうちは、女性の意見=マイノリティの意見として捉えられてしまうことが多いんです。しかし、比率が35%を超えると、『女性の意見』から『個人の意見』として捉えられるようになると言われています。つまり、女性のリーダー比率が増えることで、女性の意見はマイノリティの意見としてではなく、『個』の意見として認めてもらえるようになるんです」

それでは、そもそもリーダーとは何なのでしょうか。小崎さんは、「リーダーとは必ずしも管理職であるわけではありません。どんな業種にも必要な人材で、仕事において進むべき方向を指し示してくれる人、周囲を巻き込んでいい仕事ができる人」と定義しています。さらに、女性ならではの特性がリーダーシップを阻んでいるとも。これは、「無意識バイアス」と呼ばれるものが影響しているそうです。

「無意識バイアス」とは、その名の通り、根底にある無意識の偏見のこと。「男性はこうあるべき」「女性はこうあるべき」という作り上げられたイメージが、社会には強くあり続けています。また、個人差はあれど、男性も女性もそのイメージから逸脱してはいけないと、常に心のどこかで思っている部分もあります。
さらに、「『男性はこうあるべき』というバイアスと『リーダーはこうあるべき』というバイアスは、およそ一致するのですが、『女性はこうあるべき』というバイアスと『リーダーはこうあるべき』というバイアスは必ずしも一致しません」と小崎さん。
具体的には、男性らしい特性として「キャリア志向」「好戦的」「積極的」「ビジネスセンス」といった自己成長や達成に関する特性が多くあげられますが、これらはそのまま「リーダーらしい」特性へスライドできます。一方、女性らしい特性として「優しさ」「子どもへの関心」「周囲への気遣い」「友好的」など他者との協調や親密に関する特性があげられますが、これらは「リーダーらしい」こととはあまり関係がありません。

「『女性は優しくて思いやりがなくてはならない』と思い込んでいる方は多いのではないでしょうか。もしくは『女性だから~しなければならない』という教育を受けてこられた方もいるのでは。こうした背景が、女性が自信を持ちづらい、ひいてはリーダーシップを積極的に取ろうとしないことへ影響していると考えられています」

さらに、「女性はとても慎重な人が多い」と言います。そのため、ビジネスシーンでも、何かプロジェクトを打診された時に、「自分はこのプロジェクトを100%、もしくはそれ以上の成果をあげられるか」とためらってしまうのだそう。

「女性は自身を過小評価しがちです。また、『結果を出せば、おのずと評価は付いてくるだろう』と積極的な自己アピールをためらう傾向にあります。さらに、評価されてもいまいち自信が持てず、『運が良かった』『周囲に恵まれていた』と自分の功績とは思いづらい面があります」

女性こそ、今まさに求められているリーダーである

無意識バイアスによる女性の特性が、リーダーシップの障害になると言われる一方で、「これからの社会には女性のリーダーシップが求められている」と小崎さんは言います。

「リーダーシップは『交換型リーダーシップ』と『変革型リーダーシップ』の2つに分けられます。交換型はいわゆる『アメとムチ戦法』の従来型リーダーシップ。これは、競争が激しく、新しいリノベーションが求められる現在の社会では、効率が悪いとされてきています。そこで今、注目を浴びているのが『変革型リーダーシップ』。メンバーのやる気を引き出し、自主的に動くように促すリーダーシップのことで、リーダーには、信頼やモチベーション、刺激、コーチング能力などの資質が問われます」

この「変革型リーダーシップ」こそ、女性が得意とするものだそうです。

「『人の上に立つのは自信がない』と思うかもしれませんが、時代が求めているのは女性の特性を活かしたリーダーシップです。とはいえ、女性だからすべてOKだというものでもありません。同時に、『自分らしいリーダーシップとはどんなものか』を考えることも必要です」

自分らしいリーダーシップと言われても、急に理解することは難しいもの。そこで小崎さんからは、「自分らしさ」を考える上でのヒントを教えていただきました。それは、「『自分の性格を鍛えること』と『どんな性格でも良い面と悪い面があることを理解すること』」だと言います。

「リーダーシップにはさまざまなスタイルがあります。『上司の真似をしてみよう』と無理をする必要はありません。むしろ、真似ばかりしていると、『自分の言葉でしゃべっていない人』として、メンバーはついてこなくなるでしょう。大切なことは、楽な場所にとどまらないこと。自分の中にある価値観や実現したいビジョンなどを考えて、そこへ向かっていくことで『自分らしいリーダーシップ』が発揮されてくると思います」

キャリアを進めていくうえでのアドバイス

「変革型リーダーシップ」は女性の特性によるところが大きく、さらに、社会も女性の推進を後押ししています。自分らしさを発見しながら日々成長していくことが、キャリアアップへの第一歩なのではないでしょうか。
最後に小崎さんからキャリアを進めていく女性たちへ、自分らしさの見つけ方や、ワークライフバランスにつてのアドバイスをいただきました。

「慎重派が多い女性は、何かを始める時に、ロールモデルを探す傾向があります。しかし、完璧なロールモデルは存在しません。ロールモデルを探すのではなく、周囲の人の中で、いい部分をピックアップして吸収するのがいいと思います。そこから、どんどん自分のロールモデルを構築していくことができます。また、女性はキャリアを考えた時に、それ以外の部分が影響を与えることがとても多いです。これは、自分がいくら頑張ってもコントロールできない部分ですから、自分の置かれた状況で、ベストを尽くすことを第一に考えましょう。自分を解き放って、前進してください。自分をおさえているのは、案外自分自身なのかもしれません」

リーダーシップを発揮する女性たちの「自分らしさ」とは

第二部は、すでに企業の中でリーダーシップを発揮して、第一線で活躍されている女性たちによるパネルディスカッションが行われました。参加いただいたのは、アビームコンサルティング社の織田美穂さん、神戸製鋼所社の小倉聖子さん、スリーエム ジャパン社の宮下有希さん、リクルートライフスタイル社の小沢友希さんです。司会はパソナキャリアの岩下純子が務めました。

――まずは皆さまの会社やご自身の自己紹介をお願いします。

織田:アビームコンサルティング社は、いわゆるコンサル業界。ハードワークのイメージがあるのではないでしょうか。しかし、弊社は多くの女性が働いており、女性比率は25%に達しています。良い意味で男女平等が保たれている会社ですね。私はその中で、公共ビジネスユニットを担当しています。

小倉:神戸製鋼所はBtoBビジネスですし、なかなか聞き慣れない会社かもしれません。また、男性が多い会社でもあります。しかし、自由な風土で自然体で働いている女性が多いのも事実です。私は機械事業部門を担当しています。

宮下:私は、看護師から「もっと医療を学びたい」とイギリスの大学へ留学して、結果的にスリーエム ジャパンへ入社しました。弊社は多様性を受け入れる文化がありますね。現在は、マーケティングと学術を兼任しています。

小沢:私ももともとは教師になるのが夢でした。その前に、それ以外の会社を知っておきたくて、3年半の契約社員として働き始めたのがきっかけです。現在は営業組織のグループマネージャーへ登用されました。

意思決定のプロセスについて

――今現在、第一線でご活躍されている皆さんですが、それぞれにターニングポイントがあったかと思います。その時には、どんなことを大切にして、どんな価値観で意思決定をされてきましたか?

織田:よく、「(昇進の打診に対して)あんまり悩まないで決めたのでは?」と言われるんですが、それなりに悩みましたね。特に、シニアマネージャーへ登用される時にはすごく悩みました。

――どんな悩みだったのでしょうか?

織田:仕事の内容よりも、昇進していくことで、メンバーによく思われないのでは......と不安になりました。それで夫に相談したところ、「他人はあなたのことをそんなに見ていないんじゃない?」と。それで肩の力が抜けて、やってみようと一歩踏み出すことができました。

――女性ならではの悩みですね。小倉さんは、神戸から東京への転勤を経験されていますが、いかがでしたか?

小倉:結婚も出産もあまり悩まなかった私ですが、転勤だけはかなり悩みました。一度も訪れたことのない土地に、子どもと夫と一緒に行くわけですから。でも、何かを選択する時は「簡単なほうより難しいこと」を選ぶようにしているんです。そこで、「もしダメだったら戻ってくればいい」と思い切って東京への転勤を決めました。思った以上に大変でしたけど、自分のキャリアにはいい影響がありましたね。

――皆さん行動力がありますけど、特に宮下さんは仕事を辞めて留学までされていますよね。どんなことを思って留学を決めたのでしょうか。

宮下:私は基本的に、「行動しないと分からない。まずはチャレンジしてみること」がモットー。大学編入の挑戦もそれまでの看護師の仕事から、医療を体系的に学びたかったからなんです。編入にあたり、英語が必要になって、それなら海外へ行けば習得できると。とにかく、やってみることです。やってみてダメだったら、諦めもつきますし、何らかの行動をしていれば何らかの道は開けます。

――現在のスリーエム社では、英語も使用されて仕事されていると伺っております。入社するために英語を習得したわけではないけれど、結果的に自分の武器になったと。
小沢さんは、グループマネージャーをされていますが、それまでに悩んだこともかなりあったのでは?

小沢:グループマネージャーへ登用される前に、一気に10名のチームメンバーが辞めてしまったことがありました。この時は相当悩みましたし、トラウマです。昇進の打診がかかった時も、「私はチームを壊すのでは? 前任者のようにできるのか?」と相当悩みました。

――それは想像以上の困難だったかと思います......。どうやって解消されたのでしょうか。

小沢:周囲のスタッフに、自分の強みや課題などをとにかく聞きました。そこでたくさんの助言やアドバイスをもらうことができたんです。そこで、やってみないと分からないし、再挑戦してみようと思えるようになりました。

「自分らしく働く」ために心がけていることは

――女性が自分らしく働くために、必要なことはどんなことでしょうか。具体的に心がけていることを教えてください。

宮下:スリーエムには、「汝、アイデアを殺すなかれ」という言葉があります。この言葉通り、思ったことは自由に言える環境です。ですから、我が社で自分らしく働くためには、やりたいことをやること。また、自分がどういう仕事をしたいのかを周囲へ積極的に発信すること。これが「自分らしく」、つまり「楽しく」働くポイントだと思っています。自分らしさを保ち続けることは、強みとして周囲へ理解されることでもあります。

小倉:私は、ルーティンより新しいことをやっていきたいタイプなので、現在やっていることでも、より良くなるように改善点などを常に考えながら仕事をしています。

――神戸製鋼所は男性が多い会社ですが、発言やアピールで気を付けていることはありますか?

小倉:女性が少ないことを逆手に取っている部分はありますね。男性と同じ発言をしても、言葉選びさえ気をつけていれば、角が立たないことって多いんです。でも、自分の意見はたとえ喧嘩になったとしても、はっきり言うようにしています。主張していけば、個性として認めてもらえますから。それに弊社は自由な社風なので、やりたいことを否定されるということはありません。

リーダーシップにおいて心がけていること

――織田さんと小沢さんは、現在管理職として働いていらっしゃいますが、リーダーシップにおいて心がけていることはどんなことですか?

織田:まずは、管理職であってもなくても必要なことは、相手の立場に立って聞くことと共感すること。自分ひとりで解決する仕事はありませんから、周囲と協調を図ることは大切ですね。もうひとつは、多様性の尊重です。今は生き方が多様化している時代ですから、自分の想像を超えていることはたくさんあります。それを認識して、その人の生き方、働き方を尊重しながら仕事を進めていくリーダーシップが大切ではないでしょうか。

――しかし、意見が合わなくて衝突することもあるのでは?

織田:もちろん受け入れるだけではダメです。自分と価値観が違うということは、言葉を選びながらきちんと伝えます。ささいなすれ違いが、結果的に大きくなってしまうこともあるので、小さなことでも意見のすり合わせは大事。どっちが正しいということではなく、その違いから、じゃあどう仕事をしていけばいいかという話し合いをしています。

――小沢さんはいかがでしょうか?

小沢:以前、メンバーが全員辞めてしまった理由が、私が指示しか与えていなかったからだと気付いたんです。そこで、指示を出すだけではなく、考え方を共有するようにしました。共有しておけば、何か起きても応用力がきくんです。メンバーからこうしたい、ああしたいという要望が出てきたら、しっかり話し合いをして、それが実現できるものなのかを将来を見据えながら一緒に考えます。おかげでとてもいい組織が作れました。それまでには、自分のできない部分に直面して、ストレスもありましたが、組織と自分の成長には欠かせないことだったと思っています。

自分らしく働く女性へメッセージ

――それでは最後に皆さんから、自分らしいキャリアを開拓していく女性たちへ、メッセージをお願いします。

織田:今日参加させていただいて感じたことは、大きい悩みや小さい悩み、それぞれ皆さんが同じように葛藤されていること。ケースバイケースかもしれませんが、自然体の中に志がある状態を継続して、これからも働いていきたいという思いが強くなりました。同じ女性同士、これからも一緒に頑張っていきましょう。

小倉:女性にはたくさんの働き方があります。ペースダウンしないといけない時や、キャリアを考える時、さまざまです。大切なのは、自分らしく、枠にとらわれずにやりたいことをやる。それが女性にとって、良いことではないでしょうか。また、たくさんの女性がそうやって働けるといいなと思います。

宮下:小さなことからでも、交渉して実践していけば(女性の管理職比率は)35%になると思います。私が管理職に登用された時、「この会社にはロールモデルがいない」と思ったことがありましたが、みんな同じではないので同じロールモデルなんていないんです。小崎先生の話をきいてそれで良かったんだって思いました。(この後の座談会で)皆さんの思っていることや感じていることをぜひ聞かせてください。

小沢:女性の管理職が少ないということは、逆に伸びしろがあるということです。それぞれ業種や立場は違いますが、一緒に仕事を頑張ってキラキラした女性になりましょう。

この後は、参加者と登壇者による座談会が行われました。女性ならではの悩みや、職場では言いにくい悩みなど、たくさんの質問や相談が飛び交っていました。

ご登壇いただいた小崎様、織田様、小倉様、宮下様、小沢様、ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。