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転職時に退職金はいくらもらえる?退職給付制度の仕組みと種類

転職時に退職金はいくらもらえる?退職給付制度の仕組みと種類

勤めていた会社を退職する際、その会社に退職給付制度があり、勤続年数などの条件を満たしている場合には、退職金を受け取れます。退職金が支給されれば、貯蓄の一部にしたり、転職活動中の生活資金に役立てたりできるでしょう。 では、実際にはいくらくらいもらえるのでしょうか。 今回は、退職給付制度の種類や仕組み、転職時にもらえる退職金の金額、転職前に知っておきたい注意点などについてご紹介します。

退職給付制度の仕組みとは?

退職金は、従業員が定年退職などを迎え、職業生活を引退した後の安定的な生活を保障することを目的に支給されるものです。また、退職給付制度を従業員への賞与や報奨金、慰労金として位置付けている企業もあります。

厚生労働省の平成25年の調査によると、退職給付制度がある企業の割合は全体の80.5%で、企業の規模別に見ると1,000人以上の企業で92.3%、300~999人の企業では91.8%、100~299人の企業では84.9%、30~99人の企業では77.6%と、規模が大きいほど退職給付制度を設けていることがわかります。

公務員の場合、退職者には「退職手当」を支払うことが法律で定められていますが、民間企業の場合は退職金の支払い義務はありません。退職給付制度は、企業が任意で定めることのできる制度です。しかし、就業規則などで退職給付制度について規定している場合、退職金の支払いは経営者の義務となります。

退職金は、所定の手続きを行ったうえで受け取ることができます。受け取った退職金は「退職所得」となるため、所得税と住民税がかかりますが、195万円以上の退職金を受け取った場合は控除の適用が可能です。
また、退職金規定のある企業でも、懲戒解雇などの場合は一般的には退職金は支払われません。

退職金の種類

企業によって給付される退職金の種類は異なります。退職金のなかには、受け取り方法や期間、掛け金などを選べるものもあります。

●退職一時金

退職一時金は、退職時に一括で全額支払われる退職金です。企業の退職金規定や勤続年数などによって、受け取ることができる額は異なります。
退職一時金の場合、受け取る金額が大きいほど、税制優遇も大きくなるというメリットがあります。在籍年数が短いと、受け取れる金額は少なくなるため、勤続年数は長いほうが有利です。

●前払退職金

前払退職金は、本来、退職時に受け取る退職金を、在職中から給与や賞与に上乗せして受け取ることができる制度です。前払退職金制度を導入している企業の多くは、退職一時金や確定拠出年金との選択制など、自分で受け取り方法を選べるようにしています。
中途入社をした人も、在籍中から受け取ることができるというメリットがある反面、上乗せされた前払退職金は給与所得とみなされるため、支払う税金額が高くなるというデメリットがあります。

●中小企業退職金共済

中小企業退職金共済は、国が支援する独立行政法人が運営しており、中小企業を対象とした退職給付制度です。中小企業退職金共済に加入している企業の従業員は、任意で毎月の掛け金の額を決めることができます。条件を満たしていれば一括、分割のどちらかの支払い方法を選択でき、掛け金と納付月数に応じた退職金が支払われます。
外部機関で退職金の積み立てを行うため、万が一、企業が倒産した場合でも退職金を受け取ることができます。しかし、納付月数が11カ月以下の場合は、退職金は支払われません。

●退職年金

国民年金など加入が必須となっている年金制度とは異なり、企業が任意で導入する制度です。「企業年金」とも呼ばれ、退職後は一定額が年金として支給されます。企業の中には、退職一時金制度と退職年金制度を併用しているところも多くあります。
退職年金には、支払い額や期間を企業によって定めている「確定給付年金」や、自分で受け取り期間や支払い方法を決めて資産運用を行う「確定拠出年金」などがあります。

いくらもらえる?退職金の相場

一般的な退職金の相場をご紹介します。企業が定めている退職給付制度の内容や在籍期間によって受け取れる金額は異なります。

●退職金の支給額に考慮されるもの

退職金の額は、最終学歴や退職理由なども考慮されますが、基本的には企業に在籍した勤続年数によって決まります。退職金規定がある企業であっても、勤続年数が3年以下の従業員が退職する場合は、退職金が出ないことが多く、勤続年数が20年以上の場合は、退職所得控除額も大きくなるため、長く企業に在籍した分だけ、受け取れる退職金の額は大きくなります。
しかし、会社の都合で退職した場合は、勤続年数にかかわらず支給額は増えます。例えば、業績不振などを理由とした会社都合退職では、勤続年数が短いなど規定に満たない場合であっても、退職金が満額支給されるケースがあります。

●退職金の支給額一例

厚生労働省の調査によると、大学卒で勤続35年以上の定年退職者が受け取る退職金の平均給付額は、2000万円前後です。退職給付制度別に見ると、退職一時金制度のみが1,897万円、退職年金制度のみが1,947万円、両制度を併用した場合が2,493万円となっています。 一方、退職事由別では「自己都合」が最も支給額が低くなっています。大学卒で勤続20年の自己都合退職者の退職金相場は、1,519万円前後です。

転職を考える際の退職金の注意点

退職金を受け取って転職した場合と、定年まで働いた場合にもらえる退職金の金額は大きく異なります。転職を決める前に、考えておくべき退職金の注意点を見ておきましょう。

●転職すると退職金の積み立てはなくなる

基本的に、転職すると前の会社の退職金の積み立てはなくなります。長期間在籍していたとしても、積み立てた退職金は転職時にリセットされてしまうため、注意しましょう。 ただし、転職先の企業年金制度が前の会社と同じ場合、確定給付企業年金や確定拠出年金などの年金資産を転職後の会社に引き継げるケースもあります。

●基本的に自己都合退職は支給額が安くなる

キャリアアップなどを理由に会社を辞める場合は、自己都合退職扱いとなります。リストラや倒産などを理由とした早期退職募集などの会社都合退職とは異なり、自己都合退職では退職金が安くなるため、転職をする際には慎重に判断しましょう。
金額面だけで見れば、現在の会社に定年までいたほうが、生涯賃金が高くなることもあれば、退職金の額は少なくなっても、転職先の賃金やボーナスの額が高い場合、結果として生涯賃金がプラスになることもあります。

企業の退職給付制度は、就業規則の「退職金規定」などから確認できます。現在転職を考えている人は、転職した場合の生涯賃金が、結果として大きなマイナスにならないかどうか、一度計算してみると良いでしょう。

退職金も含めて、長期的な転職計画を

転職すると、ほとんどの場合、受け取れる退職金の額は下がります。給与面の不満で転職を考えているという人でも、将来もらえる退職金の額を考慮して、退職後の生活まで見据えた長期的な計画を考えてみましょう。
しかし、退職金を目的に今の会社で働き続けることが、必ずしも自分の将来にプラスになるとは限りません。現在の勤務先が将来、経営不振に陥る可能性もありますし、次の勤務先で長く勤めるという考え方もあります。お金だけにこだわらず、仕事内容やキャリア、やりがいなど、さまざまな角度から総合的に転職を検討することが大切です。

【参考】
厚生労働省「平成30年就労条件総合調査結果の概況」

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