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【イベントレポート】第3回Makers Future Program『共鳴する、大企業とスタートアップのイノベーション』

  • お知らせ
2019.04.11


2019年3月2日(土)、株式会社パソナ 人材紹介事業本部によって、第3回Makers Future Program『共鳴する、大企業とスタートアップのイノベーション』が開催されました。 製造業・製造関連業界で働く方々を対象とした本イベントは、第一部にシャープ株式会社 研究開発事業本部 材料・エネルギー技術研究所 課長の山上真司氏、第二部に株式会社Cerevo 代表取締役の青木和律氏をゲストとして迎え、スタートアップ企業へ支援を行う2社の視点から考える「イノベーションを起こすヒントや事例」などを語っていただきました。

大企業とハードウェア・スタートアップとのイノベーション スタートアップ企業が抱える「量産化の壁」

第一部はシャープ株式会社 山上氏による講演が行われました。研究所へ配属され、さまざまな研究に携わっていた山上氏ですが、シャープが鴻海(ホンハイ)グループから資本参加を得たことで、スタートアップ企業への事業支援計画が始まったのだそう。そこで、山上氏は「スタートアップ企業には『量産化の壁』があることに気が付いた」と言います。

「近年、IoT時代の到来により、ものづくりのスタートアップ企業は増えています。私もスタートアップ企業の事業支援をしている中でさまざまな声を聞くのですが、共通していたのは『量産化の難しさ』でした」

「従来から、スタートアップ企業はものづくりにおいて『企画・開発を行い、プロトタイプを作る』という初期段階は非常に得意であった」という山上氏ですが、一方で、「その後の量産化に向けた設計や試作、そして実際に量産を行う段階に来ると、なかなかうまくいかなくなる」と言います。

「スタートアップ企業は、量産に手間取ってスピードやコストをロスしたり、品質や信頼性でトラブルになったりするケースが非常に多いんです」

量産には、数十社に及ぶ部品会社や工場とのやりとり、スケジュール管理などのマネジメント業務が加わってきます。これらのやりとりは、スタートアップ企業にとって経験の浅い分野でもあり、今までのビジネスとは違った技術やノウハウが必要になってくるとのこと。
そして、「この部分をカバーできるのが、モノづくりの事業展開に長い歴史を持つシャープの強み」と山下氏は言います。

「シャープには、創業から100年を越えて、数多くの商品を量産してお客様の満足を得てきたこと、開発・企画から生産、販売、サービスまで一貫して行ってきたこと、グローバルな競争の中で部品から製品の生産および販売をし続けてきたという実績があります。こうした経験から、『量産化の壁』を克服するために必要とされる良質な『Quality(品質)』『Cost(原価)』『Process(工程)』『Safety(安全性)』『Environment(環境)』の5つを、スタートアップ企業へ提供することが可能です」

シャープが展開するスタートアップ企業へのプログラム

シャープは、スタートアップ企業に対する事業支援の一環として『SHARP IoT.make Bootcamp 』というプログラムを展開しています。これは、スタートアップ企業の弱みである「量産化の壁」を、シャープが持つノウハウで克服することを目的としたもの。
こうしたプログラムを広く認識してもらい、スタートアップ企業とのつながりをより深くするために、イベント登壇などさまざまな活動も行っているそうです。
山下氏からは、このプログラムについてもご紹介いただきました。

SHARP IoT.make Bootcamp』 は、ものづくりに必要な基本技術とノウハウを伝授し、プロトタイプ作成段階から量産段階に至る際のスピードやコストロスを未然に防ぐための研修を用意しています。また、当プログラムは『モノづくりブートキャンプ』と『量産アクセラレーションプラグラム』の2部構成となっています」

『モノづくりブートキャンプ』は、さまざまなスタートアップ企業が参加しやすいように、基礎・実践・応用の3つを軸とした複数の研修プログラムを用意しています。
『量産アクセラレーションプログラム』は、モノづくりブートキャンプに参加した企業を中心に希望者を対象に行うもの。スタートアップ企業の相談を受ける形で、量産仕様の決定や、工場選定、見積もりの精査など、商品化・事業拡大への具体的なノウハウを提供するプログラムとなっているそうです。

「少しでも気になることがあれば、積極的に参加してほしい」と山上氏は言います。

「スタートアップ企業の支援は、シャープ社内にとっても刺激となりますし、新たな製品開発にもつながります。スタートアップ企業の研究開発のスピートと、大企業の量産化のノウハウが結びつけば、イノベーションも起こしやすい。そのためにも、今後はさらに多くのスタートアップ企業と連携して、お互いにとってよりよい関係を築いていきたいと考えています」

イノベーティブな製品の開発 ハードウェア業界に革新を

第二部は株式会社Cerevo 青木氏による講演。まず始めに、Cerevoの会社概要や製品についての説明が行われました。

「Cerevoはハードウェアベンチャー企業として、家電の世界に革新を起こすことを使命に起業しました。2008年の創業から現在まで30製品ほど開発・販売をしています。製品群については、ライブ配信製品、スマート・トイ、スマート・ホーム、スマート・スポーツデバイスの主に4タイプで、世界の約80カ国で販売を行っています」

これらの実績が高く評価され、世界中の民生機器テクノロジー企業が一堂に会するイベント『CES Innovation Awards』に、2015年から3年連続で受賞も果たしているそうです。
また、「Cerevoは、自社製品を作る過程から量産化するところまで、ノウハウが1社に詰まっていることが特徴」「これを共有、開放することでスタートアップ企業を支援している」と続けました。

「1を2にする人はたくさんいますが、0を1にできるような発想の起点を持つ人はなかなかいません。そうした発想から新しい製品を世に生み出すために、Cerevoの持つノウハウが活かせるのではないかと考えています。そして、このノウハウを業界に還元することで、ハードウェア業界におけるスタートアップ企業を取り巻く環境を盛り上げたいと思っています」と青木氏は言います。

Cerevoが提供する3つのノウハウ

Cerevoがスタートアップ企業へ提供しているノウハウは、大きく分けて3つ。「全体を見通したチーム作り」「スピード感のある開発」「オンラインサポート」だそうです。

「プロジェクトは、全体を見通したチーム作りがとても大切ですが、一方で断絶してしまうケースも非常に多いんです。例えば、ファームウェアをやっている人間とウェブサーバーサイドをやっている人間が乖離してしまったり、アプリで言えば、ウェブサーバーのやり取りの中でどちらかが遅れてしまったり。Cerevoでは、こうした問題にもこれまでのノウハウを活かし、プロジェクト全体を見通したチームを作ることが可能です」

また、「スピード感のある開発」についても、Cerevoでは、製品企画の開発から量産化までは約半年、量産試作を出すまでに8カ月とスピード感を持って行っているそうです。

「スタートアップ企業は、投資家から資金を調達しています。つまり、製品化して量産するまでは赤字の状態。この売り上げのない期間をいかに短くするかが、スタートアップ企業として正しい姿勢であると言えます。スタートアップへのオンラインサポートについても、メールだとこちらが見ているか見ていないかが分からない。それではオンラインとは言えないし、スピード感もありません。私たちはメッセンジャーツールを利用しています」

青木氏は、Cervoの持つこうした基本的なノウハウからさらに深掘りをした「ものづくり」についても語ってくださいました。

「ものづくりにおいて、プロトタイピングと同様に『広報』と『マーケティング』は必要な要素。プロトタイピング作成後、量産して販売をする際、最終的にサービス設計をどこへ持っていくのかといった方向性も重要です。そういった意味では、無闇に『もの』は作らないほうがいいと私は考えています。『もの』を作るには、コストがかかります。そして、売り上げた製品もいつかはゴミになる。しかし、サービスであればそれはその場で消すことができます。そして、サービスには毎日お金が入ってくる。一方で、ハードウェアは売った時にしかお金が入りません。現在はいまある製品を通したサービス展開を考えています」

そして、最後に製品開発の分野やハードウェア業界でのキャリア形成についても語られました。

「『何を作るのか』という点について、0から1を生み出す製品開発の分野では個人がアイデアを持っていることが多いです。ですから、『アイデアはグループで持つものではない』と思っています。また、今どきのエンジニアのキャリア形成において、1本の道だけでは成立しないのではないでしょうか。自分の得意分野をベースに、他の分野もできなければいけないという気がしています」

ものづくり業界では、登壇いただいた2社のように、スタートアップ企業が得意とする「0から1を生み出すアイデア」と、大企業がこれまでの歴史の中で培ってきた「ノウハウ」を連携させ、新しい開発へ着手する動きが見られるようになりました。
しかし、その一方で、個々が業界の横のつながりを得る機会はなかなかないのが現実。本イベントは今回3回目の開催となりましたが、今後も製造業が盛り上がるよう、また、製造業各社がイノベーションを起こすきっかけになるよう、さまざまな交流会や勉強会を開催していきたいと思います。
ものづくり業界で働く皆さまにとって、本イベントが意見交換や勉強会、ひいてはキャリア形成の場になれば幸いです。

ご登壇いただいた山上様、青木様、参加いただいた皆さま、ありがとうございました。