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「良い会社」の研究から見えてきた「社員が成長できる企業」の特徴

「良い会社」の研究から見えてきた「社員が成長できる企業」の特徴

社員が成長できる企業とは、どのような企業なのでしょうか。「良い会社」について研究を行う「良い会社プロジェクト」に携わってきた、株式会社パソナグループ ベンチャー戦略本部HR Techチーム長の關口洸介に話を聞きました。

 

自分自身の能力を高めていける企業と高められない企業では、いったいどこが違うのでしょうか。

社員が成長できる企業とはどのような企業なのか、「良い会社」についての研究を行う「良い会社プロジェクト」に携わってきた、株式会社パソナグループ ベンチャー戦略本部HR Techチーム長の關口洸介に話を聞きました。

「良い会社」には成長を促すカルチャーがある

――「成長できる企業」とは、いったいどのような企業なのでしょうか?
 
關口:そもそも「成長」とは、なんでしょうか?
一般的にビジネスにおける「成長」とは、「職務遂行に必要となる知識・能力を身に付けること、またはその職務遂行における経験を積むこと」と考えられてきました。
しかし、個人にとっては人生100年時代・企業にとってはVUCA時代(Volatility”変動性”、Uncertainty”不確実性”、Complexity”複雑性”、Ambiguity”曖昧性”)と呼ばれる現代の社会・経済環境において、「成長」の定義そのものを見直す必要があるのではないかと思います。
 
そういった意味では、「成長の定義を定め、求める人材像を明確にしている」ことや、「経営理念を実現するための事業に挑戦している」ことは、社員が成長できる企業の条件といえるでしょう。
これは、株式会社パソナが7年以上にわたって企業へのフィールドワーク研究を行った「良い会社プロジェクト」の知見と、それに基づいて開発した「良い会社サーベイ」という、社員の意識調査によって得られた5万人超の定量的なデータから浮かび上がってきたことです。
 
――「成長の定義」とは、具体的にはどのようなことでしょう。
 
關口:「成長の定義」は、個人のステージやその組織内の階層によっても、定義は異なるものです。 例えば、新入社員では「できないことができるようになること」、3年目までの社員では「ある特定分野でのスキル・能力を向上すること」などです。階層別に求めるスキルを明文化している事例として、ハーバード大学教授のロバート・L・カッツ氏は、管理職に必要な能力を3つに分類しており、人材育成の観点から参照されている企業も多いと思います。
 
<管理職に必要な3つの能力>
【スキルの種類】
・特に求められる階層
・スキルの概要
 
【テクニカル・スキル】
・主に初級管理職
・特定の業務に関する知識を理解し、その方法、プロセス、手順、または技法を含む活動に習熟すること。
 
【ヒューマン・スキル】
・主に中級管理職
・自らの率いるグループ内でメンバー同士が協力し合う場を作り上げることや、グループ間での友好的な関係を構築し成果に結びつけることができる能力のこと。
 
【コンセプチュアル・スキル】
・主に上級管理職
・企業活動の全体を俯瞰できる能力のこと。企業の様々な機能・組織がいかに相互に関係し合い、その内の1つが変化したとき、どのように全体へ影響が及ぶのかを認識できる力。個別事業から、産業、地域社会、さらには国全体の政治的、社会的、経済的な力とどのように関係しているか将来の方向性を描ける能力までを含む。
 

(出典:Robert L. Katz(1982)「Skills of an Effective Administrator」『Harvard Business Review』より作成)

 

これらは、企業・組織において求められる能力から考えた「成長の定義」になると思います。
また一方で、個人のキャリアやライフステージに合わせた「成長の定義」もあります。「良い会社サーベイ」のスコアが高い企業で、経済産業省ダイバーシティ経営企業100選にも選出されている会社の事例では、社員一人一人の要望に応じて就業規則を見直し、会社を辞めるという選択をせずに働き続けられる環境づくりを目指している会社もあります。
 
例えばこの会社では、疾病の療養・治療、育休、復帰後の短時間勤務や、家族の転勤に対応した在宅勤務などを制度化し、リスクヘッジのために業務を複数人で分担する仕組みがあります。また、良い意味で成長のために競争意識を持って働くことを推奨しており、国籍・学歴・年齢・性別にかかわらず、能力に基づき透明性のある評価制度を導入することで、社員が自身の能力開発を意識する組織風土が培われています。
企業として「どのように仕事の成果を評価するのか」、「社員にどのように育ってほしいのか」という理想の人材像を明確にし、社員から上司や人事に自身のキャリアプランを安心して伝える仕組みや組織風土があることも、成長できる企業の特徴だと思います。
 
ただし、理想の人材像を明確にするだけではなく、その理想に近づけるためにOJTによる教育やメンター制度など「成長への支援」を行うことはもちろん、部署を越えた経験やノウハウの共有、顧客や地域社会と関わる体験などを通じて、組織とともに成長していく「成長の共創」の場があることも成長できる企業の特徴の一つですね。
 
――それは、個人にフォーカスした人材開発よりも、組織開発に力を入れている会社がいいということでしょうか?
 
關口:今まで調査した良い会社には、「組織としてのパフォーマンスを最大化するにはどうすればいいか」「そのための人材育成とは何か」について考えているところが多かったんですね。もちろん、職種や部署によっては、個人のパフォーマンスを最大化する人材開発に力を入れたほうがいいケースもあります。
 
1990年代前半のバブル崩壊後、「企業は欧米型の経営手法として成果主義を取り入れましたが、従来の日本の組織として良かった部分が発揮できなくなってしまった」と失敗だったと振り返る声が、多数の経営者、人事の方へのヒアリングから聞かれました。
個人をプロフェッショナルに育てるために、組織内で過度な競争を促す評価制度になってしまうことが、組織全体へマイナスの影響を与えてしまうこともあります。一人のスーパープレイヤーの影では、評価されなかった人たちのモチベーションが下がってしまい、組織の新たな悩みを生み出してしまう可能性も考えられるでしょう。
 
また、景気が安定して比較的将来の予測が立てやすい時期は、個人の育成が成功しやすいですが、不安定な時期には、顧客のニーズや時代の流れも常に変化していくので計画的な育成が難しくなってしまうという問題点もあります。
状況の変化に強く、中長期的に最適な形で事業を発展させている企業は「個別最適」から「全体最適」に、シフトしています。
 
 

企業理念が守られている企業を見極める方法

――成長できる企業かどうかを、転職前に知る方法はありますか?

關口:良い会社の条件として挙げた、「経営理念を実現するための事業に挑戦している」のかどうかを調べるといいと思います。

突然ですが、「企業の目的」って何だと思いますか?

――利益を得ることでしょうか?
 
關口:もちろん、それもあるでしょう。しかし、それだけが目的だとしたら、高収益な業界にすべての人が行ってしまいます。でも、実際は違いますよね。
「道徳を忘れた経済は罪悪であり、経済を忘れた道徳は寝言である」という二宮尊徳や「論語と算盤」の渋沢栄一の思想は、日本の多くの経営者の理念に大きな影響を与えていると思います。企業にも、人と同じように存在意義があって、それを「経営理念」と表現しています。
経営理念のもとに戦略を描き、そのプロセスの中で社員がお客様に貢献して売上や利益が発生し、社員を含むステークホルダーに還元され、拡大発展するというのが、企業の普遍的な成長の在り方だと思っています。
 
理念を実現するために、必要な人材をどうやって採用・育成・教育していけばいいかを考えている企業は、成長できる企業といえるでしょう。
 
――企業理念がしっかりしている企業の見極め方を教えてください。
 
關口:企業理念は、パンフレットやウェブサイトにも書かれていますが、企業としてのブランドメッセージは、どこもきれいなものを掲げている印象がありますね。
見極めるポイントとして、「実際に理念に沿った仕事がなされているか」「経営の意思決定や、仕事上の意思決定が理念に反していないか」など、しっかりと確認することが大切です。
 
キャリドアのようなクチコミサイトには、実際に働いている人のクチコミが寄せられています。こういった情報を見て、把握することもひとつの方法です。
ただし、悪い評価のクチコミがある企業だからダメかというと、そうとは限りません。一般的にクチコミサイトは、ネガティブな情報が多くなりがちなので、ポジティブな情報も集めながら多面的に判断することが大切です。
 
――信用できる情報かどうか判断するコツはありますか?
 
關口:多くの情報に振り回されないためには、「事実と推測を見分ける力をつける」こと、「多面的に見る」ことが必要です。これは、クチコミを見るときに限ったことではありません。
 
例えば、「あなたに合っている求人だと思いますよ」と紹介された場合、これはただの推測かもしれません。
しかし、「あなたの〇〇業界での経験が、仕事のこの部分に合致する可能性が高いと思います」というのは、事実に基づいた示唆です。そこをきちんと見極めることが大切です。
また、多面的に見るという点では、口コミサイトの例で、男性か女性か、新卒入社か中途入社か、在籍年数や職種の違いによって、コメント内容には変化があるはずです。在籍年数が比較的短く3年未満の方が職種に対して不満がある場合は、採用・配置時のミスマッチが影響している可能性があったり、逆に在籍年数が長い方は、その会社のカルチャーに合致しているからポジティブな意見になっているかもしれません。偏った意見だけを鵜呑みにせず、その背景を考察することで新たな見方ができるのではないでしょうか。
 

「良い会社」を知っているパソナだからできること

――クチコミ以外に、企業を見分ける方法はありますか?
 
關口:一つは、転職エージェントの意見を聞くことです。業界や企業の知識を豊富に持っているキャリアアドバイザーであれば、希望する企業の内情について情報を教えてくれるでしょう。
 
また、面接の場においても「成長できる企業かどうか」を自分でチェックすることもできます。
「御社の理念を体現するようなエピソードや、創業時のお話があれば聞かせてください」といった質問であれば、角を立てずに聞くことができるのではないでしょうか。
 
――最後に、パソナが「成長できる企業」を紹介できる理由について教えてください。
 
關口:まず、パソナ自体が「企業理念」をしっかり持っているということがあります。パソナは、雇用機会均等法もない時代に、「社会の問題点を解決する」という企業の理念のもと、人材派遣業界のパイオニアとしてスタートしました。
創業者の言葉は、意思決定のひとつの指針として全社員のあいだで共有されています。
 
また、その理念を体現するために、パソナを通じて転職をする方々が、より良い会社に就職できるように、「良い会社プロジェクト」や「良い会社サーベイ」で、「良い会社」を研究し、定量的なデータを保有しているという点が挙げられます。企業の状態をチェックした上で、情報を提供することができますから、転職活動の際に企業の内情を知りたい方にとって、大きな手助けになれると考えています。
 
パソナには、国家資格を保有しているキャリアアドバイザーが多数在籍しています。第三者の顧客満足度調査機関でも高いご評価をいただいています。ご自身の成長について不安を感じたり、より成長できる環境に行くためにはどうしたらいいか迷われたりしたときは、いつでもご相談ください。
 
 

關口洸介

2006年に株式会社パソナ(現在の同社人材紹介事業本部)へ入社。大学院にて機械システム工学の研究を行った経験を活かし、エンジニアを中心に100社・1,000名以上の採用・転職支援に携わる。2008年度、転職サポート年間MVP(支援人数トップ)となるが、翌年のリーマン・ショックによって、転職を支援した方の離職や再就職を目の当たりにしたことをきっかけに、就職した人が働く幸せを感じ、景気の影響に左右されずに好業績を続ける「良い会社」を増やすための活動をスタート。2010年より、新規事業として「良い会社プロジェクト」の立ち上げに参画。社員の働く幸せと好業績を両立する「良い会社」の調査・研究に従事し、経済産業省「おもてなし経営企業選」や産学共同研究プロジェクトを推進。産学共同開発の社員意識調査「良い会社サーベイ」は、これまでに日本全国の50,000人を超える社員が回答している。7年超に亘る「良い会社」の調査研究や「良い会社サーベイ」高スコアの経営者へのインタビューを行い、『理想の会社をつくるたった7つの方法』(あさ出版)の取材・執筆協力を担当。

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