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わざわざ「【至急】」と件名の冒頭につけたメールに返信がない。そんなとき、軽視されているのはメールか、はたまた自分なのかと気分が落ち込んでしまうこともあるだろう。もちろん「電話して確認する」といったしかるべき手段はあるが、できれば初手のメールがスルーされない方法はないものだろうか。
ウェブ上のテキストライティングに詳しい『沈黙のWebマーケティング』(エムディエヌコーポレーション)著者の松尾茂起さんは「メールの返信をもらえないことはほとんどない」という。どうすればメールを既読スルーされずに済むのか、お話を伺った。
まず、メールを開封してもらうための重要なポイントは、「相手が『自分事』として受け止められる件名になっているか」だと松尾さんは言う。
「心理学の世界には、『選択的注意』という言葉があります。この意味は、“人は自分が注意を向けている情報以外、頭に入ってこない”です。人は自分に関係している、つまり自分事の情報でないと、なかなか認知できません」
では、送信したメールを相手に「選択的注意」をしてもらうためには、どうすればいいのだろうか。松尾さんによると、メールがスルーされてしまうかどうかは「件名」に左右されるという。件名に相手が「自分事」だと認識できるような言葉がないと、スルーされる可能性が高くなるそうだ。
具体的に、スルーされがちなメールの件名例を挙げてみよう。
●NGな例
【至急】御見積をお待ちしています。
「よくある件名で、人によっては自分事になりにくい件名です。いくら【至急】という言葉をつけても、たくさんの【至急】の中に埋もれてしまうと、その中で自分事化による優先順位がつけられてしまいますから」
ここで意識すべきは、件名に相手が体験した記憶のような「具体的な情報」を入れること。そうすることによって、相手の自分事要素を強めることができる。松尾さんによると、上記の件名を少しアレンジするだけで返信率は格段にアップするという。
●OKな例
【至急】御見積をお待ちしています。(2/3に東京オフィスでお会いした渡辺です)
【至急】2/3に東京オフィスでお会いした渡辺です。御見積の件をお待ちしています。
「少し長いですが、相手の体験に触れ、相手の自分事要素を強めている点で、先のメールとは異なります。もし相手が見積を発行するタスクを忘れていても、“2/3に誰かと会った”という記憶によってタスクが想起され、行動に結び付きやすくなるのです」
このように、相手が体験した記憶に触れつつ具体的な情報を含めるテクニックは、以下のようにも応用できる。
●OKな例
【至急】御見積をお待ちしています。(昨日のTwitterのツイートに感動しました)
【至急】御見積の件でご連絡しました。(昨日、旅行から戻られたのですね)
【至急】御見積の件(先ほどはお電話をしてしまい申し訳ございません)
「やりすぎるとストーカーっぽくなってしまいますが、あまりにもメールをスルーされているのであれば、こういう件名を試してみてください」と松尾さん。
また、メールをスルーされないためには、「営業・広告のような印象の件名になっていないか」も重要なポイントになるそうだ。
「受信ボックスには日々、広告メールが届いているはずです。人はメールをチェックする際、広告メールの件名を先にたくさん見てしまうと、その件名に似ているほかのメールも広告のように感じてスルーする傾向があります。これを『プライミング効果』といいます」
つまり、メールの件名は、一般的な広告で使われている王道表現を避けた方がよいというわけだ。とはいえ、広告メールもあの手この手で顧客を獲得しようとしており、切り口は多様。具体的にどの表現を避ければいいのだろうか。
「おすすめは『!(エクスクラメーションマーク)』を使わないことです。大体の広告メールはハイテンションで、『!』がよく使われます。そのため『!』が使われているだけで、“広告メールっぽい”というバイアスが働いてしまいますから」
●NGな例
【至急!】御見積をお待ちしています。(2/3に<東京オフィス>でお会いした渡辺です)
「テンション高く一方的に話しかけてくる相手は、だいたい怪しいもの。このように、リアルなコミュニケーションの知見をメールにも持ち込むといいでしょう」
また、メールを開封してもらっても、相手に読了・返信という行動をしてもらわなければメールの目的は果たせない。最後まで読み進んでもらえるメールには、何らかの特徴があるのだろうか。
「情報が氾濫している現代社会において、一つひとつの情報が重要かどうかを瞬時に判断するユーザーが増えています。離脱を防止するためには、結論→理由という展開を意識した文章構成にするのがよいでしょう」
●OKな例
当案件は御社に発注させていただきます。(結論)
↓
先日のプレゼンは当社の課題を十分に把握された上で、実現性が高く、効果的な施策でした。(理由)
↓
つきましては、御見積の送付を●月●日正午までに送付していただけますか。(結論)
↓
可能であれば当月の予算を消化したく、社内期限が同日までとなっておりますので、上記にてお願いできれば幸いです。(理由)
「これが逆になると、読み進めるのが途端に面倒になるので、試しに入れ替えてみるのもいいでしょう。このように、人は“結論”を知るからこそ、その結論になった“理由”を知りたいと思うようになるのです」
メールに限らず、TwitterやFacebookのメッセージや社内チャットなど、ビジネスマンが日々活用しているツールは多岐にわたる。情報の流通量が劇的に増えている中、「自分事化」や「結論→理由」のテクニックを上手に使いこなして、相手に伝わるコミュニケーション術を身につけよう。
(朽木誠一郎/ノオト)
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