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麦わらの一味は理想のビジネスチーム? 『ワンピース』に学ぶ、職場の人間関係と対人コミュニケーション

麦わらの一味は理想のビジネスチーム? 『ワンピース』に学ぶ、職場の人間関係と対人コミュニケーション

「仕事」「人間関係」でググってみると、「最悪」「辛い」「ストレス」「辞めたい」といった関連検索キーワードが並ぶ。職場でのコミュニケーションが上手くいかず、悩んでいる人は少なくないのだろう。
職場の人間関係の悩みはどうしたら解消できるのか、という問いに対して、「国民的な少年マンガ『ONE PIECE(ワンピース)』を読むのが良い」と勧めるのは、「『ONE
PIECE』に学ぶ最強ビジネスチームの作り方」(集英社)著者の一人、山内康裕さんだ。どうして「ONE PIECE」とビジネスが結びつくのか、その理由を教えてもらった。

犬猿の仲のゾロとサンジ この二人はオタクとヤンキー!?

山内さんは、作品内でサンジとゾロがいつも言い争いをしているシーンを挙げて、「そもそも気質が合わない人との衝突は仕方ない」と指摘する。
「この二人の“仲良しこよし”の画って想像できないでしょ?(笑) でも、これからの旅にお互いが必要だと理解しているし、信用しているんですよね。職場の人間関係も同じです。もし、気が合わない人がいて、その人と共感しあえなくても、お互いを信頼し合い、仕事を進めていくことは可能なばかりか、ビジネスで成功するための秘訣でもあります。そのとき、相手を探るための助けとなるのが『ONE PIECE』なんです」

「デービーバックファイト」では、二人が手を組み、連係プレーをとるシーンも(JC33巻 p.125より)©尾田栄一郎/集英社

山内さんいわく、ここで鍵となるのが“ヤンキー”と“オタク”の分類だという。ここでいう“ヤンキー”“オタク”は個人の持つメンタリティや考え方、行動の傾向を表す。主人公であるルフィ率いる麦わらの一味は、“ヤンキー”傾向が強いキャラクター、“オタク”傾向の強いキャラクターの両方が混在していて、お互いに苦手なところを補い合い、長所を伸ばし合う関係なのだ。大まかな分類は以下になる。

<ヤンキーのメンタリティ>

  • コミュニケーションが得意
  • 仲間との繋がりが大切
  • やる気と気合を重視
  • 面倒見がいい

<オタクのメンタリティ>

  • 多様性を大切にする
  • 全体像を把握したい
  • 情よりも理屈を重視
  • のめり込んだ分野の情報収集と分析が好き

麦わらの一味でいうと、仲間重視の熱血タイプであるルフィ、サンジ、ナミがヤンキータイプ。一方わが道を行くゾロ、ウソップ、チョッパー、ロビンがオタクタイプだという。フランキーやブルックは、このヤンキーとオタクの特徴を兼ね備えた“おたやん”だと山内さんは解説する。
「まずは、自分がどちらのタイプなのかを把握してから、職場の人がどのタイプなのかを考えてみましょう。『なぜ同僚が社内の飲み会に来ないのか』『どうして上司が理屈を言わずに、感情的に説得しようとするのか』など、作品のキャラクターと重ねて見てみると、わかりやすいかもしれません。共感できない相手にも興味をもってその人がどういう人なのかをまずは考えてみることが、コミュニケーションの第一歩なんです」

なぜ似たもの同士のチームがダメなの?

しかし、仕事上でも“オタク”は“オタク”同士、“ヤンキー”は“ヤンキー”同士のチームを作ったほうが、ストレスなく、仕事の生産性が上がりそうだが……。
「日本では戦後からバブル崩壊まで、経済が上がり調子の時代は大量生産・大量消費が前提でした。その場合、仕事を進める上ではヤンキータイプが主力のチームが重宝されました。成長市場でより多くのパイを奪っていくには上司の指示を即座に実行できるマンモス集団が合理的。『やっぱり違うかも』と水を差すようなオタクタイプの意見にいちいち耳を傾けていたら、ライバルに先を越されてしまうんです」
確かにこれまでは、いかに早く他社よりも新しい技術を搭載した製品やサービスを出せるかが、企業にとっては鍵になっていましたよね。

「しかし、時代は変わりました。大きな市場での総力戦での奪い合いではなく、クラウドファンディングのように小さな声の需要に応えるビジネスや、気付かれていなかった価値に対して新しいモノやサービスを作る世の中になりました。独自の視点で先ゆく価値を生み出すオタクタイプの視点を世間のニーズを理解するヤンキータイプがスケールしていくことが、これからのビジネスに求められるのではないでしょうか。違うタイプの人と出会ったら、苦手だと避けるのではなく、一緒にチームを組むことでビジネスチャンスが生まれる相手なんだと考えるといいと思います」
「ビジネスパーソンは、自分のメンタリティに引っ張られずにヤンキータイプとオタクタイプ、両方の気持ちが分かる人物を目指すべき」と山内さんは続ける。
「船長であるルフィは上の立場にはいるが、船員とはお互いが意見を言えるフラットな関係です。ルフィはヤンキータイプではありますが、“オタク”であるメンバーの気持ちを後押しするような行動をとるなど、“オタク”に対する理解が深い。また、例えば“オタク”であるゾロも、いざというときにはルフィが船長であることを尊重しています。だから、普段はお互いが言いあえる関係でありながら、チームとしてまとまっているんですね」

他のメンバーより一見、“仲間意識”が気薄そうなゾロの「一味」への想いが伺えるシーン(JC 45巻 p.152より)©尾田栄一郎/集英社

あなたは“ヤンキー”と“オタク”、どちらのタイプだろうか。仕事場でのコミュニケーションが上手くいかないと思ったら、その人が大切にしていることが何なのか、「ONE PIECE」のキャラクターを通じて分析してみると、解決の糸口が見えてくるかもしれない。

(取材・文:松尾奈々絵/ノオト)

取材協力:山内康裕(やまうち・やすひろ)

マンガナイト/レインボーバード合同会社代表。1979年生。法政大学イノベーションマネジメント研究科修了(MBA in accounting)。 2009年、マンガを介したコミュニケーションを生み出すユニット「マンガナイト」を結成し代表を務める。 また、2010年にはマンガ関連の企画会社「レインボーバード合同会社」を設立し、“マンガ”を軸に施設・展示・販促・商品等のコンテンツプロデュース・キュレーション・プランニング業務等を提供している。 主な実績は「立川まんがぱーく」「東京ワンピースタワー」「池袋シネマチ祭2014」「日本財団これも学習マンガだ!」等。 「さいとう・たかを劇画文化財団」理事、「国際文化都市整備機構」監事も務める。共著に『『ONE PIECE』に学ぶ最強ビジネスチームの作り方』(集英社)、『人生と勉強に効く学べるマンガ100冊』(文藝春秋)、『コルクを抜く』(ボイジャー)がある。

http://manganight.net/

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