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社内徘徊、雑談、仕事の棚卸し……沢渡あまねさんが説く、転職を考える前の心得

社内徘徊、雑談、仕事の棚卸し……沢渡あまねさんが説く、転職を考える前の心得

自分の希望していた部署に入れなかったとき、ルーティンの業務に退屈を感じるとき、なんとなく刺激が欲しいとき、転職を考え始めたという人も少なくないのでは? しかし、そんなふわっとした理由から転職をしてしまってもいいものなのだろうか。

その悩みを解決すべく、今回お話を伺ったのは、「職場の問題地図 ~『で、どこから変える?』残業だらけ・休めない働き方」(技術評論社)の著者でオフィスコミュニケーション改善士の沢渡あまねさん。さまざまな職場を見てきた沢渡さんに、転職の際に気を付けるポイントを教えてもらった。

自分の会社のこと、どれだけ知っている? 転職前に見直しておきたいこと

 

――沢渡さんは日産自動車やNTTデータ、大手製薬会社などへの転職を経て独立されましたよね。転職にはかなり肯定的な意見をお持ちかと思ったのですが、実際はいかがですか?

 

転職できる人材でいたほうが良いとは考えていますが、むやみに転職するのはおすすめしていません。私の経験上、転職って意外と気力も体力も使うんですよ。相手を知り、自分を知ってもらい、そこから新たな信頼関係を作るのは時間がかかるので、はっきりと言って疲れます(笑)。

 

――勢いだけで転職するのは大変だ、と。

 

そうですね。転職を考える前に、まずは今の環境でできることがないかを見つめ直してみましょう。その会社のブランドがあるからこそ、集まってくる仕事ってありますよね。それをうまく利用しながら、やりたい仕事に結び付けられないかをまずは考えてみる。そのためには、自社の製品や社員、歴史、取引先について、理解を深めるのが大事です。ほかの部署にどんな人がいて、どんな仕事をしているのか。特に大企業だと、みなさんは自分の周りのことしか知らないんですよ。

 

――沢渡さんの体験談からの実感でしょうか?

 

はい。私も以前の職場で、仕事に行き詰まり、おもしろくなくなってしまった瞬間がありました。そのとき、なんとなく社内報を読んでいたら、ワークスタイルを変えようと取り組んでいる部署があることを初めて知ったんです。当時は購買部門にいたのですが、その部署と一緒になんとか仕事をできないか考え始めましたね。そうしているうちに、向こうからも「あいつはおもしろいから、一緒に仕事をしたい」と思ってもらえるようになり、最終的には自ら希望して部署異動が決まりました。

  

――社内報を読んでいなかったら、その存在に気付く前に転職をしていた可能性もあるということですね。とはいっても、自分が希望しない業務をすることになったら、ふてくされてしまう気持ちもわかるのですが……。

 

もちろん、会社に所属している以上、自分の意にそぐわない配属になることはあります。しかし、そういう場所でも自分なりのこだわりをもって仕事に一生懸命取り組んでいれば、誰か見てくれて、気づいてくれる人はいます。例えば、他部署の管理職とかね。

 

あとは、「本当はこういう仕事をしたいんです!」と、やってみたいことや得意分野を周りに伝えておくのも大事。「あいつは仕事ができるから、こういう仕事も任せよう」「一生懸命やっている。そろそろ希望の仕事をさせてあげてもいいんじゃないか?」という流れになることも。おもしろい仕事をしたければ、一生懸命仕事をしたりチャレンジしたりする姿勢が求められますから。

 

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意味のない社内徘徊がコミュニケーションを生み出す

 

――自分がどういう仕事をしたいのか、普段から周りが知っていると心強いですね。そうやって自分の気持ちを発信する力はどうやって身に付ければよいのでしょうか。

 

これはSNSでたくさん発信すればいいというような単純な話ではなく、いかに人とのリアルな接点を作れるかが重要です。まずは身近な挨拶から始めましょう。例えば、会社でのランチの時間に、雑談として自分の気持ちを話す。あるいは、上司への仕事の“報連相”の際に、自分のこだわった点などを一言添えるだけでいい。そうやってまずは自分を知ってもらうこと、チャレンジしたいという意思表示をすることから始めなければ、相互理解には至りません。

 

――自分の望んでいる仕事を獲得するためには、コミュニケーション力が必須なんですね。

 

たまには、ぶらぶらと社内徘徊をしてみるといいものですよ。全然知らない部署の人からも、「また来たね」なんて声をかけられて会話が始まったりしますから。雑談から始まるコミュニケーションも時にはいいものです。

 

――仕事以外の話から入っていくのもアリだ、と。

 

そうですね。接点はなるべく多いほうが良いと思います。自分一人で悩んでいることに対して、実は明快な答えを持っている人が意外と隣にいるかもしれません。ちなみにご出身はどちらですか?

 

――え、私ですか? 千葉県の佐倉市です。

 

佐倉市ですか……。そういえば以前、DIC川村記念美術館に行ったことがありますよ。

 

――そうなのですね。あそこの美術館は広々としていて気持ちがいいですよね。沢渡さんのご出身はどちらですか?

 

八景島シーパラダイス近く、神奈川県の三浦半島です。高校のときは砂浜を無理やり走らされる授業がありました。しかも、砂浜までも片道2キロくらいあったので、帰りはこっそりバスに乗ったりして。でも、その瞬間を見られて怒られたり、友達は行き先を間違えて帰ってこなかったり……なんてこともありました(笑)。

 

――今の沢渡さんからだと想像できない体育会系的なエピソードですね(笑)。

 

はい。……と、本題から話が逸れてしまいましたが、こういう雑談が好きなんですよ。

 

――確かに相手の情報がわかると、一気に親しみやすさが増しますよね。「この人どんな人なんだろう」と思っていると、話しかけにくいですし。

 

知ってもらえるきっかけは大事です。仕事の現場では、コミュニケーション不足で損してしまうところもありますからね。

 

沢渡さん著書の「職場の問題かるた」。職場の問題点が読み札になっており、「隣のあの人、だれですか?」という札も。読み手は人気声優の戸松遥さん。

 

転職を考えていない人も、職務経歴書を書いて自分の棚卸しを

 

――自分を知ってもらうために、普段から実行したほうが良いことって何かありますか?

 

まだ転職を考えていない人も、一度履歴書や職務経歴書を書いてみるのがおすすめです。「経理を10年やってきました」というだけではなく、そのなかで自分がどのような経験をして、どんな人に出会って、どういった実績を残してきたのかを文章化すること。なかなかそういう機会ってないものですよね。

 

――確かに意識しないと、なかなかそこまで細かく振り返らないかもしれません。

 

価値は自分ではなく相手が決めるものです。だからこそ、その価値を見つけてもらうには、「自分の棚卸し」が必要なんです。「会社に言われてやっただけで、全然すごくない」と思っていた業務でも、環境が変わればその経験を必要としてくれる場所があるかもしれない。経理の例でいえば、肩書きだけではなく「子会社の精算を担当した」「連結決算のプロジェクトを進行した」など、「したことベース」で話をしていかないと、相手に価値を見つけてもらえません。いつも自分のストーリーをきちんと語れるように準備し、相手に価値を認めてもらうような状態になるのは、転職するかしないかに限らず役に立つものです。

 

例えば、私は日産自動車で一時期、海外のマーケティング部門で広報を担当していました。もともと私はIT畑で、広報の仕事は自分のキャリアのなかであまり重要視していませんでした。もちろん、転職時にも人事担当者にも言っていません。ところが、次の転職先となったNTTデータの当時の上司が、どこからかその情報を知ったらしいんです。「広報部がグローバルで広報戦略を考えられる人がいなくて困っているそうなんだけれど、ヘルプで入ってくれないかな?」。こんなオファーがあり、グローバル広報の仕事を支援することに。

 

これは、まさに価値を相手が見つけてくれた経験です。自分としては、その広報の仕事は「たまたまやっていただけなんだけど……」という感覚でした。しかし、それも私のひとつの武器になっていたんだな、と。独立した今も広報として仕事に携わっているので、その時の経験が長く仕事に活かされていますね。

 

――どれくらいの頻度で、「自分の棚卸し」をしたほうがいいでしょう? つい後回しにしてしまいそうです。

 

最低年1回。新しい人が入って来たり、年度が替わって部署を異動したりと、1年間で職場の環境はずいぶん変わりますから。どういう目標を立て、何をしてきたのか。どんな人と出会ったのか。どういった知識を身に付けたのか。細かく振り返りましょう。

 

自分ひとりでなかなかやる気にならないのであれば、同僚と一緒に2~3人で日を決めて実行してみてください。そうすることで、お互いの理解が深まり、結束力が高まります。意外に隣にいても、何をしているのか知らなかったりしますからね。

 

――これまで転職前の話をお伺いしましたが、最後に転職そのもののメリットを教えてください。

 

会社側から見たとき、中途社員は社内で当たり前になっていることを見つめ直すきっかけになる存在です。転職してきた側からすれば、「まだこんなシステムを使っているのか」など、思いがけないカルチャーショックがあるかもしれません。しかし、そこで「だからダメなんですよ」と斜め上から言うのではなく、中の人になったからにはその集団に馴染み、相手を尊重してから、自分の案を提言し、実行できたら最高ですよね。

 

さらに、中途社員を受け入れる側は、その人に関心を持つことが大事です。「これまでこうしてきたから」と意固地にならず、きちんと対話をすること。そうやってお互いを受け入れ合うのがダイバーシティだと思いますし、両者にとって意義ある良い「転職」になるのではないでしょうか。

 

 

(文・取材:松尾奈々絵/ノオト)

取材協力:沢渡あまね(さわたりあまね)

1975年生まれ。あまねキャリア工房 代表。業務改善・オフィスコミュニケーション改善士。 日産自動車,NTTデータ,大手製薬会社などを経て,2014年秋より現業。企業の業務プロセスやインターナルコミュニケーション改善の講演・コンサルティング・執筆活動などを行っている。著書に『職場の問題かるた』『職場の問題地図』『仕事の問題地図』(技術評論社),『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社),『働く人改革』(インプレス),『新人ガールITIL使って業務プロセス改善します!』(C&R研究所)などがある。趣味はドライブと里山カフェめぐり,ダムめぐり。

WEB:http://amane-career.com/

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