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「営業に向いていない人はいない!」 えりたの絵日記著者に聞く、営業職のおもしろみとは?

「営業に向いていない人はいない!」 えりたの絵日記著者に聞く、営業職のおもしろみとは?

会社にとって、なくてはならない売り上げ。これをしっかり上げるのが営業職の役割だ。高いコミュニケーション能力と強い忍耐力が求められる職種のひとつだが、「私には向いていない……」と壁にぶつかった経験者もいるだろう。

入社1年目、広告会社で求人広告の営業として働いていたえりたさんは、当時のお客様から「一生懸命なアンタを信用して広告出したのによ。応募全然こねーし。死ねよ」と言われ、思わずその場を逃げ出したという。そんな状況から諦めずに11年間にわたって営業として働き続け、その当時の体験談をインスタグラムに2016年9月から投稿している。「わたしにもこんな経験あった!」「いま、まさに同じことに悩んでいる」と共感を呼び、現在ではフォロワー8万人を超えるほどの人気アカウントに(2018年1月現在)。昨年10月には『地元で広告代理店の営業女子はじめました』(イースト・プレス)を出版するに至った。

営業の辛さや醍醐味はどこにあるのか? 営業でキャリアを積んでいる人に向けてのアドバイスをえりたさんから伺ってきた。

どうしたら心が折れずに営業を続けられるの?

――えりたさんは新卒から営業職を経験されているんですよね。

そうですね。新卒で地元の求人広告の営業としてキャリアをスタートしました。7年ほど在籍した後は、同業他社に転職して4年間、同じく求人広告の営業を担当しました。その後はウェブデザインやコーディングの専門学校でスキルを学び、現在はグラフィックデザイナーである夫の仕事を手伝いながら、広告制作の仕事やポスター・パンフレットなど印刷物の制作、ウェブデザイン、情報誌の取材をしながら、マンガも描いています。

――私自身、営業職の経験があるので「あるある~!」と思いながら、読ませてもらいました! マンガを描き始めたきっかけは何だったのでしょう?

会社で営業をしていた頃は、後ろを振り返らず、前だけを向いて仕事をしていました。独立してから営業時代のことを頻繁に思い出すようになって、最初は元同僚だった夫に思い出話をしていたんです。でも、話が多すぎてだんだんと聞き流されるようになって……(笑)。

それで、仕事の傍ら1週間に2回のペースでマンガを描いて、SNSで公開しようと思ったんです。営業時代に使っていた手帳などを改めて読み、整理してマンガに描いてみると、気持ちがスッキリしました。インスタグラムに公開していくうちに、読者の方からコメントをいただけるようになったのはうれしかったですね。多くの人の目に留まり、さらにフォロワーもどんどん増えていって編集者さんから声がかかり、書籍を出版することができました。

――営業職というと厳しいイメージが強いですが、就職の際に不安はありませんでしたか?

実はいま考えると、営業がどんな仕事なのかよくわかっていないまま入社したので、不安はあまりなかったんです(笑)。ただ、学生時代は今よりもさらに自己主張をしない、常に聞き役に徹するようなおとなしいタイプだったので、家族や周りの友人からは営業職に就くことを反対されましたね。

――確かに実際にお会いして、えりたさんは「バリバリの営業!」というイメージではないですよね。ご家族の方が心配されたお気持ちもわかるような気がします。そもそも、どうして営業職を希望したのでしょうか。

小さい頃から絵を描くのが好きで、モノづくりをする仕事に就きたかったんです。あとは、学生時代に吹奏楽部に所属していたことも大きいですね。チームで心をひとつにし、みんなで音楽を奏でることの素晴らしさに感動したので、チームで協力して仕事を作り上げる広告制作の仕事に興味を持ちました。ただ、編集経験やデザインの経験がなかったので、最初はモノづくりに携わるための入口として営業職を選びました。

――広告営業の仕事というと過酷なイメージがありますが、振り返っていかがでしょうか。

担当していた求人広告が週刊だったため、毎週校了日があるのはプレッシャーでしたね。さまざまな仕事に追われる忙しい日々のなかで、毎回「求人広告の反響が出なかったらどうしよう」という状況だったので、精神的に辛かったです。

――特に辛かった経験はありますか?

マンガでも描きましたが、お客様から厳しいお声をいただくことは何度もありました。たとえば、人材派遣会社の広告担当者さんからは、初回の打ち合わせから「やる気がないなら、うちの担当やめてもらってもいいんですよ?」と言われたり、「こんな小娘を弊社の営業担当にしないでくださいよ」と言われたりしたこともあります。もちろん私の未熟さと至らなさが引き起こしたことなのですが、かなり落ち込みましたね……。

――そんな状況になると、人によっては「辞めよう」と思ってしまいそうですが、その後も営業職を続けられたのはなぜでしょうか?

どの方も“期待してくれていたから”こそのお怒りなんですよね。そういう当たりが強い方ほど、認めてもらえれば、強い関係性を築くことができ、全幅の信頼を寄せてくれることを経験し、学んだからだと思います。「ただ嫌っているのではなく、厳しさの裏にはきちんと愛情がある」。そのことを知ってからは、どんなことを言われてもへこたれずに頑張ることができました。

あと、負けず嫌いな性格も営業を続けられた理由かもしれません。お客様から暴言があっても「期待以上のものを提案するぞ」「期待に応えたい」という気持ちを抱いていたので、落ち込んでも続けられました。それに、さまざまなお客様から学んで、吸収して、自分の糧になってゆくのは、営業職ならではですし、おもしろいところだなと思います。
また、営業は「誰かのために」という気持ちは大前提として大切ですが、それだけを目標にすると、「頑張ろう」と思う理由が人や環境に依存してしまいます。そうなると、人事異動があったり取引先が変わったりした場合、これが仕事を辞めたくなるきっかけになってしまうことがある。私の場合は、「これは自分が成長できる機会だ」という気持ちも持って仕事に取り組んでいましたので。

営業職時代に使っていたというスケジュール帳。毎日の予定がぎっしりと書きこまれている

どんな性格の人も、営業に向いていない人はいない

――えりたさんは転職した2社目でも営業を経験されていますよね。1社目の経験は活かされましたか?

1社目はアットホームな社風で、2社目は営業バリバリの社風でした。それぞれ社内ルールも違うので、そういう点では苦労しましたね。ただ、1社目では求人広告の営業以外の業務が多かったため、転職して求人広告の営業だけに集中することができました。そう考えると転職してよかったです。

――どのような人が営業に向いていると思いますか?

「私、営業向いてなくて……」と話す方もいますが、「こんな人が営業に向いている」というのはそもそもないと私は思います。今でも自分のことを「喋りが下手で、自信もなくて、へこたれやすい」性格だと思っているので(笑)。どんな性格の人でも自身の個性を活かし、その人ならではの視点でお客様の課題に向き合うことができれば、それぞれ素敵な営業さんになれるのはないでしょうか。

――「自分の個性を活かして、お客様の課題に向き合う」というのは、営業職以外のすべての仕事にも通じる大切な心がけですよね。最後に、営業の仕事に悩んでいる人にアドバイスをお願いします。

営業は数字だけではなく、さまざまな「人」と接する機会が多いため、プレッシャーやストレスも大きいです。加えて、労働時間も長いことが多いので、いつまで続けられるだろう……と悩みますよね。私も両親から「いつまで営業を続けるの?」と心配されたことが何度もあります。

でも、もし仕事自体が好きなのであれば、周りに理解してもらったうえでぜひ営業の仕事を続けてください。私は一つの職種で長く仕事を続けたことで、だんだんと評価されるようになりました。さらに人脈が増えて仕事もしやすくなり、視野も広がって教育を担当した部下の成長をうれしく感じることもあり、営業を続けてきて本当によかったです。

「営業の仕事自体が楽しいと思えない」方は、もしかしたら目先の「売り上げ」や「数字」だけしか見えていないのかもしれません。売れるか売れないかではなく、お客様にサービスを使ってもらうことによって、より良い未来をどう描くことができるか。それを考えて実行することができれば、営業の仕事も楽しくなると思いますよ。私にとって営業とは、どんな失敗も学びや成長につながる「ムダのない仕事」でしたから。

(文・取材:中森りほ 編集:ノオト)

取材協力:えりたさん

元求人広告の営業。新卒で広告代理店に入社してからの挫折と成長を描いた「えりたの絵日記」をInstagramに投稿したところ、営業職や新人ならではの“あるあるネタ"や、失敗談、悩みに多くの読者が共感し、人気を集める。現在は夫と立ち上げた広告デザイン会社で、愛犬(とんきち)と共に細々と活動中。新人営業時代の苦悩と成長を描いたコミックエッセイ『地元で広告代理店の営業女子はじめました』(イースト・プレス)が好評発売中。

Instagram:@erita_enikki
Twitter:@erita_enikki

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