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24時間365日、愛する猫たちと過ごす仕事をする覚悟 ネコリパブリック首相・河瀬麻花さん

24時間365日、愛する猫たちと過ごす仕事をする覚悟 ネコリパブリック首相・河瀬麻花さん

仕事は仕事、趣味は趣味。別物として割り切る生き方もあるが、両者がもし一致したら、そこにはどんな人生が待っているのだろう。今回は、そんな働き方を実現している保護猫カフェ「ネコリパブリック」の首相、河瀬麻花さんを訪ねた。

ネコリパブリックでは、「2022年2月22日までに、日本の猫の殺処分ゼロに!」をスローガンに掲げ、保護猫の里親探しを行いながら、猫カフェや猫グッズの販売を行なっている。代表を務める河瀬さんは、「趣味は猫」「3日猫に触れないと発狂する」というほどの、大の猫好きだ。以前は猫と無関係の仕事をしていたこともあった彼女は、愛してやまない猫を仕事にした今、一体何を思うのだろう。

 

河瀬さんは、カフェを利用したり雑貨やペット用品を買い物したりすることによる「猫助け」という理念を共有し、楽しみながら猫の保護活動をサポートする仕組みを作りネコリパブリックを運営している(画像はネコリパブリックHPより抜粋)

「私、猫を救いたかったんじゃん」ボランティアで思い出した原点


── 河瀬さんはとにかく猫が好きだと伺いました。

 

河瀬さん(以下、敬称略):生まれた時からずっと家には猫がいて、私にとって猫は必ずそばにいるものだったんですよ。もはや精神安定剤みたいな感じで、触ると落ち着く。お店には仕事のためというよりも、猫に触りたいから行くし、家に帰っても猫がいます。もう、3日猫に触れないと気が狂いますね(笑)。しかも子供の頃からなぜか猫を拾う癖があって、多い時は家に10匹ぐらい猫がいたんです。保護猫活動をしている人たち皆さんよく言うんですけど、ふと違う道を歩いてみたくなって、歩くと猫がいるんですよね。

 

── 猫を拾う癖がまさに今の保護猫カフェに繋がっているんですね。それ以前はどんな仕事をしていたんですか?

 

河瀬:大学卒業後はいろいろな仕事を転々としながら、お金を貯めてはバックパッカーとして海外に行く生活をしていました。中でもニューヨークがお気に入りで。半年くらい滞在しようと思って、28歳の時にお金を貯めるために岐阜の実家に帰ったんです。それでなんとなく家業のパン屋を手伝ううちに、ネット販売のベーグル専門店をスタートしました。

 

── その当時は猫の保護事業をやるつもりはなかった?

 

河瀬:全くなかったです。子供のころから殺処分をなんとかしたいと思ってはいたけれど、それが仕事に繋がるなんて一切考えていなかった。好きなことを仕事にするっていう発想がなかったですね。

カフェの壁には、里親の元へ貰われてお店から卒業していった猫の写真が貼ってある

── そこからネコリパブリックを始めるまでには何があったのでしょう?

 

河瀬:東日本大震災の時に、避難地域に取り残された飼い猫のレスキュー活動をしている団体を知って。そこへの寄付を目的にしたパンのセットを販売したら、想像以上に売れたんです。私の地元でも猫の支援活動をしている人がいるのかな? と思い探して、保護猫活動をしている人たちと知り合いました。そうしてボランティアとして手伝うようになって、「そういえば私、猫を救いたかったんじゃん」って思い出したんです。小学校の卒業文集の将来の夢にも「ムツゴロウ王国の猫バージョンを作る」って書いていたんですよ。

 

── 保護猫活動をやる中で、原点に立ち返ったわけですね。

 

河瀬:そんな時、ネットショップの人が集まる勉強会で「クラウドファンディングでお金を集めて事業をやるなら何をする?」というテーマを考える機会があって。今の保護猫カフェの事業案がスラスラ出てきたんですよね。みんなの反応もよかったし、これはできるなって思えて。たまたま県の職員さんが助成金の制度を教えてくれたりして、あの時は自分で積極的に動くというよりは、周りが自然と動いていった感覚でした。

完璧じゃないから転がっていくし、応援もしてもらえる


── ベーグル専門店と全く違う事業をやることへの不安はなかったですか?

 

河瀬:一切なかったですね。助成金を申請するために4カ年計画を提出して、ビジネスプランはかなり詰めていたんです。ベーグル専門店では経営に携わっていましたし、これまでの経験でどうにかなるかなと。そもそもベーグル専門店を始めるときに、覚悟を持てば不安はなくなることに気付いたんですよね。

 

── というと?

 

河瀬:ベーグル専門店を始める前は、漠然と「こんなことがしたいわけじゃない」って思いながら仕事をしていたんです。振り返れば、「これがやりたいけど会社の決まりがあるから」と、全部周りのせいにしていた。それで全てを自分だけで決めてみようと、実家のパン屋をベーグル専門店にする決断をしたんですよ。もし結果が出なければ、全部自分のせい。そう覚悟を決めたら、モヤモヤがパッと晴れたんです。プレッシャーはあるし、今だって「ヤバい、いつのまにか従業員も猫もたくさんいる……」って思うことはある(笑)。でも、目の前の壁を登るかどうかを決めるのだって自分なんですよね。登ってみればまた見えるものがあるだろうし、そうやってもがきながらやっています。

── なるほど。ベーグル専門店は楽天のショップ・オブ・ザ・イヤーに選出されるなど、順調だったんですよね。新たにネコリパブリックを始めたことに対して、反対する人もいそうです。

 

河瀬:いたと思いますし、今もいると思うんですけど、あまりにも私が鈍感で気付かない(笑)。突拍子もないことを突然やり出すタイプだから、反対しようと思ったらすでに別のことを始めている、みたいな感じで追いつかないのかもしれないですね。そもそも全員の支持を得られるものはないと思っていますし、本質を理解してくれる人たちを仲間にして、熱烈なファンがいてくれた方がいいかなって。実際、4年前に初めてやったクラウドファンディングの時から応援し続けてくれている人も何人もいるんですよ。

── どうして応援してもらえるんだと思いますか?

 

河瀬:凸凹のボコが激しいので、「この人大丈夫かな?」って心配されているんじゃないですかね(笑)。猫のお世話はできるけど、仕事は抜け漏れも多いし、発注の数もしょっちゅう間違える。人生の半分は携帯を探しているんじゃないかってくらい忘れ物をするし、人の名前も覚えられない。でも、人は穴があったら埋めたくなるじゃないですか。極端でバランスが悪いから、「支えなきゃ」って思ってくれているんだと思います。猫助けをしている河瀬がいて、河瀬助けをしている人もいる。現に「別に猫好きちゃうわ」って言いながら手伝ってくれている人もいるんですよ。

 

── つい「完璧にしなきゃ!」と思ってしまいがちですけど、河瀬さんの場合は完璧じゃないことがプラスに働いているんですね。

 

河瀬:完璧にしてしまうと動かないじゃないですか。歪んでいたりバランスの悪いところがあったりするから、転がっていくんだと思います。第一、苦手なことを克服しようと努力したって得意な人には敵わないし、そもそも苦手なことって好きじゃないからやりたくないんですよ。ある分野の適性がないのであれば、持っている人を見つけた方が早い。私の代わりに考えてくれる人がいれば、それでいいと思っています。

24時間365日、大好きな猫のことを考えられる。こんな恵まれた状況はない


── 最初の2年ぐらいはベーグル専門店とネコリパブリックを掛け持ちでやっていたんですよね。それぞれの仕事は河瀬さんにとってどんな存在だったのでしょうか?

 

河瀬:私の趣味は猫なので、どちらも仕事であり趣味であるっていう感じですね。実は、以前のベーグル専門店も、猫をモチーフにしたお店だったんですよ。パッケージも猫だし、猫をかたどったベーグルも作っていて。今も休みはないですけど、毎日が夏休みのような感覚で過ごしています。何が仕事で、何が遊びなのかが分からない。

 

── 毎日が夏休み……! そんな感覚で仕事ができたら楽しそうですが、「好きなことは仕事にしない方がいい」という人もいますよね。

 

河瀬:そう言う人は多分、そこまで好きじゃないんだと思います。24時間365日、ずっと猫のことを考えていられて、しかもそれがお金を稼ぐことに繋がっている。こんなに恵まれた状況はないですよ。

── とはいえ、ずっと猫に囲まれて、猫のことを考えて、それがつらくなることはないんですか?

 

河瀬:猫に関してつらくなることはないですね。もちろん経営者としての悩みは常にあって、つまずくこともある。でも私のエンジンは猫なんですよ。私は本気でこの世の全ての猫を幸せにしたい。仕事に限らず、それが全てのモチベーションです。だから事業のことで悩んだとしても、「この子たちを幸せにしなければ」っていうベースがあるから、エンジンをふかして前に進めるんだと思います。

 

── 当面の目標は「2022年2月22日までに日本の猫の殺処分ゼロ」。その後の展望はいかがでしょう?

 

河瀬:全ての猫を幸せにすること。全ての猫にお腹いっぱいの幸せと、安心して眠れる場所を与えることがミッションです。ビジネス仲間には猫以外の事業をやった方が絶対に儲かるって言われているんですけど、他のビジネスプランを考えてみても全然出てこなくて。

── 全てのベクトルが見事に猫に向いていますが、河瀬さん自身の「こういうふうになりたい」はないんでしょうか?

 

河瀬:なんだろう……。猫とのんびりと過ごせたらいいかな。私が動かなくても回る素晴らしい仕組みがあって、みんなが猫助けをしていて、私は猫とゴロゴロしている、みたいな(笑)。でも今は、ネコリパブリックを日本中に、いずれは世界にも広げていきたいし、ホテルのロビーや廊下で猫がダラダラしているような保護猫リゾートも作りたい。のんびりできるのはだいぶ先かな。猫とハッピーにのんびり暮らせる生活を手に入れるために、当面は突っ走りたいと思います。

 

取材・文:天野夏海 編集:はてな編集部 撮影:小高雅也
 

取材協力:河瀬麻花

 

河瀬さん

自走型保護猫カフェ「ネコリパブリック」首相。2022年2月22日までに日本の猫の殺処分数をゼロにすることを目指し、猫カフェで保護猫の里親探しを行いながら、猫と人との新しいライフスタイルを提案している。ネコリパブリックは全国に7店舗(岐阜店・大阪心斎橋店・東京お茶の水店・中野店・池袋店・西葛西店「キャットプラザ with ネコリパブリック」・広島店)を展開。7月22日にはオリジナルブランド『NECOREPA/』の旗艦店「NECOREPA/ STORE」が東京の蔵前にオープン。

 

ネコリパブリック:里親探しの自走型保護猫カフェ

 


【取材協力店】
ネコリパプリック 中野店
平日:14:00-19:00/休日(祝日):12:00-17:00
定休日: 水(祝日の場合は営業)
住所:中野区中野5-68-9 AKビル3F
電話:03-5942-7166

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