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ある時から「忖度」という言葉は悪しきもの、忌むべきものとして用いられるようになった。しかし、本来は「他者の心情を推し量り、配慮する」ことを指す。それはさまざまな人と関わりながら仕事をし、生活を営む我々の社会においては大事な素養の一つであり、程度の差はあれ、多くの人が何かしらの忖度をしながらそれぞれのコミュニティを立ち回っているのではないだろうか。
今回お話を伺うのは、銀座のクラブ「稲葉」のオーナーママである白坂亜紀さん。その仕事は、まさに忖度の連続だ。稲葉のような高級クラブを訪れる遊び慣れた大人は、単なる酒宴の場を超えた付加価値を期待している。また、大事な契約がかかる接待では、ママやホステスにも客のビジネスを適切にアシストする役割が求められる。細やかな心配りなくしては、とても務まらない世界である。
大学生でこの道に入り、約30年。ホステスにとってのメジャーリーグと呼ばれる銀座で選ばれ続けてきた白坂ママの「忖度の力」について聞いた。
白坂さん(以下、敬称略):ホステスである以上、顔が美しいとか会話上手とか、そういうことはもちろん重要なのですが、それだけでは成り立たない仕事です。営業中だけでなく、地道な「昼の努力」が欠かせません。朝起きると同時に、昨日いらしたお客様に御礼のメールを送るところから始まり、営業開始までかなり忙しくさまざまなことをしています。
白坂:そうですね。その日のお客を掴めるかどうかの勝負は、午前中に決まってしまいます。例えば、朝に連絡をしたお客様に「今日は夕方から接待になったから頼むね」と言われれば、接待で使う料理屋の予約からお土産の手配まで私たちがやるんです。
白坂:銀座のクラブは「第二秘書室」として、お客様のビジネスに貢献する機能も担っていますから。秘書として、常連のお客様の頼み事にはできる限りお答えします。アイドルのライブチケットが欲しいと言われたこともありますし、父親が肝臓がんなんだけど治せる医者を知らないか? とご相談を受けたこともありますが、自分の知り合いにいなくてもツテをたどって何とか探すんです。本当に「何でも屋」のような感じですね。
白坂:もちろん、そこまでしても、うちのお店に来ていただけるとは限りません。それでも、今日じゃなくても明日、もしくは来週、再来週に足を運んでいただくための仕込みを怠らないようにしています。それ以外にも、季節の贈り物や誕生日プレゼントなど、そういうものの積み重ねで人間関係が成り立っていくのではないかと。お送りする年賀状も年々増えていて、今年は2万4000通を超えました。全てはお客様に忘れられないためですね。
白坂:お客様とコミュニケーションをとるために、情報のインプットは基本です。昔は、「銀座の女性は日経新聞を読むものだ」なんて言われていました。あとは野球とゴルフの話題も必須でしたね。ただ、今はお客様の興味の幅も広がっているので、それだけでは足りず幅広く相当量の情報を入れておく必要があります。自宅ではテレビはつけっぱなし、出勤前の美容院でも雑誌や新聞をとにかくめくり、面白そうなポイントや数字などをまんべんなくおさえておく。さらに、10個くらいの得意分野を持ち、それぞれについて1時間くらいは語れる知識を持っておくようにしています。ただ、それは決して知識をひけらかすためではなく、飛び交う会話をきちんと理解し、適切なタイミングで相づちを打ち、会話を途切れさせないように話を継ぐため。つまり、聞き上手になるための話題の仕込みですね。
白坂:そうですね。お客様が務める会社のことに興味を持って、ある程度のことはタイムリーに押さえておく必要があります。お店では会社や仕事の話をしたがらないお客様も多いのですが、それでも例えばお客様の会社で何か不祥事があったり株が暴落したりした日に、いつもと同じようなテンションでお出迎えするのは不適切かもしれませんよね。あるいは、そのことについて愚痴を言いたくて来られているのかもしれない。そこでしっかり受け答えするための情報収集です。会社のこと、自分のことを気にかけてくれているんだなと感じられたら、誰だってうれしいじゃないですか。
白坂:一つは、お客様を喜ばせるために采配をふるう役割ですね。そのためには、この人はなぜ今日お店に来られたのか、まずは「問診」するところから始めます。
白坂:お客様の気分は日によって違いますし、それによって適切な接客は変わってきますよね。もちろん、問診といってもストレートに聞いたりはしませんよ。「今日は暑かったですね」なんて他愛もない会話をしつつ、探り当てていくんです。疲れていて癒されたいのか、何か話したいことがあるのか、それともただのんびりしたいのか、お客様の顔色をうかがい見極めていく必要があります。
白坂:そこは経験が必要ですね。時には「今日はパーッと飲むよ」とおっしゃっていても、言葉のわりに元気がないお客様もいらっしゃいます。注意深く様子をうかがっていると、実は仕事で失敗をして今日はヤケ酒なんだな、ということに気付いたりするんです。そういう場合は、そのあたりの心を上手にくみ取れる女の子を配置します。表面的な言葉だけではなく、相手の心の奥を深く読み込む作業が欠かせません。
白坂:問診はほんの序の口ですよ。接客中は本当にさまざまな目配り気配りが必要で、相手の気持ちを推し量りながら、頭をくるくると回転させて状況を見極めていくのです。しかも、ホステスはお酒に酔った状態でそれができなくてはならない。稲葉のホステスたちには「お店では3時間でいいから、IQ500でいてね」と言っています。それくらい集中できていないと、来ていただいたお客様全てを心地よくさせることは不可能なんです。
白坂:満席になるとお客さんの数もすごいのですが、ママは店内の状況を360度把握できていないと駄目ですね。他の席についていても、あそこの席のお客さん楽しくなさそうだなとか、何か様子がおかしいなと気付いたら改めて問診をし直します。
白坂:ただし、ひたすらおもてなしだけしていればいいかというと、そういうわけでもないんです。
白坂:ホステスは対価を求めない「おもてなし」と、対価をきっちり求める「サービス」を同時に行う仕事です。お客様の横でニコニコして楽しい会話をすると同時に、お客様にボトルを入れていただくために頭を働かせなくてはいけません。その計算ができなければ商売として成り立ちませんから。もちろん、あからさまに「シャンパン飲みたーい」なんてことは言いません。お客様のほうから気持ちよくボトルを入れたくなるような「ツボ」を探すわけです。
白坂:例えばいつも接待で使ってくださる常連のお客様が、プライベートでご友人を連れてこられたとします。この場合、キーマンになるのはどちらの方だと思いますか?
白坂:それが、実はご友人の方だったりします。例えば、ご友人の様子をうかがっていると、どうもソワソワされている。聞けば「今日、実は銀座デビューなんだ」と。そういう流れがあれば、「じゃあ記念にシャンパンを飲みませんか?」と自然に話を振ることができますよね。お祝いという形であれば、常連のお客様にも気持ちよくボトルを入れていただけるわけです。
白坂:お客様の顔色を見て、今日はあまりお金を使いたくなさそうな雰囲気であれば、ママの裁量で「ここは私たちからのお祝いでシャンパンを開けますね」とサービスすることもありますね。そうすると常連のお客様に「僕の友達を大切にしてくれてありがとう」と感謝していただける。そして、次はボトルを入れよう、また接待で使おうと思っていただけるんです。
白坂:そうですね。直接的なアシストというよりは、その接待に応じた最適な雰囲気づくりですね。勝負接待の時はだいたい予約をいただけるので、情報収集をして備えることができます。商談相手はどんな方なのか、キーマンは誰でどんな話題がお好きなのか、それに合わせて配置する女の子を決め、準備万端で臨むことができるんです。問題は、事前に情報収集ができない突発的な接待です。
白坂:例えば1軒目の接待が不調に終わった時などに、切り札として銀座のクラブに連れてこられるケースですね。そういう時はやはり最初に問診をして、状況や関係性を把握するところからスタートです。その方々がどういう取引をしているのか、どんな力関係なのか、新規で仕事を取りたいのか、今の契約をそのまま継続したいのか、その状況によって話の持っていき方も変わっていくでしょうから。
白坂:そうですね、商談がまとまったというご連絡は毎日のようにいただきますが、1日で何億、何十億といった規模のお話もあるようです。
白坂:とにかく何かお客様のお役に立てることはないか、それを常に考えているからではないかと思います。昔、銀行から融資を止められて困っている経営者のお客様がいらっしゃったんです。その銀行の支店長がたまたま常連さんだったので、ご紹介したらすんなり10憶の融資が決まったこともありました。今はその方は経営から退いたのですが、会社は無事に残って未だにご連絡をいただけますね。そういうことがあると、やっていてよかったな、銀座のクラブとしての機能を果たしたなと感じます。
白坂:そこが醍醐味でもあります。何せ、お客様のお子さんの結婚のお世話もしたことがありますからね(笑)
取材・文:榎並紀行(やじろべえ) 編集:はてな 撮影:小野奈那子
取材協力:白坂亜紀
1966年、大分県竹田市生まれ。早稲田大学在学中に日本橋の老舗クラブに勤務、ほどなく「女子大生ママ」となり注目を浴びる。現在は銀座でクラブ「稲葉」、ラウンジ「稲葉」、和食「穂の花」、Bar「66」の4店舗を経営。銀座社交料飲協会(GSK)理事として銀座緑化やミツバチプロジェクトなどにも携わる。著書に『銀座の流儀』(時事通信社)、『銀座の秘密 ── なぜこのクラブのママたちは超一流であり続けるのか』(中央公論新社)がある。
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