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自分に向いている「本来の仕事」とは?20代・30代に伝えたい、コミュニティーで実践する無理しないキャリアアップ術

自分に向いている「本来の仕事」とは?20代・30代に伝えたい、コミュニティーで実践する無理しないキャリアアップ術

コミュニティーへの注目が再び集まっている。以前から朝活や異業種交流会、ビジネススクールなど、会社の外で学ぶ機会はあったが、最新のコミュニティーは特に20代から30代のスキルアップ、キャリアアップしたいと考える若手ビジネスパーソンを惹きつけているようだ。その理由を、「朝渋」というコミュニティーでコーチング部の部長を務めている中村勇気さんに聞いた。

 

現在、プロコーチとして個人の能力開発をしつつ、スタートアップ企業で組織開発や社員の能力開発のパーソナルトレーニングを展開する彼が考える「コミュニティー」とはどのようなものなのか。経歴を辿ることで見えてきた仕事観に迫る。
 

 

シェアハウスは今の自分と理想の自分の「中間領域」コミュニティーだった


── 中村さんはいつからコミュニティーというものを意識するようになったのでしょうか?

 

中村さん(以下、敬称略):「ツチラボ」というシェアハウスを運営した時ですね。スタートアップや人材業界の1年目の男4人で、一軒家を借りて社会人の1年目から7年くらい運営していました。僕は新卒で株式会社ジョブウェブという人材ベンチャーに入社したこともあって、同期が5人と少なかったんです。だから「社外同期」を作ろうと考えて、同じようなベンチャーやスタートアップの人事の方を経由して、同期10名未満の会社の人を集めてコミュニティーを作る試みもしていました。全員で30~40名くらいになりましたね。

 

── ツチラボには、どんな人が集まっていたのでしょう?

 

中村:「何か挑戦したいことがある人」です。ツチラボ自体が、今の自分と理想の自分の中間領域というか、いろいろなことを試せる場として機能していたんです。例えば僕たちが何かを始めようとしてネットで調べると、出てくるのはエッジの立った経営者の話とか、尖りきった人の話ばかりじゃないですか。こういう人にスポットライトが当たっていると、これから頑張ろうって人は今の自分とのギャップに意気消沈しちゃうんですよ。「私はこうはなれない」って。

 

それに対してツチラボはあくまで「家」なので、今の自分として生活しつつ、なりたい自分になってみることができる場だったんです。例えば、「写真家になりたい」という目標がある人は、ツチラボの空いている部屋で個展を開いたりもしていましたね。

 

── 社会人インターンという動きも出てきたり、移行期を作れるような場は求められていますね。

 

中村:一気に自分を変えられる人もいますけど、徐々に変えていきたいという人も多いですからね。この時の「試せる場としてのコミュニティー」という経験が、今もコミュニティーを持っている理由です。

 

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参加者であり提供者としての自分を発揮できるのが、今のコミュニティー


── 今は朝渋の部活の一つである、コーチング部の部長としても活動されていますよね。

 

中村:朝渋自体は、早起きして時間を有効活用したい人のコミュニティーです。井上皓史くんという株式会社Morning Laboの取締役が作りました。毎朝5時に起きて、22時に寝ている人なんですよ。

 

── これまでも「朝活」など、朝の時間を有効活用しようという動きはありましたが、それと朝渋のコミュニティーは、違いがあるのでしょうか?

 

中村:これまでにあった朝活の文脈で語られるコミュニティーは、コンテンツは運営側が提供して、参加者は受け手(消費者)として参加することが多かったと思うんです。朝渋は、参加者が自分たちで主体的にコンテンツを作るんですよ。「ボルダリングしましょう」「朝から料理作りましょう」など、自分がやりたいことを参加者が提案するんです。参加者でもあり提供者にもなれるのが、朝渋のコミュニティーの特徴ですね。

 

── 一体どんな人が参加しているのでしょうか?

 

中村:20代から30代前半くらいの人が多く集まっています。大学生もいたり、人事もいたり、エンジニアもいたり。話していたら、実は有名なベンチャー企業の取締役だったなんてこともありました。肩書で話をしていないから、後でその人がどんな立場の人か知って驚くことも多いですね。

 

── 今はどんな活動方針なのでしょうか?

 

中村:自分がやりたいこと、できることを決めて、そのために時間を使う朝にしようとしています。真面目なコンテンツでもいいし、漫画をみんなで読むとかカジュアルなものでもいいんです。テーマは朝渋の運営者 井上くんが大事にしている「自分軸を見つける」という価値観です。自分軸というのは、自分はこれがやりたいっていう「意志」と、どんな価値を提供できるかっていう「技術」や「能力」があって、それらを使いこなせている状態ですね。才能や能力をペットだと想定すると分かりやすいかもしれません。

 

例えば、犬もトイレなどのしつけがちゃんとできていたら、自分が旅行に行く時に友達へ気兼ねなく預けられますよね。でも反対に、すぐ噛み付いたりするようだったら預けられない。それと同じように、自分の才能や技術、能力もしつけをする必要があるんです。才能を飼いならさないと、発揮する場面が分からなかったり、人を傷つけてしまう方に使ってしまう恐れがあったりします。

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図解しながらわかりやすく説明してくれた


── 才能や能力を見つけるだけでなく、しつけすることも重要なんですね。

 

中村:コーチング部ではその才能や能力を見つけて、しつけができている状態にまでして、人に貸し出す場所も提供していますね。例えば文章が書ける自分が、料理ができる人と出会ったら、料理の記事を書くっていうプロジェクトを走らせることができますよね。朝渋コミュニティーは、こういったコラボが参加者発信で生まれている場なんです。
 

コミュニティーの落とし穴:「参加すれば成長できる」


── コミュニティーに行くと自分を成長させられそうですね。

 

中村:成長機会は提供できると思いますが、「コミュニティーに行くと自分を成長させられる」という考え方は、ちょっと危険でもあるんです。消費者として関わるだけだと、得られるものは少ないんですよね。「主催者はどう楽しませてくれるの?」という消費者感覚じゃなくて、自分で経験を作っていくのが大事なんです。その時に持っていると役に立つ考え方に「ぐるぐる」というものがあります。

 

── PDCAサイクルのようなものでしょうか?

 

中村:近しいですね。まずは自分ができることを「タグ化」することから始まります。例えば僕だったらコーチングとか。次にそれをコンテンツにします。ワークショップという参加しやすい形にするなどですね。次の段階が「仲間内でトライし、仲間を広げる」です。この練習期間がないままに独立や転職という環境を大きく変える選択をすると、自分にどれだけの価値があるか分からずに失敗してしまうケースがあるんです。
 

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「ぐるぐる」の詳細はこちら


── 練習の場としてもコミュニティーは機能するんですね。

 

中村:仲間内でトライしていると、コンテンツのレベルが上がっていきますよね。参加者のフィードバックも割と率直にもらえますし。そうすると4段階目として、「自分を広める」というフェーズに入ります。自分がいるコミュニティーの外にも自分が広まっていく状態です。そして、「うちでもワークショップやってよ」ってチャンスを掴む5段階目に入っていくことができます。この1から5の段階をぐるぐる回していくことが、コミュニティーに参加する上では重要になってきますね。
 

コミュニティーで見つかる「本来の仕事」とは


── 身近なところから「ぐるぐる」し続けることの大切さがわかりました。

 

中村:今の時代、独立するにしても、会社の中でキャリアアップしていくにしても、自分のキャリアは会社に頼るのではなく、自分で作っていく「個の時代」になっていますよね。その中で自分がしたい仕事を見つけ、かつ他者からも求められる状態でいるためには、「生産者として何事にも関わる」という癖が必要なんです。「何してくれるの?」という消費者感覚でのコミュニティー参加は、バラエティ番組で例えたらガヤ席にも座れない、その他大勢の見物客でいることと等しいです。そのままだと、あなたにスポットライトが当たることはない。

 

── 「コミュニティーに行ったら何かもらえるんじゃないか」って考えるのではなくて、「コミュニティーで自分が何かを作る」という生産者意識が必要なんですね。

 

中村:でも、できないことで無理やり生産しようとするとしんどいじゃないですか。もしくは、相手に喜ばれてないことを生産しても、誰もそれを買ってはくれないですよね。「自分ができちゃうこと」「自分もしたいこと」「相手も喜ぶこと」っていう、この3つの円が重なっているど真ん中で勝負していけば、無敵状態なんですよ。生産者っていう意識がなくても生産者でいられる状態が一番良いです。

 

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── 「生産しよう」って考えるのって、ちょっと重いですよね。

 

中村:そう。人には、「誰に言われなくても頑張れちゃう領域」が必ずあるんですよ。さかなクン(敬称略)とかその例ですよね。「魚が好き」っていう思いを突き詰めていった結果、「ファインディング・ドリー」の字幕・吹替の監修と声優を務めたり、海洋生物学の教授が教えを請いに来たりしているわけです。最初は「やりたい」っていう気持ちでひたすら研究をしていたけれど、その成果を自分だけのものにするのはもったいないと気付いた。そして、伝えるようにし始めたらブレイクした。ど真ん中で勝負しているんです。

 

さかなクンは生産者に見えるし、実際にすごい人なんですけど、始まりは「好き」っていうところからだったし、誰にでもこういった無意識のうちに生産できる領域があるんです。みんながそういう領域で生きられたら、生きやすいはずなんですよね。自分がしたいと思って、しかも無理なくできて、かつ他者から求められることをする。これが「本来の仕事」です。今のコミュニティーは、「本来の仕事」を疑似体験できる場所の一つということだと、僕は思います。

 

 

* * *

 

 

最新のコミュニティーは、「何か教えてほしい」「何かを得たい」という消費者意識が強い人にとっては、一見すると厳しい場に見えるかもしれない。一方で、夢や目標がある人が提供者になることで、一時的に理想の自分になってみる場としては、非常に良い機会として機能するであろう。

 

今の自分と理想の自分とのギャップに悩んでいる人は、その中間領域を埋める手立てがないかを考えると、「好きだからできる仕事」、かつ「人から求められる仕事」を見つけることができ、キャリアアップにもつなげられるのではないだろうか。

 

取材・文:佐野創太

 

 

 

取材協力:中村勇気

1985年生まれ。鳥取県鳥取市出身。滋賀大学卒業後、2008年に株式会社ジョブウェブに入社。2014年にはランサーズ株式会社に転職し、黎明期だったクラウドソーシングを市場に浸透させるべく、当時社員30名ほどの社内で法人事業部の立ち上げを行った。2018年にtwo edge, LLCを設立。現在は、人・組織が必ず持っている勝ちパターンを見つけ、エッジの立った人材、組織に変わりための習慣・仕組みづくりのコンサルティング、パーソナルトレーニング、コーチング、研修、コミュニティー運営、メディア発信を通じて行っている。
HP:勝ちパターン発見メディア「WHEN EDGED」
Twitter:@2sideEDGE
Facebook:中村勇気

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