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サウナが僕に教えてくれたこと〜「サウナー」という仕事をするきっかけ〜(寄稿:ヨモギー)

サウナが僕に教えてくれたこと〜「サウナー」という仕事をするきっかけ〜(寄稿:ヨモギー)

こんにちは、ヨモギーと申します。サウナの愛好家をしております。サウナが好きで毎日通っていたら、職業が「サウナー」になった僕が「サウナー」になったきっかけや「サウナー」としての仕事へのこだわりについて、紹介したいと思います。
が、その前に大好きなサウナについてもっと知ってもらいたい! ということで、まずは全力でサウナについてプレゼンさせてください!

ちなみにこのプレゼン資料は、kasumiさんのこちらの記事を参考にしました。

会社で話の通じない上司、満員電車、少子高齢社会、コンビニで買ったおでんの大根が固いなど、日本はとてもストレスの多い国だと言われています。悩みを抱え、疲れている人をよく見かけます。そんなあなたにオススメしたいのがサウナ。

サウナに入るとなぜかスッキリします。ただし、その効果はあまり長続きしませんが。

僕は、人間の三大欲求にもう一つ追加するならサウナ欲だと思っています。サウナでストレス解消したい!

現代人は、科学の進歩によりエアコンに飼いならされています。温度変化に弱い!

逆にサウナ好きは温度変化に強い! どこに行っても大丈夫そう。これはつまり……

この厳しい世の中を生き残るためにも、サウナへ行こう!

【ちょっと一息】サウナとより深く付き合うためのコツ
サウナの入り方をよく聞かれるのですが、正解はないと思っています。人それぞれ、体調や環境によって変えたらいいのではないでしょうか。でも、サウナ後には水風呂へ入ってほしいです。最初は冷たいですが、世界が広がります。
僕は毎日サウナに入っているのですが、心掛けていることがあります。それはその都度、気持ちをリセットして臨むということです。そのサウナや水風呂に先入観があると、純粋に受け入れられなくなります。そうすると「あのサウナの方が良かった」などと相対的な感想が出てきます。これは本当に余計です。慣れは禁物で、よく知っているサウナでも「初めて入るぞ!」ぐらいの気持ちだと純粋に受け入れられるんです。「入ってしまったらそこに相対的価値観はない。その中で起きた現象だけを感じること」と僕は自分に言い聞かせています。
良いサウナに入っていると精神から感覚の世界に変わり、思考がシンプルになってくるんです。その状態は、決断をするのに向いていると思います。僕はサウナで一人会議をよくしています。サウナの中で決断したことは、後で思い返して良かったと思うことが多いです。

社会人にサウナを勧めるプレゼンテーション

サウナを好きになったきっかけ〜サウナが仕事になるきっかけ

15年前ぐらいに精神を病んでしまい、実家のある北海道に帰っていたんです。イライラして壁をパンチして壊したり、眠れなくて胃潰瘍になるまで酒を飲んだりと、鬱の症状もなかなかひどいものでした。
通院を始めて3カ月ぐらいたった頃、フラッと入った金券ショップでホテルのサウナチケットを見つけて、サウナに行ってみたんです。それ以前も、サウナはたまに行くことはありました。でもその時に行ったサウナで、「あれっ!? 悩みが消える時があるかも!?」と気付いたんです。それはサウナを出て水風呂に入ってから、休憩用の椅子に座っている時でした。「これは!」と思い、わらにもすがる思いで毎日サウナに通いました。

そうすると、3カ月ほどで通院が必要ないぐらいに気分が晴れてしまったのです。これはサウナが鬱に効くわけではなく、僕がたまたまのタイミングでサウナに入っていたからかもしれません。だけど、とにかく絶望の淵から蘇ることができました。それからは生活を持ち直し、サウナに毎日のように入りつつ、普通に働いて普通の暮らしをしていました。
それからしばらくたって、ふと気付いたんです。「自分はあの時、サウナに救われたのに恩返ししていない!」と。

そこで何ができるかを考え、まずサウナに詳しくならないと駄目だと思いました。そして、サウナの専門書を数冊買ってみたんです。そうしたら科学や物理の話ばかりでほとんどチンプンカンプン。自分は理系だったのに、どうしてこんなに理解できないんだとそれまで不勉強だった自分を恨みました。
そうして、サウナ業界の人たちはどうやって知識を身に付けているんだろう?
と疑問に思い調べたところ、社団法人日本サウナ・スパ協会の全国会議に一般人も参加できるということを知りました。たしか参加費は1万5千円。思い切って参加することにしました。民間の参加者は自分だけで、協会の偉い人かサウナ施設の経営者や支配人しかおらず、会う人みんなに「よく来たね〜」と驚きながら言われたのを覚えています。僕はなんて場違いな場所に来てしまったんだろうと思いつつも、「サウナに救われたので恩返ししたいと思い、何ができるか探すために来ました!」とだけ伝えました。とにかく何も分からない場違いな素人なのですが全国会議にその翌年、さらにその翌年と毎年参加するようになりました。

どんな小さなことでも極めると周囲は認めてくれる!

話は少し戻って、全国サウナ・スパ会議に参加するようになった頃、僕は中規模クラスのビジネスホテルで働いていました。最初は飲食のサービスをしていたのですが、ふとしたきっかけで内勤をすることになりました。内勤の仕事って電話の取り次ぎをしたり、いろんな部署に手配をかけたり、全ての部署の仕事が見えてくるんです。そこで僕は、一流ホテルのサービスに興味を持ち、勉強するためにいろんなホテルに宿泊しに行きました。ベル係、クローク、施設係、靴磨き、ランドリー係、駐車場の管理人など、全てが超絶のプロフェッショナル。サービスが本当にすごいんです。靴磨きの有名人がいるし、一流のランドリーの人は、ボタンがない服がクリーニングに来たら、どんなブランドの服でも同じボタンを探して付けてくれます。

プロフェッショナルが集まる一流ホテルには自分の専門分野を極める土壌があり、プロフェッショナルとして極めた人はとてもリスペクトされている。そんな環境はうらやましいけど、自分の職場でできるのだろうか? で、自分の職場に戻り何ができるかと考え、「電話対応のプロフェッショナル」になろうと決意したんです。

それからは職場のホテルで鳴る電話は、自分が全て最初に取って対応するようにしました。取れる電話は自分が全部取る。そうしたら周りの見る目も変わるし、気付けば「電話対応が一番上手い人」になっていたんです。その時の上司はとてもよく気付く人で、「その能力を生かしてもっと他の業務をしてくれ」とより責任の重い仕事をさせてくれるようになりました。何かを極めることで周りが認めてくれる、そして自分自身も変化するきっかけを作ることができる。その時、気付くことができました。

自分は「サウナが好き」を極めることにした

ホテルの仕事もしつつ、サウナの発信もしたいという欲が高まり、SNSでサウナの情報を発信することにしました。「○○のサウナに行きました」みたいな報告程度から徐々に、温度や湿度、ストーブの種類、水風呂の水質など専門的な知識も身に付いてきて、マニアックなことも発信できるようになりました。この頃はサウナが仕事になるなんて夢にも思っていません。でも、サウナが好きな気持ちだけは自信がありました。

浅い知識しか持ち合わせてない僕でも、「サウナが好き」を極めるという自分の軸を作ることを決断しました。当時、サウナの専門家や有名な愛好者はいたのですが、後追いしても仕方がないと気付き、あくまで自分の軸である「サウナが好き」を実践することにしました。僕の他にサウナ愛好家はいることは数多く知っていますが、「好き」を追求するのはすごく難しいのです。「好き」を認められると、評論家・批評家的なポジションを求められます。そうなると、情報のマウンティング合戦みたいなのをしなくてはならなくなります。一度、評論家・批評家になってしまうと、愛好家としての「こころ」を失ってしまうと思うんです。僕はサウナを愛したいですし、できることならサウナからも愛されたいのです。なので、僕は愛好家としてのスタンスだけは頑なに守るようにしてきました。一応、補足しておきますが評論・批評がいけないということはありません。ただ僕には向いていないのです。

気付いたら「プロ」と呼ばれていた

僕は自称「サウナー」です。よく「プロサウナー」と称されていますが、気付いたらそう呼ばれていました。先に紹介した全国サウナ・スパ会議で、僕の名札の肩書きが「プロサウナー」になっていたのが最初だと思います。恐らく協会の人が面白半分でそうしたのでしょう。そんな縁もあり、協会の新聞にも出させていただきました。そうしているうちに、テレビ、ラジオ、雑誌などメディアから「プロサウナー」としての取材の申し込みが結構くるようになったんです。僕の他にも批評、評論を行う専門家の方はいらっしゃるのですが、僕みたいに愛好家としてメディアに出る人は非常に少ないので、これまた別の需要があるのかと思っています。

「ただの愛好家がサウナを仕事にする」ってすごく難しいことです。当時の僕は、ホテルマンとしても仕事をしており、本当にやりたいサウナに関する取材や執筆を全て受けるには、時間が足りな過ぎる状況でした。

たまたま働いていたホテルが改装で長期休業になるタイミングと重なり、とうとう僕はサウナを仕事にすることに。当時、今まで時間が足りなくてできなかった仕事を全部やったら仕事として成立すると正直思っていました。しかし、いざやってみると、仕事の依頼も安定せず、金銭的にも難しいといった不安も山ほどありました。好きなだけではお金が稼げるはずがありません。いわゆる、マネタイズができていなかったのです。しかしブレることなく頂いた仕事をコツコツと続けてみたら、取材や執筆、講演、コンサルやプロモーションの依頼など続々と仕事が入るようになりました。最初、「これは間違っていたのでは」と後悔しかけていたのですが、一つの仕事をこなすとそれをきっかけに次の依頼が入る。それが雪だるま式に膨らんでいくという現象が見られました。

常に自分を疑う。サウナを仕事にする事への矜持

僕には、「可謬(かびゅう)主義」という思想が根底にあります。この思想はカール・ポパーという哲学者の本を読んで知りました。これは「知識についてのあらゆる主張は、原理的には誤りうる」という考え方です。「世の中に絶対はない。自分も間違っているかもしれないし、他人も間違っているかもしれない。絶対的な知識は存在しない」という考えです。突き詰めていくと、サウナは科学なのです。科学は後々に反証されることがよくあり、全ての科学はその可能性があるということです。これは「常に自分を疑え! たまに他人も間違っていることがあるかもしれないぞ!」ってスタンスです。成長のために考えが変わるのは仕方なくて、他人の考えが変わることにも寛容になるべきと考えています。そして、自分自身に対しては常に疑うようにしています。「懐疑を通過したものは強い」と考えているからです。なので、今は自分を疑った結果、愛好家であることにアイデンティティーを感じています。しかしそれも改める時がくるのかもしれません。ただ、今は愛好家というスタンスを崩すつもりはありません。それが現段階の考えです。

それともう一つ、サウナ以外のことにも興味を持つことを心掛けています。「サウナを知るにはサウナ以外のことから知る」という考え方です。「静寂を知るには喧騒を知らなくてはいけない」が如くです。愛好家は「それが絶対正義!」という一元論的思想に(私も含め)陥りやすいので、その対極の思考があることを忘れないようにしています。いつもサウナが正しいとは思っていません。それが僕のサウナを仕事にする事への矜持です。

なので、いろいろな知識に触れられるよう、社会人になった後こそ勉強が必要だと思っています。僕は数年前にサウナ・スパ管理士というサウナの最上級の資格を取得したのですが、まだまだ勉強が足りないと自覚しています。定期的に図書館へ行って専門書を読んだりしています。よく言えば自分に謙虚なのかもしれませんが、悪く言えば自信が足りません。しかし自分に満足してしまうと、どうしても奢りが出てしまうのでこれでいいのかなと考えています。余計なお世話かもしれませんが、これを読んでいる社会人の皆さんも、ぜひ仕事以外の本を読むなり勉強をするなりしたらいいと思うのです。とてもショックなことが起きたり、何かに行き詰まった時、それが盾になってくれたり大事な決断をするきっかけになったりするかもしれません。僕は本を読んだり勉強したりすることで、「自分が何も知らないこと」を知りました。これは大発見で、本当に生きるのが楽になりましたし、知ることが楽しくもなりました。

サウナに恩返ししたいと思った時に買ったサウナの専門書、最近になって改めて読んで見たら半分くらいは理解できたんです。でもまだ半分です。サウナはまだまだ僕の好奇心を満たしてくれそうで楽しみです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

編集:はてな編集部

著者:サウナーヨモギダ(愛称:ヨモギー)

北海道旭川市生まれ。毎日朝晩サウナに入る愛好家。サウナの良さを広めるために活動している。トークイベントの主催、テレビ、ラジオ、雑誌などのメディア出演、講演活動、コンサルタント、執筆など活動は多岐にわたる。

Twitter:サウナーヨモギダ(ヨモギー) (@yomogida) | Twitter

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