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おもしろ部署探訪~大日本印刷株式会社 コミュニケーションビジネス開発部 FUN'S PROJECT課~創業140年超の企業で生まれた「異端なチーム」への期待

おもしろ部署探訪~大日本印刷株式会社 コミュニケーションビジネス開発部 FUN'S PROJECT課~創業140年超の企業で生まれた「異端なチーム」への期待

世の中にはさまざまな仕事がある。一見すると同じ部署名でも、企業の数だけ手掛ける仕事内容は多様なうえに、企業や社会における役割も異なる。この連載では、そんな世の中に存在する企業の『部署』にフォーカスし、それぞれの部署の役割や仕事内容、ポリシーなどに迫る。

今回は、大日本印刷株式会社 コミュニケーションビジネス開発部FUN'S PROJECT課を訪問。この部署が手掛ける『FUN'S PROJECT』は、日本が誇るアニメやマンガ、ゲームなどのコンテンツの魅力を発信し、クリエイターやコンテンツホルダーとファンをつなぐ場として生まれたもの。そして、140年を超える歴史を重ねてきた老舗大企業で自発的に生まれた非公式プロジェクトが今、大きく会社を変えようとしている。使命感を持って、全く新しい事業領域にチャレンジするメンバーの姿を追った。

 

スタートは会社非公式のプロジェクト

―― 『FUN'S PROJECT(ファンズプロジェクト)』は、アニメやマンガ、ゲームなどに関係するプロジェクトですよね?どうしても、印刷業界の老舗 大日本印刷(以下、DNP)のイメージと直接的に結びつかないのですが。そもそも、どんなきっかけから始まったのでしょうか?

 

浅羽さん(以下、敬称略):元々は、会社非公式のプロジェクトから始まったんです。2016年ごろから、社内で「何か新しいことをやろうぜ!」という動きがあって、0から1を作るのが好きな企画部門のメンバーを中心に20人くらい集まって動き始めました。私もその頃からの一員です。

 

実は、当社では数年前からゲームの筐体の開発や関連プロモーション、ライセンス事業などエンタメ領域のビジネスを手掛けていて、この領域の受注が伸びているという背景もありました。関連するコネクションもありましたから、社内外のリソースを活用して、将来のビジネスにつながる、新しい何かを生み出そうと考えていたのですね。

 

それで社内アンケートを取ったり、企画アイデアを出したりしていく中で、「アニメ業界における人材育成事業はどうだろうか?」というアイデアが生まれてきました。アニメの制作現場の方が疲弊しているというのはニュースで見聞きしていましたし、製作会社の人からは「実践的な教育の場が不足している」という話を聞いていました。だったら、私たちが学びたい人と働きたい人をマッチできる仕組みを作ればいいのではないかと考えたのです。

大日本印刷株式会社 コンテンツコミュニケーション本部 コミュニケーションビジネス開発部 FUN'S PROJECT課 浅羽 慎太郎さん

―― 会社非公式のプロジェクトって珍しいですね。DNPの中ではよくある動きなのでしょうか?

 

福富さん(以下、敬称略):いえいえ、そんなことはないですよ。非常に珍しいケースです。私がこのプロジェクトにジョインしたのは、具体的検討に入った段階でした。元々は技術畑の人間でしたが、徐々に新規事業に関わることが増えていって、その流れで関わることになりました。これまでもたくさんの新規事業が立ち上がっていましたが、今回のようにボトムアップ型で実現したケースはこれまでにないですね。それだけ、上層部も覚悟を決めたプロジェクトなんだなという印象があります。

大日本印刷株式会社 コンテンツコミュニケーション本部 コミュニケーションビジネス開発部 FUN'S PROJECT課 福富 大介さん

浅羽:会社公式のプロジェクトとなるまで、2年近くかかりました。昨年(2018年)の10月にちょうど組織改編があり、コンテンツ領域の事業に本格的に取り組もうという会社の思惑と合致したのかと思います。そういった意味でも、このプロジェクトに対する期待値は高いのでしょうが、前例がないだけにどこかで「こいつら何をしてくれるの?」みたいな見方があるのかもしれません。

 

―― 初期メンバーは浅羽さんだけですか?次にジョインされたのは福富さんで、その次はどなたでしょうか?

 

光永さん(以下、敬称略):このメンバーの中で3番目にFUN'S PROJECTに加入したのは私ですが、社歴はまだ3年目。入社していきなりこのプロジェクトに配属された時には非常に驚きました。配属されるまで、DNPがこういった領域の事業を手掛けていることを知らなかったくらいですから。今はコンテンツの製作やメディアとの協賛、プロモーションを担当していますが、学生時代に趣味レベルで動画を作ったことがあるぐらいで、まさかそれが仕事になるなんて本当に思ってもいませんでしたね。

大日本印刷株式会社 コンテンツコミュニケーション本部 コミュニケーションビジネス開発部 FUN'S PROJECT課 光永 尚詩さん

清水さん(以下、敬称略):私と小島は社内公募を経て、昨年(2018年)の4月に異動してきました。今は営業企画という立場で、新規窓口の開拓や新コンテンツ、イベントの企画などを担当しています。異動する前は、包装事業部で営業を担当しており、7年間ずっと同じ顧客を担当していました。元々企画職を志望していたのですが、なかなか異動が実現しない中、今回の公募を知ってステップアップしたいと思ったのと、そもそもアニメやマンガ、ゲームが好きだったので、そういうサービスに関われるならとチャレンジしました。公募があるまで、そもそもこういったサービスをDNPが手掛けていることすら知りませんでしたね。

大日本印刷株式会社 コンテンツコミュニケーション本部 コミュニケーションビジネス開発部 FUN'S PROJECT課 清水 恵美さん

小島さん(以下、敬称略):私は以前、システム部門にいました。14年間ずっと同じ部門でプロジェクトマネジメント(PM)の仕事に従事していたのですが、少しマンネリ化していたと言いますか……もっとステップアップしたくて、良い部署はないかと探していたところで社内公募を見つけ、応募しました。もちろん、個人的にもアニメやマンガ、ゲームは好きだし、システムの知見が生かせるだろうという目論見もありましたね。

 

実は、半年前にもこの公募を見ていたのですが、その時は仕事が一段落つきそうもなくて応募できず、今回はちょうど良いタイミングだったというのもあります。今の仕事は、企画もやりつつ製作もやりつつ、システム周りのとりまとめもやりつつみたいな、そんな立ち位置で仕事をしています。

大日本印刷株式会社 コンテンツコミュニケーション本部 コミュニケーションビジネス開発部 FUN'S PROJECT課 小島 雄太さん

世の中に爪痕を残すようなサービスにしよう


―― プロジェクトが立ち上がって1年半が経過したとのことですが、現在はどのくらいまでサービス拡大していますか?

 

清水:そこは営業企画を担当する私が説明を……(笑)。FUN'S PROJECT課が手掛けるサービスは、4つにまで広がっています。まずは、日本のアニメ文化を発信する拠点として、アニメの原画や新しい鑑賞技術を活用した展示・物販、ワークショップなどの各種関連イベントを開催している「東京アニメセンター」の運営が一つ。そして、クリエイターを目指す方やコンテンツファンに向けた情報WEBマガジン「FUN'S PROJECT CHANNEL(ファンズプロジェクト チャンネル)」とクリエイター育成サービス「FUN'S PROJECT COLLEGE」の運営、最後は各種コンテンツを活用したグッズをオーダーメードできる通販サイト「FUN'S PROJECT MARKET」の運営で、計4事業となります。

 

―― アニメ・マンガ・ゲームの領域には結構な数の競合がいそうですが、DNPならではの特徴はありますか?

 

浅羽:例えば「FUN'S PROJECT COLLEGE」は、いわばeラーニングのサービス。世の中には今や、絵が上手な人がYouTubeで指導するものから専門学校が提供するものまで、eラーニングのサービスは幅広く存在しています。私たちは、ちょうどその中間に位置するもので、専門性の高い教育を廉価で提供するという特徴があると思っています。しかも私たちは「公式感」を大事にしており、そこが同様のサービスとの差別化ポイントになっています。

 

DNPには、元々多くの出版社とのつながりがあるので、普通だったらなかなか登壇する機会のない漫画家の先生を「FUN'S PROJECT COLLEGE」の講師としてお迎えしたり、イベントにお呼びしたりといったことができます。これは、どこか特定の出版社のみとつながっているわけではない、公的なイメージがあるDNPだからこそ実現可能なことです。そして、そこは他社が手掛けるマッチングサービスなどとはひと味違った安定感だと自負しています。

 

―― 手応えはいかがですか?

 

小島:正直言って、まだ始まったばかりという感覚ですね。浅羽など、企画職出身のメンバーの知恵を借りつつ、人脈を紹介してもらいつつ、私もようやく自走できるようになったかなと。これから自分たちの企画を形にしていくことができて面白くなっていく、そんな段階にあると思っています。

 

―― DNPの社内では、このプロジェクトの存在はどのように受け止められているのでしょうか?

 

光永:私が入社してすぐのタイミングで「東京アニメセンター」ができて注目を集め、同期社員からは「どうなの?」とよく聞かれます。結構興味を持たれていることは確かですね。

 

清水:営業の現場にいると、DNPが新規事業に取り組んでいるようなイメージがなかなか持てずにいました。結局、ビジネスモデルが確立して初めて耳にするんですよね。新規事業は、形になるまで時間がかかりますよね。だから私の古巣の同僚たちの中には、「本当にうまくいっているの?」と思っている人が結構いるかもしれないという感覚があります。だからこそ、しっかりと成果を上げていきたいという思いはありますね。

 

小島:確かにそれはあります。私の古巣であるシステム部門の社員は、アニメやマンガが好きな人が割と多いので「いいな」といった意見や、内容が見えていない分、「どうなの?」と突っ込まれることもあります。新規事業ですから、すぐに軌道に乗ることはなかなかありませんが、早く実績を作って周囲に存在感を示していく必要はあるかなと。そういった意味でプレッシャーは感じています。

 

福富:ボトムアップで出来上がった組織ですし、そもそもDNPはBtoBの企業だったので、こういった生活者向けのビジネスの経験は浅く、だからこそ上層部も関心を持ってくれていますし、期待もされているとは思うのです。期待されているからこそ、「もっといろいろとチャレンジしてほしい」と思われているのだろうなとは、ひしひしと感じています。

 

小島:そうそう。上長をはじめ、プロジェクト内にも「失敗してもいいから、そもそもチャレンジしろよ」という考え方がありますね。そうしないと結果が見えないからだと思います。だから、「全部やってみたのか?」「全部やってみた上で判断しよう」という言い方をよくされますね。

 

―― 上長が失敗を恐れずチャレンジを促すのって、ものすごくよい風土ですね。大企業の風格というか、余裕すら感じます。

 

福富:いえいえ、その根底には危機感があるのですよ。出版をはじめ、印刷事業全体がシュリンクしていく中で、今、私たちは「第三の創業」というキーワードを掲げています。DNPは最初の70年は印刷業、次の70年間はパッケージやエレクトロニクスなど、印刷技術を核とした事業を進めてきました。

 

では、その次の70年はどうすれば良い?という問いに対する1つの答えとして、FUN'S PROJECTがあるのかなと。これからの新しいビジネスにトライする、次世代につながる試金石になれたらという思いもありますし、会社の期待も集まっています。これまでは印刷技術を転用した新規ビジネスを手掛けてきましたが、今回は「技術」ではなく、「サービスそのもの」を自分たちの手で作っているのだという自負があります。

 

浅羽:ボトムアップで新しい領域にチャレンジするという、これまで143年のDNPの歴史になかったことを私たちは今、やっているんです。私たちは、「東京アニメセンター」や「FUN'S PROJECT」の名を残そう、会社だけでなく世の中に爪痕を残すようなサービスにしよう……そういう熱い思いを抱きながら事業を立ち上げました。プロジェクトの中身は、今後も時代の変化に合わせて形を変えていくでしょう。けれども、ここで得た関係性やビジネスを構築する力は、未来永劫そのまま生かせるものだと思っています。

 

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組織風土を変えるプロジェクトに


―― 皆さんの現時点におけるやりがいと今後の展望をお聞かせください。

 

光永:もちろん、まだまだスキルが足りていないと自覚してはいますが、それでも自分が「これを届けたい」「これをやったほうが良い」というアイデアを具現化して、利用者に楽しんでもらったり、ためになっていたりすると実感できる点にやりがいを感じています。新規事業って、本当にやることが山ほどあってパワーも必要です。でも、それぞれの領域のプロに囲まれながら仕事ができて学びも大きい。なので、もっと力をつけて、より良いものを作っていきたいですね。

 

清水:自分が好きな「コンテンツ」に関わっていることはもちろん、価値観の近い人たちと仕事ができて楽しいというシンプルな喜びがあります。また、本社直結の部隊なので、トップの方々が何を考えているのかすぐに耳に入ってくる環境の良さもありますね。反対に、私たちが発したアイデアによって会社の上層部が動いてくれることもあるので、会社に対する貢献度が実感しやすい点に何よりやりがいを感じています。

 

今後の目標は、まずは就活生が目にする会社のパンフレットの見開きページに、このプロジェクトや「東京アニメセンター」の記事が載るくらいまで事業を発展させていきたいです。学生の皆さんがそれを見たときに、「DNPって、自分たちがやりたいことがあったら、それが叶えられる場所なんだ」って思ってもらえたら嬉しいですね。

 

小島:私も自分が興味のある領域の業務に携わっていること自体にやりがいを感じていますが、それ以上に、これまでのシステム開発という一転突破型の仕事ではなく、多くの関係者と一緒になってさまざまなタスクを同時進行で進めていく、全方位型の仕事に魅力を感じています。これまでとは違ったスキルが、確実に身についていると実感しています。将来的には当然、このプロジェクトの発展のために注力し続けていくつもりですが、言うなれば、私はこの職場でゼロから新たにスタートしているので、まずは周囲の人たちの信頼を得て、私ができることが何かを知ってもらうところからと思っています。

 

福富:この会社に入って17年。私くらいの年次になると、なかなか新しいことにチャレンジしなくなってしまうんですよね。それに対して、「もっとこういうことをやっていいんだ」「新しいことをやっていいんだ」ということを私自身が体現し、周囲の人たちの背中を押していけたらと思いますね。

 

浅羽:このプロジェクトは、これまで関わってきた外部スタッフの皆さんが、「浅羽と一緒にやりたい」と言って協力してくださったことで成立しています。個人的には、そこに大きなやりがいを感じています。また、私はとにかくこのメンバーが大好きで、それぞれに強みを持っていて、とても個性的なんですよ。DNPって、比較的似たようなスキルの人が同じの部署に集まる傾向が強いので、出身も性格も得意領域も違うメンバーが集まっているのは非常に刺激的です。みんなこのプロジェクトを成功させたいという熱い思いがあるので、この思いを周囲に波及していきたいですし、それが会社の新たな風土になっていけばと思っています。

 

取材・文:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) 撮影:岡部敏明
取材協力:FUN'S PROJECT - DNPクリエイター共創サービス東京アニメセンター

 

 

 

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