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おもしろ部署探訪~日本たばこ産業株式会社(JT) たばこ事業本部 AP推進部~たばこを吸われる方にとっても吸われない方にとっても、快適で双方が共存できる社会を目指す『分煙コンサルティング』の仕事とは?

おもしろ部署探訪~日本たばこ産業株式会社(JT) たばこ事業本部 AP推進部~たばこを吸われる方にとっても吸われない方にとっても、快適で双方が共存できる社会を目指す『分煙コンサルティング』の仕事とは?

世の中にはさまざまな仕事がある。一見すると同じ部署名でも、企業の数だけ手掛ける仕事内容は多様なうえに、企業や社会における役割も異なる。この連載では、そんな世の中に存在する企業の『部署』にフォーカスし、それぞれの部署の役割や仕事内容、ポリシーなどに迫る。

今回は、日本たばこ産業株式会社(以下、JT) たばこ事業本部
AP推進部を訪問。たばこに対する社会的イメージがネガティブな方向に進んでいく現代において、『分煙コンサルタント』という業務を確立。たばこを吸われる方・吸われない方、双方が共存できる社会を目指し活動を続けるメンバーの姿を追った。

加熱式たばこの誕生とともに生まれた部署は、単なる営業ではなく喫煙する『場所づくり』を行う

―― まずは、AP推進部のミッションと誕生のきっかけを教えてください

下田さん(以下、敬称略):AP推進部は、「低温加熱」という独自の方式を採用した加熱式たばこ『Ploom TECH』、『Ploom TECH+(プラス)』(以降「低温加熱製品」とする)のプロモーション及び、分煙環境整備を主に推進する部署です。

APとは「Active Promotion」の略語。もともとJTの営業活動は、たばこ販売店に対するルートセールスが中心となっていました。しかし、AP推進部では、新しいカテゴリである加熱式たばこについてのベネフィットを、より詳しくお客様に理解していただくために、直接お客様にアプローチしています。また、分煙環境整備は、吸われる方・吸われない方の共存の実現を目指して、さまざまな施設の担当者に対し、直接分煙コンサルティングを実施しています。まさに、「アクティブ」に活動するために誕生したのです。

とはいえ、加熱式たばこでも、たばこ広告の自主基準により、CM出稿するなどの大々的なプロモーションはできません。そのため、まずは手に取っていただき、そのベネフィットをご理解いただくというような地道な活動を続ける必要があります。「ご理解いただくトリガー(きっかけ)は何か?」と考えたとき、この『低温加熱製品』は「燃焼に伴う煙のにおいがない」ことが特徴の一つとして挙げられるので、それが実感できる場所づくりをしようと考えました。

日本たばこ産業株式会社 たばこ事業本部 AP推進部 CRM推進担当 部長 下田 悦三さん

―― たばこ自体は、さまざまな制約がある中でプロモーションを行う、大変難しい商品なのですね。「場所づくり」というと、具体的にどのようなアクションを行っているのでしょうか。

下田:『低温加熱製品』については、事業所と飲食店を中心にアプローチしております。たばこを吸われない方にもご理解いただけるよう、その特徴をご説明させていただいたうえで、使用可能スペースをご提案しております。

永沼さん(以下、敬称略):また、さまざまな施設の方に対し、分煙コンサルティングも無償で実施させていただいています。企業からご依頼をいただき、実際に現場を訪問して風速を計測。においや煙が漏れている原因を探って、改善策を提案するという流れですが、能動的な飛び込みもありますよ。企業が集まるオフィスビルに入って、エレベーターを降りた瞬間にたばこのにおいを感じたら、「喫煙所があるな」と。 そうなったらすぐにビルの管理者につないでもらい、喫煙所を管理する方にアプローチをします。話を聞いてみると、においの問題やしっかり分煙がされていないという課題に気づいてはいたけれど放置していたり、「どうしたらいいのかわからなかった」というお話も結構あるので、そういった問題に対して、私たちが解決に向けたお手伝いをしています。

日本たばこ産業株式会社 たばこ事業本部 マーケティング&セールスグループ AP推進部 CRM推進担当 主任 永沼 舞華さん

―― 無償で分煙コンサルティングをするんですか?

永沼:そうです。お客様からご相談いただいたときも、こちらからアプローチした場合も、同じく無償で相談に応じています。設備の改修や設置工事は基本的に企業やビル管理者の負担になりますが、場合によっては設計事務所に一緒に出向いたりもします。新しい商業施設が立ち上がるときに呼ばれることもあります。私たちとしては、適切な分煙環境の実現を目指しており、「においが漏れている」「クレームが多い」などの問題にも、改善策がある事をお伝えしたい、吸われる方と吸われない方の共存を実現したいのです。

『分煙』という概念は日本発。2020年に向け、積極的に正しい情報を伝えたい

―― 『分煙コンサルティング』のお仕事は、いろいろな知識が必要ですよね。難しいお仕事なのでは?

下田:おっしゃる通りで、法律の知識や建築の基礎知識も必要ですし、空気の流れや、施工図面も読めないといけません。

永沼:私はバリバリ文系の人間だったので、「『負圧*1』って何?どういう状態?」といったところからのスタートでした。「第一種換気方式*2」「第三種換気方式*3」などの換気方式の違いはもちろん、ダクトが天井裏にどのような状態で敷設されているかさえもイメージできなくて……ですから、今も必ずマニュアルに立ち返った上で、お客様に提案をしています。

田窪さん(以下、敬称略):現在、全国に400名ほどの分煙コンサルタントがいます。私は、マニュアルを整備したり研修を実施したりしながら、彼らをハード面、ソフト面の両面でサポートしています。たくさんのコンサルタントがいるので、彼らを安定的にサポートできるようなインフラを整備するのが私の役目。全国の分煙コンサルタントのよりどころとなる、バイブルのようなマニュアルを作り上げたのが、ここにいる下田なんです。

日本たばこ産業株式会社 たばこ事業本部 AP推進部 主任 田窪 大地さん

下田:『分煙コンサルタント』の発想は、実は10年以上前からありました。AP推進部や、『Ploom TECH』が生まれるずっと前の話になります。当時の私は、今後、規制や世の中の状況変化により、たばこに対する風当たりが強くなるだろうということを予測しておりました。だからこそ、愛煙家を守りながら周囲の方々も守る、共存できる社会、すなわち「分煙社会」の実現が必要であると考えていたのです。

今でこそ、「分煙」という言葉を聞けば、ある程度の人は内容をイメージしてくださいますが、当時は誰も理解していませんでした。「分煙」というのは日本で生まれた言葉で、私たちが活動してきた「分煙」という概念が、世界に先駆けて定着してきたことで、日本人の喫煙マナーが形成されてきたという自負があります。

―― これからますます、分煙コンサルティングの存在は重要になってくるのではないですか?

永沼:おっしゃる通りですね。2020年には東京オリンピック・パラリンピックも控えていますし、健康増進法の改正も予定されています。喫煙者を取り巻く環境はますます厳しくなっていくことが予測される一方で、たばこを嗜好品として愛してくださっている方もたくさんいる。私たちは、そういった愛煙家の権利もしっかり守っていきたいと思うのです。仕事においても、「たばこを吸う」というリフレッシュタイムの中で生まれる発想や、喫煙所での交流から生まれるアイデアやコラボレーションもあります。生産性アップに寄与することもあるかもしれません。そのためには、しっかりと吸わない方にも配慮した、分煙されたスペースが必要です。そういった意味でも、今後ますます、私たちの活動の場は拡大していくと感じています。

ちなみに、今回の健康増進法改正によって、新たに罰則が設けられることになりました。「喫煙専用室」が技術的基準に適合していない施設の施設管理者には、罰金が科せられます。現時点でその技術的基準が満たされていない喫煙室は数多く存在していて、今回の法改正によって簡単に「なくしてしまおう」という結論にならないよう、正しい情報を早めに伝え、何ができるのかを提案したいと思っています。

この一年、コンサルティング業務の件数が飛躍的に増えると予測されますし、私たちにとっても、愛煙家の皆さんにとっても大事な一年になると受け止めています。情報不足によって、「難しくてよくわからないから、禁煙にしてしまおう」「お金がかかるからやめよう」とならないよう、積極的にアプローチして情報を伝え、提案していきたいと思います。

「たばこの未来を作る」ためにも、win-win-winな世の中の実現を目指す

―― ルートセールスの経験しかなかったJT社がアクティブなプロモートを行うのは、組織としても「大転換」と言えると思います。現場の方々のマインドを変えるのも、なかなか容易でなかったのでは?と思いますが……。

田窪:おっしゃる通り、これまでルートセールスに取り組んできた方々に、いきなり「開拓営業をしてください」と言っても、なかなか簡単になじむものではありません。そこはまず、研修を実施することで全体的にスキルアップをしていく必要があります。とはいえ、JTの社内に開拓営業に対する知見があるわけではないので、コンサルティング会社とパートナーシップを組み、プロの講師を招いて、ロールプレイも含め、より実践に近い形で研修支援を行っています。

もちろん、研修を行ったからといっても、すぐにマインドそのものが変わるわけではないので、全国15支社を訪問し、個別にフォローしていく必要があると思っています。こちらも『Ploom TECH』の認知拡大活動と同様、とても地道な作業です。私自身も、1年前まではセールス部隊に所属し、ルートセールスを担当していました。だから、より現場の皆さんの気持ちに寄り添った形でのサポートができればと思っています。

私の役割は、伝統ある企業 JTで生まれた新しい営業組織の中で、下田や永沼のようにフロントに立つメンバーの活動を支える、「縁の下の力持ち」と自覚しています。先ほど、永沼も話したような「勝負の年」が控えている中、新規開拓営業を進める担当者全員がスムーズに活動ができるよう、実績が出せるような環境を整えていきたいです。

―― AP推進部は、会社の中でどのような存在だと自覚されていますか?

田窪:今までは、たばこのルートセールスがメイン事業でしたが、規制が強化され、税金も上がっていく状況で、組織としてもたばこ社会そのものとしても存続が危ぶまれている中、ひとつのイノベーションとして「加熱式たばこ」が登場しました。

その魅力をどのようにお客様に伝え、どう拡販していくか、社会とお客様と私たちがどのようにwin-win-winな関係を作っていけるのか、正解がない中で取り組んでいる最先端の部署だと私たちは思っています。少し大きく言えば、「たばこの未来を作っている」という気概を持ったメンバーが集まっているのです。

永沼:田窪の言う通り、最先端の部署だからこそ、私たちは猪突猛進で幅広く、新しいリレーションをどんどん作っていくことが求められています。あれこれ考えるよりも、まずは行動。そうでないと社会の流れの速さや、新しい商品も次々出てくる中で取り残されてしまいます。どんどんアプローチして、ダメだったらすぐ「次!」と切り替えていけるような、そんな姿勢でこれからも取り組んでいきたいですね。

下田:私たちの仕事は、加熱式たばこを勧めているというより、「たばこの文化を変えたい」「たばこを吸われる方・吸われない方のマインドを変えたい」という思いがあります。今は、そのための基盤づくりをコツコツと続けていくつもりです。『分煙コンサルタント』の発想を生み出した10年以上前から作りたいと考えていたチームです。しっかり育てていきたいと思います。

取材・文:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) 撮影:岡部敏明

*1:室内の気圧が低い状態のこと
*2:給気・排気ともに機械で強制的に行う換気方法
*3:排気は機械換気で強制的に行い、給気は給気口などから自然に行う換気方法

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