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おもしろ部署探訪~キリンホールディングス株式会社 ヘルスサイエンス事業部~人が本来持っている免疫に着目。正しい価値をお客様に届けたい

おもしろ部署探訪~キリンホールディングス株式会社 ヘルスサイエンス事業部~人が本来持っている免疫に着目。正しい価値をお客様に届けたい

世の中にはさまざまな仕事がある。一見すると同じ部署名でも、企業の数だけ手掛ける仕事内容は多様なうえに、企業や社会における役割も異なる。この連載では、そんな世の中に存在する企業の『部署』にフォーカスし、それぞれの部署の役割や仕事内容、ポリシーなどに迫る。

今回は、キリンホールディングス株式会社
ヘルスサイエンス事業部を訪問。事業創造部という名称でスタートした部署が2019年4月、新たに「ヘルスサイエンス事業部」という冠をつけ、歩き始めた。その決意の裏には一体、会社としてどのような狙いがあったのだろうか。メンバーひとりひとりが持つ思いとは?「ブランド愛」に満ちたキーパーソンたちに、事業に対する思いを熱く語ってもらった。

新規事業の始まりは「カオス」から。さまざまな物事を見た結果、見つめ直した「乳酸菌」の真の価値

キリンホールディングス株式会社 ヘルスサイエンス事業部 若井 晋平さん

――まずは、皆さんの自己紹介からお願いできますか。

若井さん(以下、敬称略):ヘルスサイエンス事業部は「iMUSE(イミューズ) 」というブランドを中心とした健康事業を展開している部署になります。私の役割は新しいチャネルの開拓で、主に新規案件や海外案件が担当。お客様の要望に合わせ、どのような形態、どのようなルートでお客様に届けていくのかを考えています。

キリンホールディングス株式会社 ヘルスサイエンス事業部 川久保 武さん

川久保さん(以下、敬称略):私は商品開発や製造、品質保証など、モノを作るフェーズに関わっています。若井さんたちが考えたことを具現化していく役割ですね。この部署では商品企画から流通に乗せ、お客様の手に届くまでの全てをワンストップで担当。通常は各部署で役割分担をしていますが、このように一つの事業部で全てを完結させるのは、社内を見渡しても他に例はありません。

キリンホールディングス株式会社 ヘルスサイエンス事業部 塚田 彩子さん

塚田さん(以下、敬称略):私は「iMUSE(イミューズ)」ブランドのPR担当で、CMや雑誌のタイアップ記事などへの広告出稿に携わっています。また「iMUSE(イミューズ)アンバサダー 」というファンを作る活動においては、メルマガやホームページの更新はもちろん、イベントの運営にも関わっています。私自身は、この部署に来てまだ半年足らず。実は私たち3人とも、社内公募制度でこの部署にジョインしているのです。

―― そうなんですね!どのような思いがあって、この部署を志望したのですか?

塚田:元々は、キリンビールの飲食店営業を担当していました。ビールの営業も楽しかったのですが、今は子どもが3人いて、もっと生活者や消費者の視点が活かせる仕事がしたいと思うようになっていたのです。ちょうどその頃に、「iMUSE(イミューズ)」ブランドが誕生し、プラズマ乳酸菌の可能性と「iMUSE(イミューズ)」のコンセプトに共感しました。しかも、部署では上流から下流まで担当できる。そこに惹かれたというのもあります。

川久保:私と若井がジョインした時は、「事業創造部」という名称はあったものの、まだ具体的に何をやるのかは決まっていない状態にありました。私は研究所や工場に勤務し、おいしいキリンビールを作っている自信はあったのですが、なかなか上手くいかないこともあって商品の価値をどのようにして伝えるべきかなど、トータルで考えてビジネスを展開すれば、もっと売れるのでは?と、もどかしい思いをしていました。それをもっとうまくできる会社になっていくべきだと思い、それならば、まずは自分が総合的に何でもできる人間になりたいと考えたのです。技術的なことも、それ以外の仕事もトータルで担当できる部署に行きたいと考えて、社内公募に応募しました。

この部署の最初の印象は、まさに「カオス」。医薬品のグループ会社から来ている人や、健康食品のグループ会社から来ている人、製造や営業、研究の人など、さまざまなバックボーンを持つ個性的な人ばかりが集まっていました。さらに、最初は部長から「好きなことをやれ」と言われて自由を与えられていたので、みんなそれぞれに思い思いのことをしていました。

―― なんでもありの「カオス」な状況から始まって、どのようにして「ヘルスサイエンス領域」にたどり着いたのでしょうか。

川久保:新規事業部の最初のテーマとして、「ヘルスケア」という大きなくくりはあったのです。とはいえ、好きなことをやっていいと言われていたので、私は当時、キリンとはあまり接点のない、介護の現場でなにかできないかなどを考えていました。

若井:私はIoTを活用して、既存の事業と合わせて何かできないものかと考えていました。ところが、なかなか「これは!」という新しいアイデアは生まれず……。それ以外にも、ベンチャー企業の方ともたくさん話をしたり、会社としての出資も少額ながらしていたのですが、ケイパビリティの無い領域では十分に協業できなかったのも確か。1年間ほど模索した結果、やはり自分たちの強みに立ち返るべきだろうという話になりました。

川久保:自分たちの強みをベースに他と組んでいかないと、価値交換が成立しないんですよ。自分が介護の世界に飛び込んでいっても、「キリンが介護で何をするのか?」という話になってしまいます。自分たちの中で、「キリンが強みとしてもっていて、他社に負けない」と信じられるものをベースに事業をしようと決めました。それが「免疫領域」だったということなんです。

実は、キリングループでは約30年もの間、免疫の研究をしていて、アメリカ有数の公的機関である免疫研究所のファウンダーにもなっています。また、グループ会社の協和発酵キリンでも、免疫の抗体医薬を取り扱っていることから、「免疫」に関しては長年の蓄積がありました。そこで、我々が強みである免疫に着目し、事業展開していこうということになりました。

若井:最初に取り組んだのが「プラズマ乳酸菌」を活用した事業の再構築でした。当時はグループ各社がそれぞれ、独自のブランドで商品化していましたが、正直なところ、まだまだ伸びる余地があるように感じていました。このすばらしい素材をさらに強化していこうと考え、当時の事業創造部が舵を取ってブランドを統一。商品パッケージや訴求するフレーズ、キーワードもすべて共通化されたグループ共同のブランド「iMUSE(イミューズ)」が誕生したのです。

さらに、このプラズマ乳酸菌の価値は、一般の方だけでなく、医学の領域に精通している方へも伝えたいと考え、医療関係者に届けるためのチャネルを作りました。それで完成したのが「iMUSE professional 」というラインナップでした。

「やりたい」からこそ持てる、「自由」と「責任」

――ある程度ブランドができあがった時点で、今度は塚田さんの出番になるのですね?

塚田:そうですね。とはいえ、PR活動も決まったセオリーはなく、自由にやらせてもらっています。自分自身、未経験の仕事ではあったのですが、「iMUSE(イミューズ)」に関しては、自分がちょうどターゲット層の年代とかぶっているなと感じていました。ですから、どのような生活シーンに役立てられるかを考えながら、プラズマ乳酸菌や「iMUSE(イミューズ)」の広告がヒットしそうなターゲットを決めていきました。

――未経験のPR活動業務で、しかも「自由に」と言われて、よく頑張れましたね。

塚田:プラズマ乳酸菌や「iMUSE(イミューズ)」そのものに共感してこの部署に入ってきたので、それらを届けたいという思いがありました。「プラズマ乳酸菌を世界に届けたい」という思いは、この部署にいる人なら誰もが持っています。そんな気持ちを分かち合えるから、頑張れるのかもしれません。

――そんな「ブランド愛の強さ」はどこからくるのでしょう?

若井:元々、自分で「やりたい」と思ってここに来た人たちが集まっていることが、背景にあると思います。その上で、「自分たちで決めていい」と言われているので、まるで全員が「部長」のような感覚で仕事に立ち向かっています。自分が最初に商品を開発した時は、私がマーケ・営業部長であり、川久保さんが商品開発・生産物流・品質保証部長のような存在でありました。

当時から在籍していたメンバーで決めた「iMUSE(イミューズ)」というブランドに対し、後から加わったメンバーの意見もしっかりと議論し、その上で決めて行動に移しているので、強い思い入れが生まれます。それは、ブランドや商品に対してもそうですし、物流や営業という仕組みに対してもそうです。そして、仕事をすればするほど、「これを世の中の人に届けたい」という思いは強くなっていきます。

――そもそもキリンホールディングスでは、これまで新規事業に対してどのような考えをお持ちだったのでしょうか?

若井:現在の社長、磯崎(功典氏)の考えが強く反映されていると思っています。社長は約25年前、事業開発の部門に所属していて、ビール事業の傍ら、ホテル開発等に携わっていました。その後、一旦事業開発部門はなくなってしまいましたが、社長になった際に約25年ぶりに再開したという流れです。私たちの所属するヘルスサイエンス事業部は、社長直轄となっており、暖かく厳しい目でフォローいただいています。

川久保:新規事業を創る上でいろんな人の意見を受け入れ、全員の合意がないと決まらない状況では、スピード感に欠けてうまく進まないということが、社長の実感としてあったのだと思っています。だから、私たちの部署の構造も社長、部長の下はフラットになっていて、決裁が通るスピードが信じられないくらいに早いのです。ベンチャー企業のようにスピード感をもってチャレンジしようという意識は、どこかにあると思います。新しいことをやる時に、今までと同じやり方では上手くいかないと感じている、社長はじめ、そんなメンバーが集まっているのかもしれません。

会社と社会に新たな価値を提供する決意

―― ヘルスサイエンス事業部はキリンホールディングスの中で、どのような部署として位置付けられているとお考えですか?

塚田:キリンホールディングスは、2027年に向けた長期経営構想 の中で、「食から医にわたる領域での価値創造」をうたっています。医と食の間にある「健康」や「未病」という領域について、力を入れていこうというものです。それを持って、世界のCSV*1経営のリーディングカンパニーになりたいという思いがあります。この春に「事業創造部」から「ヘルスサイエンス事業部」へと名称を変更したのも、健康領域を担うキックオフ部門としての決意の表れと言えます。

事業創造部時代、会社の中では「いろいろなことをやってくれる部署」という見え方だったと思っています。ですが、こうして中長期における会社全体のゴールが見えてくることで、ヘルスサイエンス事業部は重要な立ち位置にある部門だと認識されているのだと改めて実感しました。

若井:私自身は、「ヘルスサイエンス事業部」と名乗っているところに意味があると思っています。「ヘルス」+「サイエンス」――すなわち、健康を科学的に解明して伝えていく、科学の価値を伝えていくことが私たちの部署なのです。「科学的に健康を届ける」というところを強みとして世の中に発信していき、お客様に対して「キリングループの健康事業は科学的だ」と思ってもらえるようなメッセージが伝わればと思っています。

川久保:私たちの部署は、最初の成功事例にしたい、していかなければならないと思っています。研究所がとても優秀なので、キリンには良い素材がたくさんあります。それをさらに磨き上げ、「医」と「食」の間の領域でさらに成長できるものと確信しています。ただ、私が工場にいた頃にもどかしく感じていたように、きちんとそれをお客様が受け取れる形にして届けなければいけません。そこが一番難しいとは思っています。私たちが最初の成功事例を作り、そして伸ばしていきたい。社内からもそういった期待が集まっていると感じています。

―― ありがとうございました。最後に、今後の目標を教えてください。

若井:自分たちで考えて、自分たちで作ったブランドの価値が、今はまだ全員に届いているわけではないので、一秒でも早く、自分たちの考えや思いを世界中のお客様に届けていきたいですね。
自分たちがビール作りから培ってきた基礎研究を基にした「健康」に関する「科学」を、お客様に対してしっかりと伝えられるように、発信していきたいと思います。

塚田:私は、「iMUSE」の商品をより多くの方々の生活に取り入れてもらいたいと思っています。そのためには、「この商品が自分にとってどんな魅力があるか」ということが分からないと、継続するのも難しいと思うのです。これまで以上に丁寧に、サイエンスの観点や信頼性のある分かりやすいメッセージを添えて、「自分の健康のために摂取したい」と思ってもらえるよう伝えていきたいですね。私たちが運営する「iMUSE(イミューズ)」のブランドサイトで、「iMUSE(イミューズ)アンバサダー」 を募集しています。こういった取り組みを進めながら、どんどんこのブランドの魅力を伝達したいという人を増やしていきたいです。

取材・文:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) 撮影:岡部敏明

*1:Creating Shared Valueの略。お客様や社会と共有できる価値の創造

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