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旅人と地域を「お手伝い」でつなぐ「おてつたび」代表の永岡さんが語る、初対面の人と打ち解け、相手を理解するコツ

旅人と地域を「お手伝い」でつなぐ「おてつたび」代表の永岡さんが語る、初対面の人と打ち解け、相手を理解するコツ

おてつたび 」というサービスをご存知だろうか。「お手伝い」と「旅」を組み合わせた造語で、ネットを通じて、個人と地域のゲストハウスや旅館、酒蔵を仲介し、その地域で仕事を手伝いながら旅もできるというサービスだ。地方創生の立役者として期待され、日経ソーシャルビジネスコンテスト優秀賞受賞、セイノーホールディング株式会社主催「地方創生ビジネスプランコンテスト」最優秀賞受賞 、女性起業チャレンジコンテスト グランプリ受賞など、複数の賞を受賞している。

 

また、2019年10月18日には第三者割当増資による資金調達も完了し、飛騨地域をフィールドに事業拡大を目指すことを宣言した。実際に2019年9月下旬での「おてつたび」のマッチングの数は、3ヶ月前と比べて5割増え、「おてつたび」は確実に注目を集めている。

 

 

「おてつたび」の創業者 永岡里菜さんは、「魅力がない地域はない」と語る。しかし、初めて訪れた場所の魅力を発見したり、初対面の人と打ち解けたりするのは、なかなか難しいことではないだろうか。就職・転職や部署異動、転勤などで新たな環境になじむのに苦労している人もいるはず。自ら日本全国の知らない人ばかりの環境に飛び込み、地域の魅力を見つけ、初対面の地域の人と打ち解けていく永岡さん。一見とても強い人のようにも見えるが、永岡さんは自身のことを「人見知りだった」と語る。

 

 

一体、永岡さんはどのように全国の地域の人々とコミュニケーションできるようになったのだろうか。相手の魅力の見つけ方と、上手に関係を築いていく方法論を伺った。
 

 

人見知りだった私を「魅力発見の達人」に変えてくれた父のひとこと


――永岡さんはもともとコミュニケーション上手だったのでしょうか?すでに話しやすい空気を作っていただいてるように感じます。

 

永岡さん(以下、敬称略):本当ですか?うれしい。コミュニケーション自体に苦手意識はないんですけど、人見知りはすごくしてしまう方なんです。でも、もともと「人が好き」だとは思っていました。だから話すこと自体には抵抗はないですね。

 

―― 人見知りだけど「人が好き」と思えるきっかけは何かあったんですか?

 

永岡:原体験には、ゴリゴリの営業マンだった父の言葉があるかもしれません。父は誰にでも話しかけられるタイプで、旅先で、気おくれせず誰にでも「このあたりのおすすめ何?」とか聞いちゃう人だったんです(笑)。

 

その父に小学生の頃、「友達とけんかしちゃって、うまく話せないんだ」と相談しました。その時に父から言われたことは、「たとえどんな状況でも、自分から嫌いになったら相手から好きになってくれることはない」、「自分から相手の良いところを見つけるというスタンスで向き合うと、相手も変わってくる」というものだったんです。これが私のコミュニケーションに関する根底の価値観ですね。

 

―― その価値観を持つと、人との関わり方への影響も大きそうですね。

 

永岡:そうですね。この「人の魅力は自分から見つける」という考え方は、「おてつたび」にも生かされています。「地域」と「地域の人」の魅力を見つけることが事業になりましたからね。
 

本音を話してもらうには、自分も本音で伝える。すると、相手はつられて話したくなる


―― 日本各地の地域の人から魅力を聞くことを仕事にしている永岡さんですが、初対面の相手にはすぐに話してくれない人もきっと多いですよね。

 

永岡:確かに、初対面の場合、なかなか話してくれないこともあります。だから私は、「本当に素敵だな」と思った部分をきちんと言葉にするようにしています。本音の言葉は相手にも伝わると信じています。感情を伝えると、相手も感情を返してくれるようになるんです。

 

―― 話す側も、初対面の人と話すのは大変なんですよね。

 

永岡:そうなんですよ。それもあってか、最初は「このあたりは何にもなくてね」と否定から入る方も多いです。でも、私からするとそんなはずはないので、「え、本当にそうなんですか?」と聞いたり、「私は魅力がたくさんあると思いましたよ。だって、夏になったらとうもろこしがすごくおいしいじゃないですか」と言ったり、思ったことを本音で伝えます。そうすると、地域の方も「実はそうなんだよ!」とスイッチが入って話してくれるようになるんですよ。

 

―― 相手から魅力を聞き出すだけじゃなく、永岡さんのように魅力を見つけて、こちらから伝えることで魅力を引き出すといった方法もあるんですね。そうなると、会う前に調べることも多いのでしょうか?

 

永岡:私自身、単純に調べることが好きだからというのもありますが、基本情報として、地域の歴史や人口、今どういう状況なのかはインプットしています。知っている方が質問もできますし、地域の人も興味を持って調べている人には話したいと思ってくれますからね。ネットで情報を検索して、自治体のホームページを見たり、市長さんや町長さんの地域への思いを調べたりもします。ネットで調べられる情報はひと通り網羅していますね。

―― 相手から言葉を引き出すには、下準備も大事なんですね。実際に現場に行った際に魅力を見つけるポイントはありますか?

 

永岡:「自然と見えちゃう」という表現が私にとっては正確なのですが、細部に目を行き届かせると良いのかなと思います。たとえば、宿だったら、本当に小さなところにある貼り紙が、従業員の方が書いているレターだったりするんですよ。こういった細かい部分に気付いて、それも言葉に出して伝えるようにすると、「よく気付いたね!」と向こうからその細部に込めた思いなども話してくれるようになります。
 

不信感を持たれてしまうと建設的な話し合いはできない。永岡さんが実体験から学んだこと


―― 初対面の人と話す際に、注意した方が良い点はありますか?

 

永岡:起業してから思ったことは、「本音で正直に話す」ですかね。私は、嘘や取り繕った言葉は相手に透けて見えてしまうと思っています。「隠さずに全てを自分からさらけ出す」ことが大切ですね。

 

でも、一方的に自分が話すのはダメです。特にサービスの説明など、話過ぎると構えられてしまうことがあるので、注意した方が良さそうです。地域の人が私たちに「自分たちが消費されるんじゃないかと思った」と話してくれたことがあったんですよ。

 

―― 「地域が消費される」というと、どういうことでしょうか?

 

永岡:まだ「おてつたび」ができる前の2018年のことでした。ある地域にお邪魔した時に、「おてつたび」の実証実験をまずはしたかった事もあり、企画についてたくさん話し過ぎてしまったんです。そうしたら、なかなか受け入れてもらえなくて…。後から知ったのですが、「企業が地域に入ってきて、予算だけ組んで一過性の実積を作ってそれっきり」ということが過去にあったそうで、私も同じことをするように見えてしまったようなんです。

 

―― 「搾取されてしまうのでは」と思われてしまったんですね。

 

永岡:そうなんです。しかも、私たちも最初はビジネスモデルなどの説明もせずに「こんな素敵な事があるんです!」と世の中や相手にとってのメリットばかりを推してしまっていたんですよね。地域の人からしたらお金の流れが見えなくて、余計に「後からだまされるんじゃないか」という印象を与えてしまっていたんです。

 

その地域の人とは今でもとても仲良しなのですが、この経験から「隠さず全てを話すこと」を大切にするようになりました。本音で話す大切さに気づけましたね。

 

―― 「何か隠されている」という感覚は、営業されている側は特に敏感に察知しますよね。

 

永岡:そうなんですよね。どれだけ良い内容の提案だったとしたとしても、不信感ばかりが募って、地域を守るために、提案内容の粗探しをするようになってしまうんです。断る理由を探すようになるんですよね。そうなると建設的な話し合いはできません。
 

言葉選びは「相手」に合わせて変える。そのためには「咀嚼」と「自分ごと化」が鍵


――そもそも、相手と同じ方向を向くこと自体が高度なコミュニケーションですよね。何か意識されていることはありますか?

 

永岡:事業の場合は、特に、「ビジョン」や「思い」の部分を伝えることが重要ですね。「なぜ私がやっているのか」をしっかり伝えられると、相手も理解しやすくなります。ここを言語化するには、自分と向き合ったり、友人や知り合いに話を聞いてもらったりという段階が必要です。

 

――何度も話していくと、自分の中で咀嚼ができ、熱を込めて伝えられるようになりますね。

 

永岡:自分の伝え方が定まってきたら、次は聞き手の立場に立って「伝わり方」を意識します。具体的には、話す相手によって微妙に言葉選びを変えているんです。たとえば、私の場合、地域の方、事業者の方、「おてつたび」を利用してくれる学生の方と話す時では、同じ内容を話すにしてもそれぞれ言葉選びが大きく違います。

 

――相手によって伝え方を変える際のポイントはありますか?

 

永岡:「相手のためになること、相手に貢献できることを伝えられているか」を基準にしていますね。「おてつたび」を通じて、地域、事業者の方、「おてつたび」のユーザーそれぞれがどのように変化していくのかを、相手目線で話せるように意識しています。「この人は自分のために話してくれている」と分かると、聞いてくださっている方も提案内容を自分ごととして考えてくれるようになるんですよ。

 

――「おてつたび」というサービスは、立場によって見え方や受け取り方も変わってきますよね。

 

永岡:そうなんですよ。ステークホルダーが多いサービスなので、皆さんに寄り添えるように言葉選びにも気を配っていきたいんです。

 

――ちなみに、どうすれば相手の目線を理解できるようになるのでしょうか?

 

永岡:私は現場に入ることでしか、相手の目線には立てないと考えています。相手の立場を理解するには、やっぱり相手と同じ立場に身を置くことが一番の近道なんです。私自身、今でも地域のお手伝いをするようにしていますよ。そうやって相手の環境に溶け込んでいくと、少しずつ見えてくるものがあるんです。何を大切にしているかや、どこに困っているかが、だんだんと分かってくるんですよね。

 

――漠然と「相手の立場に立つ」のではなく、相手の置かれている立場を肌で感じることが大事ということですね。

 

永岡:そうですね。それに、現場の経験があると「私もゴールデンウィークは〇〇の宿でちょっとお手伝いしてきたんですよ」と伝えることで、安心してもらえますよね。同じ体験を共有していると、共通言語で話せるようになっていくんです。私もまだまだ、地域の方の立場を完全に理解できているとは言えない状況なので、これからも現場を大切にしていきたいです。そのことが地域の魅力を発信することに繋がると信じています。

 

取材・文:佐野創太

 

 

 

取材協力:永岡里菜

 

株式会社おてつたび 代表取締役CEO

「いい人、いいもの、良い地域がしっかり評価される世界を創りたい」と思い、「おてつたび」というお手伝い(仕事)×旅のサービスを運営中。「お手伝い」先は、人手不足などに困っている地域のゲストハウスや旅館、酒蔵など。旅先までの交通費と滞在費は受け入れ先が負担するため、無料になる。「お手伝い」以外の時間は観光ができ、地元の人だけが知る“とっておきの穴場情報”などを、SNSを通じて発信してもらう。「お手伝い」を通じて地域のファンになってもらうことで、地方と若者の新しいつながりが生まれることを目指している。情熱大陸出演が密かな夢。

日経ソーシャルビジネスコンテスト優秀賞
セイノーホールディング株式会社主催「地方創生ビジネスプランコンテスト」最優秀賞受賞
女性起業チャレンジコンテスト グランプリ受賞


永岡 里菜@おてつたび(お手伝い×旅)/エンジニア、COO候補募集中! (@rina_owase) | Twitter
Facebook:おてつたび
WEBサイト:おてつたび
Blog:おてつたび 永岡 – Medium

 

 

 

 

 

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