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「除菌」「殺菌」「消毒」の違いって何?感染症が気になる今、覚えておきたい細菌・ウイルス対策とは

「除菌」「殺菌」「消毒」の違いって何?感染症が気になる今、覚えておきたい細菌・ウイルス対策とは

気温も湿度も低い冬は、細菌やウイルスが生存しやすい季節。加えて冬場は夏場よりも積極的に水分を摂取しない分、体内の水分量が減少して喉の粘膜が乾いてしまうため、免疫力が下がりやすい傾向にあります。新型コロナウイルスへの警戒が続く中、これからの時期はインフルエンザやノロウイルスといった感染症の流行にも警戒が必要です。

一般的に「感染症対策」と聞くと、アルコール除菌や消毒などを思い浮かべる方も多いかもしれません。では、この「除菌」や「消毒」はどのような作用や効果が期待できるのでしょうか?今回は、「殺菌」「除菌」「消毒」といった言葉の違いや、これからの時期に覚えておきたい細菌・ウイルス対策についてご紹介します。

滅菌・殺菌・消毒・除菌・抗菌~わかりにくい言葉の違いを解説

「アルコール『除菌』スプレー」や「『殺菌』ハンドソープ」などを使用して身の回りを衛生的に保つことは重要ですが、それぞれにどのような効果が期待できるのかはわかりづらいですよね。まずは、それぞれの言葉の意味を確認しておきましょう。

滅菌とは?

菌の制御に関して、最も厳格な対応が「滅菌」です。滅菌の「滅」には「ほろぼす」という意味があり、厚生労働省が定めた医薬品の規格基準書『日本薬局方』では「微生物の生存する確率が 100万分の1以下になること」と定義されています。電磁波、放射線、高圧、高熱などによって治療器具を衛生的に保つ機械(滅菌機)などに用いられる言葉です。

殺菌とは?

「殺菌」とは、特定の菌を死滅させる作用です。滅菌と違い、すべての菌を死滅させられなくても数が減れば殺菌したことになるため、厳密には「殺菌」を使う製品の有効性を保証したものではない、と言えるでしょう。「殺菌」という表現は、医薬品医療機器等法(旧薬事法)の対象となる医薬品および医薬部外品以外の製品(例えば洗剤や漂白剤など)に用いることはできません。

消毒とは?

「消毒」とは、病原性のある微生物を死滅させ、また害のない程度まで減らしたり感染力を失わせたりして無毒化させることです。殺菌と同様、医薬品医療機器等法において医薬品・医薬部外品だけに使える言葉として定められています。微生物の病原性を減らすという点では、「消毒」は「殺菌」よりも広義な意味合いを持つ言葉です。

除菌とは?

「除菌」とは、菌を取り除くことを指します。「殺菌」も除菌の一部に含まれますが、医薬品や医薬部外品に該当しない製品では殺菌の効果をうたえないので、「除菌」という表現がよく使われています。菌を取り除けば除菌になるので、極論を言えば「水洗い」でも除菌したと言えます。「どの程度菌を減らせば良いか」についても、明確な定義はありません。

抗菌とは?

「抗菌」とは菌の増殖を抑制すること、菌が生存しにくい環境をつくることを意味する言葉です。殺菌や除菌のように直接的に菌を殺したり取り除いたりするのではなく、菌の増殖を抑制あるいは阻害する処置を施す点が違いと言えます。抗菌も除菌や殺菌と同様、対象となる菌の種類や菌の量などは定められていません。

ウイルスに使う用語「不活化」とは?

「不活化」とは、熱や紫外線、薬剤などによってウイルスなどの構造を破壊し、死滅させる(ウイルスの活動が失われている状態にする)ことを指します。滅菌・殺菌・消毒・除菌・抗菌はいずれも「細菌(生物)」に対する作用ですが、ウイルスは生物ではないので「不活化」と表現するのが一般的です。

アルコール消毒は「インフルエンザ」や「ノロウイルス」に効果がある?

感染症対策として用いられることが多い製品に、アルコールグッズがあります。これらは本当に、インフルエンザやノロウイルスといった感染症対策に効果があるのでしょうか?

消毒を目的としたアルコール製品には、アルコールの消毒効果と人体に与える影響とのバランスが良いため、主にエタノールが使用されています。エタノールにも種類が複数ありますが、市販されているものの中では、消毒効果が発揮されるようアルコール濃度70~80%に調整された消毒用エタノール製品が用途に適しています。

ただし、エタノールには消毒(ウイルスの場合は不活化)できる微生物とできない微生物があります。「消毒できる微生物」の代表例は、病原性大腸菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌といった食中毒の原因菌やカビ菌など。インフルエンザウイルスやコロナウイルスといった、「エンベローブ」と呼ばれる脂質性の外膜で覆われているタイプのウイルスにも不活化効果があります。これに対し、ウェルシュ菌やボツリヌス菌のような芽胞を形成する細菌、そしてノロウイルスのようにエンベロープを持たないウイルスには効果がありません。

なお、エタノールを使って消毒する際は手を乾してから使用しましょう。手が濡れた状態で消毒液をつけるとアルコール濃度が薄くなり、効果が弱まってしまいます。また、アルコールとウイルスの接触時間が長いほど効果も高くなるため、時間をかけてしっかり乾かすことも忘れずに。消毒液に含まれる水分が手に残っていると、雑菌が繁殖してしまう恐れがあります。

「薬用石鹸」や「次亜塩素酸ナトリウム」の殺菌効果と注意点

石鹸やハンドソープには、「薬用」のものとそうでないものがありますが、効果は違うのでしょうか。薬用、あるいは殺菌や消毒といった記載のある製品のほうが殺菌・不活化効果は高そうに思えますが、実際は大きな違いがないようです。

2016年9月、アメリカ食品医薬品局(FDA)という組織が、「抗菌(薬用)石鹸製品とそうでない石鹸を比べても感染症の予防効果に差は見られない」として、19種類の対象成分の使用を1年以内にやめるよう通達を出しました。日本の厚生労働省もこれに追従して同様の通知を出し、承認を取り下げるなどの措置を行っています。一連の措置は殺菌効果自体を否定するものではないようですが、「有効と言うにはエビデンスが十分ではない」ということでしょう。

しかし、政府や病院などが呼びかけているように、感染予防において「手を洗うこと」は非常に重要です。「手洗いなし」の状態のウイルス量を100万としたとき、石鹸やハンドソープで10秒間もみ洗いし、その後に流水で15秒すすぐと1万分の1程度に減らせると言われています。石鹸やハンドソープを使って、「物理的に菌やウイルスを洗い流すこと」が重要だと覚えておきましょう。

また、次亜塩素酸ナトリウムを主成分とした塩素系漂白剤も、インフルエンザウイルスや薬物耐性の高いノロウイルス、そして新型コロナウイルスなどに消毒効果があるとされています。例えば、市販の家庭用漂白剤を次亜塩素酸ナトリウム濃度が0.05%になるように薄め、テーブルやドアノブなどよく触る箇所を水拭きするという方法もあります。その際、目や皮膚への付着、誤飲などには十分注意が必要です。なお、薄めた次亜塩素酸ナトリウム液を加湿器に入れて空間を消毒しようとしたり、マスクに噴霧して使用したりするのは危険ですので絶対にやめましょう。

除菌、殺菌、消毒…言葉の意味や違いを理解し、正しく実践を!

いまだに収束の気配を見せない新型コロナウイルス。私たちの免疫力が下がりやすく、ウイルスの感染力が高まる冬は、さらにインフルエンザやノロウイルスといった感染症の流行にも気をつけなければなりません。様々な製品を使って感染症の予防に努めることは大切ですが、「滅菌」「殺菌」「消毒」「除菌」「抗菌」といった言葉の意味やそれぞれの違いを理解し、言葉のイメージに踊らされないことも重要です。正しい手洗い方法、正しい予防グッズの使用方法を実践し、人体に害を及ぼす細菌・ウイルスのリスクから身を守りましょう。

取材・文:C-NAPS編集部

取材協力:橋本将吉(はしもとまさよし)

杏林大学医学部医学科を卒業。2011年に株式会社リーフェを設立し、医大生向けの個別指導塾「医学生道場」の運営と、健康情報の発信を通した啓蒙活動に力を入れる。実際に内科医として診療を行う一方で、医学生道場にて医学生の指導を行いつつ、YouTuber「ドクターハッシー」としての顔も持つ。

Web:https://li-fe.tokyo/
Twitter:@karada_plan

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