はたラボ

勢いで起業しちゃった先輩に聞く「独立に向いている人・いない人」

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将来のキャリアの選択肢の1つとして、起業を検討しているビジネスパーソンもいるだろう。しかし、「勢いで起業をしてしまって失敗する」という人の話も時折耳にする。

2016年4月話題になったブログ記事『勘違いして4年で電通から独立したらエラい目にあった、俺死ね!』の執筆者、クリエイティブディレクターの西島知宏さんもその1人だ。

待機児童問題を強く訴えることで話題になった、匿名の別のブログ記事のタイトルをもじったタイトルのとおり、電通に4年在籍し、独立・起業してから現在10期目を迎えるまでの体験をつづったものだ。西島さんによれば、この記事はなんと40万回以上閲覧されたという。 

起業における「勘違い」とは何だったのだろうか? 将来起業したい人が会社でしておくべき準備や起業の向き不向きなどについて、西島さんご本人にアドバイスをしてもらった。

 

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――西島さんが起業されて、もっとも予想外だったことは何ですか?

 

一番は、思っていたほど仕事が来なかったことです。イメージの10分の1くらいでしょうか。

 

――でも、かなりの実績があったんですよね。

 

いえいえ。ただ、東京コピーライターズクラブ(TCC)のTCC新人賞という、普通は10年くらいキャリアを積んで獲る賞を、2年目の仕事で受賞したんです。次の年に本賞(TCC 賞)をもらって、自分の仕事が認められたような気がしていたんですが、まったくそんなことはなかったといいますか。

 

――非常に華々しい経歴ですが……。

 

僕のような広告関係の仕事は結局のところクライアントワークなので、クライアントとの信頼関係が築けていない人には仕事が来ないんです。僕も発注する側になってよく感じますが、会社というのは思った以上に保守的だな、と。クリエイティブなものを作るときでも、仕事相手には「おもしろい」とか「優秀」なだけじゃなくて、「人間としてちゃんとしている」ことを求められているんですよね。

 

――「人間としてちゃんとしている」とは、具体的にはどのような?

 

例えば「お金周りやスケジュールがしっかりしているか」「ミスしたときにちゃんと謝れるか」などですね。どんなにブッ飛んだものを作る人でも、「この人に発注して仕事が成立するか」というのは事前によく考えますよ。そういう、クリエイティブ以外の部分が占める割合が、体感として5割くらいはある。大企業になればなるほど、そこはより保守的です。当時は「電通」という看板が大きかったんだなぁと、独立してから気がつきました。会社も辞めたヤツには甘くなかったですし(笑)。

 

――それから仕事が来るようになったのはいつ頃ですか?

 

実は、最初に仕事をくれたのは、古巣のライバル企業・博報堂でした(笑)。そこからもう一度、信頼関係を築き直して、1年経過した頃には仕事がそこそこある状態だったかな。最初の数カ月はキツかったですね。だから、もし独立するのであれば、仕事を持って会社を出るか、今いる会社で上位1%くらいの優秀な人間になってから辞めるのがいいと思います。

 

――それからもさまざまな波乱があったそうですが……?

 

そうですね(苦笑)。というのも、「入金」というのは想像よりも遅いんです。短い支払サイトの仕事もありますが、大きい仕事ほど、仕掛ってから口座にお金が入るまで、半年くらいかかることもある。「よーいドン!」で4月に起業をしても、最初の入金は10月とか。事務所を借りていればその家賃、外注先への支払い、自分の生活費などは、その間にも容赦なく必要になるわけです。

 

――たしかにそうですね。会社員だと普段あまり意識しない部分かもしれません。

 

だから、起業するときは、有給消化をして給料をもらいながら、「助走期間」を1カ月置く、などの備えをした方がいいでしょう。事業規模や業態・業種にもよると思いますが、僕のように仕入れがない仕事であれば、1000万円以上を目安に資金を用意しておいたほうがいいと思います。それでも1年くらいでなくなってしまうかと思いますが……。すぐに仕事があって、生活を切り詰められれば、500万円くらいでも乗り切れるかもしれません。

 

また、僕は格好をつけて事務所を構えてしまいましたが、起業直後は自宅兼事務所にするのがいいと思います。このタイミングで家賃を二重に支払うのはやっぱりしんどいですし、敷金礼金などもバカになりません。信用という意味では、ゴールドカードを作ったり住宅ローンを組んだりするのも、会社員の時期にやっておくべきでしょう。

 

――事業は、最初はやはり小規模に始めた方がいいですか?

 

そう思います。僕は資金繰りが安定してきた2年目に、いきなり新しい仲間を8人入社させたのですが、まさに「俺死ね!」という感じでした(苦笑)。「社員を1人雇うと給料の3倍のお金がかかる」とよく言われるのは真実で、実際に交通費、家賃、社会保険の会社負担金、PC代、アプリケーション代などがかさんで、内部保留ができないという状態でした。それでもなんとか頑張って、今年で10期目を迎えられたのですが。

 

――ちなみに、もし小規模で事業を始めていたとしても、西島さんは今の自分がいるレベルにたどり着かれていたと思いますか? それとも、負荷をかけたから今がありますか?

 

僕は立ち上げた会社を存続させるために必死でやってきましたが、正直「一旗揚げよう」とか「上場しよう」というよりも、「誰にも何も文句を言われずに、自分の好きなものを作りたい」という気持ちの方が強いんです。

 

会社を経営する上で、クリエイティブには両輪があると思っていて、それは一方でお金を稼ぐための仕事をして、もう一方で本当にやりたい仕事をすることなんですよね。負荷をかけすぎてしまうと、両輪のバランスが崩れてしまうので、いい方向に進めないかもしれない。広告は目利きの世界なので、「いいものを作っているから仕事を依頼したい」というように、仕事に仕事がついてきます。だから、本当にバランスですね。

 

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――では、将来起業したい人が、会社にいる間にしておくべきことはありますか?

 

自分が一番になれる分野を作っておいた方がいいですね。「マンガならこの業界で一番詳しい」とか「ブラジャーのことならなんでも聞いてくれ」とか。僕はゴルフが趣味なのですが、クリエイターでゴルフをやる若手ってあんまりいなかったんですよ。そうすると、「コピーが書けてゴルフが好きな人」として仕事が来ることがある。

 

今はコンテンツがめちゃくちゃ詳細化されている時代なので、ジェネラルなものを浅く作っても良いコンテンツにならないじゃないですか。だから、まず自分の職能、僕ならコピーが書けるというのがまず1つあって、その上で自分が掘り下げられるものがあるかどうかが分かれ目になるのかな。いきなり何かを心から好きになることはできないので、準備しておくことをおすすめします。

 

――そもそも、商売っ気だけでは続けられないような気もします。

 

そうなんです。僕もワインの仕事をするために資格を取ったこともありましたが、「普通の人よりは詳しいけど、なんとなく好き」というレベルだと、自分よりすごい人もたくさんいるわけです。だから、仕事ベースだと浅いんですよね、土日の休みでも自分の時間を使って調べちゃうくらいじゃないと。本当に自分が好きなもの、普段から深く考え抜いているものだと生活者のインサイトもわかるので、結果としていいアウトプットができると思います。

 

――独立に向いているのはどんな人だと思いますか?

 

やっぱり、「ちゃんとした人」ですね。クリエイティブの話に限らないと思いますが、クライアントワークでは、結局いい加減なヤツって信用されないじゃないですか。こういう仕事は「ちゃんとしていない人ばかり」という印象があるので、なおさら最低限のことがしっかりしている人じゃないと、一緒に仕事ができないと思われがちです。「前に言ったことを覚えている」とか、「修正依頼の内容をすべて反映している」とか、「メールの返信が早い」とか、そういう部分が見られていると思います。

 

欲を言えば、そこにさらに、ホスピタリティをプラスできるといいですよね。「頼まれていないけど、別のバージョンも準備してみました」とか、言われた以上のことを返せる人はこちらもうれしくなるので、一緒に仕事がしたいなと思います。

 

――最後に、起業を考えているビジネスパーソンにアドバイスをお願いします。

 

今、まったく新しい仕事というのはそう多くないですよね。誰だって、前からあるような仕事をしているわけです。だから、新しい「価値」を定義してあげるんです。例えばここに、カップラーメンがあるとするじゃないですか。

 

――カップラーメン……?

 

そう。それを「カップラーメン」だと言ってしまったらそれで終わりなんですけど、「共働きの家庭でも子どもが自分で作って食べられるもの」や「家計がピンチでも食べられる低価格のもの」など、別の定義をすれば新たな価値が生まれる。例えば「このラーメンは水を入れても6分で出来上がります」というキャッチコピーがあったら、非常食として価値が増して、単なるカップラーメン以上のものになるわけじゃないですか。

 

――なるほど、たしかに印象がまったく異なりますね。素晴らしいもののように聞こえます。

 

こうやって、「自分をどのように再定義するか」というのを考えないと、他の人と同じ仕事しかできない。一方で、定義ができてそれを続けていけば、業界の中でやがて唯一の存在として仕事ができますよね。自分やその事業を、人から選ばれるような魅せ方にしないといけないと思います。

 

――ありがとうございました。

 

(朽木誠一郎/ノオト)

 

 

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