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『学びを結果に変えるアウトプット大全』著者・樺沢紫苑さんが、失敗ばかりで落ち込む社会人に捧ぐ「仕事力アップの方法」

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「インプットはしていても、アウトプットが苦手」「プレゼン資料や書類作成のスキルが足りない」、そんな課題感を持っているビジネスパーソンもきっといるはず。そこで今回は、『学びを結果に変えるアウトプット大全』がベストセラーを記録している精神科医 樺沢紫苑さんに話を聞いた。


精神科での診療を続けながら、メールマガジン、Facebook、YouTubeと数多くの媒体で日々情報発信を行う樺沢さんは、果たしてもともとアウトプットが得意な人だったのだろうか?今回は、医療情報を広くアウトプットするようになったきっかけから、インプットとアウトプットの関係性、失敗をなくすためのフィードバックや、自己成長へのつなげ方まで幅広く伺った。新たな環境で挑戦する際の糧になれば幸いだ。

アウトプットを生業にした原体験は、「似た患者の入院」

―― 樺沢さんは、精神科医として働きながらも膨大なアウトプットをしていらっしゃいますよね。アウトプットを積極的に行うようになったきっかけをお伺いしたいのですが。


樺沢さん(以下、敬称略):医者をしていたある日の出来事がきっかけで、情報発信の大切さに気付きました。自殺未遂などをしていたうつ病の患者さんで、2カ月くらい入院していた方がいたのですが、その方が退院した日の午後に運ばれてきた新しい患者さんが、年齢も背格好も、自殺未遂に至った経緯も退院した方とそっくりだったんです。「さっきの人と、ほとんど同じじゃないか!」と思いました。目の前の患者さんを治療しても治療してもキリがなくて、予防をしないことにはこの問題は解決されないと思ったんですよ。今や、「うつ病100万人時代」なんて言われてしまう世の中です。もう社会が破綻する手前にまで来ているという危機感を持っています。でも、「知っている」というだけでその状況を避けられることもあるんです。


―― 予防法を伝えるために情報発信を本格化させたんですね。


樺沢:そうですね。例えば、うつ病は睡眠時間と関係が深いんです。5時間や4時間睡眠で何カ月も働いていたら、体調を崩します。ですが、20歳から40歳以下のビジネスパーソンの50%以上が6時間睡眠を切っていると言われているんです。そのリスクを知った上で働いているなら仕方がない部分もありますが、ほとんどの人が知らないで働いているので恐ろしいですよね。


―― 医者という立場から、そういった健康情報などを発信している方は多くはないですよね。ましてや、樺沢さんが発信を始めた当時はもっと少なかったのではないでしょうか?


樺沢:確かに周りではあまりいませんでしたね。医者も忙しい人が多いですから。でも専業で「予防」に取り組む医者が、一人ぐらいいる必要があるんじゃないかと思ったんですよ。診療は月1回程度、情報発信を専業にして精神医学、メンタルに関する情報を発信するようになりました。

「インプットだけ」は苦しい。楽しくするためにもアウトプットは必要

―― 樺沢さんはご自身の経験からアウトプットを積極的に行うようになったとのことですが、日本のビジネスパーソンは「アウトプット」という行為に課題感を持っている人が多いようです。この点についてはどうお考えですか?


樺沢:日本の教育自体がインプット中心で、「記憶力を競う」みたいな勉強が主ですよね。少しずつ変わってきているとは聞きますけど、それでも受験はインプット競争。ですから、日本人は「アウトプット力が弱い人が多い」と言われています。しかし、社会人として必要とされるスキルはコミュニケーションスキルや、資料を作ったり書いたりまとめたりする力です。「仕事をする」という行為自体が、ほとんどアウトプットなんですよね。


―― アウトプットの対価が「給与」として反映される部分もありますよね。


樺沢:これからの時代は、記憶力が良いだけでは通用しません。記憶力は、コンピューターやAIにかなうはずがないですから、アウトプットの質を高めていくことが人間には求められています。そしてここが大事な点になるのですが、アウトプットは「楽しいもの」なんです。


―― アウトプットは努力をしたり時間がかかったりと、大変なイメージがあります。


樺沢:アウトプットとは、自分の考えが他人に伝わることであり、自分が発信したことが人に見られるということですよね。何百人、何千人に自分が発信したことが見られるのは、基本的には「楽しい」ことなんです。実は、インプットだけの方が苦しいんです。インプットだけだと、自分がしたことに反応もないし意味も感じられない。それに、自分がどこまで成長しているかも分からないですよね。アウトプットをすると、例えば模擬試験で良い点数を取った時には「成績が上がっているぞ」と実感でき、やる気も出てきますよね。アウトプットの楽しさは、もっと評価されても良いのではないでしょうか。

アウトプットを楽しくする「発信」の仕方とは?

―― 「アウトプットは反応があるから楽しい」とのことでしたが、ただ発信しても反応は得られないですよね?


樺沢:そうですね。「コンテンツ」というものを発信しないと誰も見てくれないんです。「書く」という点でいえば、みんなが読みたい記事にする必要があります。私の場合は、精神医療に関するノウハウなどですね。ただ、ほとんどの人は自分の書きたいことをただSNSで書いている状態です。それをみんなが読みたいものに変換すると、「意味のあるアウトプット」になるんです。


―― 「アウトプット」と「発信」には違いがあるんですね。


樺沢:最初は慣れるために、ただの発信でもOKです。しかし、それだけだとアクセス数は増えないし、徐々に「誰も見てないな」と思って手を止めてしまうんですよ。少しずつ読者のニーズを理解していくと楽しくなってきますよね。


―― 読み手目線で「アウトプット」をするには、何を意識したらいいのでしょうか?


樺沢:きちんと「反応を見ること」です。私はアクセス解析を毎日見て、「昨日発信した記事は良かったか」の検証をしています。記事によっては、普段の2倍や3倍のアクセスが出ていたりするので、結果を踏まえてそれと近いテーマで新しい記事を書いてみたりするんです。読者の反応を自分にフィードバックしていくイメージですね。


例えば、私はYouTubeでもたくさん情報を出しているのですが、その中でもすごく再生回数が多いものと、全然再生されないものがあります。その結果を見ていると、皆さんが何を望んでいるのかがよく分かるわけですよ。ほとんどの場合、自分で「これは再生回数1万回超えるだろう」と思うものが意外といかなくて、反対に「これがいくの!?」といったものがたくさん再生されるなど、予想外なことが起きるんです。そうやってトライ&エラーをしながら、自分が発信したいことと視聴者が知りたいことを擦り合わせていくと、アウトプットのレベルが上がっていきます。


YouTubeチャンネル『精神科医・樺沢紫苑の樺チャンネル』では、再生回数などを踏まえながら、配信するテーマを決定している

「失敗」をなくすことができる「フィードバック」とは


―― 適切な「アウトプット」ができるようになると、仕事も円滑に進められるようになりそうですね。


樺沢:それ以外にも実は、フィードバックには「失敗をなくす」という効果もあるんです。


―― 情報発信をする際に、「失敗が怖い」とついリスクを考えがちですが、この考えはなくせるものなのでしょうか?


樺沢:なくせますよ。そもそも「失敗」という言葉は、「全く学びがないこと」を指すと私は考えています。そうなると、失敗をなくすには「学びがあればいい」ということになりますよね。そこで重要なのが、「フィードバック」です。


ここで言う「フィードバック」は、出た結果に対して「失敗した理由」を考え、今後どうすれば良いかという「課題を抽出すること」になります。上手くいった場合も「なぜ上手くいっているのか」を考えて、もっと強化できるポイントを洗い出すのです。何かを発信すると必ず結果が出ますが、結果を放置しておくから、人は「失敗した」と思ってしまう。フィードバックの発想を持てば、失敗そのものがなくなります。「失敗」ではなく、「データ収集」なのです。


―― 「フィードバック」という発想や、そのやり方を教えてもらう機会が日本の教育の中ではあまりなかったように思います。


樺沢:確かにそうかもしれません。フィードバックは難しいんですよね。フィードバックの土台には、「自己洞察力」があります。文字通り、「自分自身を観察する力」ですね。これを鍛えるためには、日記を書くのが良いです。『人生うまくいく人の感情リセット術』という本の中で、私は「ポジティブ3行日記」を提案しています。私は、1日の最後に「今日あった楽しかったこと」を3つ書くワークを自分に課しているんですよ。最初は長文で書かなくてもいいんです。1行ずつでも問題ありません。1日3分でできますし、これは認知行動療法の一つでもあって、自己洞察力が養われますよ。


―― 「ポジティブ3行日記」をやるにあたって、気を付けるべきポイントはありますか?


樺沢:あんまり悪いことは思い出さない方がいいです。記憶に残ってしまいますから。特に、寝る前15分は「記憶のゴールデンタイム」と言われていて、その時に考えたことは一番記憶に残るものなのです。ほとんどの人は寝る前に、例えば今日上司に叱られたら、そればっかりを考えて眠れなくなるんです(笑)。そうすると悪い記憶が強化されて、次の日もそれを引っ張ってしまいます。記憶はどんどん蓄積されていきますから、悪い体験ばかりを思い出していると、自信が持てなくなったり、チャレンジできないと思ってしまうのです。寝る15分前に楽しいことだけを考える習慣に変えてみるといいですね。


―― 楽しい記憶に焦点を当てようと思えば、きっと一日を大きく振り返ることができますよね。


樺沢:ネガティブな人は、「これだけできなかった」「これだけ失敗した」とよく言いますが、実は一日の中で良かったことと悪かったことは、両方起きているんです。良かったことだけを思い出していけば、ポジティブな記憶で脳が占拠されていって、自信を持っていろんなことにチャレンジできるようになります。

「フィードバック」≠「反省」。違いは、「ポジティブな思考」があるか否か


―― 「ポジティブ3行日記」をやることで、人にはどのような変化が訪れるものなのでしょうか?


樺沢:1カ月続ければガラッと変わります。1週間ぐらいで変わる人もいるくらいです。寝る前15分で何を考えるかで、人生が変わると言っても過言ではないと思いますよ。特に、やったことがない人はものすごく効果が出ます。性格はそう簡単に変わらないと言われていますけど、「ポジティブ3行日記」のワークをやると変わっていくんです。


―― ちなみに、「フィードバック」は「反省」とは違うのでしょうか?


樺沢:「反省」と言うと、悪いところだけを振り返ってしまいがちなんです。すごい大失敗をして、その行為を「もう二度としない」と考えるのが反省です。でも、大失敗をした中でも上手くいった部分があるはずなんですね。そこから得た教訓もあるはずです。その良い点も悪い点も、ニュートラルな視点で全てを振り返るのが「フィードバック」です。「反省」という言葉を使ってしまった時点で、ネガティブなところだけに集中されがちなんですよね。


―― 樺沢さんのフィードバック力はどのように養われていったのでしょうか?


樺沢:「情報発信」を仕事の中心にしようと決めてからですね。それまでは忙しくて、考えている時間もありませんでした。本を読んだり、映画を見たりして、文章もそれなりには書いていましたけど、やっぱり余裕がなかったんです。なので、専業作家になってから、もっと自己成長するためにはどうしたらいいのかを考え始めました。


―― 最初からアウトプットもフィードバックも積極的にしていたわけではないんですね。


樺沢:そうですね。昔からアウトプットして、フィードバックをしていたのかというと、そんなこともないと思いますよ。私も医者を専業でしていた頃は、今日の仕事を終えるだけで精一杯でした。帰って、疲れて、ぐったりです。仕事しすぎて体調を悪くするといった経験もしています。その経験があって、メンタルを壊したり、うつになったりする人の多さにも気付きました。だから、病気にならないライフスタイル、ワークスタイルとは何かを探求しているんです。これに対する答えとしては、「健康的な習慣」も必要ですし、仕事に対して「成長している感覚」も必要ですね。自己成長していくだけで、人間は楽しいと感じるものなんですよ。自己成長の物質でもある、ドーパミンが出れば幸せなんです。「インプット」「アウトプット」「フィードバック」のサイクルを回すことができれば、仕事力もアップしますし、誰でも幸せになれるということをお伝えしたいですね。


取材・文:佐野創太

 

取材協力:樺沢紫苑

 

精神科医、作家、映画評論家

札幌医科大学卒。北海道内の8病院に勤務し、2004年から米国シカゴのイリノイ大学に3年間留学。帰国後、東京にて樺沢心理学研究所を設立。「情報発信によるメンタル疾患の予防」を目的に、40万フォロワーのインターネット媒体を駆使し、精神医学、心理学、脳科学の知識、情報をわかりやすく発信している。著書は、40万部のベストセラー『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版)など30冊以上。

Youtube:精神科医・樺沢紫苑の樺チャンネル
メールマガジン:精神科医・樺沢紫苑 公式メルマガ

■『学びを結果に変えるアウトプット大全』

学びを結果に変えるアウトプット大全 (Sanctuary books)

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■『読んだら忘れない読書術』
読んだら忘れない読書術

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人生うまくいく人の感情リセット術 (知的生きかた文庫)

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