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【転職最新動向:化学業界】今の化学業界に必要とされているのは新しい風

【転職最新動向:化学業界】今の化学業界に必要とされているのは新しい風

「世界のめざましい発展を支えてきたのは、化学業界といっても過言ではない」と、パソナキャリアでキャリアアドバイザーを務める嵩(かさみ)は言います。有効求人倍率が1.62倍(2018年6月分)を記録し、「売り手市場」な昨今ですが、化学業界にもその追い風は吹いているのでしょうか。化学業界で転職活動をしようと考えている方に向け、過去から現在、そして未来を踏まえた業界の動きや求められている人材像について語りました。

世界に誇る技術を持ち、日本を支える産業でありながらも変革を進める業界

―まず、日本の化学業界について教えてください。

:化学業界は知れば知るほど面白い業界です。化学は技術が非常に複雑で解明しづらい分野でして、日本には中国などの技術発展が目覚ましい諸外国もすぐには真似できない、他社の新規参入や追随を許さないような技術を持っている企業がたくさんあります。

例えば製造業のなかでも、テレビや携帯電話などの精密機器に関して言うと、製品をばらして中身を解析すればどのような構造か、どのような技術を使っているのかわかってしまいます。しかし、化学製品というものは目で見てすぐにわかるものではなく、非常に複雑な技術に基づいて形成されています。

そのため、開発するにあたっては膨大な時間と資金力、そして高い技術力を必要とし、それが新規参入の障壁となっているのです。ですから、ある意味「守られている業界」とも言えます。
この業界は、まだまだ日本が世界に対して戦える強みや優位性をもった業界であると言えますし、事実、現在過去最高益を更新していたり、まだまだ発展を続けていたりする企業も多数あります。今もなお、日本を支える大きな産業のひとつであると言っても良いでしょう。

―過去最高益を更新し続ける企業もある現在、化学業界の転職市場にはどういった動きがありますか?

:実は、化学業界は今まで人材流動が少ない業界だったのですが、ここ数年中途採用の求人数が増えてきています。専門的な分野を究め業務に打ち込むという働き方なこともあってか、新卒で入社された方も長く同じ会社に勤めるパターンが多いですし、定年まで一社で勤め続ける風潮も未だに根強い業界です。しかし、ここ最近になって「もっと外からの風(人材)を入れていこう」「新しい取り組みをしていこう」といった動きが出てきています。

作れば売れるといった時代は終わった。国内需要のシュリンク(縮小)に伴い、生まれ変わりが求められている

―なぜ「外からの風(人材)を入れよう」という動きが起きているのでしょうか?

:景気が良いことで、業績が好調であるという事実はありながらも、「今のままではいけない」という危機感を持つ企業が非常に多くなっています。「うちは高い技術で良いものは作れるのですが、今は『作れば売れる』といった時代ではないから、新しいことをやらないといけない」と言った声も、企業の方から最近よく耳にします。

日本の人口は、2010年をピークに減り続けており、今後ますます減少の一途を辿ると言われています。高度経済成長期は、とにかく作れば売れましたが、もうそのような時代ではありません。国内のみならず海外にも目を向けていかないといけない。そういった際に、作るだけではなく、売り方も考えていく必要が出てきます。

また、「IT化」や「環境保全」など世の中のさまざまな変化もあり、そういう意味でも業界としての在り方を考えないといけない、もしくは「業界を変えたい」と思っている企業が増えています。なので、開発への投資も盛んで、「化学×IT」の組み合わせで新しいソリューションを生み出したり、自然に優しい素材を利用して新しいものを作ったりといった動きも見られます。

このような新しい取り組みを行うには、今までのように化学を究めた人だけでなく、化学を活かして新しいものづくりができる人、化学以外の分野の知見を持っている人が必要です。なので、「外からの風(人材)を入れよう」と動きになっているのでしょう。

―「外からの風(人材)」を入れて行われている取り組みについて、具体例などはありますか?

:私たちの生活に身近でわかりやすいところで言うと、ガソリンスタンドでの取り組みでしょうか。若者が車を持たなくなったり、カーシェアリングが流行していたりと、世間では今、車の需要が非常に少なくなっていて、街中のガソリンスタンドの数も減っています。それにより、いわゆる石油系・オイル系の企業がすごく打撃を受けており、経営のあり方に変化を求められています。企業側は「どうすればうちのガソリンスタンドをもっと使ってもらえるかな」と考えた結果、コンビニとタイアップして集客アップを狙うなどの新しい動きに取り組むようになりました。

また、「環境保全」の文脈で言いますと、最近、注目されている夢のエコ素材で、「セルロースナノファイバー」という木材原料から生まれた自然素材があります。これは鋼鉄の1/5の軽さで、5倍以上の強度を有するナノ繊維。カーボンファイバーとほぼ同等の軽さと強さがあるにも関わらず、価格は約1/10に抑えることができます。

その素材を利用し、トヨタ自動車と京都大学が車を作ったりもしています。
エコも捉えた新しい素材で今あるものをもっと良くしていこう、枯渇燃料である石油に依存しすぎず、再利用できる素材を開発していこうと研究開発が盛んです。

他にも、「マテリアルズ・インフォマティクス」という、新しい開発手法が生まれてきています。これまでの材料開発は、研究者の経験と鋭い直感に依存し、実験と試作を繰り返し行っていました。これをAIやビッグデータなどITの力を駆使することで、新素材や既存の素材に代わるものを効率的に作ろうとしています。ITでシミュレーションできるようになることで、実験にかかる材料コストや時間を大幅に削減することができるのです。

現在、こういった技術革新に様々な会社が取り組んでいるので、「化学」以外の分野からも知見を得たいということで他業界からの人材流動が求められています。
弊社でも、クライアント企業から「大学で○○について研究をしている人が欲しい」と具体的な求人の要望をいただくことがありますね。あくまでひとつの事例ですが、大学で燃料電池の研究をされていた登録者の方は、引く手あまたで3社から内定をもらい、転職活動を終えていました。

―現在の化学業界で需要が高い職種は何でしょうか?また、どのような素質がある方が求められていますか?

:職種で言いますと、これは今に限らずですが、機電系エンジニアの引き合いが多いですね。化学メーカーに新卒で入社される方は、やはり「化学の人(化学を専門に学んでいた方)」が多いのです。しかし、機械や電気の技術があってこそ初めて化学の素材が作れるわけですから、当然化学メーカーは機電系の人材も欲しています。でも、これがなかなか採用できない。昔から化学業界全体で機電系の人材は不足しがちなので、中途採用で外から人材を取り込もうとする動きがありますね。

また、先ほどお話したように、「新しい風を取り入れよう」「新しい取り組みを行っていこう」という流れがありますので、化学業界の経験者ではなく、周辺業界を経験している方の需要も増えてきています。今の化学系企業は、「お客さん(卸先)が何を求めているのか」「次にどんなことをやろうとしているのか」をすごく気にしています。作れば売れる時代は終わった。だからこそ、相手の需要をいち早く感知して、共に新しい物を生み出していきたいと思っています。なので、少し体裁的な表現にはなってしまいますが「相手の気持ちがわかる人」が求められていますね。卸先である周辺業界経験者の需要は特に素材メーカーでは高いです。

探求とイノベーションの2軸で未来をよりよく快適に

―化学業界で今から転職するなら、どのようなことを意識すべきでしょうか?

:最近の化学業界誌には、「オープンイノベーション」という言葉が踊っています。簡単に言えば、新しいことを巻き起こす力が求められていて、やはり企業からも「会社に変革をもたらせてくれるようなタイプの人が欲しい」とよく言われます。
化学は、日本のものづくりを支えている産業。素材はものづくりの一番基となるものです。今は海外のメーカーも台頭してきており、そういったメーカーとも戦っていかないといけない、「メイドインジャパンってやっぱりいいよね」と示せるようなことをしていかないといけない時代が来ています。その辺りの業界の変化は意識したほうが良いと思いますね。

化学業界は古くからある老舗企業が多く、企業の要となる事業がひとつあって、その企業でしか作れないものを生産するという独自性溢れた会社が多くあります。

転職者の目線からすると、やはり主力事業に携わりたいと考える方も多いかもしれませんが、そういったポジションは既に人員が足りているケースが多く、なかなかピンポイントでそこに転職するということは難しいかもしれません。それよりも、企業が今注力している新規事業や新しい素材・技術の開発、もしくは既存事業に自身の持っている技術を活かして新しいイノベーションを起こすことができないかを考えたほうが良いのではないかと私は考えています。

元々、この業界は最初に述べたように人材流動が少なく、終身雇用の考え方も根強い傾向にありました。研究思考でコツコツ目の前の仕事に取り組んできた方も多く、何かのきっかけがあるまでは「転職を考えたことなんてなかった」「自分自身の市場価値がわからない」という方も多いと思います。私たちのところへ「何もわからないので情報を聞きに来た」と来られる方もいますが、そういった方も、何らかの素晴らしい技術を持っているはずです。

今持っている技術・研究のスキルが今いる会社では当たり前だけど、他の会社ではイノベーションとなる可能性もあります。これは、他の業界から化学業界に来られる場合も同様です。古くからある業界だからこそ、「人事制度が古いから新しくしたい」「今入れているシステムを新しいものに変えたい」などの要望もお伺いします。変わろうとしている業界だからこそ、そういった課題感がありますし、そういったところで付加価値を付けられる人材は、キャリアアップができる余地のある業界です。変化がある今の化学業界は、転職するには非常に面白いところだと思います。

―最後に、化学業界で転職希望の方にお伝えしたいことはありますか?

:先述した業界横断や周辺領域への転職の可能性は、なかなかご自身で見つけるのは難しいと思う方もいるかもしれません。そういったところへの転職のご提案をするのが、私たち転職エージェントの存在価値であると思っています。転職を希望されている方の要望をお伺いしつつ、「あなたのスキルならこういった企業もありますよ」と新たな可能性も提案する。そういったところで新しい可能性を見つけていただければと思います。

今は業界全体として人不足感が続いておりますので、該当する求人が表に出ていなかったとしても、転職希望者の経歴を拝見し、その力を活かせそうな企業を見つけた際には、私たちから企業に向けて「こういったキャリアの方がご登録者にいらっしゃるのですが、ご興味はありませんか?」と、提案もしています。そして、実際にそれが内定に繋がったケースも多くあります。

古くから存在し、基盤もしっかりとしている化学業界で新たなチャレンジをすることができる。この業界にはわくわくする仕事がたくさん転がっています。そうした仕事ができると、ご自身のパフォーマンスも上がりますしプラスの循環が生まれます。私たちキャリアアドバイザーは、皆様の転職の可能性を広げ、そんな仕事と出会えるようにサポートして参ります。

〈話し手 プロフィール〉

キャリアアドバイザー 嵩 泰明

理系学部を卒業後、化学メーカーにて生産技術の仕事を経験。その際に先輩技術者の熱い思いを聞き、ものづくりの面白さを知る。転職を機にパソナキャリアと出会い、ものづくりの面白さを人々に伝える仕事、自身の経験を活かした転職のアドバイスをする仕事に興味を持ち、入社。現在は、企業と転職者のパイプ役として化学業界への転職希望者の支援を行っている。

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