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【転職最新動向:流通・小売業界】ECや新業態、CRMに関する経験者は「ライフスタイルが変わる場面」に立ち会えるチャンス

【転職最新動向:流通・小売業界】ECや新業態、CRMに関する経験者は「ライフスタイルが変わる場面」に立ち会えるチャンス

ECサイトで買い物をするのが一般的になった今、リアル店舗を持つ小売業は変革を迫られています。業界のビジネス構造が目まぐるしく変わる中、転職市場にも変化は起きているのでしょうか。流通・小売業界を担当しているパソナのキャリアアドバイザー金井 篤也に最新動向を聞きました。

流通・小売業界のキーワードは「EC」「少子高齢化」「インバウンド」の3つ

-金井さんが担当している流通・小売業界の現状について、まずは教えてください。

金井:戦後から今まで、日本の小売業はアメリカを追う形で発展してきました。そういった意味では、日本の2~3年先をいっているのがアメリカなのですが、アメリカではここ10年近く「Amazon.com, Inc.(アマゾン)」と「その他の企業」という構図が鮮明になっています。また、ECにうまく適応できた会社とそうでない会社と二極化していますね。

ビジネスの転換にうまくいかず、破綻した会社も少なくない中、うまく適応して業績を上げているのが「ウォルマート(Walmart)」や「ターゲット・コーポレーション(Target)」といった企業です。双方とも、生活用品を販売するスーパーマーケット・ディスカウントストアといった業態の企業ですが、これらの企業がAmazon旋風の中で生き残れた理由は、2つあります。まず1つ目は、ECへの対応をしっかり行い、「EC領域での売上も順調に伸ばしている」ということ。2つ目は、顧客接点の場になる「リアル店舗をうまく活用している」こと。ここに、今後の日本の流通・小売業界を読むヒントがあると思っています。

-具体的に言うとどんなヒントがあるのでしょうか?

金井:今後の国内の流通・小売業界を表すキーワードは3つあります。
まず1つ目は、「ECへの対応」です。日本国内でのAmazonの売上は1兆5000億を超えていると思われますが、日本全体のEC化比率は現在6%前後(*1)。中国は15%超、アメリカは約10%なのに対して、まだまだ少ない状況です。つまり、これからさらに大きな変化の波が来ることが予測されます。現状は「EC対応が上手くいっている」と言い切れる企業はまだまだ少ないので、ECへの強化は各社の課題。そのため、EC経験者のニーズはかなり高いと言えます。

2つ目は「少子高齢化対策」。例えばコンビニ業界ですと、現在の顧客のボリュームゾーンは40代以上です。若年層のコンビニ離れが始まっている中で、新しい売り場や店舗をどう作っていくのか、今後人口が減っていく中で、どのようにして国内の小売店の売上を維持していくかは、各社の課題となっています。これに対する打開策は、「新しい業態を考える」、もしくは「既存店で顧客の来店頻度や平均単価を上げる」といったCRM(Customer Relationship Management)を強化するかです。この流れに付随する、新業態立ち上げや店舗開発、内装設計に関するポジションは、連動して求人需要が増えています。

そして3つ目は、「インバウンド需要」です。これに関しては正直、恩恵を受けて潤っているのは、都心の一等地にある百貨店や家電量販店、ドラッグストアが主です。海外からの観光客が多いエリアは特に、さらに売上を最大化するために、今まで以上に電子マネーへの対応や、通訳の整備が求められるでしょう。こちらは、インフラの整備と言えるので、求人トレンドとしては、「ECへの対応」と「少子高齢化対策」の2つになりますね。

ECや新規事業、CRM経験者は企業が求めている経験があれば、業界経験なしでも流通・小売業界に転職できる可能性あり

-では、「ECへの対応」と「少子高齢化対策」の2点について、詳しく聞かせてください。まず「ECへの対応」について、具体的にどのような人材が求められているのでしょうか?

金井:もちろん企業側が求めている要件や転職者のご年齢、ご経験内容によりますが、ECに関する業務経験があれば、EC専業企業(toC及びtoB含め)でリアル店舗の経験がなくても、リアル店舗ビジネスを主軸としている小売業態へ転職できる可能性は高いです。例えば40代以上の方でも転職の可能性は広がっており、「ECに携わっていた」という実績があれば、その経験が重宝されるでしょう。「EC経験を生かして流通・小売業界に貢献したい」とお考えであれば、一度転職相談にお越しいただけると、今後のキャリアの幅を広げることができると思います。

ECの経験がある方が流通・小売業界に転職するメリットは、EC業界での経験を生かした上で、リアル店舗の経験も積むことができる点です。双方を手掛けることで、ご自身のキャリアアップにもつながります。例えば、パソナキャリアが紹介した事例で、ECサイト運営企業に長年勤めていた方が、リアル店舗中心の大手小売業のEC担当として転職した、というものがあります。その企業は全国に1000店舗以上を出店していながらも、「今後のEC強化」を命題として人材を探していました。その方もリアル店舗がある企業でECを担当できることに面白味を感じ、無事転職が決まったのです。

実店舗を持つ流通・小売企業の強みは、既に「顧客基盤を持っている」というところ。こういった企業は、アプリを活用すればすぐに何百万人もの来店者のデータベースを得ることができ、それをECの販売戦略に活用できます。「モノ消費」から「コト消費」に消費者の嗜好が変わる昨今、リアルとECを連動させることでイベントをはじめ、さまざまな仕掛けもできますよね。リアル店舗×ECというのはかなり魅力的な環境であると思います。

-「少子高齢化対策」に連動する求人についてはいかがでしょう?

金井:新業態を考えるポジションについては、新規事業や新商品の開発など、ゼロから何かを生み出した経験が求められています。新しい何かを実現したり、新しい取り組みを仕組み化したりする力がある人材は、転職市場でも評価が高いですね。これは全ての職種や業界に共通することですが、現職の会社で新しいアイデアを考えて実行する経験はどんどん積んだ方がいいと思います。

年齢が上がれば上がるほど即戦力性が問われますので、業界や職種の親和性が必要になってきますが、20代若手の方はポテンシャルを見てもらえます。そのため、業務での分かりやすい実績がまだなくても、「ゼロイチ」でものを考えられる力をアピールすることで、転職できる可能性はあると言えるでしょう。

新業態を考えたり、CRMを推進したりといったポジションについては、企業側の要望と完全に合致する経験をお持ちの方はまだ少ないです。そのため、私たちキャリアアドバイザーが面談でしっかりとヒアリングを行い、企業に訴求できるポイントを整理した上で一緒に転職活動を進められればと思っています。

-新業態に携わるポジションに転職された方の具体的な事例はありますか?

金井:40代で、自動車産業に属する企業の新業態の商品開発に携わるリーダーとして転職した方がいます。この方はもともと、小売業で商品開発をされていた方でした。自動車に乗らない人が増加している中、自動車産業に関わる企業は将来的な市場規模の縮小が確実であり、新規事業を積極的に試しています。そんな中で、その方の商品開発の経験がぴったりはまり、業界経験はないものの「即戦力」と見なされて採用が決まりました。経験が合致すれば、40代でも転職の可能性は十分にありますよ。

-「少子高齢化対策」でもう一つポイントとなる、CRMの強化についてはいかがですか?

金井:モノやサービスを提供している業態であれば、顧客の利用頻度の増加や単価アップ、満足度向上について考えているはずです。そういった経験を業務の中で積まれている方は汎用性がありますから、30代前半くらいまでの方であれば業界経験がなくても求人をご紹介できるかと思いますね。

今の流通・小売業界は非常に魅力的。リアル店舗があること自体に大きな価値が生まれている

-ちなみに、店舗系の職種の求人動向についてはいかがですか?

金井:店舗系の職種で求人需要が高いのは、スーパーバイザーですね。多店舗展開をしている企業の店舗マネジメントや経営指導ができる方のニーズは高いですが、そういったポジションに転職するためには、最低限マネジメント経験が必要です。例えば、コンビニ業界では入社2~3年でスーパーバイザーになれますので、新卒で入ったとして25歳ぐらいにはフランチャイズの店舗を回る経験が積める。そして、その経験を生かしてスーパーバイザーにステップアップする。これは良いキャリアアップの仕方だと思います。

-流通・小売業界で現在働いていて、転職を希望している方が注意すべきことはありますか?

金井:売り手市場で、転職先が豊富にある今の状況だからこそ、「転職先選びは慎重に」とお伝えはしたいですね。転職先は確かにたくさんありますが、「本当に転職すべきなのか」「転職して何を伸ばしていくのか」が見えなくなってしまっている人は多いように思います。同僚が辞めていくから「じゃあ自分も辞めようかな」と、なんとなく流されて転職してしまう人もいますが、そこは一歩踏みとどまって考えていただきたいですね。

上司とウマが合わない、残業が多い、離職率が高いなど、現状への不満から転職を考える人も多いですが、そういった理由で転職をしても、うまくいくケースは稀な印象です。転職して実現したいことや自分の軸をしっかり整理しなければ、新しい環境に行っても、結局は不平不満が出てしまって、また転職……ということになりかねません。

情報が溢れている今の時代、信用できる情報の判別も難しくなっています。だからこそ、われわれのような人材紹介会社の存在理由があると思っています。転職軸の整理を一緒にしていくのはもちろんのこと、多数の企業とやりとりを行っていますので、企業から直接聞いた生の情報を皆さんにお伝えすることが可能です。

-改めてお伺いしますが、流通・小売業界を担当するキャリアアドバイザーとして、どのようなところにこの業界の魅力があると思いますか?

金井:私自身、元々は小売業界の出身です。パソナに転職して以来、ずっと流通・小売業界の転職支援を担当していますが、今のこの業界は非常に魅力的だと思います。さまざまなものがオンラインで済むようになった今だからこそ、実店舗を持っていること自体が価値ですし、直接顧客と接点が作れるのはこの業界の大きな醍醐味だと感じています。

EC業界の最大手Amazonは、アメリカで無人店舗Amazon Goの展開を始めており、日本への進出も検討しているようですが、リアル店舗への取り組みはまだまだと言えます。WEBのみで展開しているECサイト運営企業にとっての課題点は、「顧客との接点の取り方」。国内のコンビニ、スーパーマーケット、百貨店などの小売業態各社は、顧客と直接接点を持てる実店舗を多数抱えているので、その点は魅力的ですよね。流通・小売業界がやるべきことはまだまだたくさんありますし、そこにはいろいろなチャンスがあるはず。実際に「アパレル世界一」を目指して、都内でリアル店舗×EC強化に伴う壮大な業態変革を急ピッチで進めている企業もあります。EC強化や新業態への取り組みが進めば、人々のライフスタイルが変わりますから、そこに携わるやりがいは非常に大きいと言えるでしょう。

キャリアプランが明確にある方はもちろん、「なんとなくこういうことがやってみたい」と漠然としている方でも、今はさまざまなチャンスがあります。私たちキャリアアドバイザーも、皆さんのキャリアに何かしらのプラスなご提案ができると思います。私たちは流通・小売業界のさまざまな企業と取引がありますし、パソナキャリア独占求人もございます。新規ビジネス、新業態立ち上げなど、新しいモノを生み出すポジションなどもご紹介可能ですので、流通・小売業界で転職を希望されている皆さんに「こんな求人もあるんだ」と驚きを与えられるようなご提案ができればと思っています。


(取材・文/天野夏海)

〈話し手 プロフィール〉

キャリアアドバイザー 金井 篤也

小売業界での経験を経た後、パソナに入社。現在は、小売店舗系大手企業を中心に、企業担当・キャリアアドバイザーとして流通・小売業界で転職を希望する方々のサポートを行っている。

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