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出版不況といわれて久しい現在、公益社団法人全国出版協会が発表した2017年の出版市場によると、紙の出版物(書籍・雑誌合計)の推定販売金額は、前年比マイナス6.9%となりました。実に13年連続のマイナスだそうです。
こうした中、コンピュータ関連書籍分野において多くのエンジニアから高い評価を得ているのが、ジュンク堂書店池袋本店(@junkudo_ike_pc)です。同店は、コンピュータ関連書籍の出版社5社が加盟するコンピュータ出版販売研究機構(Computer book Publishers United、CPU)が発表するCPU大賞「売上部門」において、コンピュータ書籍の販売冊数が2015年度まで8年連続全国1位という実績を誇っています。
この売り場でコンピュータ書を担当する長田絵理子さんは、「技術書のことなら、この人に聞け」と、エンジニアからの信頼の厚い書店員として「Developers Summit」にも登壇されています。
今回はそんな長田さんに、いま売れているコンピュータ書籍と、長田さんならではの売り場づくりや仕入れの工夫について、お話をお伺いしました。
── 長田さんは、入社以来ずっとコンピュータ書を担当されていらっしゃるとのことですが、最近はどんな本がエンジニアに人気なのでしょうか。
長田 ジュンク堂池袋本店は、ほかのコンピュータ書売り場と少し傾向が違っているんです。2017年でいえば、ほとんどの書店で『Excel最強の教科書 完全版』が売上トップだったと思いますが、うちの2017年総合ランキング1位は『ゼロから作るDeep Learning』でした。
『Excel〜』は2位、3位は『すっきりわかるJava入門 第2販』で、以下、次のようになっています。
# | 書名 | 刊行年月 | 出版社 |
---|---|---|---|
1 | ゼロから作るDeep Learning | 2016年9月 | オライリー・ジャパン |
2 | Excel 最強の教科書[完全版] | 2017年1月 | SBクリエイティブ |
3 | スッキリわかるJava入門 第2版 | 2014年8月 | インプレス |
4 | リーダブルコード | 2012年6月 | オライリー・ジャパン |
5 | 退屈なことはPythonにやらせよう | 2017年6月 | オライリー・ジャパン |
6 | 人工知能は人間を超えるか | 2015年3月 | KADOKAWA |
7 | たった1日で即戦力になるExcelの教科書 | 2014年10月 | 技術評論社 |
8 | 入門 Python3 | 2015年12月 | オライリー・ジャパン |
9 | スッキリわかるSQL入門 | 2013年4月 | インプレス |
10 | 実践力を身につけるPythonの教科書 | 2016年10月 | マイナビ出版 |
ジュンク堂池袋本店の2017年販売冊数ランキング(太字が2017年内の刊行)
── 今でも『リーダブルコード』がランキングの上位に入っているあたりは、さすがですね*1。8年連続でCPU大賞を受賞された売り場だけあって、顧客はやはりコアなエンジニアの方が多いのでしょうか。
長田 ありがとうございます。ジュンク堂の売り場では、年間ランキングのような数字で追える売上だけでなく、ロングテールの部分をより重視しています。端的にいえば、「ほかの書店では品切れしていても、ジュンク堂に行けば置いている」という状態を目指して売り場づくりをしています。
これはコンピュータ書に限ったことではなく、ジュンク堂は経営理念に「愚直なまでに”本と文具”の品揃えにこだわります」ということや「“図書館よりも図書館らしい”店づくり」を掲げていて、ジュンク堂でしか買えない本を置くことを意識しています。
とくに池袋の場合、駅近のデパートの中に三省堂書店(以前はリブロ)があるので、すぐに買える本ならそちらで購入しますよね。私が入社した時から、「そっちに置いていないものでも、きちんと品揃えしておけば、こっちに来てくれる」と考えて売り場づくりをしてきました。こうしたことから、コアなエンジニアの方も多くいらっしゃっていると思います。
ちなみにCPUのランキングでは、最近は大型書店で拠点を統合する流れもあり、昨年の発表では紀伊國屋新宿本店さんが売上トップになっています。
── 売れ筋のジャンルや、最近の傾向はいかがでしょうか。
長田 コンピュータ書は流行り廃りが激しいので、棚の増減や移動はしょっちゅうあります。いまホットな分野は人工知能ですね。そもそもは非常にアカデミックな内容で、大学で情報数学を勉強されているような方がメインターゲットだと思います。
なので本来であれば、1つ上の階にある理工書の棚の方が合うのかもしれませんが、この分野の進化は非常に速く、世の中で使われる実用技術として落とし込まれてきています。やはり多くのエンジニアが関心を持っていますし、学術書ではなくエンジニア向けの実用書も多数出版されるようになりました。
棚も昔は奥の方に1〜2本程度だったのですが、2014年ごろに目立つ場所に移動し、さらに一昨年(2016年)に拡大しました。現在は4本半を確保しており、場所も目立つところに置いています。それでも新刊がかなり多く、定番の本も残したいので、定番と新刊との兼ね合いに頭を悩ませることもあります。
プログラミング分野でいえばPythonの棚は広げました。Pythonの本は、最近一気に増えましたね。逆に縮小したのはPerlやPHPです。Perlは新刊があまり出ないので縮小せざるを得ないんですよ。Rubyも一時期に比べると、新刊のペースが落ち着いてきたように思います。
エンジニア的には「来ている」と言われながら、いまひとつ動いていないジャンルでは、SRE(Site Reliability Engineering)やInfrastructure as CodeなどのITインフラ分野です。コードやインフラの品質管理手法として、理想論ではあるのですが、やはり現実の世界だと難しいのかもしれません。
── 長田さんといえば、エンジニアからの信頼も厚い、コンピュータ書のエキスパートとして活躍されていますが、ジュンク堂に入社するまで、コンピュータのことはまったく知らなかったそうですね。
長田 大学ではインド史を専攻していたので、入社してコンピュータ書に配属になった時はショックでした。理工書なら、生物学や植物、動物などイメージがわきやすいジャンルもあるのですが、コンピュータは何一つ興味が持てなくて、当初はちょっと泣きましたね。
── そこから、どのように気持ちを切り替えたのでしょうか。
長田 当時の上司がネット書店に転職して、自分でやらざるを得なくなった時からですね。より正確にいえば、上司が転職した後、仕入れで大失敗したことがきっかけです。
2006年にオライリーから出版された『Binary Hacks』という書籍があり、当時非常に売れたのですが、私はそんな本が出ていることも知らなかったし、仕入れもしていなかったんです。
売り場はシフト制なので、自分が気付かないうちに発売日に7冊ほど入荷して、その日のうちに全部売れてしまっていたのですが、そんなことに気付きもしなかった。情けないことに、他社の営業の方に「最近、こんな本が売れているみたいですね」と話しかけられて、初めてその本の存在を知りました。
指定をすれば、通常の配本に加えてたくさんの冊数を入れてもらえるのですが、当時は指定の仕方も知りませんでしたし、ツテもなかった。慌てて出版社に電話をかけたのですが、とてもよく売れていた本だったので、ほかの書店さんはすでに仕入れを強化していて、在庫がもうなかった。今では信頼関係が築けている営業の方ですが、その当時は「あなたの仕入れの能力が低いから、自業自得ですね」と言われてしまったのです。
ここでガツンといわれたことで、エンジンがかかったと思います。仕入れの能力が低いと、いい売り場になりません。何より、「お客様が欲しいと思っている商品を仕入れるノウハウを、自分は持っていない」ということに気が付いて愕然としました。
── 具体的に、どのような取り組みをしたのでしょう?
長田 まず基本ですが、毎月の新刊案内のメールマガジンを購読するようにしました。本当は店頭に立つ仕事をしているとメールがさばききれなくなるので、全部の出版社で同じことはできないのですが、それでもオライリーは情報が欲しかった。
加えて、さまざまな出版社の営業の方に何が売れているのかをヒアリングして、時には出版社さんに同業他社の方を紹介していただき、情報交換の機会を持ちました。いま考えると、親切な人が多かったんですよね。「うちの店では、今週はこの本がランキングに入った」など、いろいろ教えていただいたんです。私自身も自分の売り場を見て、どういう傾向があるかを考えるようになりました。
こうして人脈ができてくると、新刊の指定ノウハウや、仕入れの販路が確保できるようになったんです。コンピュータ書の場合、ベストセラーが次々に出るわけではないので、「何かの時に無理をきいてくれる人脈や販路」を開拓することはなかなか難しいのです。これは自分で経験を積んでいくことと、意識して人脈づくりをしていくしかありません。
最初のうちは、売れるコンピュータ書の見極めについて、営業の方にいろいろ教えていただいていたのですが、だんだん出版流通の知識だけでは物足りなくなって、編集者を紹介していただき、最終的には知り合いになったエンジニアに直接聞いてみたりするようになりました。
── 売り場ではエンジニアを招いたイベントも定期的に開催されていますよね。達人出版会代表取締役で、日本Rubyの会代表理事の高橋征義さんを招いた「新春座談会 このコンピュータ書がすごい!」は10年ほど続いていますね。これはどのようなきっかけで始められたのですか?
長田 高橋さんのご友人が私の会社の先輩で、2007年にその先輩経由で「ジュンク堂さんに、RubyKaigiというカンファレンスに出店してもらいたい」という連絡をいただいたんです。
こうした技術カンファレンスは、出版社が出店して割引で本を売るスタイルが多いのですが、高橋さんは「本屋さんに一括でお願いした方が、品揃えもよく効率的」と考えられたそうで、うちにお話がありました。いまの私のエンジニア人脈は、ここで培ったようなものです。
せっかくお話をいただいたのだから、私もブランディングを意識し、「専門書を買いたかったらジュンク堂へ」という思いでこれまで出店してきました。講演者が発表されると、著作の有無を調べて、その方の著作は必ず置くようにしているんですよ。
そして、せっかくだからジュンク堂の売り場にも貢献したいということで、高橋さんを招いたイベントも開催するようになりました。このイベントの成果もあって、毎年1月〜2月の売上実績もなかなかいいんです。
── エンジニアの場合、コミュニティが書き手でもあり、読み手でもあるという独特な世界観がありますよね。そうした中から、ニーズを拾い上げるということもあるのですか?
長田 「常にミーハーであれ」ということを心がけて、情報収集は熱心に行っています。「何が流行っているんだろう」と。
1つのコミュニティの中に読み手も書き手も集まっているので、必要な情報は集約されやすいですし、私もフォローしているエンジニアのTwitterなどで「この原書の翻訳本が出版されたら絶対に買う」というような意見も見ます。新しい翻訳本が出る時には、Amazon.comのレビューもチェックしています。エンジニアに注目されている本であれば、できるだけ多くの本を仕入れたいですから。
たとえば昨年出た『仕事ではじめる機械学習』は、著者のひとりと知り合いだったこともあり、同人誌で話題になったころから注目していました。オライリーがPDF版を販売するようになった時に、紙の版(同人誌)を扱えないか聞いてみたこともあります。そのうち紙の本も出版されたので、そちらを仕入れました。
ただ、コミュニティだけをフォローしていればいいかといえば、単純にそうともいえません。たとえば、昨年売上2位のExcelの解説書のような本に対するニーズは、エンジニアからはなかなか出てこないのです。実際の売り場で「あの本、ありませんか?」と問い合わせが多く寄せられて、売れていることに気付かされるケースです。
── コンピュータ書の売り場も、なかなか奥深い世界ですね。最後に、売り場づくりで意識されていることを教えてください。
長田 やはりここ5年ほど、出版不況を実感することが増えてきました。対策も考えているのですが、結局は地道に、ほかの書店さんでは買えないような専門書を丁寧に仕入れて「ジュンク堂にはこんな本もあるんだ」と思ってもらえる売り場づくりをすることだと考えています。
たとえば、絶版になった本でも、最近はマイナビ出版さんのように電子とオンデマンドで復刊することもあるので、一般流通に乗っていなくても紙の本として積極的に仕入れています。オンデマンド商品はマーケットが小さいというか、ターゲット層がかなり限られてしまうけれど確実に売れる商品が販売されていることが多いですね。そういう出版社としてはラムダノートさんも、当初は一般流通に乗っていなかったので直接取り引きしてもらいました。
あとは、できるだけ内容に沿った棚づくりも進めています。エンジニア向けの読み物として定評がある『ハッカーと画家』は一応読み物の棚に置いているのですが、内容としてはLISPハッカーの話なので、LISP関連のプログラミング書の棚にも置いています。
こういう取り組みは、内容を知っていないとできません。忙しくてなかなか手が回らないこともありますが、やはり喜んでいただける売り場づくりは意識していますね。
最近は、土日にお子様と書店に訪れるエンジニアの方も増えているので、ぜひご家族みなさんでお越しください。
長田 絵理子(おさだ・えりこ)(ジュンク堂書店池袋本店 係長 コンピュータ書担当)
2005年、株式会社ジュンク堂書店(現・株式会社淳久堂書店)入社。池袋本店・コンピュータ書担当。担当歴はもうすぐ丸13年! 産休を経て昨年復帰。Twitterより息子の顔を眺める時間の方が長くなりましたが、今日も楽しく働いています。
(取材・構成:パソナ人材紹介事業 編集部、岩崎史絵)
*1:同ランキングで『リーダブルコード』は2012年の刊行から3年連続でトップを獲得し、以降も上位をキープし続けている。
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