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Web開発で地図を利用する際に、APIで外部のサービスを利用するのはもう定番となっています。広く利用されているのはGoogleマップですが、選択肢はそれだけではありません。日本の行政機関である国土地理院では、豊富な地理空間情報を提供する一環として、PCやスマホから利用できるWeb地図「地理院地図」を公開しています。
この地図画像(地理院タイル)の一部は使い方によっては申請が必要ですが、Webサイトやアプリケーションで国土地理院のサーバー上にある地図画像をリアルタイムで読み込んで表示する場合は、出典を明示すれば申請不要で利用可能となっています。さらに、サンプルとして地理院地図のソースコード自体をGitHubで公開しており、開発者フレンドリーな姿勢が話題にもなりました。
gsi-cyberjapan/gsimaps (地理院地図)
地理院地図はサービスとして継続的に機能開発も進められているほか、ビッグデータを利用して地形図そのものを修正するといった取り組みも公開されています。オープンソースやビッグデータ活用など、トレンドを押さえた取り組みを行っているのはなぜか? 地理空間情報の利用促進について、国土地理院基本図情報部地名情報課の大塚孝治さん(上記写真右)と、地理空間情報部情報普及課の小島脩平さんにお話を伺いました。
── まず最初に「国土地理院」の役割をざっくりと教えていただけますか?
大塚 簡単に言えば、日本の最も基本となる地図を作っています。「基本図」と言いますが、世の中のさまざまな地図は、これがベースとなって作られています。私たちはいろいろな測量を行って、基本図などの測量成果を世の中に提供しており、国の機関や地方公共団体はもちろん、民間会社などでも幅広く活用してもらっています。
── 地図というと、以前は紙だったのが、いまはデジタルデータをスマホやPCから利用するのが普通になりましたよね。国土地理院の対応は、どのように変化してきたのでしょうか。
大塚 昔は紙の地図が基本図でしたので、ロッカーに入れて保存していました。地図のデジタル化が始まったのは1980年代ですが、基本図は1990年ごろから紙の地図をスキャナで読み込んでラスター化し、コンピューターで編集するシステムを作ったところから始まりました。その後、ベクトルデータ化して、データベースで管理するよう移行していきました。
世の中の地図情報のデジタル化が進んだ背景のひとつに、大規模災害の存在があります。1995年に起きた阪神・淡路大震災を契機に、地図情報を効率的に整備し、相互利用できるようにして防災やさまざまな分野で活用していこうという政府の動きがあり、そこで国全体としてデジタル化を推進していくことになりました。
その後、2011年の東日本大震災のときには、さらに地理空間情報の整備利活用が進みました。
新たな「基本測量に関する長期計画」を策定|国土地理院(2014年4月9日)
── 地図情報をより活用するためには、デジタル化は欠かせないという認識が広まってきたんですね。同時に、コンピューター性能の向上やインフラの整備も進んでいったと。
小島 インターネットの普及による変化は大きいですね。2003年には、Web地図でデータを一般に公開し始めました。当初は「電子国土Webシステム」という名前でした。まだGoogleマップもなかった時代なので先進的な取り組みだったと思いますが、国土地理院が一からシステムを開発する必要がありました。
【Release NEWS】国土地理院、IE用の地図閲覧プラグイン「電子国土Webシステム」を公開 - 窓の杜(2003年7月16日)
その後、2013年にはオープンソースソフトウェアをベースにした現在の「地理院地図」にリニューアルし*1、現在に至るまで継続的に機能の追加を行い、改良を続けています。最近では、指定したルートの標高グラフを表示する機能や、標高を好きな色分けで表せる機能を追加しました。もともと標高データ自体は整備されていたし、指定した地点の標高を表示する機能も持っていたので、機能の実装自体はそれほど複雑なものではありません。
楽ちんルート発見! ~ウェブの地図で身の回りの高低差がわかります~|国土地理院(2018年3月8日)
また、インフラも変わってきて、2016年度からは民間のクラウドサービスを使っています。災害時にはアクセスが増えてサーバーに負荷がかかる心配があったのですが、クラウドにすることで安定性が増しました。
── 開発者向けに、地図データそのものも提供していますね。
小島 2013年に現在の「地理院地図」にリニューアルしたときに、一般的な地図データ形式での提供を開始しました。それまでもデータの提供はしていたのですが、データとシステムとが明確に分離されていなかったんです。
現在提供しているデータ形式はGoogleマップやYahoo!地図でも使われているもので、データだけでもいろいろなシステムで使っていただけるようになりました。広く使っていただくためには、いま一番普及しているものに合わせていくのが良いと思います。
── 公的機関では珍しいと思うのですが、地理院地図のソースコード自体も提供していますよね。しかも、GitHubで公開ということで、エンジニアの間ではかなり話題を呼んだようですが。
小島 そもそも、国土地理院がデータ屋かシステム屋かというと、あきらかにデータ屋だと思うんです。そしてデータを使ってもらうことが主な目的だと考えれば、それを利用するシステムを隠しておく必要はなく、オープンソースで出していったほうが良いという考え方です。オープンソースをベースに開発しているので、これが実現できています。ソースを見ることができれば、新たなシステムも作りやすいですし。
GitHubで公開したのは、開発者の方への届きやすさを考えてのことです。いま、官公庁でもTwitterなどのSNSで情報発信するのは普通になってきていますが、開発者に向けて発信するとしたら、開発者のSNSのようなGitHubで公開するのが最適ではないかと考えました。
── ソースコードを使って新しいサービスが生まれたなどの例はありますか?
小島 ソースコードが利用されること自体が目的ではないのですべてを把握しているわけではありませんが、自治体で地図を利用したシステムを開発する際に活用して、開発費を少し抑えることができた事例があると聞いています。業務発注するときにも役立てていただけるのではないでしょうか。
地理院タイルが実際にどのようなサービスに利用されているかは、地理院地図パートナーネットワークの活動を見ていただけると分かると思います。地理空間情報活用のオープンイノベーションを目的として、企業や個人の方との情報共有を行っています。過去の発表資料はサイトでも公開しているので、ぜひご覧になってみてください。
大塚 地図情報整備に必要な測量の技術そのものも変わってきています。地図を作るというのは、まずは地球上の日本の位置をしっかり押さえ、それを基準に地形や構造物などの正確な位置や形状を測っていく作業です。
かつては三角点という位置の基準となる石を利用して測量していましたが、いまはGPSなどの測位衛星を常に観測している電子基準点を利用することで、全国で正確な測量ができます。地図を作成するときも、この電子基準点を利用して航空写真測量を行う方法が基本となっています。
余談ですが、電子基準点は常に測位衛星を観測していて、自分の位置を常に測定しているので、地殻変動や地震のときにどれくらい地面が動いたのかといったことも、すぐに把握できるようになっており、防災にも役立っています。
── 今回、ビッグデータを利用して地形図の登山道を修正されたとのことですが。
大塚 登山道は、どこを通っているのか正確な位置を把握することが難しいのです。樹木に遮られて航空写真では見えない部分が多いし、現地調査をするにしても、時間も費用もかかります。ひとつずつ現地を確認していたら日本全国の登山道はなかなか修正できません。また、土砂崩れや、いろいろな要因で部分的にルートが変わることも多いのですが、その情報はなかなか我々のところまで届かない。登山者の安全のためにも、できるだけ早く修正したい。
そこで何か良い方法がないかと考えたときに、ここ数年で登山者がスマホなどで移動経路情報を取得するようになってデータが十分に蓄積されてきたことから、これらのビッグデータを利用して修正できるのではないかと思い至ったわけです。
── 登山者の移動データは、どのように入手したんですか?
大塚 登山者を対象にしたコミュニティサイトを運営している「ヤマレコ」や「ヤマップ」という企業があり、そのサイトを利用している登山者が記録した移動経路データを使わせていただいています。提供いただいているのは個人を特定できないよう加工したデータで、これをビッグデータとして扱って統計処理することで、登山道の位置を把握しています。人数としては数百人から、多いところでは数千人分くらいですね。
今回、第一弾として八ヶ岳(やつがたけ)と上高地(かみこうち)の登山道を修正しました。いくつかルートが変わったところを修正しましたが、修正箇所の中には過去の雪崩でルートが変更されたところなどがありました。
ビッグデータで登山道を修正した地形図をはじめて公開|国土地理院(2018年3月7日)
── そうすると、ビッグデータはかなり実用になると言えますか?
大塚 ただ、ビッグデータをそのまま使うわけではなく、閾(しきい)値を調節して外れ値をはじくなどの調整は必要です。例えば、積雪期は登山道以外でも自由に歩けてしまうので、この時期のデータは外す必要があります。また、登山道周辺の地形や構造物との整合性も確認しながら修正するため、今のところは編集者の判断による調整も必要です。これもいつかは自動化したいと思っています。
また、基本図なので決められた位置精度を確実に確保することも重要で、慎重に検証しながら仕事をしています。例えば、スマホのGPSデータが大量にあれば二万五千分の一の地形図の登山道は修正にできるようになってきましたが、自動車などの自動運転に必要な位置精度の地図データを作ることは現時点ではできません。
もうひとつ忘れてはいけないのは、ビッグデータを提供していただいている方々の理解と協力が欠かせないので、その配慮をなくさないことですね。できるだけ早く地図を修正しフィードバックして、新しく正確な地図を使ってもらい、メリットを実感してもらうことが大事だと思います。
── ビッグデータの利用やオープンデータ化など、積極的に最新トレンドを取り入れている様子を伺ってきましたが、新しい技術動向をキャッチアップしていくのは大変ではないでしょうか?
大塚 我々は、どうしたら最新の情報を地図に反映できるかということをいつも考えて、利用できるものはないかアンテナを張っています。必ずしも新しい技術動向だけを追っているわけではありませんが、新しいアイディアは普段の議論の中で出てきて、実際に使えそうとなれば実現に向けて進めていくことが多いですね。
小島 地図を提供するという立場から考えると、作成された正確な地図を使いたい人が誰でも使えるよう、最新の技術に乗っていかなければならないと考えています。だから終わりはなくて、ずっと動向を見極めながら、常にその時一番良いものを選んでいくことが大事だと思います。「使ってもらってなんぼ」ですから。
大塚 最新の正確な国土の状況を地理空間情報として提供して、皆さんに使っていただくことが我々の目的で、それは昔も今も一貫して変わりません。世の中の状況に合わせてプロダクトの仕様や提供方法を変え、より利用しやすいものを常に追っていきたいですね。
── ただトレンドだということではなく、地理空間情報の利用促進という本来の目的に適っているかを見極めて技術を採用したことが、結果としてオープンソースやビッグデータの活用につながっているわけですね。ありがとうございました。
(取材・構成:GeekOut編集部、森嶋良子)
*1:資料として http://www.gsi.go.jp/common/000091104.pdf などを参照。
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