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【転職最新動向:CRO業界(治験業界)】CROから製薬メーカーへの転職希望者は多いが、「なんとなく」ではダメ。自身の今後のキャリアを描いた上で選択を

【転職最新動向:CRO業界(治験業界)】CROから製薬メーカーへの転職希望者は多いが、「なんとなく」ではダメ。自身の今後のキャリアを描いた上で選択を

医療の世界は日進月歩。日々新薬の研究・開発が行われています。今回は、パソナ 人材紹介部門にて医療業界の臨床開発領域を担当するキャリアアドバイザー大谷 俊司に、CRO業界(治験業界)の転職動向を聞きました。

ステップアップ転職が多い職種。経験者で転職先が見つからないことはほとんどない

-CRO業界の転職市場について教えてください。

大谷:どの企業も採用意欲は非常に高く、臨床開発モニター(CRA)の募集は多いですね。製薬メーカーは新しい薬を創るにあたって「治験」を行いますが、今はより高度な技術を要する高分子の薬品や、バイオ医薬品の開発が進んでいます。新しい薬を作る難易度は上がり、研究開発に多額な費用がかかるようになっているため、製薬メーカーは経営をスリムにすべく、治験の部分をCRO(受託臨床試験実施機関)にアウトソースする傾向に。そんな流れが近年いっそう強まって、仕事を受けるCROの求人数が増えているのです。

―経験者と未経験者、どちらも求められているのでしょうか?

大谷:2~3年前までは未経験者の募集も多かったのですが、最近は未経験の人材については各社、新卒で大規模採用を行っています。そのため、中途採用に関しては経験者を対象とした募集がほとんどですね。新卒の受け入れを活発に行っていることもあり、新人の指導ができる社会人4〜5年目の人材が特に求められています。とはいえ、年齢よりも経験が重視される傾向にある職種ですので、リーダーやマネージャークラスの経験がある方は特にチャンスと言えるでしょう。

―CRA経験者は、どのような理由で転職を希望されることが多いですか?

大谷:最近では、「オンコロジー領域の経験を積みたい」「マネジメント経験が積みたい」と転職を希望される方が多いですね。また、グローバル治験(国際共同治験)の経験を積むことができる求人も人気です。

また、転職を機に「働くペースを抑えたい」という方もいらっしゃいますね。新薬開発の仕事はプレッシャーがありますし、世に出るまでのスピードが収益を左右するため、ついついできる人に業務が集中してしまいがちです。もちろんプロジェクト自体が忙しい場合もありますが、優秀な人ほど特に忙しくなってしまう傾向にあるように思います。そういった働き方を一度リセットしたいと、転職のご相談に来られる方もいますね。

―今のCRO業界は、「経験者であれば転職しやすい状況」と言えるのでしょうか?

大谷:現職のCRAの方で、「転職先が全く見つからない」ということはほぼないと思いますし、転職者側も、「同業への転職であればどこかには決まるだろう」と考えているように思いますね。転職と同時に年収も上がりステップアップ、という方も多いです。

しかし、その分「なんとなく転職してしまう方」というのも少なくない印象です。特に最近は、知人経由のリファラル採用による転職も増えていますが、「知っている人がいるから大丈夫」という安心感からか、目指すキャリアや転職に求めることなどを深く検討せずに「流れで転職してしまう」方もいるのでは?と感じることもあります。

他業界と比べると転職回数を気にしない企業が多い業界とはいえ、転職回数が多かったり1社あたりの在籍期間が短かったりすると、やはりマイナスになってしまいます。その会社で本当に働きたいのか、やりたいことはできるのか、それは今後のキャリアに必要な経験なのか。後悔しないためにも、さまざまな企業から幅広く検討するフェーズがあってもいいのかなと思います。

CROと製薬会社の役割は全く別。自分の極めたい分野をきちんと考えた上で、次の道を選ぼう

-他に、CRA経験者が転職する上で注意すべきことはありますか?

大谷:CROから製薬会社へ転職を希望される方のご相談を受けることも多いのですが、相談者の中には製薬会社で「何がしたいのか」「どのような仕事ができるのか」といった理解が明確でない方も見受けられます。

そういった方には、「製薬メーカーとCROの仕事内容はそもそも別物である」ということをご説明しています。製薬メーカーのCRAが行っている仕事は、「臨床企画」と呼ばれる業務が主。どういった項目を満たした症例をどれぐらいの期間でいくつ集めるのか。そういった企画業務を行ったりもするんです。CROのCRAは、その企画に沿った「モニタリング」の業務が主となっています。

まれにCROから製薬メーカーに転職する方もいますが、よほど合致する領域での経験があるか、もしくはCROと同様にモニタリング業務が中心なので経験が活かしやすく、かつ一部臨床企画もできる求人がたまたま見つかる……といったパターンのいずれか。どちらにせよ、ハードルはかなり高いのが現実です。

―なぜ製薬企業を希望される方が多いのでしょう?

大谷:製薬企業に対し、憧れや華やかなイメージがあるのだと思います。確かに、かつての製薬メーカーとCROの間には発注側と受注側という明らかな上下関係があり、製薬メーカーの力が強かった側面はありました。しかし、今はCROの立ち位置が変わってきています。CROは、単に製薬メーカーから受託して仕事をするだけではなく、開発している薬の申請を早く通すためのコンサルティング的役割も兼ね始め、存在感が増しているのです。

また、現場のモニタリング業務については、CROの方が高い専門性を持って取り組むことができます。例えば、製薬メーカーでもあまり新薬を手掛けていない企業の場合、メーカー内での治験の進め方が古いことも。そういった会社に入るよりは、CROにいる方がレベルの高い治験ができますよね。そもそも、製薬メーカーとCROは役割が違いますし、昨今はCROのニーズも高まっていますから……なんとなく抱いているイメージだけでCROを離れ、製薬会社に転職しようと考えるのはもったいないと思いますね。

CRO業界の企業は、「転職に求めているものが何なのか」語れる人を特に求めている

-CRO業界全体として、どのような人材が求められているのでしょうか?

大谷:「自分の考えをしっかりと持っている人」ですね。今後のCRO業界の動向を自分なりに考えた上で、「こういう経験が積みたい」といった意思をしっかり語れる人が求められています。企業がそういった人材を求めるのには、もちろん理由があります。昨今は「売り手市場」と言われ、転職もしやすい状況ですので、「なんとなく」といった気持ちで面接に行ってしまう人も少なくありません。だからこそ、「本気度の高い人を見極めたい」という企業の意向は今まで以上に強いです。「自分が転職に対し、何を求めているのか」をきちんと考え、「治験」という仕事でどういうキャリアを築いていくのか意識した上で、志望動機などを語れると良いですね。

―どういうキャリアを築きたいのか、どういったキャリアが積めるのか、なかなかイメージできないという方も多いと思いますが、どうしたら良いのでしょうか。

大谷:そういう方は、ぜひ一度パソナキャリアにお越しください。今後のキャリアや仕事に対する希望がはっきりしていなくても、ご自身の得意なことや生かしたいスキルの整理をしてみることで、キャリアの道筋が見えてくることもあります。私たちキャリアアドバイザーも、伺った話の内容を踏まえ、今後の方向性のご提案をすることが可能です。

例えば、かつて私が担当した転職者に、臨床開発経験者で高い英語スキルをお持ちの方がいました。彼女は臨床開発モニターという仕事にこだわっているわけでもない。かといって、他の仕事をやりたいというわけでもない。強いて言うのであれば、「内勤の仕事がいい」と言っていたものの、ご自身のやりたいことは定まっていませんでした。

結果的にその方が転職したのは、薬を世の中に出すための申請業務をする「薬事」のコンサルティングをメインで行なっているCRO企業でした。薬事であれば内勤かつ専門性も高く、経験を積めば、海外の医薬品の申請を日本で通すためのアドバイスもできるようになる。「コンサルティング」という点でも、キャリアの伸びがあります。

もしご自身の強みがわからない場合も、キャリアカウンセリングを通して私どもから見た皆さんの強みをお伝えできると思います。普段の業務の中では、どのような経験をすることで市場価値を上げられるのかは分からないもの。これまでやってきたお仕事について詳細を伺いながら、一緒に整理していければと思っています。

―最後に、CRO業界で転職を検討されている方にメッセージをお願いします。

大谷:新薬が成果物として世の中に出る際、そこにはたくさんの人が関わっています。病気を持つ患者さんやその家族にとっては、治験薬が出たり治験がスタートしたりすることが頼みの綱。社会貢献性は非常に高い仕事ですし、病気を治せる未来を実現させていく仕事であるというのは、CRO業界ならではの面白さだと思っています。

CROは各社ごとに特徴があって、担当する領域の広さやプロジェクトの任せ方は企業ごとにかなり違うんですよ。モニタリング業務の始めから終わりまで一連の流れ全部を担当のCRAに任せるCROもあれば、プロジェクトの忙しいフェーズにスポットでアサインするような仕事の任せ方をする企業もあります。社内にメディカルドクターがいて、医薬品の症例について解説してくれたり、医者の考え方を教えてくれたり、疾病に関する知見をくれたりする企業もあるんです。

でも、面談の場でCRO業界のさまざまな企業の名前を上げてみても、自分の会社以外のことを「知らない」という人は、思いのほか多い。キャリアカウンセリングにお越しいただければ、各社の特徴や違いをまとめてお伝えできますし、それぞれの企業で築けるキャリアについてもご紹介することができます。現在活況を迎えている転職市場、需要が高まっているCRO業界にいるからこそ、一度立ち止まって自身のこれからのキャリアを考えてみてはいかがでしょうか。


(取材・文/天野夏海)

〈話し手 プロフィール〉

キャリアアドバイザー 大谷 俊司

医療業界の中でも、CROなどの治験業界、製薬メーカーなどの分野を主に担当している。企業担当とキャリアアドバイザーを兼任しており、業界の「今」の情報を転職者にお届けできる点が強み。CRAはじめ臨床開発関連職、医薬品研究職、製剤開発職、プラントエンジニア、獣医、など幅広い職種の人材を転職サポートしている。

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