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タレントマネジメントとは?システム導入のメリットや事例の紹介

タレントマネジメントとは?システム導入のメリットや事例の紹介

経営者にとって、企業の経営戦略実現を左右する大きな課題といえば“人材育成”や“人材管理”です。近年注目を集めている、企業価値・企業力の向上を目的とした人事施策「タレントマネジメント」とはどんな取り組みでしょうか。タレントマネジメントの重要性からシステム導入のポイントまで、戦略人事のいろはを徹底解説いたします。

タレントマネジメントとは 人材の最大限活用

「タレントマネジメント」とは、欧米を中心に始まった人材開発手法で、2000年以降、日本でも採用する企業が増えてきている人事施策の一つです。 その名の通り、タレント(=能力・才能)をマネジメント(=運営管理)するという意味で使われています。企業が経営目標を達成するために必要な経営戦略と合わせて、人事の面から目標達成をサポートする人事戦略を意味します。

目的は経営目標の実現

企業は、「タレントマネジメント」を取り入れることで、大切な資産である人材(=優秀な従業員)の採用・管理・育成をし、従業員のパフォーマンスを最大限に引き出し、企業の経営戦略・経営目標の実現を目指します。

タレントマネジメントでは、優秀な人材の採用はもちろんですが、既存従業員が持つタレント(=経験・実績・技術・知識)を最大限に生かすための育成、管理運用が重要になります。

経営目標の実現のためには、それぞれの企業の戦略や目標に合わせて、
全従業員を対象にしてマネジメントを行うのか
特定の従業員に絞ってマネジメントを行うのか
など、マネジメント対象の検討や実施計画を作成することが大切です。

国内のみならずグローバル競争に向け人材管理

企業のグローバル化が進むなか、日本でも、国内の競合他社だけでなく、世界の競合と肩を並べる経営戦略が必須となってきています。グローバル競争に向けては、欧米的な思考である“企業のニーズに対応できるタレントをもつ人材の採用・管理”が求められます。

個々の能力を評価し、適材適所へ人材を配置・管理すれば、即戦力として、企業の経営戦略実現のスピードを上げることができます。

タレントマネジメントが必要になった背景

タレントマネジメントが必要になった背景

欧米でタレントマネジメントが取り入れられ始めた当時、終身雇用制度や年功序列を重視する考えが主流だった日本では、具体的な職務は決めずに雇用し、日々の業務の中で経験を積み、適した業務にアサインするメンバーシップ型雇用が行われていました。

一方欧米では、具体的な職務や責任範囲を“ジョブ”化し、ジョブに合った能力を持つ人材を雇用する、ジョブ型雇用が当たり前とされていました。ジョブ型雇用では、専門スキルを持った個々の人材育成・採用に成功したものの、広い知識や経験を持つゼネラリスト(経営人材)が育ちにくいという課題を抱えることになりました。

ジョブ型雇用については、こちらの記事も参照してください。 「ジョブ型雇用の正社員とは?従来のメンバーシップ型雇用との違い」

このような背景から、通常の人材マネジメントに合わせて、企業が主体で行う「タレントマネジメント」が必要とされるようになったのです。

現在では、企業のグローバル化に伴い、日本企業においても、雇用や人材育成の考えが大きく変化しています。特に、近年の日本でタレントマネジメントが注目されるようになった背景には、“労働市場の変化”“経営戦略の変化”“価値観の変化”といった3つの変化が関係しているといわれています。

経営戦略の変化

グローバル化やIT技術の進化に伴い、企業価値の向上のために、企業ごとに独自の経営戦略が求められています。
たとえば、
・デジタル技術の導入(=DX推進)
・世界市場を勝ち抜く戦略(=グローバル競争戦略)
・顧客行動の変化に対応(=ビジネスモデルの変更)
などがあげられますが、これらの変化に対応するには、情報の分析や管理能力が必要とされます。そのため人材の能力を正確に把握することが重要となります。

労働市場の変化

“少子高齢化による労働人材の不足”が課題となっている現在は、人材の採用も年々厳しさを増してきています。社員ひとりひとりのポテンシャルを高め企業の継続的な成長のために、人材の経験年数や能力、志向などを管理し、適材適所に人材を配置する“人的資源の活用”が求められています。

価値観の変化

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、外出自粛、多くの企業でリモート勤務が導入され、自分と向き合う時間が増えたことで「ビジネスパーソン(従業員)」としての仕事への向きあい方、価値観に大きな変化が起きています。
SOMPOホールディングスが2021年12月に実施した「仕事に対する価値観の変容に関する意識調査」では、以前よりも「プライベートの活動」、「暮らし」、「家族」といった生活に密接なものを重視する傾向が増加しています。
加えて、国をあげて多様な働き方、ワークライフバランスへのシフトが推奨されています。 企業は、多様化する従業員のニーズを理解し、その価値観に合った働き方、人事戦略が求められています

※参照:SOMPOホールディングス「仕事に対する価値観の変容に関する意識調査

導入のメリット

導入のメリット

企業にとって、大きな変化を伴う施策を取り入れることによって期待できる、タレントマネジメントの導入によって企業が得られるメリットを解説します。

従業員の能力の可視化できる

従来の企業では、従業員ひとり一人の能力を把握しているのは、所属する上長のみであることが多いのですが、タレントマネジメントを取り入れることで、全従業員の能力や職務適性を可視化できます。これにより、個々の能力に合わせて仕事を割り振ることができ、個人のパフォーマンスはもちろん、企業全体としても最適な効果を生み出すことができます

効果的なタレントマネジメントの実現に向けて把握しておきたい、必要な情報は、以下の5つです。

1. 基本属性 - 性別や年齢、学歴など
2. キャリア - 職務経験・社内での経歴など
3. 能力や技術 - 得意とする職務や生かせる能力、技術、知識など
4. 行動 - 自身の能力をどのように発揮するかといった行動特性や交渉力、コミュニケーション力など
5. 価値観や考え方 - ビジネスパーソンとしての価値観や目標、企業や仕事に対する考え方や自己評価など

人材の配置を最適化できる

タレントマネジメントの導入により、従業員の能力を可視化できれば、会社全体として、今必要な人材を最適な部署へ配置できるようになります。職務適性を考慮した人材配置では、個々が得意とする能力を存分に発揮でき、仕事に対するモチベーションを上げることはもちろん、各部署、チーム内での人間関係を良好に保ち、結果として、会社に利益をもたらす成果に繋げることが可能です。

能力に応じた人材育成が可能に

タレントマネジメントによるメリットは、優秀な人材の管理だけではありません。従業員の能力を可視化することで、個々の得手不得手を把握でき、人材の育成・教育にも生かすことができます。階層や入社年次別の全体研修では得ることのできない、ひとり一人に合った人材教育を通じて、従業員それぞれのスキルアップを目指せるのが特徴です。

評価を適正化できる

企業内では、自身の特別な能力を使うことなく、日々の業務に取り組んでいる人も少なくありません。新規プロジェクトや新事業に向けて新たな人材を探す前に、社内で埋もれているかもしれない有能な従業員に目を向けることができるのも、タレントマネジメントの大きな役割です。従業員の能力を適正に評価し、ES(=従業員満足度)を高めることは、有能な人材の離職を防ぎ、経営戦略実現への近道となります。

最適な採用計画が立てられる

タレントマネジメントの導入により、現在どんな人材が揃っているのか、またこれからどんな人材が必要なのかといった採用基準を明確化できます。企業は、経営戦略を実行する上で、本当に必要なスキルを持った人材を採用でき、人事戦略も立てやすくなるでしょう。企業側、従業員側、どちらにとってもWIN-WINの関係が構築でき、長きにわたり、必要な人材を雇用できます。

タレントマネジメントの導入・運用方法

タレントマネジメントの管理運用に特化したツール、タレントマネジメントシステムの導入で気をつけたいのは、導入プロセスやその運用方法です。ただ、やみくもにシステムを構築しても、社内全体の理解を得られなければ、効果的な結果には繋がりません。企業側・従業員側、双方が納得する形でのシステム導入を進めるために、必要なプロセスを順序だてて解説していきます。

1.経営戦略に基づいて、目的を明確にする

タレントマネジメントにおける人事戦略は多岐にわたり、人材確保・人材育成・人材の最適配置・人材の定着とさまざまなエリアをカバーする必要があります。企業それぞれが、経営戦略に基づいて、強化したい目標や目的を明確にし、より具体的かつ効果的なタレントマネジメントシステムの導入を目指しましょう。

●経営目標は何か?
●どんな人材が必要なのか?
●どのくらいの人数が必要なのか?
●期間はどのくらいか?
●どこの部署に必要となるのか?

2.人材情報の可視化

経営目標の達成に必要な人材を可視化し、社内人事情報などをもとに分析します。社内にいる人材を配置するのか、ポテンシャルのある従業員を教育するのか、即戦力となる人材を新たに採用するのかといった判断を行います。
ここで大切なのは、人材情報のアップデートです。適材適所の人材を、企業全体で効果的に配置するためには、関係部署との情報共有や、人材情報のアップデートは欠かせません。定期的な情報更新が可能なシステムを構築しましょう。

3.タレントの設定・育成

人材情報をデータ化したら、経営目標をもとに、必要なタレント人材を設定します。企業の規模やプロジェクトの規模などに応じて、全体最適を目指すのか、部分最適を目指すのかも明確にしておきましょう。人材情報が多い場合は、管理職クラスや部門、タレントごとにグループを形成しておくと便利です。

現在の人材で適任者が不足している場合は、人材の育成を行います。業務を通じて教育を行うOJT、研修などを通じて教育を行うOFF-JTの方向性も検討しましょう。

4.適材適所な配置・活用

人材情報をもとに、個々の能力を発揮できるよう、適切な人材配置を行いましょう。ここでは、現場管理者との連携が必須となります。配置した人材が最適なパフォーマンスを発揮しているか、経営目標を意識した結果が出せているのかを確認しましょう。

5.人事評価 成果の確認

人材育成では、経験を積み、結果を出すまでに時間がかかることもあります。定期的なモニタリング・人事評価を行えるようシステムを構築しましょう。個々の能力を発揮できているのか、チーム内、部門内での業績はどうか、業務目標は意識できているか、1on1の面接などを活用し、フォローアップしていきます。

人事配置が効果的に生かされていない場合は、部門異動などを行う、業務内容を変更するなどして、従業員の能力発揮、モチベーション維持ができるようサポートしていきましょう。

タレントマネジメントシステムの導入のポイント

タレントマネジメントシステムの導入

タレントマネジメント導入のメリットや運用方法が把握できたら、いよいよシステムの導入です。どんなシステム・機能があるのか、自社のタレントマネジメントに合ったシステムを導入するためのポイントを解説します。

システムでできること

タレントマネジメントシステムの代表的な機能を把握して、自社に必要な機能を導入していきましょう。

人材データベース管理 従業員の個人情報、面談記録、スキル管理などの人事情報を整理・検索・閲覧できる機能。
採用管理 採用プロセスの進捗や内定者数などをリアルタイムで把握したり、プロセス管理を一元化したりする機能。
評価管理 ●評価指標を設定し、結果・実績を管理する「目標管理」機能。
●成果の創出につながる行動特性(コンピテンシー)を設定し、従業員の行動やスキルなどを分析する「コンピテンシー管理」機能。
●各管理指標を分析し、「先月との比較」や「業界内での比較」といった「スコアリング(数値化)」機能。
●さまざまな立場から評価が行える「360度評価」機能。
報酬管理 成果指標の達成度などに基づいて報酬の配分をシミュレーションしたり、賞与などの調整を行ったりする機能。API機能で給与などのデータと連携が可能。
離職防止 1on1トークやフィードバック機能、コミュニケーションツールとの連携などにより、社内コミュニケーションを活性化させ、離職防止をはかる機能。

タレントマネジメントシステムの選び方

タレントマネジメントシステムと言っても、システムの機能やタイプはさまざまです。自社の経営目標を達成する上で効果的なシステムを選べるよう、必要な機能や経費、連携サービスやサポート体制を把握し、自社に合ったシステムを採用しましょう。

タレントマネジメントシステムのタイプ

多目的 評価・育成・活用・離職防止ツール機能などを備えた多目的タイプ。タレントマネジメントシステム初期導入なら多目的タイプを検討してみるのもおすすめです。
評価業務支援 人事評価に特化した機能を備えた評価業務支援タイプ。従業員数の大きな企業では、人事情報の集約に一役買います。
目標管理支援 人材の評価から育成までのサポート機能を備えた目標管理支援タイプ。企業全体の目標はもちろん、チームや個々の目標も管理し、企業全体での目標達成を目指す企業におすすめです。
人材活用支援 人材の適所配置をサポートする人材活用支援タイプ。新規プロジェクトの人事や人事異動など、効果的な人材配置を行うのにおすすめです。

タレントマネジメントシステム導入の成功事例

タレントマネジメントシステム導入の成功事例

タレントマネジメントシステムを導入したいけれど、自社のケースだとどんな導入方法が良いのか分からないといった声も聞かれます。ここでは、実際に導入した企業の事例を挙げてご紹介していきます。

ビジネスのグローバル化に向けて導入

ケース1:大手製薬会社の場合

医療用眼科薬を中心に、国内外で事業を展開する製薬会社では、必要な機能を一気に取り入れるのではなく、段階的に取り入れ、柔軟な運用を目指しました。 結果、変化に対応する現場従業員の理解を得ることができ、急速なグローバル化への対応や人事制度の刷新に成功しました。

従業員活性化に向けた導入

ケース2:大手電機メーカーの場合

既にグローバルに事業を展開している電機メーカーでは、従業員全体のキャリア自立促進を目標に、事業成長のタイミングに合わせてタレントマネジメントシステムを導入しました。 経歴やキャリアの希望をシステムによって可視化することで、本人の意思をより反映した人事配置を行うことができ、従来の社内公募施策を大きく超えるさまざまな制度・仕組みの展開に成功しました。

求められる戦略人事の実現に向けて

経営視点から人事戦略を考え、タレントマネジメントで従業員の持つ才能をフル活用することは、企業にとって生産性、従業員の定着率をあげる一方、従業員のスキル成長や、キャリア価値を上げることにもつながります。
少子高齢化や従業員の価値観の多様化、技術革新といった時代の変化に対応しながら、企業の成長を支える “人事”はますます重要な職務となってきています。

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