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【図解入り】強力なコミュニケーションツール「図解」の魅力|至高の無駄知識(寄稿:きょん)

【図解入り】強力なコミュニケーションツール「図解」の魅力|至高の無駄知識(寄稿:きょん)

利益を追い続ける社会の中では、有益なものに時間を費やすことが正しく、利益に直結しないものは無駄であると言われがちである。しかし、一見すると「無駄」と言われてしまうものの中に、実は新しい発見や有益となり得る知識が存在するのではないだろうか。

多くの人が通り過ぎてしまう無駄知識の中に希少な価値を見出し、その分野を極めし方々に、人生を豊かにする「無駄知識」を紹介してもらう連載企画「至高の無駄知識」。今回は、図解を活用したコミュニケーションをライフワークとしているきょんさんに、ビジネスだけでなく日常的に応用できる「至高の図解力」をテーマに執筆いただいた。

はじめまして、きょんと申します。僕は「ビジネス×図解」の可能性を追求する組織、ビジネス図解研究所のメンバーとして活動しています。

 

これまで『サピエンス全史』や『LIFE SHIFT』、『FACTFULNESS』など価値のある内容だけれども、読むのがなかなか難しい本について、内容を図解にしてきました。また、ビジネス図解研究所では、ご依頼をいただいたビジネスモデルを図解にしたり、講演やワークショップを通じてビジネスモデル図解についてのレクチャーをしたりしています。

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『ビジネスモデル2.0図鑑』より

 

図解をはじめたきっかけは、多くの人と自分の好きな本について語りたいと思ったからです。

 

世界で1,200万部売れた『サピエンス全史』は、僕の周りで読んでいる人がいませんでした。そこで議論の場所をネット上に求めるために、本の内容を『サピエンス全史図解』として発信してみたのです。図解を公開すると、Twitterで多くの人が「いいね」や「リツイート」をしてくれたり、内容についてフィードバックをくれたり、本に興味を持ってくれる人たちが増えていきました。

 

本の図解を介して他の人とコミュニケーションを取ることで、1人で読む以上に深くその本の内容を理解することができます。今でも特に気に入った本は図解を作成し、その図解を通してオンライン・オフライン問わずコミュニケーションをする活動がライフワークになっています。

 

この記事では、図解に魅せられた僕が、図解のメリットなどを紹介し、多くの人が抱いている図解に対する誤解について解いていきます。また、記事のポイントや内容も図解を交えて解説していきます。
 

図解は強力なコミュニケーションツール


そもそも図解とは何でしょうか?

 

図解と聞いて、ビジュアルやイメージを思い浮かべても「何のためのもの」なのかを、考えたことがある人は少ないと思います。

 

僕にとっての図解は、「コミュニケーションツール」です。図解は情報を構造化することで、伝える内容をシンプルにします。図解を通すことで、見る人の情報を読み解く負荷は減り、内容理解がしやすくなります。

 

文字だけだとその情報量に圧倒されてしまい、理解するハードルが高くなってしまう場合もあります。先ほどの『サピエンス全史』は上下巻合わせて約600ページあり、それだけの分量があると、話題作を読んでみたいと思っていても、読破するのが難しいと感じてしまう方もいるのではないでしょうか。

 

図解はそうした第一印象のハードルを下げて、情報にアクセスしやすくしてくれます。
 

誰に、何のための情報なのか 取捨選択をする


図解は情報をシンプルに整理するもので、網羅的に情報を載せるものではありません。図解を用いる目的(誰に、何のために伝えるのか)によって、情報を取捨選択していきます。

 

例えば、ビジネス図解研究所が発信している「ビジネスモデル図解」は、ビジネスの主要な関係者を3×3のマス目に配置し、その関係性を図解にするツールです。たった9マスしかないので、当然全ての関係者、モノ・カネ・情報の流れを記載することはできません。

 

ここで重要なのが「目的」です。仮に投資家に対して出資を求めるために、ビジネスモデル図解を使う場合、まずは出資をしてもらえるように自分たちのビジネスの魅力を伝え、投資家が「どれだけ儲かるのか」に主眼を置いた説明を優先的に行うことになります。

 

他にも社内で新規事業を立ち上げるためにビジネスモデル図解を使うのなら、既存のビジネスモデルとの差分が分かるような情報を選定するでしょう。

 

このように、目的によって必要な情報は変わります。人によって伝えたい内容や重要だと思うポイントが異なれば、作成される図解も変わってきます。

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図解は人と人との前提知識の差を埋めてくれる


図解が「コミュニケーションツール」となる例を紹介します。

 

僕は本を読まずに参加できるというコンセプトの読書会「Booked」を企画運営しています。

 

一般的な読書会というと、本を読み終えた人たちが語り合うイメージがあるかと思います。「Booked」は、本に興味があるけどなかなか読む時間がないという人たちに、図解プレゼンを通して本の内容とエッセンスを伝え、そこからその本にまつわるトピックについて参加者全員で対話をする読書会です。

 

参加する人の多くは、テーマとなる本について読んだことがありません。それでも、読んだ人も読んでいない人も垣根なく、本の内容について語り合うことができます。

 

また、ビジネス図解研究所では、『ビジネスモデル2.0図鑑』を出版しています。ビジネスという複雑に捉えられがちなものをシンプルな図解にすることで、ビジネスマンに限らず、大学生やクリエイターの方々にも、ビジネスの面白さについて伝えています。

 

人と人との間にある前提知識の差を埋め、多くの人とコミュニケーションができる場を提供できる。これが図解の強みであると思います。
 

「曼荼羅(まんだら)」にならないために「引き算」を


一方、せっかく図解を使っているのに、大量の情報を入れてしまい「曼荼羅」のようになっていたり、強みを生かせずにかえって分かりづらい資料になっているものもよく見られます。

 

なぜこのような図解ができてしまうのかというと、3つの理由が考えられます。
 

  1. 図解を作る目的が不明確である
  2. 情報の優先順位がつけられていない
  3. 不要なものまで全部説明しようとして失敗している


「目的が不明確である」とは、何をどこまで伝えればいいのか基準がない状態のこと。基準がなければ、情報に優先順位がつけられません。結果として、削るべき情報が分からず、いつまでたっても説明不足な気がして、図解に載せる情報がどんどん増えていきます。その結果、「曼荼羅」になってしまうのです。

 

図解を作る肝は「引き算」で考えることです。何が重要なのか優先順位をつけて、不要な情報は勇気を持って捨てる。これが一番大事です。

 

できる限り全てを伝えようとしてしまう「足し算」の考えでは、シンプルに整理するという方向とは逆になり、分かりづらい図解になってしまいます。

 

まずは目的を明確にしてから作成をはじめましょう。
 

必要なステークホルダーに絞り込む


「ビジネスモデル図解」では、3×3マスに関係者を配置するというルールがあります。このルールによって、ビジネスの関係者を必要以上に図解で表現することができない構造になっています。

 

 

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『ビジネスモデル2.0図鑑』より

 

 

例えば、「俺のフレンチ」という飲食店があります。

 

俺のフレンチは、一流のシェフが作るフランス料理をお手頃価格で提供するサービスです。通常、フランス料理といえばゆったり椅子に座って食べるコース形式のスタイルで、高級なイメージです。そうしたフランス料理の従来の形式を覆し、立ち食いスタイルにして提供することで、回転率を高め、利益を生み出せるビジネスモデルを作りました。

 

 

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『ビジネスモデル2.0図鑑』より

 

 

このビジネスモデル図解だけを見るとシンプルに見えるかもしれませんが、一流フレンチを提供するための材料の仕入れ先や、それらの食材を運んでくれる運送業者など、この図には載せていない多くのステークホルダーが存在しています。

 

しかし、ビジネスの関係者を全て図解に載せることは、3×3マスのルール上難しいです。

 

俺のフレンチは、一流のフランス料理をお手頃価格で提供する仕組みが一番の特徴です。それを表すために必要な関係者だけに絞り込み、シンプルな図解にしています。
 

「図解=ビジュアライズ」という誤解


図解に興味を持っている方から、「図解を作成するにはデザインセンスや絵心がないといけないのではないか」という質問をいただくことがあります。

 

図解という言葉は「図で」「解く」と書きますが、前者の「図で」の印象が強く、そうした誤解が生じるのかもしれません。

 

デザインセンスがあるに越したことはないですが、なくても大丈夫です。ちなみに、僕もデザインを学んだことがないですし、絵心もありません。

 

繰り返しになりますが、図解はあくまでも情報をシンプルに整理するツールです。

 

そのため、図解を作るのに重要なのは、情報を構造化する力です。つまり、「図で」「解く」の後者、「解く」の方がはるかに大事なのです。

 

もちろん、デザインセンスがあると図解はきれいになります。しかし、その前工程をおろそかにすると、伝わる図解にはなりません。あくまでも重要なことは、「どんな目的で図解を作成するか」、「どのように情報を整理すれば読み手に伝わるのか」を考えることです。

 

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日常的な「図解思考」のすすめ


図解を作っていく中で、「図解思考」が身についてくると思います。

 

図解思考とは、ものごとを抽象化して構造を読み解き、相手に分かりやすく伝える一連の思考法です。

 

図解を作る過程では、「どのようにすれば、読み手に負担をかけずに自分の伝えたいことが伝わるか」を考えます。それは、図解に限らずどんなコミュニケーションの場面でも必要なスキルです。

 

例えば、日常会話で自分が伝えたいことを伝えるときに、整理していない内容をただ思いつくままに話をしてもまったく相手に伝わらず、双方がイライラしてしまう――というのはよくある話です。

 

そんなときに図解思考を使って、コミュニケーションをする前に、伝えたい内容をどういう順番で伝えるのか、逆に何を伝えないでおくかを考えてみてはいかがでしょうか。

 

さまざまな場面で、日常的に図解思考を応用してみると良いかもしれません。

 

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図解から生まれるコミュニティ


僕は、図解のテーマとしてビジネスモデルや本の内容を取り上げていますが、他にもいろいろなテーマに対して図解が使えると思います。

 

例えば、自分の好きなコンテンツの魅力についてまとめるというのも良いですし、故郷や地元についてまとめてみても面白いです。

 

そうすることで、多くの人がその対象について認知をしてくれて、仲間が増えるということがあるかもしれません。僕の場合は本の図解がそうでした。

 

ぜひ、自分の好きなことや、熱量を持って語れることについて、図解にしていただければと思います。発信することで、同じ関心を持つ人とつながりができ、コミュニケーションが生まれ、新たなコミュニティができる可能性があります。
 

著者:きょん

1995年生まれ。フリーのコンサルタントとして、さまざまな企業の支援をする傍ら、ビジネス図解研究所のコアメンバーとして活動。個人で本の図解に取り組み、第1作目として「サピエンス全史図解」を公開してTwitterでトップトレンドに入るなど、話題となる。(株)Gaiaxが主催する読書会イベントのBookedにおいて、運営メンバーとして参画。

Twitter:@kyon_hcj

(編集:はてな編集部)

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