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女流棋士の香川愛生(かがわ・まなお)女流三段。9歳で将棋を覚え、その3年後には「女流アマ名人戦」で、最年少優勝を果たします。その後、15歳で女流棋士の道へ。20歳の時には初挑戦で「女流王将」のタイトルを獲得しました。
現在は女流棋士の傍ら、登録者数13万人超のYouTubeチャンネル「女流棋士・香川愛生チャンネル」の運営、そして会社経営など、多彩な顔をお持ちです。
まさに華々しい経歴。しかし、順調そのものに映るキャリアの中には、いくつもの苦悩や後悔があったと言います。「負けた悔しさは、いつまでも自分の中に残り続ける」と語る香川さんは、いかにそれを乗り越え、前を向いてきたのでしょうか?
厳しい勝負の世界で培った感情のコントロール方法や、将棋の普及活動にかける思い、さらには将棋とビジネスの関係性など、さまざまな切り口でお話を伺いました。
香川愛生さん(以下、香川):指導してもらう先生はもちろんですが、同時にライバルも必要ですね。近い年齢や実力で競い合える存在が、ものすごく大きいと思います。理想は、常に自分より少しだけ強い人と戦い続けられる環境。特に競技を始めたての頃は、「成長して追い抜く」という体験を重ねていくことがとても大事です。
香川:私はそう思います。あまりにもレベルが違う相手とばかり対戦していると、変な癖が付いてしまうこともあります。勝ちも負けも、偏り過ぎない方が良い。その点、私は恵まれていました。
同じアパートの真下の階に、地域で一番強いおじいちゃんが住んでいて、バス一本で行ける場所に将棋道場もあった。おじいちゃんから学んだことを、同レベルの相手との実戦で試す機会があったんです。また、大会に参加するなどして、自ら積極的に機会を作るようにもしていました。
香川:もちろんです。優勝できれば単純にうれしいですし、大会ごとにさまざまな賞品があって、それを目指して戦うのも楽しかったです。将棋の駒や商品券、それから房総の方ではマグロがもらえる大会なんかもありましたね。
スポンサーがつく大会に出て、賞品を勝ち取る。そんな非日常的な経験が、小学生の私にとっては新鮮でした。
香川:12歳で「女流アマ名人戦」という全国大会で優勝し、アマチュアの日本一になったことで、「次はプロかな」と考えるようになりました。
職業として女流棋士を選択したというよりも、将棋と向き合っていくステップの中で自然とそういう流れになったのだと思います。アマチュアとして連続優勝を目指すのも一つの道ですが、私は飽きっぽい性格ということもあって、まだ見ぬ世界で新しい目標を達成したい気持ちの方が強かったですね。
香川:それが、実際に女流棋士になってみると、すぐに「自分はプロにふさわしくないのではないか」と感じるようになりました。
端的に言うと、力不足。アマチュアで日本一になれましたが、プロに入ったとたん一番下になってしまったんです。当時の私にとっては、とてもつらい状況でしたね。
香川:当時は、そうは思えなかったですね。自分はまだまだプロになるための下積みが足りないと、ストイックに自分を追い詰めることばかり考えていました。そこで、もう一度“修業の身”からやり直すために奨励会*1へ入りました。
香川:苦しかったですね。奨励会には天才しかいないんです。加えて、「棋士になるんだ」という気持ちの強さも、並々ならぬものがあります。私は、あらゆる面で劣っていると感じました。後から入ってきた人に追い抜かれることも増え、自分の才能のなさを痛感するような毎日でしたね。
それまで大会で結果を残し、周囲から才能があると言われてきたこともあり、余計につらかったのだと思います。
その極端な振り幅を、当時の私は受け止めることができなかったんです。1年半で奨励会を退会し、将棋自体からも距離を置きました。将棋の駒を見ると涙が出てしまうような時期もありましたね。
香川:やはり、諦めの悪さが根っこにあるのだと思います。奨励会を抜けて棋士*2になる資質は足りなかったけれど、まだ将棋の世界でやれることはあるんじゃないか。それこそ、女流棋士としてどれくらい通用するのか、もう一度試してみても良いのではないかと。
関東から関西へ環境を変えたことも気持ちを切り替えるきっかけになって、イチかバチか、またプロに復帰しようと思えるようになったんです。
香川:対局に負けた時のつらさ、悔しさはなかなか消えてくれません。少なくとも次に勝つまでは尾を引きますし、勝っても完全に傷が癒えることはないですね。ただ、それをため込むばかりでは自分を壊してしまいます。
奨励会の頃の私がまさにそうで、負けた後悔だけで自分の中を埋め尽くしていました。忘れよう切り替えようと、しゃかりきになるばかりでは、なかなか解消することができませんでしたね。
香川:今は嫌なことがあっても、逆に“良い体験”を増やして薄められるようになったと思います。それは、将棋以外の趣味や友人との食事でも良くて。とにかくマイナスの感情だけに支配されないよう、前向きな時間を積極的に作るようにしています。
もちろん、負けて反省はすることは必要です。でも、後悔は自分を前に引っ張ってくれるパワーにはなりづらいものだと思うので。
趣味のコスプレは、自らを鼓舞する意味もあるという(©白鳥士郎・SBクリエイティブ/りゅうおうのおしごと!製作委員会)
香川:対局中に切り替えることは、今でもなかなか難しいです。特に負けが続いている時期の対局でミスをしてしまうと、「また同じ失敗をしてしまった……」と落ち込み、そのメンタルがさらなる悪手を招いてしまう。負のスパイラルに陥り、どんどん崩れてしまうんです。
だからといって、失敗を恐れ過ぎてしまうと実力が伸びません。失敗で失った自信を、いかにうまく補完していけるかが勝敗を分けるのだと思います。
香川:やはり、入念な準備。それに尽きると思います。例えば、私が初めて女流王将のタイトルに挑んだ相手は里見香奈さんでした。当時の里見さんは6つある女流タイトルのうち3つを保持していて、実績も経験も雲の上の人。対局前から自信が打ち砕かれてしまうような存在でした。
その時、心のよりどころになったのは「里見さんの将棋をずっと研究してきた」という自負。里見さんの棋譜を誰よりも見て、突き詰めた上で対局に臨めたことが大きかったと思います。
結果、第2局でボロボロの惨敗を喫しながらも立て直し、初めてのタイトルを獲得することができました。自信を持てるところまでやりきるのは簡単ではありませんが、結局はそれしかないのかなと思います。
香川:15歳でプロになった時から、将棋界の役に立ちたいという思いは抱いていました。将棋界には羽生善治九段や藤井聡太二冠のような大スターもいれば、将棋の解説がすごく上手な先輩方、あるいは子どもへの指導にかけては並ぶものがいないほどのカリスマ的な存在の方など、さまざまな形で貢献されている方が数多くいらっしゃいます。
その中で私はどんな役割を果たせるだろうかと、ずっと悩み、模索し続けていたんです。20歳で女流王将になってからは、将棋の魅力をたくさんの人に知ってもらいたいと思うようになりました。
香川:アゲアゲさんという将棋YouTuberがプロ入りしたことで大きな話題になりましたが、それまで将棋界で本格的にYouTubeに取り組んでいるプロはいませんでした。
ただ、アマチュアの方で数万人のチャンネル登録があったり、時々、何十万再生される動画もあったりしました。プロもここで挑戦する意義があるんじゃないかな、と頑張ってみたいと思ったんです。
香川:最初は、投稿の頻度や内容のバランスに悩みましたね。毎日投稿するのも供給過多なのかなと思ったり、動画の内容自体も「やり過ぎていないだろうか」と気になったり。
新しい試みを取り入れるのは良いことですが、一方で、将棋界の一員として重んじるべき部分もあります。多くの人の目に触れる場所だからこそ、その正しい見極めが大事。そこはかなり気をつけていますね。
例えば、いくら再生回数が伸びそうでも、将棋に対する敬意を欠くような企画はしません。将棋盤をテーブルにしてご飯を食べるとか、対局相手をバカにするとか。そういう類いのものです。
香川:本当ですか? そう言っていただけるのが一番うれしいですね。YouTubeは個人でやっているのでやりがいがあります。悩んで決めるのが本質的に好きなので、そこも含めて充実しているのかなと思います。
香川:たくさんありますが、先輩である山口恵梨子さんの「女流棋士 山口恵梨子ちゃんねる」はおすすめですね。今年5月に開設されて、すでに登録者数が5万人を超えています。山口さんのチャンネルは将棋講座が中心なのですが、10万回以上再生されている動画も少なくありません。
どこか硬い印象がある将棋講座をあれだけ楽しくわかりやすく、そして多くの人に受け入れられる形で発信しているのは本当にすごいと思います。
香川:会社経営に携わるようになってから、改めて将棋で培った「先を読む力」は汎用性が高いと感じることが増えました。
私の会社の主な業務はイベントのプロデュースですが、イベントは企画立案から実施まで数カ月、長くて1年以上かかることも珍しくありません。開催当日まで状況も頻繁に変わりますし、その中で常に適切な判断を重ね、順調にステップを踏んでいくのは簡単ではありません。
全体の流れを捉えつつ、リスクを予測したり、実際に起こったトラブルに対し、いかにリカバーするか考えたり。さまざまなパターンを樹形図のように組み立てていく必要があります。それが自然とできるのは、やはりずっと将棋をやってきたからだと思っています。
香川:本当にそう思います。会社経営では短い時間で重要な決断を迫られることもあります。それも将棋と同じですよね。
将棋の世界では「大局観」や「第一感」という言い方をしますが、直感で踏み込んだ決断をしなくてはならない場面が多々あります。そうした力も、将棋を通じて養われていると感じますね。
香川:そう思います。何かの決断で迷った時は、勇気がいる方を選ぶようにしています。例えばYouTubeを始める時も、いろいろなリスクが頭をよぎりました。始めるのは簡単でも更新し続けるのは大変ですし、批判を受けてしまう可能性もあります。
でも、やらずに後悔するくらいなら、勇気のいる道を選び、その選択肢を生かすために努力する方が美しいと思うんです。
香川:将棋の対局で感じていただきたいのは、対局者同士の駆け引きです。一気に仕掛けたいところを、ぐっと我慢する姿。持ち時間を使い切り「1分将棋」になったところから、勇気を持って決断していく姿。そういうギリギリの勝負に注目していただきたいですね。
特にタイトル戦ともなれば大げさではなく命を削るような戦いが見られますし、それぞれの心理や人柄までもがあぶり出され、まるで1本の映画を観賞しているような気持ちになれると思います。
取材協力:香川愛生(かがわ・まなお)
幼少期から将棋の才能を開花させ2005年(小学6年生)と2006年(中学1年生)の女流アマ名人戦で2連覇を達成。アマチュア時代の活躍をきっかけにプロを志し、2008年に弱冠15歳で女流棋士としてプロデビューを果たす。2012年から立命館大学へ進学。将棋と学業の両立をさせながら2013年に初めてのタイトル挑戦で初戴冠。翌年も防衛し連覇。女流棋士トップクラスの実力を持ちながらも将棋普及のためにテレビやイベントなどにも精力的に出演している。将棋以外のゲームへの情熱も高く、趣味がきっかけで広がった人脈は現在の幅広い活躍につながっている。愛称は「番長」。
Twitter:@MNO_shogi
YouTube:女流棋士・香川愛生チャンネル
取材・文:榎並紀行(やじろべえ) 編集:はてな編集部
*1:日本将棋連盟のプロ棋士養成機関。正式名称は新進棋士奨励会。
*2:いわゆる「将棋のプロ」には、男女の区別のない「棋士」と、女性のみの「女流棋士」という2つの制度が併存する。
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