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「烈海王になりたい」筋肉、コスプレ、法曹の三足の草鞋をストイックにこなす弁護士・小林航太さん|クレイジーワーカーの世界

「烈海王になりたい」筋肉、コスプレ、法曹の三足の草鞋をストイックにこなす弁護士・小林航太さん|クレイジーワーカーの世界

「自分の仕事が好き」。心からそう言いきれる人は、どれくらいいるのだろうか? 単に賃金を得るための手段ではなく、人生を賭するライフワークとして仕事に打ち込む。結果、一般的な幸せやレールから外れることになっても、おかまいなしに没頭し続ける。そんな、少しはみだした「クレイジーワーカー」の仕事、人生に迫る連載企画。今回お話を伺ったのは、弁護士の小林航太さんだ。

話題を呼んだNHK「みんなで筋肉体操」で、謎の筋肉弁護士として出演した小林さん。実はそれ以前から肉体派コスプレイヤーとして、界隈では知られた存在だった。東大法学部からロースクールを経て、司法試験に一発合格。今年から弁護士の道を歩みつつ、肉体改造、コスプレも継続している。仕事と趣味を力いっぱい謳歌する、小林さんの生きざまに迫る。

 

東京大学在学中、コスプレ開眼

── 弁護士が本業の小林さんですが、他にも“筋肉コスプレイヤーチーム「肉体造形部」での活動や、NHK「みんなで筋肉体操」への出演でも話題になりました。弁護士、筋肉、コスプレと実に多彩ですが、それぞれの道を志すきっかけから教えていただけますか?

 

小林さん(以下、敬称略):まず弁護士ですが、最初に興味を持ったのは中学生の頃。カプコンの『逆転裁判』というゲームがきっかけです。実際の弁護士業務とはぜんぜん違うことは今では分かりますが、当時はなんか面白そうだなって、その程度の意識でしたね。

 

── 当時から学業優秀だったんですか?

 

小林:中高は神奈川ではわりと有名な進学校に通っていました。学年の3分の1が東大に行くような環境で。僕は文系だったので、東大文一(※文科一類、文系の最難関)に行って弁護士を目指そうかと。兄は別の高校だったのですが、やはり東大に進学していましたしね。

 

── ご兄弟ともに東大! 教育熱心なご家庭だったのでしょうか?

 

小林:両親は、教育に関してはお金を惜しまないタイプでしたね。ただ、特に口出しはしない人たちで、絶対に東大に行け! という感じでもなかったです。勉強する機会は惜しみなくくれるけど、勉強しろとうるさく教育された記憶も特にないですね。だから、大学時代からコスプレを始めても、やめろと言われたことはありません。

 

── コスプレは大学2年から始めたと。きっかけは?

 

小林:きっかけは思い出せないんですけど、たまたま何かのコスプレの写真を見て面白そうだなとなったんだと思います。それまではコミケに参加したこともありませんでした。最初は解説サイトを見ながら衣装を作るところからですね。大学時代は真面目に勉強していなくて、ヒマだったんですよ。だから、最初は完全にヒマつぶしだったと思います。
それで、実際にコミケとかにコスプレで参加した時に、いろんな人に喜んで写真を撮ってもらえたのが新鮮な経験で、それからハマっていきました。

キャラクターへの愛が筋肉を育てる


── 筋肉を鍛え始めたのも、コスプレのためですよね。

 

小林:そうです。まあ鍛え始める前から腹筋は一応割れていたし、筋肉系のキャラクターもやっていました。漫画『ジョジョの奇妙な冒険』のカーズというキャラクターのコスプレは、当時からそこそこ評判もよくて。でも、その頃に知り合ったレイヤーさんのすごい筋肉を見たときに、僕も肉体派のキャラをやるならこれくらい鍛えないとダメだなと思って、それがきっかけですね。最初はコスプレのために筋肉をつけ始めました。

 

 

 

コスプレの事例

 

── 筋肉がついて、コスプレできるキャラクターがさらに増えたのでは?

 

小林:それが、逆に狭まったんですよね。筋トレしていると自分の身体のサイズが以前より気になるようになって、あのキャラやりたいけどまだまだおれの筋肉じゃ足りないなとか、逆にここは余計な筋肉つき過ぎちゃってるなとか、細部にまでこだわりたくなってくるんです。基本的にコスプレって、自分の好きなキャラを選ぶじゃないですか? そうすると、その愛情ゆえ「あのキャラがこんなに細いわけない! 今のおれじゃまだできない!」って思考になるんですよね。

 

── やりたいけど、ためらっているキャラクターは何ですか?

 

小林:今やりたいのは『グラップラー刃牙』の烈海王(れつかいおう)ですね。でも、あと10キロくらい増やさないとダメだな。ちなみに、理想の肉体は『キン肉マン』に出てくるネプチューンマンですが、まだまだ程遠いですね。ネプチューンマンくらい大きくなろうと思ったら、僕の筋肉、まだまだ伸びしろしかないなって。

 

── では、いつか小林さんがネプチューンマンをやっていたら、理想の肉体が完成したと考えていいですか?

 

小林:そう受けとってもらって構いません。

弁護士としてはルーキー。本業以外で目立つことも、むしろプラス


── いったん筋肉は置いておいて、改めて本業である弁護士のお話を伺いたいのですが。

 

小林:はい。

 

── 24歳で東大を卒業して、28歳で司法試験に合格し、今年から現在の弁護士事務所に勤め始めたと。つまり、弁護士としては1年目ですよね。

 

小林:そうですね。(コスプレや筋トレが忙しく)大学には6年間通いましたから24歳で卒業して、そこからロースクールに3年通い弁護士になりました。おっしゃる通り、1年目です。

 

── 新人の弁護士がコスプレなど本業以外の部分で目立っていると、上司の方から目をつけられたりすることはないのでしょうか?

 

小林:それはないですね。というのも、そもそも今の弁護士事務所を受ける際に、履歴書と一緒にコスプレイヤーとして取材された記事などを送っていたので、僕がこういう活動をしているやつだっていうのは分かった上で採用してくれている。後からバレて、あーだこーだ言われたら面倒じゃないですか。だから就職活動の時から、自分のキャラに合わない、受け入れてくれない事務所なんてこっちから願い下げくらいの方針で動いていたんです。幸い今の事務所には気に入ってもらえて、結果的にものすごく働きやすいですね。筋トレのためにわりと早く帰るのも、大目に見てもらえていますし。

 

── 理解のある事務所ですね。

 

小林:本当にNGがなくて。たぶん、ボスは面白がっているんだと思います。NHKの「みんなで筋肉体操」に出たあとも、ボスの方が僕以上にお客さんの前でその話をしますからね。実は、あの番組に出るのはちょっとだけ不安だったんですよ。さすがに弁護士がああいうものに出ると批判意見もくるだろうなと。でも、実際はお客さんにも極めて肯定的に受け止めていただけて。だからといって、筋肉体操を見てこいつに依頼しよう! とはなかなかならないんですが(笑)。顔を覚えてもらう効果は抜群ですよね。改めて、筋肉は裏切らないんだなって思いました。

隙あらば筋肉を絡めてくる

弁護士に相談する敷居を下げたい


── すみません、ちょっと筋肉から離れてもらって弁護士のお話をもう少し。今はどんな案件をご担当されているのでしょうか?

 

小林:うちは町の弁護士、いわゆる「マチ弁」に属する事務所なので相続関係などが多いですね。あとは家賃の滞納や、建物関連の話など、幅広くいろいろやっています。言ってしまえば、人の争いに首を突っ込んで、丸く収めるのが弁護士の仕事。争い事なので基本的にみんな好戦的なのですが、僕はそういう場に身を置いて解決するのが好きなので、たぶん向いているのだと思います。

 

── まだ1年目ということで、これからキャリアを重ねて得意分野や弁護士としての方向性を作っていくのだと思いますが、現段階で将来のイメージはありますか?

 

小林:こういうジャンルは小林に相談すべきだと思ってもらえるものを、一つでも多く作りたいです。今ぼんやりと考えているのは、やはりコスプレ界隈ですね。ツイッターでレイヤーさん同士のトラブルなんかを目にすると、これ弁護士が入れば解決できるんじゃないかなと思うことがちょくちょくあります。

 

── 例えば、どんなトラブルですか?

 

小林:最近多いのは、衣装制作絡みのトラブルですね。代金を支払い済みで納期も過ぎているのに、衣装が送られてこないとか。契約書も交わしていない個人同士のやりとりなので、トラブルになりやすいんですよ。あとは、女性のレイヤーさんが痴漢行為にあったり、ネット上でつきまといにあったりといったことも後を絶ちません。そういうトラブルがあったときに相談できる窓口として、僕が力になれることがあるんじゃないかと。

 

── 小林さんであれば、コスプレイヤーの気持ちも分かるでしょうし、より心強いかもしれませんね。

 

小林:今も個人的に知人から相談を受けることはありますが、やはり僕がレイヤーだから相談しやすかったと言っていただけます。でも、今はまだ、そういうトラブルがあっても、弁護士に相談するという発想に至る人はおそらく少ないと思うんです。気軽に頼っていただきたいという意味も込めて、弁護士としてのTwitterのアイコンはコスプレ写真のままにしています。

 

── とっつきづらい弁護士のイメージを和らげ、気軽に相談できる効果もありそうですね。

 

小林:そうですね。僕はそもそも、弁護士がそこまで堅い仕事だとは思っていません。普段の業務なんて、本当に泥臭いですしね。もちろん、この職業や事務所の品位を著しく汚すような活動は避けるべきですが、可能な限りメディアにも出て、弁護士に相談する敷居を下げたいと考えています。できれば、こういう堅苦しい格好もしたくないんですよ。許されるなら、夏場はタンクトップで仕事に行きたい。タンクトップに弁護士バッジをつけてね。

コスプレきっかけから、鍛えること自体が喜びに

── では、筋肉のことをお伺いしたいのですが。

 

小林:ぜひ。

── (あっ脱いだ……)最初はコスプレのために筋トレを始めたということなのですが、やっていくうちに鍛えること自体も楽しくなっていったんでしょうか?

 

小林:そうですね。ある程度やっていくと、前より重いバーベルが上がるようになり、筋肉も大きくなり、どんどん筋トレの面白さにハマっていきました。コスプレのためにやっていたはずなのに、だんだん筋トレの合間にコスプレをやるようになった。もともとは55kgだった体重が、今は76kgにまで増えました。

 

── 今や筋トレがメインなんですね。普段はどれくらいのトレーニングを?

 

小林:ジムに行ける日は毎日。日ごとに鍛える部位を決めて、徹底的にやります。だいたい1時間半から2時間くらいですね。職場近くにゴールドジムがあるので、仕事後に行きます。ジムへの通いやすさも、就職先を選ぶポイントの一つでした。

 

── 毎日鍛えないとストレスを感じますか?

 

小林:2日連続でジムに行けないと、そわそわしますね。今日もこのあと行きます。昨日ジムが休みだったので、すでに1日空いてしまっているんですよ。忙しくてもトレーニングの時間はできる限り作るようにしています。

── 本当にストイックですね……。小林さんは人生の時間を1分たりとも無駄にせず、筋トレだけでなく何事にも全力で取り組まれている印象を受けます。

 

小林:それは、大学時代にほぼニートのような生活をしていた反動もあると思います。あの時間、だいぶ無駄だったので。その間にぼくのことを気にかけてくれていた祖父が倒れて、何も成し遂げず、何も恩返ししないまま生きているのが恥ずかしくなった。あそこで一念発起しましたね。
今は、時間が足りない。1日が48時間あればと思いますよ。でも、そしたら半分くらい筋トレしてるんでしょうね。

 

── ちなみにそこまで筋肉を鍛えて、よかったことってありますか?

 

小林:法廷で相手方と対したとき、精神的なマウントをとれますよね。「こいつ、肩幅狭いな」とか、心の中で優位に立てます。弁護士って1年目だろうが20年目だろうが、同じフィールドで戦うんですよ。僕はペーペーだけど、肩幅なら負けないぞって。ナゾの張り合い方ですけど、そういうの意外と大事なんです。あとは仕事柄、怖い人と対峙するときもあるし、危険な目に遭うかもしれない。いざというときに身を守れる自信を持っておくことも、この仕事においては必要でしょうね。

── なるほど。実はお仕事にも役立っていると。では最後に、今後の目標やチャレンジしたいことを、弁護士、コスプレ、筋肉それぞれについて教えてください。

 

小林:まず、仕事についてはいずれ独立して自分の事務所を持ちたいと考えています。そこで、先ほど申し上げたようなコスプレ界隈のトラブル解決など、自分の得意とする分野での存在感を出していければと思います。
筋肉だと、一昨年、去年とコンテストに出ているのですが、まだ1位をとれていないんですよ。3位、2位と順位が上がってきているので、今年は何かの大会で優勝したい。
それから、コスプレに関しては目標というより、これからも変わらず趣味として続けていきたいです。さしあたっては肉体造形部で写真集を作って、夏ごろに出せたらいいですね。

 

── 人生がとてつもなく充実しているのが伝わってきて、うらやましいです。

 

小林:まあ、全てにおいてまだまだですけどね。特に筋肉については、全身どこも満足している部位はありませんし。


取材・文:榎並紀行(やじろべえ) 編集:はてな編集部 撮影:小野奈那子
 

取材協力:小林航太

 

1988年生まれ、神奈川県出身。東京大学法学部、首都大学東京法科大学院を経て、小嶋総合法律事務所へ入所。弁護士として働きつつ、コスプレイヤー「よみめいと」として活動。肉体派レイヤー集団「肉体造形部」メンバーの一員としても人気を博している。
Twitter:@yomimate

 

 

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