はたラボ

「相談できない上司」にならないために ―― 1on1ミーティングで部下の本音を引き出す方法を若者との対話のプロに聞いた

「内定スタート面接塾」主宰 佐々木丈裕さん


1on1ミーティングを取り入れる企業が増えている。ヤフーが2012年から導入したことをきっかけに、ビジネスの世界で注目され始めたこの面談のやり方。主に、マネジメント層の上司が部下と1対1で対話することで、部下の指導・育成を行うのが目的だ。


しかし、上司からは「部下と何を話したらいいか分からない」「部下は本音を話してくれていない気がする」という悩みが、そして部下からも「上司に本音を話せない」「マイナスな評価をされることが怖くて相談できない」という声が聞こえてくる。
どうすれば、お互いが幸せになり、有益な面談の機会とすることができるのだろうか。そんな疑問を解消するために、10年間にわたり就活スクール「内定スタート面接塾」を主宰し学生を指導し続け、『一人前社員の仕事の基本ルール』など若手ビジネスパーソン向けの著書も持つ、佐々木丈裕さんに話を聞いた。


ゆとり世代、さとり世代の就職活動を見守り、サポートしてきた佐々木さんは、いわば「若者との対話のプロ」。そんな佐々木さんが、最近の「若者に見られる考え方の変化」「年齢差のある若者との対話方法」などを教えてくれた。具体的なノウハウは、これから1on1ミーティングに取り組む組織や、マネジメント方法に悩む人のヒントとなるはずだ。

ネット上の情報が与える若者への影響は、親の影響力を超えるかもしれない


―― 2009年から「内定スタート面接塾」を始め、大学生や20代前半の若者をサポートし続けている佐々木さんですが、「最近の若者」に見られる特徴や変化はありますか?


佐々木さん(以下、敬称略):特にここ数年の20代前半の若者は、今まで以上に「社会の影響を強く受けている」という印象が強いです。ネット上に会社や仕事に関するネガティブな情報が多く流れるようになったこと、TwitterなどSNSの普及で手軽に情報を得ることができるようになった影響は、私たちの想像以上に大きいかもしれません。


―― 過労死の問題など、社会を大きく巻き込んだ議論がネット上で過激に行われていることもありますね。


佐々木:学生も当然それを見ているんですよね。以前、生徒から「仕事はつまらないものだと思っている」ってぼそっと言われたことがあって。学園祭の実行委員をしている、いつもは前向きな女子学生だったんです。彼女は、私の「子どもは親の影響で仕事観が作られる」という仮説を塗り替えてくれたんですよ。
「お父さんがそう言っているの?」と聞くと、「父親は楽しく働いている」って言うんです。「父親は社交的で、いろいろなお客さんと楽しく働いています」って。そんな姿を見ていても、「仕事はつまらないものだ」と彼女は言う。なぜかと思ったら、彼女はネットをすごく頻繁に見る子だったんです。


―― 若者のSNS利用率はすさまじいですし、複数のアカウントを使い分けている人もいますよね。親よりも長い時間対峙している人も多そうです。


佐々木:いまや、「ネットは親以上の影響力を持っている」と言ってもおかしくないですね。だから、今の若手社員世代のことを知りたかったら、そういった社会状況の変化であったり、長い時間接触しているものが何で、それがどんな影響を与えているかを知ったりすることが大事になるでしょう。「最近の若者が変わった」と考えるよりも、「社会が変わって、その影響を強く受けているのが若者」と考える方が、目の前の若者を理解しやすくなるはずです。

理解していないのに「分かりました」と言ってしまう部下に、悩みを話しやすい上司と思ってもらう方法論


―― 他に、20代前半の若者と接していて「あるある」な出来事や、それに対する佐々木さんなりの対処法を教えていただけますか?


佐々木:私が指導している範囲だと、「本人が本当は困っているのに悩みを言ってくれない」ということがありますね。上司として部下と接している中で、「報連相ができない部下」への悩みを抱えている方もいるかもしれませんが、それは恐らく、「理解していないことを隠している」というよりも、「質問したいことが分かっていない」んです。



―― 上司からの指示を理解していないのに、「分かりました」ってすぐに言ってしまう部下がいて困るという話はよくありますよね。後になって「実は分かっていませんでした」と言われるという……。


佐々木:そうそうそう。だから「分からないことはないです。大丈夫です」って生徒に言われても、私は追加の質問をしますね。「強いていうと、ほんのちょっとでも気になったことない?」などの聞き方をします。質問のレベルを下げていって、本人から話しやすくするのがポイントですね。例えば、「今話した3分くらいの間で気になったのはどこ?」と細かく聞いていくこともあります。


―― 目上の人に何か聞く時って勇気がいりますよね。「こんな些細なこと聞いていいのかな」って思ってしまいます。


佐々木:それは私が新入社員の時もありましたね。面接塾の中では、当時を思い出すと泣いてしまうような辛い過去の出来事を話してもらうこともありますが、その際は自身の経験を踏まえ、一度断りを入れるようにしています。「それ、知りたいからもうちょっと聞くけどさ」って。


信頼関係ができているからこそできることではありますが、常にこちらが生徒以上に生徒の目標達成を考えていることを感じてもらえると、話してくれるようになると思います。なので、まずこちら側から生徒の目標達成に目線を合わせつつ、質問や行動の意図を理解してもらえるようにわかりやすく伝えていくことも大事ですね。

質問攻めはNG。ポイントは、『部下が興味や実体験からイメージできるような話題を振ること』


―― 目線を合わせる、というポイントは理解しましたが、あまり質問ばかり投げかけても上司と部下の距離は縮まらないような気もします。


佐々木:もちろん、質問だけじゃなくて、雑談を振るようにもしていますよ。例えば、相手が男性アイドルのファンだったら、その話題を選んだりもします(笑)。


―― 相手が興味のある話題を振るんですね。


佐々木:はい。話を振れば、雰囲気も明るくなるんです。「○○くんがこの前……」と会話が始まります。


―― 佐々木さんは、生徒が興味を持っていることもわざわざチェックしているんですか?


佐々木:もちろんです。生徒に説明するときに、生徒の体験を使うので。会ったばかりの時に、生徒が興味あることも確認するようにしているんです。小学校の頃からの話とか、兄弟姉妹の話も確認しますし、「小学校の通学時間はどれくらいだった?」みたいな些細なことも聞きます。
そうやって話を聞いていると、本人の過去の体験談に結びつけた指導ができるようになるんですよね。


―― 自分と関連性があることで説明してもらえると、理解もしやすいですよね。


佐々木:そういえばこの間、塾のOBからこんな相談がありました。


Aくんは、今年の4月から働いている新卒社員だったんですが、「夕方6時になると早く帰りたくなる」という相談をしてきて。「仕事の仕方がうちの会社はダメなんです」と不満をこぼしていました。
私は、Aくんが中高と部活に入っていたことを知っているので、「Aくんが高校3年生の時に、初心者の高校1年生が練習方法がどうのとか、早く帰りたいとか言っていたらどう思う?」って聞いてみたんです。すると「そういう生意気な1年が来たらうざいですね」って言うんです(笑)。本人の過去の体験談と繋げて説明すると、自分が周りにどう思われるか、自分が何をしているかが理解しやすいので、Aくんも自分の言っていることの意味に気付いたようでした。

指示通りにやれなくても「ありがとう」を伝えるべき理由


―― 佐々木さんの指導法は、ビジネスの視点でも役立ちますね。


佐々木:ありがとうございます。でも、相手の経験に結びつけながら指導しようとしても失敗する時もあるんです。「いや、あれはそういうことじゃないんですよ」って、後からさらっとひっくり返されることもありますし。


―― そうやって指摘してくれるのも、信頼の表れですよね。


佐々木:そうであれば、うれしいですね。そこは、相手が本音を話せるような工夫の積み重ねの結果かもしれません。


「あの仕事の進捗どうなってる?」って聞いて、「進んでません」って正直に返ってくること、仕事の中でもありますよね。生徒とのやりとりでも、面談に必要な書類や宿題を「できてません」と言ってくる人はいます。そう言われたら、まずは感謝するようにしているんです。「素直に言ってくれてありがとう」って。言ってくれたことで、次の手立てを考えたり、新しい対策の相談をしたり、前に進むことができますから。



―― そこは「なんでやってないの?」って言わないんですね。


佐々木:理由を問い詰めることは絶対にしないですね。出会ったばかりの頃は、さらに補足して「その素直な返答を続けてね。この塾では分からなかったら分からないって言っていいから」って伝えるんです。なぜなら、彼らの中の違和感を軽減することでお互い納得のいくアドバイスができ、内定に近づくことができるから。しかし、それでも彼らは全部は話さないという前提で、私は考えています。


人は普段の習慣が出てしまいますから、突然話せるようになるはずがないんです。なので、「分からないって言うと親や先生、友達からはダメ出しされていたかもしれないけど、社会人視点からすると変に隠してごまかすより、正直なほうが評価されるんだよ」と、素直に言うことのメリットを伝えたりもします。


―― 寄り添うだけじゃなくて、若者が持っていない視点からもアドバイスをするんですね。


佐々木:そうですね。本人たちが気付いていなければしますね。ちょっとでも「それ良いな」と思う部分があれば、そのポイントと理由をきちんと言葉に出すようにしています。良くないことも怒ることはしません。「怒る」ことは、私自身の自己満足になってしまい、生徒のためにはなりませんからね。生徒がよくないことをした際は、私の指導力を反省しつつ、何が悪いのか、どうしたら良いのかをちゃんと相手にわかるように伝えます。


例えば、遅刻。遅刻をしても私は怒りません。もちろん、遅刻の対処法を知らなければ、「社会人としての対処法」は説明しますが、一番招いてはいけない事態は、私が遅刻を厳しく注意することで、「私の前でだけ遅刻をしなくなる」こと。時間の使い方が上手くない生徒が、私の前でだけ遅刻しなくなっても意味がありません。なので、私は生徒の大学生活も確認します。「レポートを提出するときは、いつから準備するの?」「テストのときは?」と。


実際、生徒の中にはスケジュール管理能力や、時間に対する意識が低い場合があります。でも本人はそれを自覚していないことが多い。内定のためには時間の使い方が大事なので、考え方やコツをアドバイスすることで遅刻もしないようになります。

「怒る」も「叱る」もダメ?部下を育成しながら、上司も成長する「良い反省」の方法とは


―― でも、怒らずにいると気が緩む学生もいるのでは?イラッとしたりしませんか?


佐々木:ありますよ。「お前の就活だろ!」って思うことも正直あります(笑)。


ところで、「怒る」と「叱る」は別である、という考え方が世の中にはあると言われているのですが……どう思いますか?


―― 「怒る」は自分の感情をぶつけることだからNGで、「叱る」は冷静に指導することだからOKといったイメージがあります。


佐々木:そうそう。一般的にはそう言われますよね。でも、私はどっちも最悪の指導法だと思っているんです。例えば、目の前にいるAさんを怒るにしても叱るにしても、Aさんが嫌な気持ちになったらダメなんです。指導をする目的は、「相手がやる気になるように接すること」ですから、こちら側の感情は関係ない。いくら落ち着いて叱ろうとしても、それで相手が嫌な気持ちになっていたら、それは接し方としては大失敗なんです。なので、私はどう説明したら相手がわかってくれるか、やる気になってくれるか、それを考えるようにしています。



―― なるほど……常に相手の気持ちを優先して接するんですね。


佐々木:実は、イラッとする前にひとつ段階を踏むようにしています。仮に、Aさんが何か仕事で失敗したとして、私はそれに対して「なんでAさんはできないんだろう」って思うんじゃなく、まず「Aさんが失敗しないように、自分がやれたことはなかったか」って振り返るようにしています。
もちろん私も聖人ではないから、生徒に対して素直にそう思えない時もありますが、希望の会社に入社できなくて、悲しい気持ちになっているのは生徒自身ですからね。私がもっとしっかり指導できたんじゃないかなと、振り返ることは必ずするようにしています。


―― それは辛くないですか?自責の念が強い考え方ですよね。


佐々木:振り返ることは、「落ち込む」とか「自己否定」では決してないんです。「どこのやり方を変えたら結果は変わっただろうか」という視点で過去を探すと、「2週間前のあの時にAさんにこう伝えていたら、失敗しなかったんじゃないか」など、思い当たる節が見つかるんです。こっちのやり方を変える部分、改善できる余地を探すのが、「良い反省」だと思います。相手をやる気にしつつ、自分自身も「良い反省」ができると今後、自分も新しい行動を起こせて、お互いに成長できますよね。

若者だけが変わっているのではない。私たちも日々変わり、成長し続ける必要がある


―― 毎年接する生徒は変わっていくと思いますが、佐々木さんはどのようにご自身をアップデートさせていますか?


佐々木:そうですね……私がズレた指導をしないために、本を読むとか人と会うとか、指導法も変えたりもします。去年あたりから、生徒とマンツーマンの面談をする際、認識のずれを減らすために一枚のシートを使い始めました。シートには毎回、「今日の面談の目標」「私が指導したいこと」「生徒が指導してほしいこと」を書いて共有するようにしているんです。面談の後には、私がアクティブリスニングできていたか、ポジティブフィードバックができていたかも聞けるシートです。


過去、根っからのいじられキャラな生徒を面談した際に、こっちもついいじってしまい、やりすぎたなという反省もあったりして。私から講演するような一方通行の面談にならず、生徒に話してもらう場にするためにも、これを使っていますね。


―― 現在進行形でどんどん改善しているんですね。


佐々木:若者も変わり続けますし、私自身も生徒のために成長し続けていこうと心がけています。「役に立たない指導者」「成長していない指導者」から教わるのは、生徒だって嫌ですよね。だからそうならないように改善を続けています。


1対1での面談は、お互いの共通目標や個々人の目標を確認し、対策を打ち続けるための良い手段だと思います。私が生徒に対して行っている面談も1on1のようなもの。志望企業の面接の直前に「あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ」と慌て、手遅れにならないように個人の状態に合わせて、頻度を変えて実施しています。


私と生徒の間にある共通の目標は「望む企業へ内定を獲得すること」。共通の目標を持っていれば、達成に向けた知識の更新もできますし、達成するための方法を考え続けることができます。そして結果、互いの目標が達成できると感謝し合える関係になれますよね。企業での1on1も、そういう関係性を築く手段のひとつとして行えると良いのではないかと思います。


取材・文:佐野創太

 

取材協力:佐々木丈裕

 

1973年生まれ。大阪育ち。大学生と若手社会人向け就活スクール「内定スタート面接塾」主催。法人営業や人事、資格スクールのスクールカウンセラーを経験しながらも、「朝から晩まで徹底的に就職活動の支援をしたい」と考え、2009年に「内定スタート面接塾」をスタートさせた。著書『一人前社員の仕事の基本ルール』(明日香出版社)、『面接指導のカリスマが書いた―警察官採用試験面接試験攻略法』(滋慶出版)。

HP:内定スタート面接塾
Blog:内定スタート面接塾 公式ブログ
Twitter:@naiteigood
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