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リモートワークに成功している企業 ポップインサイトの代表取締役社長と取締役CHOに聞いた、取り組むきっかけと成功の秘訣は?

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2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、国はリモートワーク(テレワーク)の導入を企業に推進している。最新のデータ(総務省の『平成29年通信利用動向調査 』)によると、日本国内の企業のテレワーク導入率は13.9%だそうだ。オリンピックが開催される東京都は、『『3つのシティ』の実現に向けた政策の強化(平成30年度)2020年に向けた実行プラン 』)の中で、従業員30人以上の都内企業のテレワーク導入率を2020年度までに35%に引き上げたいと公表。働き方改革や生産性向上、育児や介護による離職を防ぐ側面からも注目を集めているが、実際に導入している企業はどうやって運用を行っているのだろうか。


今回はリモートワークに早い段階から取り組み、さらにリモートワークから発展した「リモート忘年会」「リモート飲み会」などのチャレンジ企画も開催している、株式会社ポップインサイトの代表取締役社長 池田朋弘さんと取締役CHOの木島啓介さんに話を聞いた。ポップインサイトは、日本で初めてリモートユーザテストを提供し始めた企業。現在は、東証一部上場の株式会社メンバーズ のグループ会社でもある。フルリモートの社員もいる中でコミュニケーションや仕事の割り振り方など、課題点はないのだろうか。リモートワークを取り入れたきっかけから、紐解いていく。

リモートワーク導入のきっかけは、社員の「離職防止」

リモートワークを導入するきっかけや経緯は、企業によってそれぞれ。ポップインサイトでは、どういったきっかけからリモートワークを取り入れることになったのだろうか。代表取締役社長の池田さんは、「当時のエースの一言がきっかけ」と話す。


池田さん(以下、敬称略):まだ社員数が数名の頃に、当時のエースが「中国で働きたい」と言い出したんですよ。彼が抜けてしまっては会社として非常に困るので、「リモートワーク的な取り組みを試験的にしてみよう」と提案したのがきっかけですね。それ以来、リモートワーク前提で社員の採用をしてみようということになり、シングルマザーで優秀な方を採用したんです。最初は「週2出勤、週3リモートワーク」といった勤務形態でしたが、徐々にリモートワークの割合を増やしていきました。


このような流れがポップインサイトに発生したのは2014年のこと。当時はまだそこまで普及していなかったリモートワークを導入したのは、手放したくなかった社員のひと声によるものだったようだ

「採用ブランディング」にもなったリモートワーク

昨今は、採用戦略の一環としてリモートワークを推進している企業もあるが、ポップインサイトに当初、その考えは全くなかったようだ。しかし、リモートワーク導入は採用ブランディングや会社の危機に対し、プラスに寄与する結果を招いた。


池田:2015年(創業3年目)に、財政的な経営危機を招いてしまい、コスト削減の一環としてオフィス解約を決断しました。だから、2016年はオフィスがなかったんです。機材などの一式は私の自宅に移動し、都内で会議室を週1回借りている状況だったんですね。なので、毎週違う会議室を借りて、「ノマドカンパニー」的なことを自虐的な面白さも含めて、取り組んでいたんです。そうしたら、ポップインサイトは「リモートユーザテスト」というサービスを提供していることもあってか、「リモートワーク」などのキーワード検索結果で自社採用ページが上位表示されるようになり、優秀な人が応募してくるようになったんです。


ポップインサイトの採用サイト には、実際にリモートワークで働いている社員のインタビューなど実例が豊富に掲載されている

社員の離職防止のために急きょ始まったリモートワークだったが、応募者の需要を受け、ポップインサイトは採用の方針を柔軟に変更していったそうだ。


池田:応募者は地方在住者など、本当にフルリモートでないと働けない状態だったのですが、「週1からの勤務も出社なしでOK」で試してみることにしたんです。すると事業が軌道に乗り始めたため、正社員のフルリモート勤務採用を本格化していきました。

リモートワークは「切り出された業務をすること」ではない

ポップインサイトでは、具体的にどのような仕事をリモートワークで進めているのだろうか。取締役CHOの木島さんは、「リモートワークは『ホワイトカラー頭脳労働』」だと語る。


木島さん(以下、敬称略):よく誤解されがちですが、リモートワーク=クラウドソーシングの仕事に多い内職系業務など「切り出された業務」ではないんですよね。ポップインサイトのリモートワークは、あくまで勤務形態が「在宅」であるというだけで、多くの企業の総合職と同様の「ホワイトカラー頭脳労働」を行っています。


「この人はリモートワークだからこの仕事は振れない」といった区別をしないことで、全員が躊躇なくリモートワークできる環境構築に成功しているようだ。

推進するなら「全員リモート」

そうは言っても、「切り出された仕事」でなく、業務の区別がない故の課題はないのだろうか。例えば、綿密なコミュニケーションが求められたり、特別なフォローが必要になったりといった事態が想定できる。しかし、ポップインサイトではフルリモートでも社員同士がコミュニケーションを取れるよう、さまざまなチャレンジ企画が生まれているようだ。


Zoomというチャットツールを使い、リモートランチをしている様子(ポップインサイトブログ『リモートワーク推奨の会社が提案!リモートワークでのコミュニケーション改善事例 』より)

木島:イメージしてください。会社員であれば、「仲間と仲良くなるために飲みに行きたい」と考えますよね?「じゃあ、リモートでもやりましょう!飲みましょう!!」ということで、リモート忘年会やリモート飲みなどのチャレンジ企画がごく自然に始まりました。


リモートワークに魅力を感じ入社した社員は、介護や育児、副業などに忙しい人もいるはず。果たして、新しい企画はスムーズに立ち上がったのだろうか。


木島:最初はみんな訝しげでしたね。「どうやってやるの?何をやるの?」といった声もありました。なので、まず一度、普通に飲み会っぽくお酒をPC前に持ち寄って、10人くらいでZoomを使って 、リモート飲み会をやってみたんですよ。そうしたら、よくしゃべる人が2・3人と、その人たちの会話を聞く6・7名といった構図になってしまいました。


もっと全員が主体性をもって楽しむにはどうしたらいいかを考えた結果、全員参加型のコンテンツを用意することにしたんです。例えば、フリップを画面に表示し、『クイズ王ゲーム』や、『絵心ゲーム』などをしてチーム戦で楽しんだり、コンテンツの合間に談話の時間を設けたり……。それはすごくヒットしましたね。笑いあり、(笑いすぎて)涙ありで大盛況でした!経営陣は、そんな盛り上がりを「ええやんええやん」って感じで見守っています(笑)。


ちなみに、リモート飲み会にはこんな試行錯誤もあったようだ。


木島:居酒屋にリアルに集まっている5名とリモート5名という組み合わせで飲み会を実施した時は、リアル組とリモート組の温度差が発生してしまうことが分かりました。環境に差が出ないよう、全員リモートでやる方が良いんだろうなと思っています。


リモート参加する社員を特別扱いするのではなく、全員リモートで参加してみる。区別をなくすことで、こういった企画もスムーズに回っていくようだ。

リモートワークの課題は、「働きすぎてしまう」こと

リモートワークを進めていく中で、課題が明確になり、対処法も考えられてきたと池田さんは言う。


池田:リモートワークだとわかりやすい時間の仕切りがないので、働こうと思えばいくらでも働けてしまうんですよね。具体的な対処法として、毎週金曜に「キャパシティチェック」という社内アンケートを送り、各自の働き方が理想とずれていないかをチェックしています。子育てとの両立は、現在検討中ですね。子どもがいる時にも仕事が発生する、もしくは子育てがひと段落した深夜に仕事をしてしまうことで、寝ていた子どもが起きてしまうというケースもあるんです。


いつでもどこでもできるリモートワーク。便利な反面、目の前にある仕事を片付けたいと思うが故に、「子育てと仕事の境目が分かりづらく、子供にストレスがかかってしまう」といった課題もあり、改善の余地はまだまだあるとのこと。早くからリモートワークを導入する企業でも、日々制度をより良いものにしようと努力は欠かせない。

リモートワークを成功させる秘訣は、「情報格差をなくすこと」

池田さんは、「リモートワークを成功させる秘訣」について、こう考えていると言う。


池田:リモートワークが「ごく一部の社員」にしか浸透していないと、「リモートをしている社員」と「リモートをしていない社員」の間で、大きな情報格差が生まれてしまうんです。これを避けるには、「リモートワークをメインストリームとし、出社しなくても情報が同じように得られる状態にできるかどうか」が最も重要だと思います。実際に、ある会社でリモートワークをしていたけれど、リモートワークをしていない社員との間に格差を感じて退職してしまったという方が、ポップインサイトの転職面接に来ることも多いんですよね。


先述のリモート飲み会のように、「リモート組」と「現地組」の二極化が発生すると、互いに気を遣い、働きづらさを招いてしまうことになるようだ。では、リモートワークが生む「格差」や「寂しさ」という点について、ポップインサイトはどう乗り越えたのか。


木島:これは意外だったのですが、「寂しさ」を解消する動きが社員から自発的にたくさん発生したんですね。雑談チャットやガス抜きチャット、オンライン対戦できるゲーム部などが発足しました。リモートワークだと「何か軽い困り事があった時に、隣の席の人にちょっと聞く」ということにハードルがあるので、それならそういう時にすぐに話せるようにと、常時接続可能Web会議室「Zoom」が設けられたりもしています。今では、一般の会社よりもコミュニケーション量は多いくらいかもしれませんね。


リモートワークを社内の働き方のスタンダードにしたことで、社員全体でリモートワークの仕組みを支える風土も生まれたようだ。企業がリモートワークを導入しようとすると、セキュリティーなどの技術的な課題を乗り越える必要もあり、メインストリームとすることはハードルが高い。しかし、導入する際には中途半端に取り組むのではなく、思い切ってリモートワークを会社の働き方の中心に据える。そんな覚悟も必要なのだろう。


取材・文:佐野創太

 

取材協力:
株式会社ポップインサイト 代表取締役社長 池田朋弘

 

2008年、早稲田大学卒業した後、Webユーザビリティのコンサルティングファーム(株式会社ビービット)に入社。2013年1月、株式会社ポップインサイトを創業。代表取締役CEOに就任し、現在に至る。



HP:株式会社ポップインサイト
自社Media:リモートワークスタイル
Twitter:@pop_ikeda
Facebook:池田 朋弘

 

株式会社ポップインサイト 取締役CHO 木島啓介

 

兵庫県出身。アパレルの専門学校を経て大学卒業後、株式会社ジョブウェブ入社。新卒採用コンサルタントとして大小様々な規模の会社の採用支援に従事。副業で人事支援のフリーランサーとしても活躍。 2017年1月、株式会社ポップインサイト取締役CHO(Chief Human Officer )就任。 ポップインサイトの人事制度設計やリクルーティングを担当。

Facebook:木島 啓介