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上司は話を聞く気がないわけではない。『意見・主張が通る「伝え方」』著者 石田健一さんが説く「上司を見極める3つの判断基準」

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「上司が話を聞いてくれない」というフラストレーション。これは、放っておくとネガティブな退職理由にもなりえる悩みだ。しかし、上司は上司で部下の声を聞きたいと思っている。大手企業で1on1が導入され始めているのも、こうした思いがあっての流れと言えるだろう。両者は、すれ違い状況にあるのだ。


そこで、今回は「上司に話を聞いてもらうための技術」を、パーソナルコーチ兼コンサルタントの石田健一さんに伝授してもらった。石田さんは「意見・主張が通る『伝え方』」をはじめ国内で3冊の著書を持ち、台湾・韓国・シンガポールなど多くの国、地域でも翻訳出版されている、「伝え方のプロ」である。ところが、石田さん自身も新人の頃は伝えることが苦手で、念願叶って掴み取った案件の担当を変えられてしまった経験があるそう。「話し下手」だったにもかかわらず、いまや伝え方の著書まで書くようになった石田さん自身の経験を踏まえたアドバイスは、きっとあなたと上司のこれからのコミュニケーションの参考になるはずだ。

上司への伝え方を考える際の判断基準は3つ。タイプに合わせたアプローチをするのが吉


―― 部下の立場だと、なかなか上司にモノを言うことは難しいと思う反面、意見を伝える必要がある状況や自分の意見をどうしても伝えなくてはいけない局面もありますよね。そういった時、部下はどうすれば上司を苛立たせずに、自分が言いたいことを伝えられるのでしょうか?


石田さん(以下、敬称略):まず大前提として、上司を「上司」とひと言で括るのではなく、コミュニケーションの仕方による「タイプ」があることを理解します。その上司のタイプを見極めるための判断基準があるのです。

判断基準の1つ目は、相手が「結論タイプ」か「プロセスタイプ」のどちらなのか。つまり、結論を早く知りたいタイプなのか、理由やプロセスを先に聞いたうえで結論を聞きたいタイプなのかを見極めるのです。見極め方は、シンプル。上司が普段、結論とプロセスのどちらを重視して話しているのかを知ることです。その伝え方と同じように話すと、上司は話を聞いてくれるようになります。


―― 上司の伝え方のタイプを「普段の伝え方」から見極めるんですね。


石田:そうですね。次に判断基準の2つ目は、「選択肢タイプ」か「ベストの一案タイプ」かを見ること。どんなに良い案でも、1つだけでは認めないという上司は一定数います。数ある選択肢の中から、自分で選びたいと考えるタイプの人です。こういった上司には、複数の案を提示する必要があります。


反対に「ベストの一案タイプ」の上司は、「要するにどれが一番良いの?」と単刀直入に聞いてくるので、部下は自分の中での結論を持っておくと、話がスムーズに進みます。


―― 上司の意思決定の仕方を観察することが、伝え方の正解を見つける糸口になるということがわかりました。


石田:多くの人は、自分が慣れ親しんだ伝え方を好むのですよね。判断基準の3つ目は、「上司主導型」と「部下主導型」のどちらなのか、です。前者の上司は、仕事に対して細かい部分まで関与したがります。後者であれば、ポイントはきちんと押さえて報告してくれれば、あとは部下に任せるタイプです。これは仕事の進め方にも直結するので、早めに理解しておくといいですね。


―― 「上司主導型」と「部下主導型」のどちらなのかも、普段のコミュニケーションの中で見極められるのでしょうか?


石田:そうですね。もちろん、上司と部下の関係性や仕事内容によっても変わりますが、「メールへの反応」もタイプを見極める手段の1つです。「上司主導型」タイプの人は、Ccに入っているメールまでしっかり読んでいる場合が多い。そのような上司に対し、何かを報告しようとすると「あの件の報告書だよね。進めていいよ」とすぐに指示が出てきます。一方で「部下主導型」だと、「何のこと?」とメールをほとんど読んでいないケースも珍しくありません。


―― 上司と一言で言っても、タイプを見極める基準があるのですね。


石田:部下からすると、見極めるのが大変だと思ってしまうかもしれないですね。でも、見極めるのにもコツがあるんですよ。上司の自分に対するコミュニケーションの取り方を観察することとともに、「上司と他の同僚との会話」を観察するのです。もしその会話で、「結論はどうなの?」と上司が聞いていたら、2つ目の判断基準でいう「結論タイプ」の可能性が高まります。「他の案はないの?」と話していたら、「選択肢タイプ」の可能性を模索すると良いです。対自分より、対他者とのコミュニケーションを観察する方が、客観的になれるのでおススメです。


―― 上司のタイプを判断する際に、注意点などはありますか?


石田:「前評判だけで判断しないこと」ですね。例えば新しい上司が赴任した際に、前の部署の人が「あの上司は●●な人だよ」と話すことがありますよね。でもそれは、あくまでその人が感じた印象ですし、上司のコミュニケーションタイプは仕事の内容や役職によっても変わるものなのです。自分の部署でコミュニケーションを行う際のタイプを見極めるためにも、前評判だけで判断しないことが求められます。

どのタイプの上司にも有効な「伝え方のコツ」。意識すべきは3つのポイント


―― ここまでは、上司のコミュニケーションタイプを見極める方法についてお聞きしました。コミュニケーションタイプ別にアプローチの仕方を変えるのも良い方法ですが、なかなか上司のタイプが掴めないという人もいるかと思います。そんな人に向けて、どんなタイプの上司にも通用する、万能な「伝え方のコツ」はあるのでしょうか?


石田:ありますね。これも3つのポイントに分けることができます。


1つ目は、「話のテーマ(目的)を明確にすること」です。具体的には、「伝えることで、相手から欲しい反応は何か」をあらかじめ決めておくことです。アドバイスが欲しいのか、理解して欲しいのか、単に報告がしたいのか、他の部署に働きかけるために手伝ってほしいのか。時には、感謝を伝えたいだけかもしれないですよね。少し想像するだけでも、「テーマ」はたくさんあることが分かります。


―― 「どのように話そうか」ばかり気にして、肝心な「伝えたいこと」や「伝える目的」がぼんやりしてしまうことは多いですよね。


石田:そうですね。先ほどお話したように、物事を細かく把握したい「プロセスタイプ」の上司もいます。なので、厳密に言えばケース・バイ・ケースですが、伝え方の1つの型は覚えておくと良いですね。それは「結論→具体的理由」の順番で話す、というものです。伝えたい物事の内容を書き出し、それを「結論→具体的理由」の順番に並べて整理する。それだけで、伝わり方は一気に改善しますよ。


―― 型が1つあると、そこから応用ができますね。


石田:「伝え方」の改善に取り組む際に大切なこととして、実は「相手の話を聞く」というのもあります。これが2つ目のポイントですね。「聞く」というテーマだけで本がたくさん出版されているくらい、ビジネスパーソンが注目しているテーマでもあります。


ここで、企画書を上司に提案する時のことを想定してみましょう。よくあるケースは、部下が伝えたいことと上司の受け止め方にズレが生じるというもの。例えば、部下は提案内容の中身について聞いてほしいのに、上司はコスト(費用)ばかり気にしていて話が進まないという場合です。こういった食い違いは、上司が仕事において何を最も気にしているのかを会話の中で観察したり、直接質問したりして知っておくことで防げます。「上司が知りたいこと」が分かっていれば、「伝えること」は自ずと見えてきます。


―― 「聞く」ことも伝え方の改善に繋がるんですね。


石田:3つ目のポイントは、「相手の気持ちの扉をノックすること」です。上司に聞く姿勢になってもらえるような働きかけをするということですね。そもそも、上司が聞く姿勢になってない時に、どんなに大事なことを素晴らしい方法で伝えたとしても、上司の頭に何も残らないということが往々にしてあります。それは、相手側が「聞く準備が整った状態」でないからです。例えば、上司が経営会議で社長や会長にプレゼンをするケースがあるとします。スケジュール管理を徹底的に行うタイプの上司であれば、プレゼンの前に見直し用の時間を確保していたりします。その時間に「部長、ちょっとお時間ありますか?」と話に行っても「ちょっと待ってよ」となりますよね(笑)。こういった事態は、チーム、組織でスケジュールを共有できる(WEB上の)カレンダーなどを導入しているところも多いと思いますが、そこで上司のスケジュールを確認しておけば防げることでもあります。

コミュニケーションの成功率は3割でも良い。メンタルを保つために必要な「伝え方」に対する考えとは


―― 「伝え方」を意識することで、部下と上司のコミュニケーションはだいぶ円滑になりそうですね。


石田:ここまでは、「伝え方の技術」についてお伝えしてきましたが、実はもう1つ重要な要素があります。それは「伝え方のメンタル」と呼べるものです。
私がパーソナルコーチングやクライアント企業のコンサルティングをしている中で気づいたことは、「伝え方やコミュニケーションに完成はない」ということです。会社にいれば上司が変わることもあるし、自分も異動します。すると、またコミュニケーションの仕方を見極めて、伝え方を考えるプロセスが始まりますよね。だから、「伝え方」を改善するための反省は必要ですが、「悩みすぎない」ということも大切なのです。


―― 「失敗はつきものだ」と考えると良いのでしょうか?


石田:そうですね。準備をして、自分のベストを尽くしたのであれば、どういった結果であれ「結果」としてまずは受け止める。そのうえで次に生かした方が、伝え方は徐々に改善されていきます。例えばスポーツの例をあげても、どんなに有名なバッターでも打率は3割台だったりしますよね。裏を返せば、10回に7回は“失敗”しているのです。でも、10回のうちの3回は結果を出しています。「コミュニケーションの成功も3割上手くいけば良い」くらいに気持ちを切り替えるようにすると、積極的に伝える訓練ができるようになります。


―― 石田さんは元から切り替えが上手だったのでしょうか?


石田:いえ、そんなことはなかったです。だから「忘れる訓練をしよう」とも意識していましたね。例えば、「どれだけ失敗しても、寝たら考えることはストップしよう」としていました。MVPや首位打者をはじめ数々のタイトルを獲得し、監督も経験された元ヤクルトスワローズの古田敦也さんも「忘れることが野球選手の必須スキル」という趣旨をあるインタビュー記事で話されていました。プロの世界は、誰もが勝ちたい、活躍したいと思って日頃から切磋琢磨していますよね。それでも三振したり、エラーしたりといった失敗がある。たとえ優勝するチームでも年間で何十試合も負けてしまうわけです。その1つ1つの失敗を覚えていたら、次に立ち向かえなくなってしまいます。古田さんの話を聞いてからは、「忘れることも大事なんだ」と私も思えるようになりました。


―― 結果を出している方は、上手く忘れているという方が多いのかもしれないですね。


石田:そうですね。そんなに簡単に忘れられない時は、「悩みをクラウド化する」という方法もあります。悩みをどこかに一度預けるイメージです。例えば、「土日は考えないようにして、次の月曜日の昼に考えよう」と、悩む時間をいったん先送りするのです。そうすると、ずっと悩んでしまう状況を避けられます。


―― 考える時間をコントロールする方法があるんですね。


石田:もう1つ大切な考え方があります。それは、「上司に対する期待を調整する」というものです。言い換えると「ほどほどの期待にする」ということですね。
私も今だから冷静に言えることでもあるのですが、上司との関係は「相性が合うか合わないか」の2つの方向だけに落とし込まない方が良くなるんですよ。つい、「あの上司はよく見てくれる、この上司は見てくれない」と考えてしまうことがありますよね。


―― 「見てくれない上司」とは、どう付き合っていけば良いのでしょうか?上司との関係性に悩んで転職してしまうケースも多く見られます。


石田:上司の見方を「味方か敵か」のどちらか一方で考えるのではなく、「どちらでもない」という見方も追加してみると良いでしょう。そして、「あの上司は私の敵だ」と思ってしまいそうになったら、「味方ではないけど、敵でもないな」とどちらでもない見方をするように意識するのです。
ちょっと苦手な上司に対して、「敵でも味方でもない」と考えられたら、「挨拶プラスα」くらいはできるようになりますよね。その積み重ねが、関係を改善していくのです。


―― 上司を味方と敵の中間の存在として見ると、期待を調整できそうですね。


石田:そうですね。一度冷静に「俯瞰で見ること」は大切ですよね。そうすると「フェアではないけど、完全にアンフェアというわけでもないな」と思えるポイントが見つかってきます。この時に、「自分がきちんと目標を持っているか」が問われます。現状よりも先の目標があれば、こういったアンフェアな状態を乗り切れますし、ゲーム感覚で楽しめるようにもなります。


例えば、冒頭でお話した「3つの判断基準」を使いながら、「この上司はベストの1案タイプかもしれないな。では、提案は調査した1案を持っていってみよう。これで通れば、「自分が実現したい企画が出来るかもしれない」がといったように考えると良いでしょう。


―― 目標をきちんと持った上で俯瞰する。そうすることで、自分が置かれている状況にゲーム性を見いだすこともできるんですね。


石田:自分の中の固定観念である「上司はこうあるべき」の思考に囚われすぎないことが、非常に大事ですね。この固定観念を手放すと、「(上司も完璧ではないから、)自分から働きかけよう」と思えるようになります。自分から上司に働きかける際は、自分はどうされたら嬉しいのか、「褒めポイント」を伝えると良いです。上司も、部下のことは知りたいけれど、なかなか理解できていないのが実情です。だから、上司も部下も「自分のタイプ」をお互いに話し合える機会を作ることが、上司と部下のコミュニケーションを改善する近道と言えるでしょう。


取材・文:佐野創太

 

取材協力:石田健一

 

パーソナルコーチ兼コンサルタント

早稲田大学卒業後、大手消費財メーカーに入社。営業で化粧品部門の店舗別売上全国1位を獲得。広告セクションに異動後、シャンプー、ハンドソープ、洗濯用洗剤など主力ブランドのテレビ・ラジオCMや雑誌広告の制作、ブランド戦略、コピーライティング、ネーミング開発を担当。

総務大臣賞/ACCグランプリを始め、広告電通賞、フジサンケイグループ広告大賞最優秀賞など受賞多数。その後、テレビ、雑誌、WEB、PRなどのメディアプランニング業務に従事。デオドラント剤の新CM発表会で、TVの情報番組を始め200を超えるメディアに取り上げられ話題となる。2014年に独立。

現在、個人や企業を対象にパーソナルコーチ兼コンサルタントとして活躍。宣伝・プロモーションの経験を生かし、個人、企業本来の強みや魅力を引き出すコーチングとブランド構築を得意とする。

意見・主張が通る「伝え方」 (アスカビジネス)

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