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上司にイラッとする部下がすべきアンガーマネジメントとは?指導人数延べ20万人の戸田久実さんが伝授

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「上司の評価に納得がいかない」「出された指示がすぐに変わる」「失敗を同僚の前で指摘された」――部下という立場であっても、上司に対してイラッとする瞬間は誰しもがあるだろう。ただ、上司と部下という関係性を考えると、怒りを伝えられずに、自分の中に溜め込んでしまったり、ついイライラを顔に出してしまったり。しかし、我慢を続ければストレスは膨れ上がるばかりだ。果たして、立場上怒ることのできない部下は、上司に対する怒りをどのように処理したら良いのだろうか。


今回は、そんな「部下のためのアンガーマネジメント」を企業や官公庁での研修実積が4,000 回を超えるコミュニケーションの専門家・戸田久実さんに伝授してもらった。「怒りは感じても良い」「怒りは伝え方が大事」と言う戸田さん。きっと怒りに対する認識が変わると同時に、「今日からできるアンガーマネジメント」を学ぶことができるはずだ。

アンガーマネジメントとは怒りを伝えるためのメソッドである


―― 上司に怒りの気持ちを抱いてしまった部下は、どのようにアンガーマネジメントをしたら良いのでしょうか。きっと「部下だから我慢しなきゃ」と考えている人も多いと思います。


戸田さん(以下、敬称略)アンガーマネジメントとは、怒りの感情とうまく付き合うための心理トレーニングですが、「怒っちゃいけない」と怒りを我慢するメソッドではないんですね。怒る必要のあることと怒る必要のないことの線引きができること、そして、怒る必要があることには適切な怒り方でき、怒りで後悔しないことを目指します。


例えば、「あんなことに怒らなければ良かった」という後悔や、反対に「あれは怒っておくべきだった」という後悔もあります。線引きができていないと、怒ってしまった自分を嫌いになったり、怒れなかったストレスを溜め込んだりしてしまうんですよ。


―― 怒る時は怒っても良いんですね。


戸田:伝え方を工夫すれば、怒っても構いません。怒りは悪い感情だと思われることも多いのですが、そうではありません。怒りの正体は、「こうあるべき」という言葉に象徴される自分の「こだわり」です。この「べき」は自分の理想や願望、時には譲れない価値観を象徴する言葉なので、悪いものではないのです。


自分が大切にしていることが軽く扱われていたり、その通りになっていないといった状況から、怒りの感情が生まれるんですよね。怒りは感じないようにするものではなくて、上手く扱うものなんです。怒りに関する相談は、研修をするなかでもよくいただきます。


―― 部下という「立場が弱い人の怒り」の相談もありますか?


戸田:ありますね。部下の方が多く感じている怒りは、「高圧的な上司に強く叱責された」などです。他にも「上司の言っていることがコロコロ変わる」「自分と同僚で仕事の負担の割合が全く違う」などもよく聞きます。この時に「おかしくないですか?」と怒りからぶつけてしまうと、人間関係がギクシャクしてしまいますので、怒りは「リクエストとして伝える」ことが大切なのです。


―― 怒りの伝え方を工夫するんですね。


戸田:そうです。怒りは、自分の中の「こうあるべき」を人に守ってもらえない時に発生します。例えば、「メールの返信は24時間以内にすべき」と思っているのに、待っても来ない時、「何で早く返信してくれないんですか?」と伝えると、文句を言っているだけのように伝わってしまいます。


ですから、「次の仕事の判断に関わることなので、お送りしたメールの返信は、24時間以内にいただけますか?」と理由とともにリクエストの形に変換して伝えることをオススメしています。

怒りをドッジボールのようにぶつけないためにも、適切な伝え方を会得しよう


―― 「怒りはリクエストの形に変換する」。これは職場でも応用できそうです。


戸田:そうですね。例えば、先日ある若手社員の方が「上司の指示がすぐに変わる」と怒っていました。ここで、「この前と言っていることが違いませんか?」と怒りをそのまま伝えてしまったら、上司を責めているように聞こえてしまいます。そうすると、自尊心の高い上司などはとくに、部下の本意が伝わらず、反撃や反論をされる可能性もあります。


―― この場合もリクエストの形にして伝えれば良いのでしょうか?


戸田:理由を付けてリクエストすることが望ましいです。例えば、「仕事の進行に支障をきたしてしまうから」などの理由を付けて、「変更した背景から教えていただけますか?」と要望を出します。そうすると、上司との間に会話が生まれて、関係を壊すことなく仕事をすることができるようになります。また、怒りを適切に伝えられるようになると、ストレスを溜め込むことも減っていくでしょう。


―― 怒りをぐっと我慢してしまうこともありますよね。


戸田:我慢強い人ほど、怒りを溜め込んでしまうんですよね。そして、怒りを溜め込んだ分、一気に爆発させてしまうことも多いんです。


例えば、「3カ月間、無理な要望にも何も言わずに我慢して仕事を頑張ってきたのに上司からの評価が低くて、評価面談で一気に怒りをぶつけてしまった」というケースがあります。「ここまでこんなに頑張ってきたのに、なんでこの評価なんですか?!「あの人よりも評価が低いのはおかしい!わたしの方が頑張ったのに!」と複数の怒りが混ざってしまうこともあるんです。そうすると、相手に「感情的」と評価されてしまったり、「冷静な話し合いができない」と思われてしまったりするかもしれません。


―― 相手も「いきなり怒り始めた」と戸惑いそうです。


戸田:よく言われるように、会話はキャッチボールです。怒りの伝え方に関しても「その伝え方は相手が受け止められるボールの形になっているか」がポイントになります。「なんで〇〇〇してくれないんですか?」や「これおかしいですよね」といった伝え方は、キャッチボールで言えば暴投になります。もしくは、敵同士になって怒りをぶつけ合うドッジボールになってしまいます。


相手との関係を壊さずに、自分がストレスを溜め込まないためにも「怒りを要望の形に変換する」ことが重要です。

「怒りのピークである6秒」は、怒りを点数化してやり過ごす


―― アンガーマネジメントを学び始めたばかりだと、そうは言っても怒ってしまうのでは?と思ってしまいました。即効性のあるアンガーマネジメントはあるのでしょうか?


戸田:怒りのピークは長くて6秒です。その間に怒りに任せた行動をしないために「怒りの点数化」をおすすめします。


アンガーマネジメントを知る前の人は、「怒り」には怒っているか、怒っていないかの二択しかないと思っていることが多いのです。でも実際、怒りには、10点満点のうちの1点「少しむっとする」から、5点「腹立たしい」、9点「もう我慢の限界」まで、幅があるのです。


―― 怒りを我慢するか、溜め込むか、爆発させるか、しか考えていなかったです。


戸田:怒りは幅のある感情です。そこで、「今私が感じている怒りは何点くらいか」と考えることが有効です。この怒りの点数化は怒りが収まるという解釈ではありません。怒りのピークである6秒の間に「衝動的な行動をしないための対処法」です。怒りを感じた時に「今の怒りを点数化したらどれくらいか」を考えることで、6秒をあっという間にやり過ごせるようになります。


―― 点数化している間に、「気がついたら怒りのピークを終えていた」という状態が作れそうですね。


戸田:「今の怒りは2点」と点数をつけることに意識が向いている間は、怒りに任せた行動を取ることはまずないですからね。点数化している間に怒りのピークが通り過ぎるので、「ではどう対応しようか」と冷静に対策を考えられるようになります。

アンガーマネジメントは「怒りの記録」から始める


――この記事で初めてアンガーマネジメントを知った方に対して、最初の一歩としておすすめのメソッドはありますか?


戸田:「アンガーログをつける」ことをおすすめしています。アンガーログとは、「怒りの記録」です。アンガーマネジメントは、怒りと上手に付き合うための心理トレーニングと言われています。「心理トレーニング」は、小さなことでも何らかの行動を積み重ねることが大事なのです。だから、怒りを感じた時に「いつ、どこで、どんなことに怒りを感じたのか」を記録していくことが有効と言えます。


――小さな怒りも記録して構わないのでしょうか?


戸田:そうですね。例えば、「満員電車なのに後ろの人がリュックを背負っていて、ときどき自分に当たってイラっとした」でも構わないです。こうした記録を取っていくことで、自分の怒りの傾向が分かってきます。そのなかには、怒りの正体である自分が大切にしている「こうあるべきだ」という思いも含まれます。先ほどの例だと、「満員電車では人に当たらないようにリュックは背負わずに前で抱えるべき」等ですね。怒りの傾向と自分の中の「~べき」が分かると、何かイラッとする出来事が起きても、「これは自分の怒りのパターンだな」と理性を働かせられるようになります。


――少しの時間でアンガーマネジメントを始められそうですね。


戸田:「アンガーログ」と「6秒やり過ごす」を組み合わせると、アンガーマネジメントの基本を習得しやすいですね。

アプリと対話し、怒りを人と共有する方法も


アンガーログアプリ🄬 日本アンガーマネジメント協会

――ログの仕方に何かポイントはありますか?記録することを忘れてしまったりもするのでは?と思いました。


戸田:理事として在籍している一般社団法人日本アンガーマネジメント協会が開発している『アンガーログ』 というアプリを使うと、記録する手間が省けるかもしれません。これは「どこの場所で怒りを感じたか」もタップ1つで保存できます。「他の人がどこで怒りを感じたか」も地図上で見えるので、この辺りはイラっとした人が多いな、というのもわかります。


――このアプリには、カレンダー機能もあるんですね。


戸田:人によっては、「週明けの満員電車や職場での怒りが多いな」という傾向も見えてきます。また、何に怒りを感じたかも記録をするので、「謝らない人に怒りを感じる」など、具体的な怒りの傾向も把握できるようになります。


――複数人で始められるアンガーマネジメントもありますか?職場の人の怒りの傾向なども理解できたら、人間関係が円滑になると思いました。


戸田:日本アンガーマネジメント協会では、『アンガーマネジメントゲーム』 というカードゲームも作っているんですよ。例えば、Aさんが怒りを感じた出来事をみんなの前で話します。この時に、Aさんは0から10の間で何点の怒りを感じたのかを考えて、怒りの点数カードを準備します。そして、他のメンバーがその点数カードが何点なのかを予想して当てるゲームです。そうすると「そんなに低くていいの?」だったり、「そんなに高いんだ。理由は?」と相互理解を深める会話ができますよね。


――怒りのツボや程度の認識の違いが解消できそうです。


戸田:そうなんです。これを続けていくことで、自分の怒りを語り合いながら笑えるようになるんです。怒りは「ネガティブなものであり、扱いにくい」という印象がありますが、怒りの傾向を把握すれば、上手く扱えるものなんですよ。怒りをコントロールする方法は、なかなか学校や職場でも習わないものですが、普段から簡単に始めることができます。


アンガーマネジメントは職場の人間関係を改善できますし、ストレス軽減にも繋がりますので、ぜひ試してみてください。


取材・文:佐野創太

 

取材協力:戸田久実

 

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会理事

立教大学文学部卒業後、株式会社服部セイコー(現 セイコーホールディングス株式会社)にて営業、その後音楽業界の企業にて社長秘書を経て、2008年にアドット・コミュニケーション株式会社を設立。
研修講師として民間企業、官公庁の研修・講演の講師の仕事を歴任し、登壇数は4,000 回を超え、指導人数は20 万人に及ぶ。その実績による豊富な事例やアンガーマネジメント、アサーティブコミュニケーション、アドラー心理学をベースにしたコミュニケーションの指導には定評があり、無意識の思い込みによる課題の解決も含め、新入社員から管理職まで幅広い対象に研修、講演を実施。多くの企業でわかりやすく、実践的な内容が好評を得ている。近年は、大手新聞社主催のフォーラムへの登壇や、テレビ、ラジオ、雑誌などのメディアを通じてアンガーマネジメントやコミュニケーションの重要性を伝えるなど、活動の幅を広げている。

日本アンガーマネジメント協会
戸田久実オフィシャルサイト
◆ 戸田久実のコミュニケーションブログ
戸田久実オフィシャルサイト|著書
Twitter:戸田久実 (@kumitoda) | Twitter
Facebook:https://ja-jp.facebook.com/kumitoda

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