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できる営業が持っているクリエイティブスキルとは〜大手製造業の販路拡大に成功し契約獲得率90% 営業のプロ小幡英司さんが説く〜

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企業活動の根幹を担う仕事とも言える営業。日本では約289万人の営業職が活躍している(総務省「2015年国勢調査」 )。また、厚生労働省が発表する、都内の営業職における有効求人倍率は2倍以上で、求人ニーズも高い。その一方で、「営業成績や売り上げなど、数字で見える部分が多い」という特徴から、「ノルマが厳しくて、大変そう」「売るだけの仕事」といった印象を持たれることも多い。


『社会人1年目からの1歩差がつく 営業マル秘セオリー』の著者で営業コンサルタントの小幡英司さんは、モノを売るだけではない営業の役割について発信している。
小幡さんは、「営業こそクリエイティブ(創造的)な仕事だ」と力説する。一般的に、クリエイティブな仕事というと、制作物を作るクリエイターのような仕事が想起されるが、実はそうではないという。なぜ営業がクリエイティブな仕事なのか、できる営業を目指すためには、どんなことをすれば良いのか、その本質について話してくれた。


自身の営業スタイルの確立や、これからのキャリアに悩んでいる営業パーソンにぜひ読んでほしい。

顧客の悩みをプロジェクト化することが、営業のクリエイティブスキルの発揮どころ


―― 小幡さんが営業の道に進んだきっかけは何だったのでしょうか?


小幡さん(以下、敬称略):社会人になってから3年間は、お客様の元で使用されているハードウェアのサービスを行うフィールドサービスエンジニアとして働いていたのですが、いつか営業の仕事がしてみたいと思っていました。「今あるモノをさらに良くできる仕事」を探している中で、電気設計CAD*1ソフトの日本法人で営業の仕事に出会いました。未経験で外資系の営業になるのはかなりのチャレンジでしたが、そこで営業はクリエイティブな仕事だということに気付いたんです。お客様の課題が解決できる企画や提案をして、お客様を良い方向に導いていくわけですから。


―― 営業のクリエイティブな側面には、すぐに気がついたのでしょうか?


小幡:営業を始めたばかりの頃は、何もわかっていない状態でしたよ。「とにかくモノを売れば良い」「他の人より成績を上げれば良い」くらいにしか考えていませんでした。


―― 何をきっかけに「営業はクリエイティブな仕事だ」と思ったのでしょうか?


小幡:お客様が今まで考えていなかったことを提案することが、私が働く業界の営業だったんですよ。例えば、通信インフラで使われる高速基板ではプリント板の配線から不要なノイズが発生して通信品質が悪くなることがあります。これをシミュレーションしてノイズが出ないように設計するソフトがあったのですが、他にも用途がないかなと会議に他の営業やエンジニアを招集したことがあります。「デジカメや携帯電話でノイズが出ると写真の画質が悪くなるよね」「カーナビはノイズの影響を受けるのかな」とお客様の悩んでいそうな課題について皆でアイデアを出しあうんです。こうして仮定した課題をもとにお客様を訪問することでお客様の頭の中でモヤモヤしていた課題がはっきりしてくることがよくありました。


―― お客様は日々さまざまな悩みを抱えていますよね。


小幡:多くのお客様が悩みを抱えていますが、漠然とした状態では、まだ課題とは言えません。悩みをお聞きし、はっきりと言語化して課題として捉えてもらう。課題を解決するために、期限を定め、スケジュールを引いて、解決策や予算を提案する。そうすることで悩みが、「プロジェクト」になりますよね。この問題解決をプロジェクト化する力が、営業に求められるクリエイティブスキルです。


――営業は、漠然とした悩みをプロジェクトに変えることができるんですね。


小幡:お客様のモヤっとした悩みを解決するために、実行可能なスケジュールまで落とし込んでいく工程は、まさにクリエイティブスキルの発揮どころ。成果を出し続けている営業パーソンの多くは、クリエイティブスキルの重要性を知っています。

遠回りしているポイントを観察して近道を提案すれば、顧客は一気に動き出す


―― では、どうすれば漠然とした悩みを実行可能なプロジェクトに変えられるのでしょうか?


小幡:漠然とした悩みをプロジェクトにするためには、「その方法は思いつかなかった。やってみよう」とお客様を前向きな気持ちにさせる必要があります。例えば、ドラッグストアで考えてみましょう。企業は「売り上げを上げたい」という悩みがありますよね。でも、薬品だけを売っていても成長しない。今のドラッグストアの店内を見ると、化粧品、日用品、食べ物もありますよね。これは、誰かが薬以外の商品を販売することを提案した結果だと考えられます。


―― 提案されないと自社だけでは気付けない発想です。


小幡:そうなんです。提案したのは社内の人かもしれないし、社外の人かもしれない。営業は社外から提案する仕事です。提案するために必要なことは「観察」です。ドラッグストアには「どういう人が来るのか」「薬の他に買っていくものがあるんじゃないか」と観察した人がいたんでしょう。


―― 観察すると提案内容が思い浮かぶんですね。


小幡:観察のコツは、「お客様は遠回りをしていないか」を見ること。そして、「近道」を提案するんです。


―― 遠回りをしていないか観察して、近道を提案する。具体的にはどういったものでしょうか?


小幡:私がソフトウェアの営業をしていた頃の話を例にしましょう。当時、お客様はシステムを開発するためにソフトウェア製品を買い、ソフトウェアを使うためにエンジニアの教育も同時に進めていました。しかし、プロジェクトにはぎりぎり間に合うかどうかという状況です。これは遠回りをしていますね。


――近道はどんなものですか?


小幡:私が提案した近道は「エンジニアの貸し出し」。今でいう技術者派遣ですね。お客様には「開発を期日までに間に合わせたい」という目的があります。しかし、ソフトウェアで開発を行いながら、エンジニアも育てている。つまり、本来の目的は「開発のスピードを高めたい」のであって、ソフトウェアをうまく使いたいわけでも、エンジニアを1から育成したいわけでもないんです。


―― 開発スピードが早まれば、その手段は問わないんですね。


小幡:はい。ですから、何を観察すれば良いかというと、お客様が「悩みを迂回して、手間をかけて対処していること」です。その悩みに対して近道を提案することで、「こんな方法で目的にたどり着けるのか」とお客様が動き出してくれます。

営業は単独プレーじゃない。周囲をうまく巻き込めば競合他社と差をつけられる


―― 近道を提案するためには、観察が重要になることがわかりました。この観察力はどうやって鍛えれば良いのでしょうか?


小幡:「営業は単独プレー」という認識を変えて、周囲をうまく巻き込むことです。お客様の悩みや目的と、現在の対処方法を社内で展開してみてください。すると、「こうすれば良いのでは?」と気づく人がいるはずです。自分だけでは良いアイディアが浮かばなかったとしても、詳しい人に相談することで、最短の近道が見えてくることがあります。


―― 解決策は実はシンプルなのかもしれないですよね。


小幡:社内を巻き込む時のポイントは、営業以外の人に相談をすることです。私の場合は技術に詳しいエンジニアによく相談していました。実務を知っているので、自分にはない観点の気づきが得られる可能性がありますよね。さらに巻き込むべき人がいます。それは上司です。


―― 上司は力になってくれるのでしょうか?「自分で解決しろ」と言われないか不安です。


小幡:そうですね。「どうしたら良いですか?」と聞くだけでは、他力本願ですし、上司は動かないでしょう。まず、「このプロジェクトが進むとこれだけ売り上げにつながる」と数字を使って伝えることが必要です。納得してもらえれば、上司は他の部署も巻き込んでくれるはずです。ですから、上司を最初に巻き込むことが1番の近道と言えます。


―― 周囲を巻き込んだ上での提案は、1人で考えた時の提案とは質が変わりそうです。


小幡:お客様は、当然ながら製品やサービスを競合他社と比較しますよね。そうした中、現状の改良版を提案しようとすると、多くの場合は似たような機能、仕様、価格帯になってしまうんです。それでは、お客様が遠回りをしていることに変わりはありません。そこで、別の方向からの近道を提案することができれば、お客様は「この提案は他社の提案とは質が違う」と思ってくれるはずですよね。

同年代で群れない。年代の違う人と話すことで、成長が加速する


―― 周囲を巻き込むことの他に、観察力を高める上でできることはありますか?


小幡:成果を出している周りの先輩に方法を聞いて、自分でも実践してみることです。うまくいった事例は、社内でも共有されますし、先輩のやり方を真似したとしても、怒られることはまずないでしょう。


―― 日頃からノウハウを習得できますね。


小幡:そうですね。真似して文句をいう先輩はいないどころか、「私の営業方法を学んでいるのか」と褒めてくれるのでは。


―― 自分が教えた後輩が結果を出すとうれしいものですよね。


小幡:営業は人から学べることが多いんですよね。私が営業の仕事を選んだ理由のひとつには、「人を観察できること」があります。特に自分とは「離れた人」と話していると、観察して得られるものが多いですね。


―― 「離れた人」とは、どんな人でしょうか?


小幡:例えば、自分とは違う世代の人です。今の私なら20代の若手が集まるコミュニティに行って学びます。逆に、私が20代の頃には、年上の人とばかり話していましたね。学生時代は社会人3〜4年目の先輩と話すと、自分の視野が広がった感覚がありました。実際に今の仕事にも生きていますね。


―― 自分と世代の違う人から学ぶことが多いんですね。


小幡:同じ年齢や経験をしてきた人と話しても、すでに知っていることの方が多いですからね。今、私が若手の営業パーソンにノウハウを教えるというキャリアを歩めているのも、歳上の人からたくさん話を聞いて、レベルを上げてもらったおかげでもあります。


―― 営業活動でやり取りするお客様も歳上の場合が多いですよね。


小幡:そうですね。若い担当者としか話が合わないと、打ち解けたけれど、決済までのフローが遠くて成約までに時間がかかってしまうケースや、「上司の承認が取れませんでした」と成約に至らないケースもありますね。


―― 営業あるあるですね!


小幡:一般的には、年齢が上の人の方が決裁権や裁量を持っていることが多くあります。その場合、その人の承認がもらえれば、あとは作業を部下に任せることが多いので、商談が早く進みます。「今後は〇〇と進めてください」と部下の担当者に直接つないでくれることもあります。紹介された担当者も上司の指示であれば、そのまま進めてくれますよね。


営業はお客様を近くで観察することができ、遠回りをしているお客様に近道を提案できるクリエイティブなポジションです。私が今、コンサルタントや人材育成といった仕事ができているのも、営業で培ってきた経験が大きいです。営業の経験は、きっと皆さんのキャリアを広げてくれますよ。



取材・文:佐野創太

 

取材協力:小幡 英司

 

有限会社フルステップ 代表取締役

大学卒業後、ITエンジニアを経て、売り上げが半年未達成だとリストラという外資系の営業に飛び込む。営業経験ナシ、人脈ナシ、業界経験ナシ、英語もしゃべれず、リストラにもっとも近いポジションから1年後に売上予算100%を達成。世界最大のソフトウェア専業メーカーの法人営業部門の立ち上げに参画。トップレベルのマーケティング理論や営業ノウハウに自らの営業体験を組み合わせ、独自の営業スタイルを確立。しゃべらない系の営業スタイルながら、提案した顧客の9割から契約を獲得する営業力で、日立製作所、ソニー、NEC、東芝、トヨタ自動車など大手製造業を中心に55社の販路開拓に成功。

大手外資系企業、ベンチャー企業を経て現職。独立後は、広告代理店、受託システム開発会社、研修企業などB2Bの中小企業を中心にコンサルティングを行う。マーケティング・営業の実務経験を生かし、独占市場を形成する顧客価値中心の技術営業の仕組み作りを開発し、販売体制に悩みを抱えている経営者に実戦的な成功策を指導する。

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*1:電気設計CADとは、半導体やプリント基板の設計をするソフトウェアの総称