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「上手な文章」に必要な3要素とは?文才がなくても今日からできる実践方法をご紹介

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「書くスキル」と聞くと、「自分には文才がないから…」「上手な文章を作るのはライターの仕事」と思う人もいるでしょう。しかし、ビジネスにおいては毎日必ずと言って良いほど、「書く」という作業が発生します。提案書、報告書、契約書、作業指示書、稟議書、メール――。業務でチャットやLINEなどを使っているなら、それも「書く」作業に該当します。


この「書くスキル」が上がれば、今以上に仕事をスムーズに進めやすくなり、部署や担当プロジェクトへの貢献度も高くなっていくことでしょう。今回は、編集者として約30年のキャリアを積み、現在は文章力アップに関する研修・セミナーの講師を務める赤羽博之さんに、「どうしたら文才がなくても上手な文章が書けるのか」やビジネスパーソンが今日から実践できるトレーニング方法について伺いました。

文章力は業務を推進する上で、必ず求められるスキル


―― ビジネスにおいて、「上手な文章」とはどのようなものでしょうか?


赤羽さん(以下、敬称略):一言でまとめると、「伝えたい内容が、読み手に正しく、できるだけストレスなく届く文章」ですね。正しく伝わることはもちろん、「ストレスなく届く」というのが理想です。なぜかというと、読み手にとって「文章を読む」ことは手間や時間の面でストレスになり得るからです。


―― 確かに、忙しいタイミングで長文メールなどを読むのはつらいですね。


赤羽:長いメールを送ってくる人、ときどきいますよね。どんなに良い内容が書かれていても、読み手は文章の長さにストレスを感じてしまいます。企画書も同じですよね。例えば、同じアイデア、同じ内容の文章が書かれていたものが2つあったら、「読みやすさに配慮された企画書」のほうが良い結果につながりやすいのは明らかです。


私はいつも研修やセミナーで、「相手は基本的にあなたの文章を読みたいと思っていません」という話をしています。読みたくないものを読んでもらうには、そこには何らかの工夫が必要なのです。それが、「ストレスなく読んでもらうための書き方」だと私は思っています。


ビジネスにおける「上手な文章」とは、読み手への配慮がある、極力ストレスを感じさせないような文章です。そうした文章であれば、伝えたい内容が相手に正しく届きやすくなるでしょう。


―― 上手な文章を書けるようになると、ビジネスにおいてどんなメリットがありますか?


赤羽:先ほど「読み手への配慮」とお伝えしましたが、相手に配慮することはコミュニケーションの基本です。書くことはコミュニケーション手段のひとつなので、書くスキルを向上させることでお客様と意思疎通を図りやすくなり、社内での業務推進力も高まるでしょう。あらゆる対人業務が円滑に動きやすくなります。


多くの仕事において、「コミュニケーションが全くない」という状況は考えにくいですよね。最近は電話で報告や連絡をする場面が減り、メール、チャット、LINEといったツールを使って文字で伝えるケースが増えていると感じます。つまり、ビジネスの中で文章を書く機会が増えているんです。そういった意味では、以前に比べて「書くスキル」の価値が相対的に上がっていると言えるのではないでしょうか。


―― チャットなどでやり取りするケースは確実に増えていそうですね。


赤羽:ビジネスにおいて、相手に上手く伝わるか伝わらないかの違いは相当大きいですよね。お客様に提出した企画書の内容次第で、受注成果は変わってきます。社内でも、稟議書が中々通らなければ、プロジェクトが進捗しないかもしれません。ライターという職種でなくても、文章力は業務を推進する上で必要なスキルだと言えます。

丁寧すぎるのも良くない?「相手との距離感」も配慮する


―― 「書くスキル」は、成果や評価に直結するのでしょうか?


赤羽:例えば、お客様にメールを送るとします。その文章があまりに稚拙だったり、誤字脱字がいくつもあったり、何の配慮もないような文章だったりした場合、相手はどう思うでしょうか?「この会社と契約して大丈夫なのか?」と不安にさせてしまうかもしれませんよね。こうしたリスクは、売上に直接響くことになります。


営業職の場合、お客様と直接話すことの方が多いとは思いますが、メールや手紙など文章で伝える場面はたくさんあります。そういった状況では、どんなに話が上手でも、文章の書き方次第で相手に誤解や不信感を与えてしまいかねません。


丁寧に仕事をする人の文章はやはり丁寧ですし、いい加減な仕事が多い人はその「いい加減さ」が文章にも表れます。文章は人格がそのまま出てしまうものなのです。そういった点でも、「書くスキル」が仕事での成果や評価に及ぼす影響は大きいのではないかと思います。


―― 人格というお話がありましたが、メールなどを読んでいると「丁寧すぎる表現」が気になることがあります。これも、人格が出ているということなのでしょうか?


赤羽:ビジネスパートナーへの敬意から、「努めて丁寧に対応したい」という人もいるでしょう。しかし実際は、送り手が相手との距離感を誤ってしまっているケースのほうが多い気がします。初対面でいきなりフランクなメールを送る人は少ないと思いますが、何度も会っている相手にガチガチの敬語で固めた文章しか書けないのも、あまり良くないですよね。どちらの場合も読み手にストレスを与えてしまいます。


―― 例えば、どういう書き方が望ましいのでしょうか?


赤羽:最初に送るメールは、冒頭に相手の会社名、部署、肩書、名前をフルセットで書く場合が多いと思います。これが何度かやり取りをする中で、会社名や肩書が外れて「○○様」だけになったりします。目上の方から届くメールでは、「様」が「さま」や「さん」になることもあるでしょう。こういった変化は、「心理的なハードルを下げてもっと踏み込んだコミュニケーションをしましょう」というサインです。それに気づかず、いつまでも堅苦しいメールばかり送っていると、相手から「気持ちが通じない人」ととらえられかねないでしょう。

「読まれ方」を考えれば、アウトプットが変わってくる


―― 「距離感」以外に、気を付けたいポイントはありますか?


赤羽:ビジネスメールで、「よろしくお願いいたします」といった表現をよく使いますよね。これを見て、「自分は何をどうすれば良いの?」と思ったことはありませんか?「よろしくお願いいたします」というフレーズはビジネスメール上の挨拶のようなものですが、これ以外にも日本語では主語が省略されることも多く、曖昧な表現になりがちです。対面や電話であれば雰囲気で察することもできますが、文字情報だけの場合は「読み手がどう受け止めるか」に対して書き手が想像力を最大限に働かせる必要があります。


―― 想像力を働かせないと、意思疎通が上手くいかない状態になるわけですね。


赤羽:重要なのは、文字情報は「誤解されやすい」という心構えを持つことです。メールの場合、「本当はこう伝えたかったんです」というように、すぐにフォローすることはできません。送信ボタンを押した瞬間から、“独り歩き”を始めてしまうのです。ですから、読み手が解釈を間違わないようにあらかじめ注意しながら書く必要があります。


―― 書くことが苦手な人にとっては、相手に配慮する余裕がないかもしれません。


赤羽:それはあるかもしれませんね。ただ、「書き方」ではなく「読まれ方」を考えることは、文章を書く上で非常に重要なポイントです。相手がそのメールをいつ読むのか、どんな状況で読むのか、どんな疑問を持ちそうか。こういった点を先回りして考えることができれば、メール以外のコミュニケーションでも困ることはないと思います。


―― やってはいけないNG例などはありますか?


赤羽:メールを送るタイミングも重要で、これを考えないと思わぬトラブルにつながりかねません。たとえば月曜日は要注意です。相手が忙しい方であればあるほど、週明けに届くメールは大量になります。確認が必要な提出物は、メールラッシュの時間を避けるなどの配慮があると良いですね。


それともう1点、スマートフォンで読まれる可能性が高い文章の場合は、改行も意識しましょう。スマホはPCほど横幅が広くないので、「適度な改行」のつもりが、かえって「不自然な改行」になってしまうことがあります。一文が完結するまで改行しないほうが、スマホ画面では読みやすいですね。話題が変わる箇所は、1行空けるとさらに読みやすくなるでしょう。


―― メールでは、タイトル(件名)の付け方も重要だと言われますよね。


赤羽:そうですね。メールでは、件名を見て自分に関係があると思ってもらうことが極めて重要です。自分と関係がなさそうと思われてしまうと読んでもらえません。「メールを開いてもらえるかどうか」は、最初の5~6文字でほとんど決まるものと考えましょう。伝えたい要素をすべて入れた結果、「件名がとても長くなってしまう」というのは良く聞く話ですが、「読まれ方」を考えればアウトプットが変わってくるはずです。

文才は不要。「上手な文章」に必要な3要素とは?


―― 書くのが苦手な方の多くは、「自分には文才がない」と思っている気がします。「書くスキル」を磨くにはどうしたら良いでしょうか?


赤羽:私はそもそも、実用文(ビジネス文書)を書くのに文才は必要ないと思っています。実用文を書くのに必要なことは、「コツ」「言葉の貯金」「観察」の3つです。


1つ目の「コツ」は、テクニックに関するもの。2つ目の「言葉の貯金」は、語彙力ですね。語彙力がなければ、頭の中のイメージを適切な言葉に置き換え、相手に伝えることができません。3つ目の「観察」は、相手が何を求めているかを推し量る力です。この3つが揃えば、誰でも「上手な文章」が書けます。


―― まず、1つ目の「コツ」に関して、覚えておきたいテクニックはありますか?


赤羽:一文が長いと正しく伝わらない恐れがあるので、一文は長くても40~60字以内が良いですね。また、伝えたいという気持ちが強いほど長々と書いてしまいがちですが、読み手にとって「長文を読まされる」ことは負担です。実用文ではムダを省き、短く書くことを意識しましょう。同じように、重複を省くことも大切です。「~することで」や「~しました」など同じ言葉や表現が繰り返される文章は、煩わしく感じますよね。この煩わしさも、読み手へのストレスを増加させます。


また、抽象的な表現の多用も避けましょう。「すごい」「素晴らしい」など書き手の主観に基づく表現が多すぎると、書いている本人はわかっていても読み手にとってはわかりにくいものです。これらを控えた具体的・客観的な文章になっていれば、読み手にとってストレスの少ない「上手な文章」と言えます。


―― ほかにも、「書くスキル」を磨くために効果的なトレーニング方法はありますか?


赤羽:2つ目の「言葉の貯金」を増やすためにオススメなのが、「新聞の朝刊の一面コラムを書き写す」というワークです。学生時代に経験がある方もいるでしょう。朝日新聞なら「天声人語」、日経なら「春秋」といったように、朝刊の一面の下のほうには600字くらいのコラムがあります。これを毎日、ノートや原稿用紙に書き写すトレーニングです。


―― コラムの書き写しだけで語彙力が増えていくのでしょうか?


赤羽:そうですね。このワークでは、読んで書き写す、つまりインプットとアウトプットを繰り返していきます。丁寧に「読んで書いて」を繰り返すうちに、頭の中のデータベースが豊かになっていきます。その結果、目の前にある文章の良し悪しはもちろん、「こういう場面では、こんな言い方をする」「こういうときは、この言い方をしてはいけない」といった判断が的確にできるようになってきます。知識としての語彙力ではなく、実際に「使える」語彙力を高めていけるのです。


コラムを書き写すのにかかる時間は、20分程度。ビジネスパーソンにとって上手な文章を書くということは、前述のとおり成果や評価に及ぼす影響も大きいです。1日20分という時間を今後の自分のために使うと思えば、良い投資と言えるかもしれません。


―― 「コツ」「言葉の貯金」「観察」の3つを身に付けて、「書くスキル」を仕事で武器にできたら良いですね。


赤羽:文章力アップの決め手になるのは、先ほど触れた頭の中のデータベースです。書くときはもちろん、話す、読み解く、考える――すべての場面でフル回転する必要があります。一流のビジネスパーソンを目指すのであれば、このデータベースのバージョンアップが不可欠です。


文章が苦手という弱点は、仕事で悩みの種になりやすい問題と言えます。ですが、「上手な文章を書こう」と思いすぎるのではなく、「相手に伝わる文章を書こう」と思うようにすれば、少し気が楽になるのではないでしょうか。トレーニングを始めることによって、苦手意識が変わっていくかもしれません。



取材・文:C-NAPS編集部

 

取材協力:赤羽 博之

 

耕文舎 代表

1956年、神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学を卒業後、出版社勤務などを経て99年にフリーランスの編集者として独立。2002~08年には、イオンカード会員向け月刊生活情報誌「mom」編集長を、2008~12年には「nikkei net」(現:日経電子版)企画制作ディレクターを務めた。2007年から文章力アップ研修・セミナーの講師として活動している。


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