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内向的な性格でも営業成績を上げるアイスブレイクとは〜無口なまま営業達成率全国トップになった、サイレントセールストレーナー・渡瀬謙さんが説く〜

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「初対面の相手と話すときに緊張してしまう」「流暢に話すことができない」「お客様の顔色ばかりうかがってしまう」。こういった内向的な性格を変えたいと思っている営業パーソンは多いのではないだろうか。自信を持って営業トークを展開し、堂々とクロージングまで導く営業パーソンを目指して、ロールプレイングを繰り返している新社会人も多いだろう。


しかし、「サイレントセールストレーナー」の渡瀬謙さんは「内向的な性格を直す必要はない」どころか、「今は内向型の営業パーソンにとって、追い風が吹いている」とも語る。渡瀬さんは無口な営業スタイルで、大手企業在籍時に、営業達成率全国トップになった実績がある。


さらに、そのノウハウをビジネス書『内向型営業マンの売り方にはコツがある』として出版、研修プログラムをつくり体系化し、多くの内向型の営業パーソンの成績を上げている。銀行や保険会社などの金融業界や大手事業会社など、さまざまな業界の企業から営業研修の依頼が舞い込んでいると言う。


なぜ内向型の営業パーソンにとって、今は有利な時代だと言えるのか。そして、成果を上げるための鍵となる「アイスブレイク」とはどのように行うのか。サイレントセールストレーナー・渡瀬さんに、「自分を偽らずに営業成績を上げる方法」について解説いただいた。

物が溢れ、営業が警戒される今、内向型の営業パーソンにとって追い風が吹いている


―― 渡瀬さんは2005年頃から、しゃべらないからこそ売れる「サイレントセールス」という手法を提唱されています。あれから15年ほど経ちましたが、内向型の人にとって営業はしやすくなっているのでしょうか?


渡瀬さん(以下、敬称略):内向的な営業パーソンにとって、追い風が吹いていると言えるでしょう。今は商品やサービスが数多くある時代です。例えば、目の前にあるコップのような商品にしろ、飲食店といったサービスにしろ、探そうと思えばたくさん見つかりますよね。


―― 比較検討もネットを使えば簡単にできるようになりました。


渡瀬:そうなんです。物が溢れている現代では、お客様は吟味してから買いたいと思うようになっています。ほかにも、お客様には変化が起きています。「営業への警戒心」が強まっているのです。


―― なぜ「営業への警戒心」が強まっているのでしょうか?


渡瀬:それは、詐欺や低品質な商品によって、お客様が「騙された」「期待を裏切られた」と感じることが増えたからだと言えるでしょう。経済が伸びていて、商品もサービスも不足していた時代は、「強引にでも売る」ことができてしまっていたんです。その結果、悪質な営業から商品を買ってしまったお客様も増えていき、「営業の言うことを信じて買ったら低品質な商品だった」という状況になってしまいました。そこから「良さそうに見えるけれど、もしかしたら危ないかもしれない」と、お客様も営業に対して警戒心を抱くようになっていきました。


―― 商品やサービスの良し悪しを見極めるのは難しいですよね。


渡瀬:騙す側のテクニックも高度化していますしね。これだけ詐欺が横行していても騙されてしまうことがある。詐欺までいかなくても、誰しも「期待していた効果を得られない」ということは避けたいですよね。うまい話には裏があるという言葉もあります。だからこそ、お客様は物を買うことに慎重になっていますし、話がうまくて勢いのある営業に対する警戒心が高まっているのです。


――では、お客様はどういう営業パーソンを求めているのでしょうか?


渡瀬:シンプルに信頼できる人です。以前は「話がうまくて明るくて面白い人」が結果を出しやすかったのですが、今のお客様はそういった人を「うまいことを言って売ろうとしている人」として警戒することもあります。ですから、それとは真逆の「物静かで強引に売らない人」「営業っぽく見えない人」が信頼されるようになってきています。これは内向型の営業パーソンの特徴とも言えます。


―― 内向型の人は「営業っぽく見えない」ということですか?


渡瀬:そうですね。内向型の営業パーソンは「強引に売る」ことが苦手であり、「本当に相手にとって役に立つものでないと、オススメもしない」というような慎重な性格の方が多いです。見た目も落ち着いている方が多く、多くを語りません。慎重になっているお客様に信頼されやすい性格と外見を、すでに持っていると言えるでしょう。

アイスブレイクとは「お客様に話してもらうこと」であり、面白いことを話すことではない


―― 結果を出している内向型の営業パーソンは、今の「警戒される時代」においてどんなことをしているのでしょうか?


渡瀬:いわゆる「アイスブレイク」をして、お客様の警戒を解いています。アイスブレイクとは、その場の空気を温めるためのコミュニケーション術のひとつです。商談のときには、お客様と雑談をして、呼ばれたときにだけ伺います。お客様の立場になってみると、積極的に売ろうとしてくる営業よりも、「必要なときにだけ売りに来てくれる営業」の方が良いですよね。


―― 内向型の人にとって、無理に売らなくて良い営業は向いていそうです。


渡瀬:私が研修で指導していたときに、700人の営業パーソンの中で成績がずっと最下位で、上司からも「もう辞めた方が良い」と言われていた人がいました。でも、彼は内向型の性格は変えずにアイスブレイクの仕方を変えたことで、営業成績ベスト10をキープし続けるほどになりました。今では彼自身もアイスブレイクの重要性を説いています。


―― どんなアイスブレイクをしていたのでしょうか?たとえ内向型でなくても、初対面のコミュニケーションは緊張してしまいます。


渡瀬:「話すよりも人の話を聞くことが得意な性格」を生かして、お客様に話をしてもらうアイスブレイクです。内向型の人は自ら話をするよりも、相手の話を良く聞いています。大人数の飲み会や集まりが苦手な人が多い印象ですが、その理由は「人の話を聞きすぎてしまうから」とも言えます。「すべての人の話を聞かないと、失礼なのではないか」と考えすぎてしまうんですよね。


―― 内向型の人は普段から「話を聞くこと」を当たり前にしているんですね。


渡瀬:お客様が「この営業パーソンは信頼できる」と判断するタイミングは、「この人は話を聞いてくれているな」と思えたときなんです。反対に信頼を失ってしまうのは、同じことを何度も質問されたり、会話がうまく噛みあっていなかったりするときです。内向型の人は、相手の言葉の端々まで聞いている人が大半です。この性格は「営業が警戒されている」現在において、お客様と信頼関係を構築するために必須とも言える性格なのです。

アイスブレイクでお客様に話してもらうコツは、「距離の近いことから聞く」こと


―― 内向型の性格が、お客様の警戒心を解く鍵になることがわかってきました。アイスブレイクの際に、お客様に話していただくにはどんなコツがあるのでしょうか?


渡瀬:まずは、お客様が知っていることを質問することです。誰でも、初対面の人の頭の中はわからないですよね。だから緊張してしまうんです。相手がどんな人なのかわからないから、何を聞いて良いかもわからず困ってしまう。ですが、難しい質問ではなく、相手が答えやすいことを聞けば良いんです。


―― 具体的にはどんな質問をすれば良いのでしょうか?


渡瀬:大原則として「お客様の距離が近いことから質問すること」です。初対面のお客様から受け取れる情報で、最も距離の近いものは名刺です。私は名刺をいただいた後に、相手のお名前をフルネームで読み上げるようにしています。人によっては、漢字や読み方が珍しかったりもしますよね。


―― 珍しいお名前の場合、もし読み間違えてしまったら、失礼にならないでしょうか。


渡瀬:間違えて読んでしまったり、つかえたりすることもあるかもしれませんが、そこで怒られることはないですよ。もし珍しい読み方の場合は、相手も「こう読むんですよ」と教えてくれます。こうして自然な会話が生まれるようになるんですよ。


―― 「〇〇さんと読む方に、初めてお会いしました」と、こちらも自然に続けられますね。


渡瀬:「実家の〇〇県では多いみたいですよ」など、お客様も自分がよく知っていることなので話をすることができます。このようにして「お客様の距離が近いものから質問する」ことがアイスブレイクにつながります。決して「面白いことを話す」や「元気良くあいさつする」ことではないのです。

慎重な性格を生かして観察しよう。駅とオフィスまでの道のりに「話のネタ」は落ちている


―― お名前だけだと話が広げづらい場合はどうすれば良いのでしょうか?


渡瀬:内向型の人は特に「こうなったらどうしよう」と考えますよね。その性格も生かすことができます。私も研修で指導するときには「お客様と距離が近いものを3つ用意しておきましょう」と伝えています。


―― 名前の他にもお客様が自然と話してくれるネタはあるのでしょうか?


渡瀬:ここも原則として「お客様と距離が近いもの」を選びます。オフィスの内装や、駅からオフィスまでの道のりにあるものをヒントにします。例えば、オフィスであれば内装で気を使っているところや、駅からの道のりで行列ができているお店はないかなどです。


―― 「働きやすそうなオフィスですね」や「あのお店には社員の方はよく行くんですか?」と質問を投げかけやすいですね。


渡瀬:そうです。観察することが大切なのです。内向型の人は心配性でもあるので、アポの時間もギリギリではなく余裕を持って移動する方が多いです。時間の余裕を生かして、お客様のオフィスの周りを一周してみるとアイスブレイクにつかえるネタが見つかりやすくなりますよ。


―― 話す内容がいくつかあると緊張も解けますね。


渡瀬:3つほど用意しておくと良いですね。お客様のお名前、オフィスの中、オフィス周辺のお店などです。「お客様からの距離が近い順から話そう」と決めておくと、初対面の緊張は和らいでいきます。


―― アイスブレイクは、相手から多く話してもらうことを重視すると良いんですね。


渡瀬:そうですね。営業が警戒される今の時代においては、内向型の性格を変えずに生かすことを考える方が営業成績を上げることができます。過去のように「強引にでも売る、自分を偽って物を売る時代」ではありません。小さな一言も聞き逃さない、慎重であるという内向型の性格は、実はお客様から信頼される営業の特徴でもあります。
まずは「自分を変えよう」からではなく、「自分の性格を生かしていこう」と頭を切り替えることをオススメします。


取材・文:佐野創太

 

取材協力:渡瀬 謙

 

サイレントセールストレーナー / 有限会社ピクトワークス 代表取締役

1962年、神奈川県生まれ。小さい頃から極度の人見知りで、小中高校生時代もクラスで一番無口な性格。明治大学卒後、一部上場の精密機器メーカーに営業職として入社。
その後、株式会社リクルートホールディングスに転職。社内でも異色な無口な営業スタイルで、入社10カ月目にして営業達成率全国トップになる。1994年に有限会社ピクトワークスを設立。広告や雑誌制作などを中心にクリエイティブ全般に携わる。その後、事業を営業マン教育の分野にシフト。内向型で売れずに悩む営業マンの育成を専門に、「サイレントセールストレーナー」として、全国でセミナーや講演などを行い現在に至る。

 

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