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免疫力を高めるには?意外と知らない免疫力との正しい向き合い方を、医者YouTuber「ドクターハッシー」が分かりやすく解説!

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「身体が資本」はすべての人に当てはまる言葉ですが、とりわけ「働き盛り」と言える20代や30代のビジネスパーソンにとっては、心身の健康が仕事のパフォーマンスにも大きく影響を与えます。新型コロナウイルスの影響から世の中の健康意識が高まっている一方、酷暑がもたらす熱中症や冷房病(クーラー病)などによる体調不良や不安を感じている人も少なくないでしょう。


今回のテーマは「免疫力」。そもそも免疫力とはどういうもので、どういった状況で高くなったり低くなったりするのか。免疫力を上げる方法はあるのか。そして、食事や運動によって免疫力は高められるのか――。現役の内科医として診療を行い、医者YouTuberとしても活躍する「ドクターハッシー」こと橋本将吉先生に、お話をうかがいました。

免疫力を高める方法は存在しない!? 「免疫力」とは何かを解説


―― 免疫力を高めるにはどうしたら良いのかを知りたいのですが、初めに「免疫」とは何か教えていただけますか?


橋本さん(以下、敬称略):免疫には実体がないので、理解しにくいですよね。免疫力とは体内にウイルスや細菌、毒素などの異物が侵入した際に、それに抵抗して打ち勝つ力のこと。病原体や異物が体内で悪さをしないように、フィルターの役目を果たしてくれるものです。これらと戦ってくれるのが白血球で、免疫力は“白血球の戦闘力”と言い換えられるかもしれません。免疫力には、大きく「自然免疫」と「獲得免疫」の2種類があります。


「自然免疫」は、侵入してきた異物や異常状態になった細胞をいち早く感知してそれを排除するという、私たちが生まれながらに持っている仕組みです。それに対して、一度感染した病原体を見分け、記憶することで再び同じウイルスや細菌が体内へ入ってきたときに早く退治することができる力を「獲得免疫」と言います。この2つの免疫を通して、体調不良の原因となる新型コロナウイルスやインフルエンザウイルス、アデノウィルス、ノロウイルスなどから身体を守っているのです。


先ほど「免疫には実体がない」とお話ししましたが、そもそも「免疫力」という言葉自体が医学用語ではないんですよね。


―― 「免疫力」は、医学用語ではないんですか?


橋本「免疫力」は、マスコミが一般の視聴者に対して分かりやすく説明するために作った概念のようなものです。血液中の白血球の数などを免疫力の指標にすることはありますが、免疫の仕組みはとても複雑に絡み合っているので、一つの指標だけで測れるものではありません。


―― 一般的に「免疫力を上げる(下げる)」といった言い方をしますが、免疫力はどういったときに高くなり、どういったときに低くなるのでしょうか?


橋本:実は、「免疫力を高める方法」というのは存在しないんです。


―― どういうことでしょうか?


橋本:「免疫力を高める方法がない」というより、「『免疫力が高まった状態』を調べようがない」と言ったほうが正確でしょうか。


医学的な見地から何かを言う場合には、「エビデンス(根拠)」が欠かせません。エビデンスを作るためには、例えば100万人を集めていろいろな菌を感染させ、免疫力が高かった被験者の生活習慣とそうでない被験者の生活習慣を比べる――といったことをする必要があるのですが、こういった試験をすること自体、現実的ではないんですよね。また、それぞれの被験者が申し出ている生活習慣、例えば喫煙習慣などが本当かどうかを実際に調べることも難しく、ただでさえ免疫力にはそれ以外にもいろいろな条件が複雑に絡み合っているので、「免疫力を高める方法」や「免疫力が高まっている事実」を証明する手段が今のところないのです。


ただ、逆に「どういったときに免疫力が低下するのか」についてはたくさん論文などのエビデンスがあります。なぜエビデンスがあるのかというと、人々が風邪を引いたり感染症にかかったりする状況に共通点を見出せるからです。健康な(免疫力が高い)状況で検査をする人はあまりいないと思いますが、免疫力が下がって体調不良になった人に対しては病院やクリニックでいろいろな検査ができるので、データを集めやすいという側面もあると思います。


――免疫力が下がる条件があれば教えてください。


橋本栄養バランスの偏り、加齢、喫煙、飲酒、過度な運動、持病、一部の内服薬など、エビデンスがあるもので7~8個あります。
飲酒に関しては、少し前まで「酒は百薬の長」と信じられてきましたが、最近では「適度な飲酒でも免疫力にとっては良くないかもしれない」ということが、研究によって明らかになってきました。


では、なぜ「酒は百薬の長」と言われてきたのか。まず、お酒を飲むと心臓がドキドキしますよね? これは、アルコールによって血管が広がり、血流が良くなるから。血流が良くなる作用は動脈硬化に効果があるのではないか、という説があるのです。しかしその一方で、アルコールが分解されてできるアセトアルデヒドという物質によって、さまざまながんのリスクが上がることが分かってきました。「お酒が動脈硬化を予防する」というのはエビデンスとして弱く、加えて動脈硬化予防に関するメリットと、がんに関するデメリットを比較するとデメリットのほうがはるかに大きかった、という話です。


アセトアルデヒドは喉にも悪影響を及ぼしますし、酔っぱらって口を開けて寝てしまうと粘膜や唾液の機能が弱まって風邪を引きやすくなります。お酒に免疫力を下げるリスクがあるということは、覚えておいていただきたいですね。

誤解しがちな「食事」「運動」と免疫力の関係


―― 先ほど「免疫力を高める方法はない」とおっしゃっていましたが、いわゆる「これを食べれば免疫力が高まる」と言われている料理や食材なども、免疫力アップにつながるわけではないのでしょうか?


橋本:それも判断が難しいところなんです。例えば、「ピーマンが免疫力を上げる」という仮説があったとしましょう。しかし、ピーマンだけを被験者にずっと食べ続けさせてエビデンスを取ることができるかというと、それは難しい。「ピーマンをいっさい食べない」という被験者群を作っても、その人が他の食べ物で免疫力を補ってしまう可能性があると、正確な比較はできなくなります。


―― つまり、「食事によって免疫力は高まるかもしれないが証明はできない」ということですね。


橋本:その通りです。ただ、エビデンスではなく経験に基づいた東洋医学的な考え方から、私は患者さんや視聴者の方に対して「旬のものを食べましょう」とお話ししています。「旬のもの」というのは、その時期に採れる野菜や果物などです。例えば、夏になるとスイカを食べたくなりますよね。スイカはとても水分が多く、食べることで熱中症の予防につながります。こうした旬のものを旬の時期に食べれば、そのときに必要なエネルギーが体内に入ってくる――といったイメージです。夏はスイカやキュウリ、パイナップル、ゴーヤなど。秋口になったらイモ類、冬は葉物野菜やダイコン、ゴボウ、ニンジンなどの根菜を食べると、免疫力が下がりにくくなると思います。


先述したように、栄養バランスの偏りは免疫力を低下させる原因になり得ます。いくら仕事が忙しくても、常にバランスの取れた食事や正しい食生活を意識することは重要です。


―― 「運動」は免疫力と関係があるのでしょうか?


橋本:皆さんの中には、「免疫力を高めるために運動をしている」という人もいるかもしれません。運動不足が免疫力を下げる可能性については医学の世界でもいろいろと言われていますが、実はそれほど強いエビデンスがあるわけではないんです。むしろ、本当に良くないのは運動の「やり過ぎ」。運動のやり過ぎは免疫力を下げると言われていて、こちらに関しては数多くの論文が発表されています。


―― 「免疫力を高めるために、たくさん運動すれば良い」というわけではないんですね?


橋本:意外に思われるかもしれませんが、「逆」なんですね。私たち人間は、食事からいろんなエネルギーを摂取しています。そしてそのエネルギーは、運動によって消費されます。例えば、100あったエネルギーのうち激しい運動によって95を使ってしまったとします。そうしたら、身体にはウイルスや細菌などと戦うための力が5しか残りません。これが免疫力の考え方です。エネルギーが50ある人と5しかない人、どちらが感染症などにかかりにくいでしょうか?


―― 50ある人、でしょうか。


橋本:そうです。もしかしたら、運動会やマラソン大会の次の日に風邪を引いてしまった経験がある人もいるかもしれません。あれは、激しい運動でエネルギーを使い過ぎてしまい、ウイルスや細菌と戦う力、つまり免疫力が弱くなってしまった結果なのです。


ただし、「運動しないほうが良い」というわけではありません。免疫力を維持するためには、適度な筋肉が必要です。「筋肉はパワーを出すためのもの」と思われるかもしれませんが、筋肉の中にはエネルギーがたくさん蓄えられています。エネルギーの貯蔵庫のようなイメージでしょうか。そしてもう一つ、筋肉自体がエネルギー源(たんぱく質)であるという点も見逃せません。適度な筋肉があれば、身体に何らかの問題が発生したときに筋肉の中に蓄えられたエネルギーを取り出したり、筋肉自体(たんぱく質)を分解してエネルギーに変えたりすることができます。

気を付けたいNG行動と、免疫力を維持するポイント


―― 20代や30代の「働き盛り」なビジネスパーソンは、パワフルに働いたり遊んだりする中で無理もするでしょうし、夜更かしすることも少なくないと思います。そういった状況だからこそ、免疫力を維持するポイントや気を付けておきたいことはありますか?


橋本:今で言えば、新型コロナウイルスにかからないよう注意すること。これが一番です。手を洗う、室内をこまめに換気する、“3密”を避けるなどの対策を取って、感染リスクをできるだけ減らしてください。


新型コロナウイルス以外で言えば、適切な生活習慣を心がけることですね。仕事が楽しいと、つい夜遅くまで続けてしまったり、休日もパソコンに向かってしまったりするかもしれません。しかし働けば働くほど、あるいは夜更かしをすればするほど、食事の内容や睡眠のリズムは乱れていきます。重要なのは、仕事に生活習慣を合わせるのではなく、「ベースとなる生活習慣に合わせて仕事をする」ことです。


全力で「あれもやりたい」「これもやりたい」という生活を続けると、エネルギーがなくなって免疫力が低下する原因になります。ある程度ストレスのない生活習慣を整えた後で、やりたいことをやる。このように時間のサイクルをうまくマネジメントすることが、すごく大事だと思います。


―― ストレスも免疫力を低下させる原因になるのでしょうか?


橋本:メンタルは免疫力に大きく影響します。「鬱病が心筋梗塞につながる」という論文もあるくらいですが、精神的な不調は免疫にとっても良くありません。その点でも、生活習慣を整えることと適度な運動は重要です。


運動と聞くと「一日中デスクワークなので運動する時間がない」という声が聞こえてきそうですが、別に「走り込みをしろ」などと言っているわけではありません(笑)。ポイントは、あくまで「適度」な運動。エレベーターを使わずに階段を使う、休憩時間にストレッチをする、といったことから取り組んでみてください。コンビニでランチのお弁当を買っている人は、通勤時についでに買っておくのではなく、ランチタイムに買いに行くようにしましょう。そうすれば、運動の機会がおのずと増えるはずです。


―― そのほかにNG行動はありますか?


橋本:お酒好きの私が言うのもなんですが、「飲みすぎ」ですね(笑)。アルコールには利尿作用があります。特に夏は体温を下げるために汗をかくので、多くの水分がなくなっていきます。体内の水分が減ると疲れやすくなるため、しっかり水分を摂らなければなりません。


「どのくらい水を飲むべきか」には個人差がありますが、判断材料の一つに「脇汗」があります。体内の水分が足りなくなると、脇汗をかかなくなります。これは相当な脱水状態です。また、尿の色でも脱水状態を推し量ることができます。水分が足りていないと黄色、水が足りていると透明に近い色になるので、お手洗いに行った際に確認してみましょう。


―― 免疫力を維持するためには、「バランス」が大事ということですね。


橋本:そうですね。心身に負担を強いる行為は免疫力の低下につながります。自分に合った時間の使い方ができれば、仕事への集中力も高まり、精神的に疲弊することもなく、免疫力も維持しやすくなるので、ぜひ心がけてみてください。



 

取材・文:C-NAPS編集部

 

取材協力:橋本将吉(はしもとまさよし)

 


杏林大学医学部医学科を卒業。2011年に株式会社リーフェを設立し、医大生向けの個別指導塾「医学生道場」の立ち上げや、健康情報の発信を通した啓蒙活動に力を入れる。実際に内科医として診療を行う一方で、医学生道場にて医学生の指導を行いつつ、YouTuber「ドクターハッシー」としての顔も持つ。

WEB:https://li-fe.tokyo/
Twitter:@karada_plan

 

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