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「SDGs」とは?言葉の意味と、いま日本でSDGsに取り組む企業が増えている理由を解説!

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ここ数年、「SDGs」への注目度が高まり、新聞やテレビ、インターネットメディアなどでも頻繁に報道されています。しかしその一方で、「詳しい内容は知らない」という人も多いのではないでしょうか?日本における直近のSDGs認知度調査 (2020年2月実施)では、「言葉を聞いたことがある」と回答した人は過去最高の数値を記録したものの、全体の32.9%にとどまりました。さらにSDGsの内容について「詳しく知っている」と回答した人は18.0%と、少ない結果に留まっています。


「SDGs」の本質を正しく理解するためには、他人事ではなく「自分事」として向き合うことが一番の近道です。今回は、情報サイト「SDGs media 」を運営し、SDGsコンサルタントとして企業・団体の社会的課題解決に取り組んでいる株式会社Dropの玉木巧さんに、SDGsの概要やビジネス・働き方にどう関係しているかについてうかがいました。

「SDGs」は国連加盟国が満場一致で賛成した、世界が注目するテーマ


―― 「SDGs」とは何ですか?言葉の意味を教えてください。


玉木さん(以下、敬称略):すごくシンプルに言うと、「世界を2030年までに変革するための国際的な目標」です。SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の頭文字を取った言葉で、「エスディージーズ」と読みます。言葉の意味や取り組みを理解する前に、まずは「なぜSDGsが誕生したか」という背景を知っていただきたいですね。今、世界の人口はどのくらいかご存じですか?


―― 70億人くらいでしょうか?


玉木:現在、およそ77億人とされています。私が生まれたのが約30年前で、その当時は約50億人でした。この30年間で、実に20億人以上も増えているんです。そして今から30年後の2050年には、100億人近くになるとも言われています。こうした人口の爆発的増加によって問題となっているのが、森林の伐採、ゴミの発生、化石燃料の使用などにともなう二酸化炭素の大量排出です。また、現状では地球1個分の資源の生産量に対して年間1.7個分を消費しているという報告もあり、このままの生活を続けていくと地球が限界を迎えてしまうでしょう。


さらに環境問題だけでなく、感染症による健康被害や人権侵害などの社会課題も数多くあります。社会課題に無関心でいることは、ビジネスにも影響を及ぼすため、経済問題もこれらと無関係とは言えません。こうしたさまざまな課題が山積した状況から、「豊かな生活を持続することが難しくなる」という危機感が世界中に広まりました。そして、「この先どのように課題を解決していけば良いのか」というところから誕生したのがSDGsです。


―― SDGsは、2015年9月の国連総会で採択されました。


玉木:国連加盟国は全部で193か国あります。これまで国連総会ではさまざまな議題が話し合われてきましたが、史上初めてすべての加盟国が満場一致で賛成したのがSDGsです。それだけ各国の注目度や危機感が高いテーマだと言えるでしょう。


SDGsは、2016年から2030年までの15年間で世界を変えるために取り組むべき国際目標で、「17の大きな目標」と「169のターゲット(と呼ばれる課題)」で構成されています。

SDGs 17の大きな目標

  • #1 貧困をなくそう
  • #2 飢餓をゼロに
  • #3 すべての人に健康と福祉を
  • #4 質の高い教育をみんなに
  • #5 ジェンダー平等を実現しよう
  • #6 安全な水とトイレを世界中に
  • #7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに
  • #8 働きがいも経済成長も
  • #9 産業と技術革新の基盤をつくろう
  • #10 人や国の不平等をなくそう
  • #11 住み続けられるまちづくりを
  • #12 つくる責任つかう責任
  • #13 気候変動に具体的な対策を
  • #14 海の豊かさを守ろう
  • #15 陸の豊かさも守ろう
  • #16 平和と公正をすべての人に
  • #17 パートナーシップで目標を達成しよう


―― 2030年というと、あと10年ですね。各国で「17の大きな目標」に対する優先順位は異なると思いますが、日本におけるSDGsの達成状況はどうなのでしょうか?


玉木:毎年6月にSDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)という団体が、世界各国のSDGs達成度ランキングを発表しています。最新ランキングにおいて、日本は166か国中17位。順位を見るとまずまず順調だと思うかもしれませんが、それでも全体的に遅れており、課題は山積みです。


17の大きな目標のうち特に日本で課題とされているのが、「ジェンダー平等を実現しよう(#5)」について。「気候変動に具体的な対策を(#13)」、「海の豊かさを守ろう(#14)」、「陸の豊かさも守ろう(#15)」、「パートナーシップで目標を達成しよう(#17)」などの項目でも、遅れが見られます。「ジェンダー平等を実現しよう(#5)」については、「女性の役員や管理職が非常に少ないこと」「同じ仕事をしているのに男女で同等の賃金が支払われないケースがあること」などが課題の一例です。SDGsの世界ランキングでは17位でしたが、各国における男女格差を測る指標「ジェンダー・ギャップ指数」(2019年12月に世界経済フォーラムが発表)では153か国中121位と、かなりの後進国です。まずは私たち個人や企業がこうした事実に当事者として目を向けて、変えていく努力をしなければなりません。


――日本でSDGsに対する注目が高まってきたきっかけや流れを教えていただけますか?


玉木:国連総会で採択された当初、日本でSDGsの取り組みは浸透していませんでした。転機となったのは、2017年11月。日本を代表する1400以上の企業で構成されたビジネス団体である経団連(日本経済団体連合会)が企業行動憲章を7年ぶりに改定し、その中に「SDGsの達成に大いに貢献する」という内容が盛り込まれたのです。


それまでは、SDGsにほとんど取り組んでいない経団連企業もありました。しかし、所属団体が目標に掲げた以上、取り組まないわけにはいきませんよね。ここから、まずは大企業を中心にSDGsへの取り組みが盛んになっていったという経緯があります。

日本経済・社会に起こった確かな変化とユニークな取り組み


―― 日本でも大企業を中心にSDGsに取り組む企業が増えたことで、経済に変化はありましたか?


玉木:お金の流れが変わりました。「ESG投資」という言葉をご存じでしょうか?「ESG」とは環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字を組み合わせた言葉で、この3点から企業を評価して投資する手法のこと。つまり、「環境や社会、企業統治(ガバナンス)に配慮している企業に投資しましょう」という考え方です。


そして2015年、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)という私たちが毎月積み立てている年金を管理・運用する投資機関が、160兆円とも言われる運用資産をESG投資に充てると宣言しました。これによって、「SDGsに積極的な企業は資金調達がしやすくなる」「SDGsに取り組んでいないと投資家が投資を撤退する(ダイベストメント)」という流れが生まれました。SDGsへの取り組みが、企業価値に直接影響するようになったターニングポイントです。


―― 「自社の企業価値を高める」という目的ができ、日本でもSDGsに取り組む企業が増えてきたわけですね。


玉木:その通りです。「必要に迫られて状況が変わった」と言えるかもしれません。加えて、「SDGsに取り組んでいる企業は営業利益率も高い」といった報告もあります。2019年12月の日経新聞(朝刊)で、大企業をSDGs偏差値のような形でランク付けした記事が掲載されました。そこで偏差値65以上にカテゴライズされた企業の営業利益率は8.2%、そこに準ずる偏差値60~65のグループは7.8%でした。


―― SDGsに積極的な企業のほうが、営業利益率が高かったんですね。


玉木:そういう結果が出ました。違いはたった0.4%ですが、仮に売上が1兆9000億円ほどある大企業の場合、0.4%でも76億円になります。


―― SDGsの取り組みを行っている企業の事例はありますか?


玉木:日清食品株式会社(以下、日清食品)の取り組みは、面白い事例と言えるかもしれません。近年では「プラスチックゴミ」が環境問題になっていますが、日清食品では2008年からカップヌードルの容器の原料を紙に変更しました。そして2019年からは、焼却時のCO2排出量をさらに削減した「バイオマスECOカップ」に切り替えています。


さらに日清食品では、カップ焼そばUFOの湯切りをしたときにフタ裏に付着して捨てられてしまうキャベツを減らすため、「#キャベバンバン」(フタを開ける前にバンバン叩こう)というプロジェクトを実施しました。お湯を1回捨てる際にフタに付着するキャベツは平均4.8枚。UFOの年間販売量×4.8枚で計算すると、1年で4.17トンのキャベツを捨てていることになるのだとか。キャベツ1玉を1キログラム、250円とすると、量にして4170玉、金額にして104万円以上を無駄にしていることになります。こう見ると、無視できない数字ですよね。


―― ビジネス以外で変化を感じている部分はありますか?


玉木:SDGsはビジネスの場だけでなく、教育現場にも影響を与えています。2018年に改定され、2020年から始まった学習指導要領には、「SDGsの指導をするように」という内容が盛り込まれました。


―― 小学校の授業で使用する社会の教科書には、SDGsの記載があるようです。


玉木:そうですね。そして中学校や高校の受験の問題では、SDGsに関するテーマが時事問題として出題されています。例えば、「カリブ海にプラスチックゴミが溜まっている理由を答えなさい」「その社会課題においてあなたができることは何ですか?」といった内容です。子どもたちは当たり前のようにSDGsに触れており、「SDGsネイティブ」と呼ばれています。10年後や20年後には、彼らが消費やビジネスの中心になっていくでしょう。


―― 将来的に、「自分の部下やクライアント、取引先にSDGsネイティブがいること」が当たり前になっていきますね。


玉木:はい。SDGsに向き合っていかないと、企業価値がどんどん下がっていくことが考えられますね。

「これから」のために、現場と経営層をつなぐ人材が担うべき役割とは


―― ここからは、働き手個人の話を聞かせてください。自身のキャリアを築いていく中で、SDGsとどのように向き合えば良いでしょうか?


玉木:「はたラボ」の読者の中には、現場と経営層をつなぐ部長、課長、マネージャーといったポジションの人も多いかもしれません。まず意識したいのは、優秀な人材を集めて大きな成果を出し、自部署の目標達成、ひいては会社の経営目標達成に貢献することです。ひとりではできることに限界がありますが、チームをうまくマネジメントできれば何倍も大きな成果を出すことができるでしょう。


ここでポイントになるのが、これから社会人になる世代にとっては「SDGsへの取り組み」が入社企業を選ぶ判断基準になりうるということ。SDGsに積極的に取り組むほど求職者に対する自社のバリューが上がり、優秀な人材を集めやすくなるわけです。若い世代はデジタルネイティブでもあるので、今の働き方に合った仕組みづくり、例えばテクノロジーを活用した生産性の向上やサービスの付加価値向上といった取り組みも実行しやすくなるでしょう。そうした若い人材を集めるには、「ここで働きたい」と思ってもらえる企業でなくてはなりません。


―― 現場と経営層をつなぐ中間層の役割が大きいということですね。


玉木:それと同時に、「取引先を選ぶ判断力」も求められます。例えば、私がメーカーの社員だったとしましょう。そのメーカーが「プラスチックの使用量を減らす」という方針を立てても、自社だけで方針を達成することはできません。サプライヤーの協力を仰ぎ、サプライチェーン全体で取り組まないと、その方針は達成できないのです。


仕入れの際にプラスチックの包装材が使われていたら、「この包装材は要らない」などと説明し、変えてもらうための交渉をする必要があります。協力が得られない場合は、環境問題などに積極的なサプライヤーを探さなければなりません。サービス責任者や現場のマネージャーには、こういった判断がどんどん求められるようになってくると思います。


―― SDGsを「自分事」としてとらえるためのコツはありますか?


玉木:使用するだけで植林に貢献できる「ECOSIA(エコジア) 」というドイツの検索エンジンがあります。45回の検索で1本の木を植えることができる仕組みなのですが、こうした気軽にできるスモールアクションをどんどん行ってみてください。また、同僚や上司にSDGsを「自分事」としてとらえてもらいたいなら、エコバッグなどをプレゼントするのも良いでしょう。プレゼントを手渡す際に、SDGsの話ができますよね。それを使うことによって、相手には「自分は地球に良いことをしている」という成功体験が生まれます。そうすれば、知識としてインプットされた「SDGs」というキーワードを意識するようにもなるはずです。


―― 17の目標の中には、「働きがい(#8)」に関するものもあります。働きがいを高めるにはどんな方法が考えられますか?


玉木:例えば、行政や自治体などでは、WEB会議ツールを導入できてないところがまだたくさんあります。Zoomなどを導入してオンラインで会議ができる環境を作るというのも、生産性の向上やワークライフバランスを保つことにつながるでしょう。最近では、従業員エンゲージメントを数値化するサーベイなどを導入している企業も増えています。まずは自社の現状を把握するために、こういったサービスを取り入れることも大事です。


――リモートワーク環境を整える取り組みも、SDGsにつながっているんですね。お話を聞いていると、17の目標を達成する上ではさまざまな取り組みが考えられる反面、「アプローチに正解がない」という印象を受けました。


玉木:まさにその通りです。SDGsで掲げられた17の目標は、「貧困をなくそう(#1)」「飢餓をゼロに(#2)」など、どれも抽象的なものばかり。ではどうやったら達成できるのか――という基準のようなものは、「169のターゲット」に記されています。しかし、そのターゲットをクリアするために「何をしなくてはならないか」について、国連は一切提示していません。対策自体は企業一社一社、個人一人ひとりが考えていく必要がありますが、そこがSDGsの面白いところでもあります。


アプローチに正解・不正解はありません。自分たちがその社会的課題に対してどれくらい熱量を持って取り組んでいきたいのかを、各企業が議論して決めていくことが求められていると言えるでしょう。



 

取材・文:C-NAPS編集部

 

取材協力:玉木巧(たまきこう)

 


新卒として8年間働いた会社では、インドやインドネシアなど7か国で販路開拓に従事する。2019年8月に退職すると、翌月からアフリカのセネガルに1か月滞在し、プラスチックゴミ問題の解決に奔走した。帰国後は株式会社Drop の創業メンバーとしてジョイン。現在はSDGsコンサルタントとして、企業・団体がSDGsを推進するためのコンサルティングを行っている。

WEB:https://sdgs.media/
Twitter:@ZAMAYAN1209
YouTube:SDGs media - YouTube

 

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