はたラボ

おもしろ部署探訪~日本ケロッグ合同会社 マーケティング部~ブランドを長期的に成長させるために、私たちができること

f:id:pasona_career:20190523111348j:plain

世の中にはさまざまな仕事がある。一見すると同じ部署名でも、企業の数だけ手掛ける仕事内容は多様なうえに、企業や社会における役割も異なる。この連載では、そんな世の中に存在する企業の『部署』にフォーカスし、それぞれの部署の役割や仕事内容、ポリシーなどに迫る。

今回は、日本ケロッグ合同会社 マーケティング部を訪問。歴史と伝統のある外資系企業の日本法人では、アメリカにある本部との間でどのようなやり取りがあるのだろうか。フルーツグラノラをはじめとする数々のヒット商品誕生の裏側には、果たしてどんな取り組みがあったのか。ブランドマネジメントやPRを担当するマーケティング部の活躍ぶりと社風について、語ってもらった。

マーケティング部はある意味、経営企画部門。会社そのものが迷子にならないように、行き先を示すのが私たちの役目

―― まずは、日本ケロッグの事業概要からお聞かせいただけますか。


五味田さん(以下、敬称略):「ケロッグ」の起源は、今から100年以上も前のアメリカ ミシガン州バトルクリークで、医学博士のJ.H.ケロッグと弟のW.K.ケロッグが、長期滞在型の保養所の運営を開始したことから始まっています。二人は、宿泊客の朝食として栄養価の高い食事を提供しようと考え、食物繊維が豊富な穀物を材料にした食品の研究開発に着手しました。試行錯誤を続ける中で、小麦の生地をローラーにかけフレーク状にしたものを焼き上げる調理方法にたどり着き、1984年に現在のシリアルの原型となる「グラノーズ」が誕生しました。「健康的でおいしい」と思ってもらえる商品を提供したいという、こだわりのルーツがそこにあります。


日本でビジネスがスタートしたのは1962年のこと。外資系の企業としては、結構長い歴史を重ねている方ではないでしょうか。当時は、どちらかというとお子様向けの商品が主流でした。数十年前のCMを見ると、父母向けに作られていて、成長期のお子さんにとって必要な栄養バランスを訴求したものになっています。親の思いは普遍的なものなのですね。


大人向けの商品として大きく注目を集めるようになったきっかけの一つに、2010年代に訪れた「グラノラブーム」があります。ケロッグをはじめ、魅力的なグラノラ商品が次々と市場に登場することで、ブームをけん引したというのもありますが、外的要因として大きかったのは、2011年に発生した東日本大震災時に保存食として購入され、その後お召し上がりいただいたことです。こども向けのイメージを持たれがちなシリアルでしたが、「大人の食事」としても十分に楽しめる味や機能を持った食事であることが再発見され、それ以降の生活に取り入れていただけるようになりました。


また、2012年あたりから起こったハワイブームの影響で、アサイーボウルが注目され、グラノラのように、自然由来の健康的な食材をライフスタイルとして取り入れる傾向が生まれたのも要因の一つですね。加えて、栄養バランスに優れたさまざまな穀物やフルーツを1度に食べることができるグラノラの手軽さも、日本人の「1日30品目の食材を摂る」という深層心理にフィットしたものと捉えています。


日本ケロッグ合同会社 マーケティング部 ブランドアクティべーション&MMO グループマネージャー(※2019年4月末時点) 五味田 里美さん

―― 五味田さんが在籍するマーケティング部の役割について教えてください。


五味田:基本的には、ブランドを育て、管理している部署です。ミッションは、「ブランドをいかに成長させるか」というところなので、そのために必要なことは全てやります。それこそ、いわゆる川上から川下まで、新商品の開発からメディアとのコミュニケーションまで、実際にプランを考えて、実行するところまでの全てを担当しています。


外資企業の多くが、「川上は本国の本部で」という方針をとっていますが、当社は少し毛色が違っています。ビジネスの軸足が朝食にあるため、「現地(ローカル)の人たちの食習慣や文化を深く理解していないと成功できない」という考え方のもとに立脚していますから、当然、日本独自の商品もあります。今年の1月より発売を開始した『大豆プロテイン グラノラ』は、まさに日本から発信し、中国や韓国など海外に展開している好例です。フルーツ系のグラノラもそうでしたね。


これらの商品は一回一回本部を経由するのではなく、関心のあるローカル同士で助け合い、ブランドのガイドラインに沿って検討を進め、最終的に本部の承認を経て商品化していく流れとなっています。社内に「ソウル・オブ・スタートアップ(起業家精神)」というスローガンがあり、「もしも各自がスタートアップ企業を運営していたらどうする?」「どういうアクションを取る?」という視点から、スピーディかつフレキシブルに動いているのが特徴です。


―― チームの中でのご自身の立ち位置を教えてください。


五味田:ある意味、経営企画部門なのだと思います。ビジネスを拡大するためには2つの要素がありまして、一つは「新しく人数を増やすこと」、そしてもう一つが「食べる機会を拡大すること」です。この2つを成長戦略として定義して、「財産」としてのブランドを活かしながら、消費者のインサイトをよく知ることが重要だと私たちは捉えています。


それを踏まえ、私たちはマーケティング起点で中長期プランを立て、さまざまな部署と協働しながら掲げている戦略を随時見直しつつ、仕事を進めています。私たちが行き先を間違うと、会社そのものが迷子になってしまう。そんな自覚を持っています。


―― 職場はどのような雰囲気でしょうか?


五味田:女性が多い職場です。マーケティング部門は飛び抜けて多く、8割が女性。もちろん、男女どちらの視点も大切ですが、多くの日系企業でマイノリティーになりがちな女性の声をしっかり聞くのは重要だと考えています。やはり商品カテゴリ的にも、購買層の中心は大人の女性となっていますから。


―― 五味田さんが感じているやりがいは何ですか?


五味田:健康的な商材で世の中に貢献できているという満足感と、消費者のインサイトを探っていく過程に魅力を感じています。また、会社の雰囲気がオープンなところも気に入っていて、働く女性を後押ししてくれるのも嬉しいですね。私も周囲に助けられながら、子育てと仕事を両立し、毎日充実した日々を送っています。


今後も「健康」と「おいしさ」の両軸で、消費者のニーズを先々まで見据えていきたいと思っています。コアターゲットは、「マルチタスクウーマン」と定義する人々。ビジネスパーソンとしてはもちろん、妻として母として、そして娘としてすごく忙しい世代です。簡単に食べられるけれども、しっかり必要な栄養が摂取できて、健康に役立てる商品をこれからも作っていきたいですね。


もちろん、シニアや働き盛りの男性にもしっかり訴求したいと思っています。細かくプロファイルをして、ペルソナを作りながらそれぞれの価値観を探り、どのようなメディアを使ってどのようにコミュニケーションするか、どういう製品なら買ってもらえるかを今後も考えていきます。


―― 「マーケティングの面白さ」はどのようなところにあると思いますか?


五味田:人によって違うとは思いますが、私個人としては「なるほど!」といったインサイトを発掘するところに醍醐味を感じています。そのインサイトは、日本特有なものもありますが割と普遍的で、他の国でも共通だったりします。それを発掘できた時に、仕事の喜びや面白さを実感しますね。

入社後すぐに商品ブランディングの仕事に。裁量が与えられる環境に、驚きと喜びを感じた

―― 三宅さんは、実際にブランドを担当するアシスタントブランドマネージャーなんですね。


三宅さん(以下、敬称略):はい、そうです。私が担当しているのは、HERSHEY’Sチョコレートで知られる、ハーシー社とのコラボレート商品です。商品企画の発端となったのは、日本の15-19歳女性の約11.3%、もう少し上の年齢である20-29歳女性になると約23.6%が朝、欠食状態であるという調査結果*1。「彼女たちにどうしたら朝食を食べてもらえるか?」というところから、商品企画がスタートしました。彼女たちに食べてもらうためには、若い層に人気で親しみがあるブランドとのコラボレーションが必要だと私たちは考えたのです。


もともと、すでにハーシー社とのコラボ商品が韓国で開発され、ヒットしているという前例がありました。ごろっとした大きなサイズ感で、手でつまみやすいので、食べ方としてもこれまでにない新しい商品が日本の若い層にも受け入れられると考え、日本向けにカスタマイズして生まれた商品が『ケロッグ ハーシー チョコビッツ』です。私が日本ケロッグに入社して、すぐに任されたプロジェクトでした。


日本ケロッグ合同会社 マーケティング部 アシスタントブランドマネージャー 三宅 亜紀さん

―― 入社後すぐに!仕事を振られた際、どう思いましたか?


三宅:いきなりの大プロジェクトだったので、正直、「私でいいのか?」と思いました。不安とプレッシャーもありましたが、「自分がやりたいことができる!」という喜びのほうが大きかったですね。私は前職でPR会社に在籍していました。当時、クライアントの商品をPRしながら、商品開発から消費者とのコミュニケーションまで携わってみたいと思い、転職して事業会社のマーケティング部門に配属されたので、プロジェクトを任されたときはわくわくの方が大きかったです。


とはいえ、商品企画からブランドコミュニケーションまでマーケティングの仕事は、ほとんど初めての経験。上司にフォローしてもらいながらではありましたが、ほとんどの裁量が自分に与えられ、やりたいようにやらせてもらえたのは驚きでもあり、喜びでもありました。


実は、この『ケロッグ ハーシー チョコビッツ』という商品は、おかげさまで日本食糧新聞が選ぶ「第37回 食品ヒット大賞」で、優秀ヒット賞を受賞しました。しかもシリアルという狭義ではなく、「パン菓子部門」という強豪ひしめく中での受賞となったので、大変嬉しく思いました。


―― 自信がついたのでは?


三宅:マーケティングだけでなく営業、開発、サプライチェーンを始めとする全部門の協力がなければ発売できなかったプロジェクトが成功したと感じられたので、確かに今後の励みにはなりました。


―― 日系企業からの転職だそうですが、外資系企業はいかがですか?


三宅:役職や年齢関係なく、本当にフラットな職場だと思います。一人ひとりの意見を、役職や社歴関係なく聞き入れてフィードバックをもらえるのがとても素晴らしい環境です。入社前は、勝手に「外資?」と構えてしまっていたところもありましたが、実際に入ってみると、予想通り裁量は大きく、予想以上に社員がとても温かく、働きやすい職場でした。


本当に良い意味で、思っていたような「外資」ではなかったので安心しています。チームを構成する個々のメンバーも個性豊かで垣根がない。そして、独自の世界を持つプロが周囲にたくさんいて、聞けば誰もが助けてくれる、そんな和気あいあいとした雰囲気が気に入っています。

PRチームは、市場調査の時点から商品開発に介入。なぜシリアルを食べるのか、「Why?」をひたすら突き詰める

―― まずは、チームにおける木村さんの役割を教えてください。


木村さん(以下、敬称略):肩書でいえば、PRを担当するマネージャー……なのですが、日本ケロッグの場合、一般的なPR業務である媒体対応よりも、それぞれのセグメントの中で「Why?(どうして食べるのか?)」を見える化する役割が大きいかもしれません。


例えば、先ほども話に出た『大豆プロテイン グラノラ』という商品。これは、大豆プロテインという主成分を「何で食べなくてはいけないのか?」理由をきちんと伝えます。先ほど三宅が説明した『ハーシー チョコビッツ とろけるチョコレート』であれば、「中高生の欠食がなぜ悪いのか?」をちゃんと説明するのです。


単に、商品に紐づく「Why?」ばかりではありません。例えば、超高齢社会の到来を見据え、「シニアの方がシリアルを食べる理由」をひたすら作ることが、単純な広報活動を超えて今、必要になっています。そんな役割も担っています。


日本ケロッグ合同会社 マーケティング部 PRマネージャー 木村 正人さん

―― 「Why?」は、商品より先に作るものですか?


木村:おっしゃる通りです。ですから、私たちPR部門の人間も、市場調査の過程からマーケティング部門と一緒になって商品開発を進めていきます。市場には「こういう声がある」ということを、データを基に確認し、商品発売後、いざその魅力を伝える段階になった際に広く発信するのです。


―― マーケティングとPR、両方の役割を担っているような感覚ですね。


木村:そうかもしれません。また、少し実験的なチャレンジができるのも私たちPR部門の特権だと思っていて、仮説を基に「とりあえずアタックしてみよう」という役割もあります。


例えば、先ほども話題にあがったシニア層。これからますます、マーケット自体は大きくなっていくとはいえ、「シリアルを食べるか?」という課題があります。長い目で見ればごはんからパン、パンからシリアルへと変容していく可能性はあるのですが、非常に時間がかかるため、すぐに投資ができない。であるなら、「長期的な視点に立って社会的に啓発しよう」……そんなときこそ、私たちPR部門の出番となります。


シリアル自体に「子どものもの」というイメージがあるため、現時点においてシニア層は、まだまだビジネスボリュームとしてそれほど大きくはありません。ところが、お一人で暮らす高齢の方々の間には「隠れ栄養問題」が着実にまん延しつつあります。


そんな状況の中、離れて暮らす子どもが、一人で暮らす自分の親の健康を気遣いシリアルを送り、勧めてみたところ「おいしい」との反応があった、さらに「栄養価が高いため、食べ続けている」という声がありました。マーケティング的な目線から言えば、これは目先の売り上げを伸ばす手段ではなく、10~20年先のインサイトだと思うんです。シリアルを食べたことのない高齢者層に、シリアルの価値を理解していただくためには、どのようなアクションを起こせばいいのか?それは、マーケティングベースの広告展開ではなく、CSR的にお年寄りにシリアルを無料で配布しよう……といったような話になっていくのです。


―― CSRにまで広がるんですね。


木村:こういった「シニアに対する施策」に関しては日本独自ですが、グローバルのケロッグは昔から、シリアルを使った食糧問題解決に熱心な企業です。やはり、療養所から始まっていますからね。売上のかなりのパーポーションを飢餓問題解決のために還元しています。グローバルにおいては、2025年までに全世界で25億食の食料支援を目標とした計画を立てて活動しています。


日本でも、子どもの栄養支援の一環として「子ども食堂」などへの配布を続けていて、そういった思想がこの会社の根底にはしっかりとあります。そこに日本固有の問題でもある「高齢化」というテーマが加わり、見回してみれば恐らく他のアジアの国々でも、同様の未来が待っていることは分かっています。まずは、「日本がリードマーケットとしてトライしてみよう」と本部に承認をもらって、進めている状況です。


CSRとしてこれ見よがしにやるのも必要だとは思いますが、シリアルの簡便性と社会課題を結びつけていくと、「私たち日本ケロッグにやれることは、意外とたくさんあるのでは?」と感じています。ケロッグとして、シリアルを売っている会社として何ができるか……社会課題を見渡してみると、恐らく昔よりもできることが増えているのかもしれません。


そもそも社会課題に根付いて作られている商品なので、マーケティングとCSRがほぼ一直線上にあると思っています。最終的な利益が社会課題と結びついていれば、それはCSRだと胸を張って言えると思います。


―― 木村さんが感じている、日本ケロッグの魅力は?


木村:入社して一年半が経過しました。前職は、日系企業のマーケティング部門です。外資系企業の特徴として感じているのは、とにかく「外に学べ」という意識が強いこと。これはすごく感じます。こだわりがあまり強くない感覚が、すごく好きですね。


レガシーな日系企業だと、過去のサクセスケースに溺れてしまいがちですが、日本ケロッグの場合、他国などに成功例があったら「良いものは良い」と、国籍やカルチャーを超えてすぐに取り入れる姿勢があります。組織がフラットなだけでなく、海外の考えを柔軟に受け入れていく文化があるんです。とはいえ、ローカライズも利いているので、どこか内資っぽいところもある。和洋折衷な魅力のある会社と感じています。


f:id:pasona_career:20190523132617j:plain


取材・文:伊藤秋廣(エーアイプロダクション) 撮影:岡部敏明

 

商品開発・マーケティングに携われる仕事は? アドバイザーに転職市場動向を聞いてみよう

 

パソナキャリアのキャリアアドバイザーに商品開発・マーケティングに携われる仕事の求人動向を聞いてみる

パソナキャリアには、商品開発・マーケティングに携われる仕事の情報に特化したキャリアアドバイザーが多数在籍しております。企業との情報交換も活発に行っている転職エージェントから、業界の動向を聞いてみませんか? 個別相談会も実施しています。
▼転職市場を熟知したプロのキャリアアドバイザーに最新動向を聞いてみる